*

「車旅日記」2004年夏 最終日(長崎-福岡空港)走行距離291㎞その2-厳木駅、西唐津駅、唐津駅、筑前前原駅、葛飾金町【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/24 旅話, 旅話 2004年

車旅日記2004年8月15日・・・厳木駅、西唐津駅、唐津駅、筑前前原駅、葛飾金町

2004・8・15 14:01 厳木駅(8月11日の佐賀空港より1562㎞)
肥前の鄙びた街道を唐津へ。

真夏日を生きてきたオレも、九州の地でひとまず区切りがつき、今聞こえているのは秋の虫の声。

草蒸した線路をJR唐津線が走る。

時刻表を見ると1時間に1本は走っている。
そこそこの役割はまだ持たされているようだ。

雨を降らす雲は気紛れに九州全域を移動し、気が向けば関門海峡を越えて本州に移動するつもりでいるのだろう。

無人の鄙びた駅。
瓦屋根の平屋造り。
このあたりじゃ、駅を改築する予算もなかなか回してもらえないのだろう。
歴史的な小さな建造物が、駅として多く残されている。

ホームからはありふれた日本の古里の風景が見渡せる。
たいして標高の高くない山が壁となり、その先にあるであろう集落の姿を隠している。

でもオレはこんな風景が好きで、その風景の中に今参加していることがうれしい。

まったく知りもしなかった街道。
まったく想定外の街道で、線路があることに感動し、ここにいられることを幸運に思っている。

14:46 西唐津駅(8月11日の佐賀空港より1585㎞)
周囲を集合住宅に囲まれた終着駅。
たった今出ていった佐賀行に乗客の姿は確認できなかった。

無味乾燥な駅舎に「西唐津駅」と墨書された木札がかかっている。
なんだかミスマッチにも感じるが、木札に救われたような気持になる。

せっかくの終着駅だ。
もう少し風格のある姿を見たかった。

駅員はひとり。
本来はひとつ手前の唐津駅が終着駅になるところを、その先に鉄道基地を設ける都合上ついでに造られた駅という印象を受ける。
そしてここが集合住宅街が尽きる地帯でもある。

唐津で腹に何か入れるつもりでいる。
暑くなってきた。
ひょっとしたら30度は超えたかもしれない。

そしてとうとう引き返す地点まできた。

15:23 唐津駅(8月11日の佐賀空港より1587㎞)
福岡方面と佐賀方面との分岐点の町、唐津。

ここは高架駅で、規模は小さいが駅ビルの機能も併せ持っている。
「駅そば」はなく、じゃあ寿司でも食おうと思う。
海辺に来たらその地の魚を食べて帰りたい。

豊臣秀吉が大陸進出の野望を漲らせて築城した名護屋城址は唐津にあるとのこと。

さて、潮時だ。
焦りが出てきた。

最後の地、福岡空港へ。

2009年9月22日撮影

16:28 筑前前原駅(8月11日の佐賀空港より1621㎞)
唐津城を遠くに眺め、松浦川を渡ると福岡県。
いくつもの入江を横目に博多が近づいた。
海水浴場では僅かな客が盆の夏を楽しんでいる。

いくつも通り過ぎてきた町と同じように、テレビ塔の他に高層建造物の見当たらない前原に、視覚障害者用の警告音が鳴り響き、人の気配だけはあたりに旺盛に漂っている。

博多が近い。
国道を入ったところに素敵な公園があった。

ここが最後。空港に行くよ。

2009年9月22日撮影

18:19 福岡空港(8月11日の佐賀空港より1648㎞)
福岡市内に日が差している。

九州最後の海は玄界灘。
今宿あたりで見たよ。

かつて九州の男たちが元軍の上陸を阻んだ海岸で、博多っ子が海水浴を楽しんでいた。
そして博多へ。

ホークスの試合があったようで、ある一角から大勢の人があふれ出てきた。
天神、中洲。
博多の街は大きい。
一年ぶりになる。

街のど真ん中を突っ切って福岡空港へ。
博多駅へは2駅分の距離にある。

空港に晩夏の日差しが降り注ぐ。
空港の周囲を大きな看板が取り巻いている。
その看板たちが光を浴びている。
その光景がオレが最後に見た8月の思い出になる。

島原半島と大村湾ではスコールのような雨に打たれ、昨日は筑後川周辺でもひどい降りに遭った。
歴史的な雨といつもオレは表現している。

太古の昔から変わらない地球の営みが、数多くの自然を残した土地を濡らす瞬間に立ち会う時、雨は東京で浴びるものと違って、ある意味虹色を帯びる。
激しければ激しいほど、記憶に残る。
かつての青森、松山。
そして今は夏。

