「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 初日(東京-多治見)その4-古虎渓、釜戸、美乃坂本、多治見(中央本線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月23日・・・古虎渓駅、釜戸駅、美乃坂本駅、多治見駅(中央本線)
18:23 古虎渓(ここけい)駅(中央本線 岐阜県)
初めて中央本線で名古屋から塩尻に向かって以来、降りてみたかった駅にようやく立てた。
名古屋にほど近い地に、忽然と渓谷美が現れたあの日の衝撃は忘れていない。

2年前の夏にもここにいるはずだったけど、列車の遅れで叶わなかった。
土岐川に沿う古虎渓から定光寺にかけての渓谷ルートは桜の名所だという。
橋の上から眺めた古虎渓は特別な景色ではないけれど、旅の者の目を楽しませるものは持っている。
まだ明るさの残るうちにここにこれてうれしい。



19:16 釜戸(かまど)駅(中央本線 岐阜県)
薄着の美濃人が寒いとこぼす。
昨日は暖かかったが、あの暖気は列島全体に及んでいたらしい。
中山道ゆかりの名所を紹介する案内板を眺め、宵闇の下りた村へと歩く。



古街道の趣はどこにも負けないほどの風格を闇の中に現出し、川辺へと通じる階段を下りて腰かけてみれば、春にも風流はあるのだとしばしたたずむ。
薄暗がりの川辺は彼岸を感じさせた。
ちょうどそんな時季でもある。
彼女から便りが届いている。
まだ開けていない。
こんなにも密に愛の言葉を交わし合う関係を、オレはこれまで知らずに生きてきた。
19:52 美乃坂本(みのさかもと)駅(中央本線 岐阜県)
ここでも待ち人が寒いとこぼす。
寒くないわけじゃないが、覚悟している寒さではある。
それにしても確かに美濃の夜は冷える。
この駅に降りる前からホームにたむろしていた異邦人の群れがいる。
こんなに暗くなったんじゃ、一番明るい場所はここなのかもしれない。
煙たく思ったりしないよ。
食堂の明かりがつく駅前には心が弾んだ。
人の営みが明かりとなる。
そんな光景に安心する。
改札をくぐると明かりは食堂だけのもので、すぐに尽きていた。
それでもこの駅を恋人との想い出とともに、いつまでも記憶しているだろう。


これで中央本線名古屋~中津川間のすべての駅に降りたことになる。
今夜の宿泊地の多治見に戻る。
20:44 多治見(たじみ)駅(中央本線/太多線 岐阜県)にて

22:13 ホテルトーノー613号
陶都多治見に夜降りるのは初めてになる。
ささやかな夜の明かりが灯る街をふらつくと、このホテルはすぐに分かった。
隣の焼鳥屋のメニューにラーメンの文字を見つけてさらに物色していると、ふっくらとした笑顔のかわいらしい女性に入店を促され、熱燗2本につまみ2品、締めにラーメン。
土岐川が流れる陶都大橋に出て、月見。
多治見の夜をすっかり気に入って、じきに寝ようとしている。

恋人ができたあとの初めての旅。
抱えている事情は複雑だけれど、それでもよくて、様々な愛を神々は祝福していると思っている。
彼女と一緒に暮らすことはできない。
でもソウルメイトでいることを神は否定しない。
春の宵とは本来冷たいものよとFbに投稿して店を出たら、冷たい空気は去ってほんのりと暖かみを感じる宵となっていた。
京都でそんな宵を過ごしたのもまた3月。
あれはもう19年も前のことになる。
明日の朝このホテル自慢の朝食をたらふく食べたら、この街を離れる。
【Facebookへの投稿より】
一番列車に乗って西へ向かいました。
相模、伊豆、駿河、遠州、三河と、冬の名残を思わせる空気の冷たさと時折の雨に凍えもいたしましたが、尾張に入りますと日差しに満ちて暖かく、人気のない名古屋東港で爽やかな夕暮れを迎えたのでございます。
今夜の宿場、「陶都」多治見に向かっております。
夜になって、また冷えてまいりましたが、春の宵とは本来このようなものでございます。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その1‐鷹ノ巣、二ツ井、鷹巣、阿仁合(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)
鉄旅日記2023年1月13日・・・鷹ノ巣駅、二ツ井駅、鷹巣駅、阿仁合駅(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道)
-
-
「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】
鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北本線) 10:17&nb
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その1‐高山、打保、猪谷、富山、電鉄富山(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月21日・・・高山駅、打保駅、猪谷駅、富山駅、電鉄富山駅(高山本線) 2020
-
-
「鉄旅日記」2014年春 初日(東京-西舞鶴)その2-東雲、宮津、天橋立、豊岡、国府、和田山、梁瀬、福知山、西舞鶴(北近畿タンゴ鉄道宮津線/山陰本線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】
鉄旅日記2014年3月21日その2・・・東雲駅、宮津駅、天橋立駅、豊岡駅、国府駅、和田山駅、梁瀬駅、
-
-
「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その2 ‐川渡温泉、鳴子御殿湯、鳴子温泉(陸羽東線)/東鳴子温泉神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】
鉄旅日記2021年12月5日・・・川渡温泉駅、鳴子御殿湯駅、鳴子温泉駅(陸羽東線)/東鳴子温泉神社
-
-
「鉄旅日記」2016年春 最終日(石巻-東京)その1-石巻、西塩釜、下馬、塩釜、岩切、利府、伊達、郡山、白河(仙石線、東北本線、利府支線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】
鉄旅日記2016年3月21日その1・・・石巻駅、西塩釜駅、下馬駅、塩釜駅、岩切駅、利府駅、伊達駅、郡
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 最終日(三次-東京)その1‐三次、上下、府中(福塩線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月26日・・・三次駅、上下駅、府中駅(福塩線) 2020・7・26&nb
-
-
「鉄旅日記」2007年如月 2日目(天王寺-奈良)その2-なんば、上本町、鶴橋、桃谷、寺田町、天王寺、恵美須町、新今宮、奈良(南海電鉄南海線/関西本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】
鉄旅日記2007年2月11日・・・なんば駅、上本町駅、鶴橋駅、桃谷駅、寺田町駅、天王寺駅、恵美須町駅
-
-
「鉄旅日記」2018年秋 初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その1-松戸、北松戸、馬橋、流山、小金城趾、幸谷、新松戸、北小金、南柏、北柏、我孫子(常磐線/流鉄流山線) /萬満寺/近藤勇陣屋跡【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】
鉄旅日記2018年9月22日・・・松戸駅、北松戸駅、馬橋駅、流山駅、小金城趾駅、幸谷駅、新松戸駅、北
-
-
「鉄旅日記」2022年如月 最終日(常陸大子-東京)その3 ‐土浦、荒川沖、藤代、柏(常磐線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】
鉄旅日記2022年2月6日・・・土浦駅、荒川沖駅、藤代駅、柏駅(常磐線) 15:49 土浦
