*

「鉄旅日記」2014年夏 4日目(米子-呉)その1-米子、安来、来待、西出雲、弘南、温泉津、波子、浜田、石見川本(山陰本線/三江線) 【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】

公開日: : 最終更新日:2025/06/04 旅話, 旅話 2014年

鉄旅日記2014年8月16日その1・・・米子駅、安来駅、来待駅、西出雲駅、弘南駅、温泉津駅、波子駅、浜田駅、石見川本駅(山陰本線/三江線)

米子(よなご)駅(山陰本線/伯備線/境線 鳥取県)にて

2014・8・16 6:43 安来(やすぎ)駅(山陰本線 島根県)
雷鳴轟く安来の空。
駅の背後に陣取る住友金属は一部の明かりを残し静止している。
壁に描かれた「どじょうすくい」のオッサンは満面の笑み。
アホ面だ。

戦国時代の山陰の覇者、尼子氏の本拠だった月山富田城はこの街にあったのだな。
3日前に立ち寄った尼子氏滅亡の地、上月は同じ中国地方にあるとは言えここから遠い。
人間の執念が引き起こしてきた数々の事件をふと想う。

安来の由来は古人がこの地で安らかな心になれることを願ったことに拠るという。
そう言えばこのあたりじゃ駅の観光案内板は難読の漢字にあふれている。

しばらく歩いて中海安来港へ。
提灯が軒先にぶら下がった家並みに夏の風情があふれる。

十神山は富士に似た象徴的な姿で雨に打たれていた。


7:39 来待(きまち)駅(山陰本線 島根県)
数分の停車。
宍道湖はまだ見えている。

来待とはステキな駅名だ。
9号国道に面してログハウス風の小さな駅舎が仄かな灯を点し、オレが来るのを待っていた。

8:23 西出雲(にしいずも)駅(山陰本線 島根県)
大雨は米子で収まったけど、日本海側は荒れているようだ。

列車の運行が大幅に狂い、ここ西出雲で緊急停車。
何分止まるのか知らないが、外に出てみる。

西出雲という響きに旅情を感じていたが、現代的な駅舎で、清掃が行き届いているような清潔な印象を受ける。

旧駅名が刻まれた知井宮駅開業100周年の碑があった。

出雲路ビールレストラン、ホテル、ホール。
歩道を広くとった整然とした駅前だ。

ただ、雨ということもあるのだろうが人気はなく、閑散としていた。

8:40 江南(こうなん)駅(山陰本線 島根県)
列車の遅れは深刻だ。
続いてこの駅でも緊急停車。
タクシーの運転手も怪訝な様子でホームを窺っている。

駅前には旅館だけがある。
「喜劇駅前旅館」という渥美清主演の映画を思い出す。

何分の停車になるのか案内はなく、急いで列車に戻る。
車内に目を移すと、2ボックス先に20年前の恋人によく似た子供連れの女性が座っている。

世界にはよく似た人間が最低5人はいると言うが、彼女はそのうちの一人に数えられていい。
表情もよく似ていてとても驚いた。

10:33 温泉津(ゆのつ)駅(山陰本線 島根県)
列車の遅れは随分持ち直したようだ。
日本海が見えて温泉津が近づき雨も上がり夏が戻った。

目の前の学校からは祭り囃子が聞こえてくる。
かつて世田谷で暮らしていたことがあるという男性とちょっとした会話を残して温泉街へと歩いて行く。

「男はつらいよ」第13作で、車寅次郎がしばらく暮らした温泉津。
失恋したけれど相手の女性の幸せな顔を見て、妹のさくらとよかったねと頷き合って離れた町。

映画の頃には重厚だった駅も今じゃ特徴を失っている。
二人がタクシーを走らせた町並みを過ぎて、石見銀山と併せて世界遺産に登録された温泉街は古く、また美しい。
日本が世界に発信する「美」はああいう姿をしている。
そしてそうあり続けてほしいと願う。



11:10 波子(はし)駅(山陰本線 島根県)
数分の停車。

しまね海洋館アクアスの玄関口。
そこに何がいるのか知らないが、若いカップルが降りていった。
高台にある駅からは日本海に寄り添う海洋館と思しき箱が見えた。

定時運行に戻った山陰本線だが、約1時間後に戻ってくる際にまたダイヤが狂ったとしたら、最悪あそこに行けば飯にはありつける。
そんなことを考えながら列車に戻った。

夏空が広がっている。

11:55 浜田(はまだ)駅(山陰本線 島根県)
「どんちっち銀天街」か。
浜田市営球場のことは覚えていたけど、この商店街の記憶はなかった。
かつての浜田の街に対する印象はもっと淋しいものだった。