昨日の桜島には雲がかかっていた。
天文館で飲んだ友が言っていた。
桜島に雲がかかった翌日は雨が降ると。
そしてその通りになった。
敬虔な気持ちでいる。

旅はここで終わり、友にメールを送り、幸せな気持ちでビールを飲んでいる。

素晴らしいエンディングだ。

24:17 東京葛飾金町
ここに戻ってくるまで旅は続いた。
東京モノレールでは、荷物置きの手摺に腰を下ろして、羽田の明かりが届くあたりまでは、時折思い出したように東京の夜景を眺めていた。

九州の大地はオレから女々しさを奪った。
そっちのことはそっちでしっかりと考えろと、きっと九州の様々な神が教えてくれたのだろう。

東京で暮らす悩みやその他のつまらない思いが九州で顔を出すことはなかった。

土地の神には今日も救われた。
当初の計画に従って佐世保に行っていたら、フライトには間に合わなかっただろう。
仮に間に合ったとしても、焦って最後の行程を空しく費やすことになっただろう。

こっちも雨が降ったんだな。

今夜は涼しい。
ずっと30度以上の気温が続いていた歴史的な記録は、今日で途切れたのだろう。

関連記事

「鉄旅日記」2022年如月 初日(東京-常陸大子)その1 ‐金町、我孫子、新木、成田、佐原(常磐線/我孫子支線/成田線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月5日・・・金町駅、我孫子駅、新木駅、成田駅、佐原駅(常磐線/我孫子支線/成田

記事を読む

2020年水無月【緊急事態宣言から解放された週末。石和温泉につかりにいった記憶をSNS風に綴ります。】-甲府、善光寺、酒折、石和温泉、大月(中央本線/身延)

鉄旅日記2020年6月20日~21日・・・甲府駅、善光寺駅、酒折駅、石和温泉駅、大月駅(中央本線/

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 初日(東京-下北)その2-村崎野、六原、盛岡、八戸、野辺地、下北(東北本線、IGRいわて銀河鉄道、大湊線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月19日その2・・・村崎野駅、六原駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅、下北駅(東北本線

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋 2日目(倉敷-和田山)その1-倉敷、足立、生山、上菅、伯耆溝口、伯耆大山、赤碕、浦安、松崎、浜村、末恒、湖山、鳥取(伯備線/山陰本線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月22日・・・倉敷駅、足立駅、生山駅、上菅駅、伯耆溝口駅、伯耆大山駅、赤碕駅、

記事を読む

「車旅日記」2004年夏 2日目(別府-宮崎)走行距離337㎞その1-別府日名子、大分駅、菅尾駅、三重町駅、豊後竹田駅、阿蘇駅 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

車旅日記2004年8月12日・・・別府日名子、大分駅、菅尾駅、三重町駅、豊後竹田駅、阿蘇駅 200

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生 最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その2-新潟、白山、内野、巻、吉田、燕(越後線/弥彦線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

鉄旅日記2018年3月4日・・・新潟駅、白山駅、内野駅、巻駅、吉田駅、燕駅(越後線/弥彦線) 11

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その2 ‐高尾、大月、塩山、甲府、日野春(中央本線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】

鉄旅日記2021年4月24日・・・高尾駅、大月駅、塩山駅、甲府駅、日野春駅(中央本線) 7:

記事を読む

「鉄旅日記」2009年初夏 【上信越ひとり旅】最終日(長岡-東京)-長岡、東三条、吉田、新潟、新津、会津若松、郡山、磐城石川、磐城塙、玉川村、常陸大宮、金町(信越本線/弥彦線/越後線/磐越西線/水郡線/常磐線)

鉄旅日記2009年7月20日・・・長岡駅、東三条駅、吉田駅、新潟駅、新津駅、会津若松駅、郡山駅、磐城

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その2-新西金沢、野町、加賀一の宮、西金沢、羽咋(北陸本線/北陸鉄道石川線/七尾線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】

鉄旅日記2008年9月13日・・・新西金沢駅、野町駅、加賀一の宮駅、西金沢駅、羽咋駅(北陸本線/北陸

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その6‐渚、高山(高山本線)/うま宮 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月20日・・・渚駅、高山駅(高山本線)/うま宮 17:54 渚(なぎさ)駅(高

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

→もっと見る

    PAGE TOP ↑