商店街を歩く人の姿はあまり見かけなかったが、駅には人があふれていた。
ワシントンホテルに弱小ビジネスホテルと、宿泊施設は充実している。

駅は変わっていた。
どこかの物好きがアップしていたホームページで、浜田に「駅そば」があることを知って楽しみにしていたけど、津山、津、長府と同じように鉄道文化の後退をここでも見せつけられた。
失望したが仕方がない。

ビールに合う食料を揃えて涼しい風が届くホームのベンチで若干急ぎ目に昼食を済ませたら、今度は益田からの列車が遅れている。
ここから江津まで戻り、そのまま三江線へ入る列車を待っているが、これじゃ江津で予定されている数分の停車はなくなるかもしれない。

今日は江津の祭で江の川に花火が上がるという。
そう言えば、さっきテントが張られた川辺にたくさんの人が集まり、駅前には提灯がぶら下がる光景を目にしていた。

ようやく列車が動き出し浜田が遠ざかる。
かつて寄った浜田城址が懐しい。

13:59 石見川本(いわみかわもと)駅(三江線 島根県)
10数分の停車。

江津を出て江の川に沿うと、廃止された江差線を彷彿とさせる密林地帯を這うように進んでいく。

先月約一月ぶりに台風被害からの復旧を果たした三江線。
ここまで半分以上の区間を徐行運転していた。
乗客は疎らで周囲の道の状態も悪く、よくこんな場所に住居を構えているものだと驚嘆する。

いくつか集落を過ぎて、江津から1時間の距離の川本は町だった。
ビールも買えて商店も多く、高台には学校が聳え、団地もある。
秘境探訪の末に辿り着いたオアシスみたいな町だった。
四国高知での中村という街の出現の仕方を思わせる。

電器屋からは高校野球のラジオ放送が流れてくる。
どうやら雨で試合の開始が遅れているらしい。

川本を離れると列車はまた徐行を繰り返す。

関連記事

「車旅日記」2000年春 4日目(鳴子温泉‐米沢‐猪苗代‐郡山)鳴子サンハイツ、道の駅むらやま、金渓ワイン、日布峠、こたかもりドライブイン、郡山スターホテル 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月6日 2000・5・6 7:19 鳴子サンハイツ 1011㎞ 低調な朝だ。

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏 初日(東京-富山)-大垣、田村、近江塩津、敦賀、越前花堂、美山、九頭竜湖、越前大野、福井、美川、金沢、津幡(東海道本線、北陸本線、越美北線) 【青春18きっぷで、福井・石川途中下車旅】

鉄旅日記2012年8月25日・・・大垣駅、田村駅、近江塩津駅、敦賀駅、越前花堂駅、美山駅、九頭竜湖駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太多線/中央本線/東海道本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 2日目(新山口-大分)その2-香春、田川伊田、田川後藤寺、日田、豊後森、豊後中村、野矢、由布院、大分(日田彦山線/久大本線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月19日・・・香春駅、田川伊田駅、田川後藤寺駅、日田駅、豊後森駅、豊後中村駅、野

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏 2日目(和歌山-松阪)その2-串本、新宮、尾鷲、紀伊長島、三瀬谷、多気、松阪(紀勢本線)【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】

鉄旅日記2008年7月20日・・・串本駅、新宮駅、尾鷲駅、紀伊長島駅、三瀬谷駅、多気駅、松阪駅(紀勢

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋 初日(東京-名古屋)-根府川、島田、豊橋、岡崎、名古屋(東海道本線) 【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】

鉄旅日記2005年11月5日・・・根府川駅、島田駅、豊橋駅、岡崎駅、名古屋駅(東海道本線) 200

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、北海道途中下車旅】3日目(室蘭-岩見沢)-室蘭、苫小牧、鵡川、静内、様似、追分、夕張、新夕張、清水沢(室蘭支線、室蘭本線、日高本線、石勝線、夕張支線)

鉄旅日記2012年8月13日・・・室蘭駅、苫小牧駅、鵡川駅、静内駅、様似駅、追分駅、夕張駅、新夕張駅

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋 最終日(小諸-東京)その2-高崎、新前橋、前橋、中央前橋、小山、水戸、東京葛飾金町(信越本線/両毛線/水戸線/常磐線) 【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】

鉄旅日記2005年11月7日・・・高崎駅、新前橋駅、前橋駅、中央前橋駅、小山駅、水戸駅(信越本線/両

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 初日(東京-新山口)その1-金町、北千住、東京、岡山、笠岡、尾道、糸崎、入野(常磐線/山手線/東海道・山陽新幹線/山陽本線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月18日・・・金町駅、北千住駅、東京駅、岡山駅、笠岡駅、尾道駅、糸崎駅、入野駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その3‐諫早、松原、千綿(大村線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月15日・・・諫早駅、松原駅、千綿駅(大村線) 11:37 

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

→もっと見る

    PAGE TOP ↑