*

「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その3-神島にて・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年12月23日・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい

14:32 神島上陸~



14:45 八代神社石段下
うろこ雲の下で、神島で暖かな日差しを浴びている。

島に着いてからくせの強い関西弁を聞き、見かける大人はお年寄りばかりで子供は元気だ。

三島由紀夫「潮騒」の舞台で、映画化もされている。
オレも若かりし頃に小説を手にしている。

あの小説に接した誰もが口にする忘れがたい場面がある。
さっき定期船の中で触れた「その火を飛び越してこい」。

伊良湖を望んで、八代神社の石段下のベンチに腰かけている。


オレとこの島は縁が深いと伊勢の鑑定師が告げた。
信じよう。
何か疼くものを感じている。

15:08 神島灯台
八代神社の石段を上るのは骨が折れた。
神に会いにいく行為には困難が伴う。

起伏の激しい道を歩き500メートル。

恋人の聖地を謳う場所から美しい難所、伊良湖水道を望む。
伊良湖は鳴門、音戸と並ぶ日本三関門とのこと。


この灯台も小説によく登場する。
ここに灯台長の住まいがあり、ひとり娘の千代子は主人公の新治に想いを寄せている。

東京から一時帰郷した千代子は、新治と初江の逢瀬を目撃してしまい、悪意なく噂の元になり、二人を窮地に陥れてしまう。

「わたし、そんなに醜い?」と新治に尋ねる。
質問の背景を知らない新治はからからと答える。
「なあに、美しいがな」

千代子は救われ、心に幸福が灯った。

15:24 監的哨
旧陸軍の遺構は小説のクライマックスに現れる。
件の新治と初江による「その火を飛び越してこい」の舞台。

灯台もそうだが、人気のない寂しい高台の丘にある。
空気が澄んだ日には富士山も見えるという。

たどってきた道を振り返れば激しく切り立った崖。
あの山の中を歩いてきたのか。



恋人も歩く険しい道。
神にしてもそうだが、何かに行きつくには避けられない定めのように道がある。

ただ、どんなに険しくともそこに通じる道はある。
そんなことを思う道だった。

島に上陸してから1時間が経つ。

15:37 ニワの浜
カルスト地形が見られる狭い浜辺に出た。

今年も様々な場所で海を見てきたが、打ち寄せる波を間近にしたことはなかった。

強烈な磯の香りと生命力を感じている。




導かれるようにこの島にやってきて、幸福を思い、感じている。

そして、まだ見ぬ彼女に会いたいと心から願う。

20:48 神島山海荘あじさい
16:30には宿に着いていた。
夕食にはほんの少しだけ奮発した刺し盛が置かれた。

部屋からは港が見下ろせる。
夕景へと変わりゆく様を飽きずに眺めていた。

島全体が灯明山という山地で、周囲は約4km。
集落は港を中心に狭いエリアに集まっている。

港に接する道の他に平地はなく、島民は日々狭い路地を行き来している。

車は滅多に走らず、また車が活躍できる場所もなく、島で暮らすわずかな子供たちは、港近くでもはや家族と言ってもいい島民に見守られながら遊んでいる。

港に船が着けば、誰か懐かしい顔はないかと走りよる島民。
とても港湾関係者とは思えないお年を召した奥さんまでが船の着岸に手を貸していた。

過疎化が進む島で子供たちは中学校まであの起伏に富んだ道を通い、高校からは島外に通わなければならない。


それはよほどに大きな島でない限り避けられない事情であるだろう。
島の子供たちの足腰は頑健だと、この宿のおかみさんが教えてくれた。

今夜は今年最後の満月。
雲が多く出ていた空に望みはかけなかったが、「月が出てますよ」と声をかけられ階段脇の窓辺に行けば、確かに雲間から覗いている。

しばらく眺めていたら、奇跡を見るかのように満月は縦横に動き、雲間を脱してからはまるで歌舞伎役者が大見得を切るように一層の輝きを放った。

月が動く、、、少なくともオレの目にはそう見えた。
そして月と離れた雲は龍となり、さらに奇跡は増した。

急いでスマホをとりに部屋に戻り、そして彼女に送った。
今夜の奇跡はおそらく神島にいたオレにしか認識されず、この奇跡が彼女にも伝わればと思う。

これからのオレの人生が輝かしいものになることを疑わない。

【Facebookへの投稿より】
伊勢から鳥羽へ出て、神島に渡りました。

三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台になりました伊勢湾に浮かぶ周囲4kmの小島でございます。

全島山地の島内を隈なく歩いて約2時間。
地の魚はやはり美味しゅうございました。

パワースポットとして、伊良湖水道を往く海人の信仰を集め、古くから知られたこの島で、今年一年を想い、ぐっすりと眠ったのでございます。

関連記事

「鉄旅日記」2014年春 最終日(紀伊勝浦-東京)その2-神志山、賀田、九鬼、相賀、紀伊長島、多気、名古屋、豊田町、六合、由比(紀勢本線/東海道本線) 【青春18きっぷで、紀伊半島へ】

鉄旅日記2014年3月9日その2・・・神志山駅、賀田駅、九鬼駅、相賀駅、紀伊長島駅、多気駅、名古屋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その1 ‐金町、桜木町、関内、新杉田(常磐線/京浜東北・根岸線) 【金沢シーサイドライン、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・金町駅、桜木町駅、関内駅、新杉田駅(常磐線/京浜東北・根岸線)

記事を読む

「鉄旅日記」2022年新春 最終日(三沢-東京)その3 ‐鹿島、原ノ町、いわき、常陸多賀、勝田(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月10日・・・鹿島駅、原ノ町駅、いわき駅、常陸多賀駅、勝田駅(常磐線)

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その2-赤井川、姫川、東森、渡島砂原、森、野田生、山越、八雲、長万部、ニセコ、小樽(函館本線/渡島砂原支線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月11日・・・赤井川駅、姫川駅、東森駅、渡島砂原駅、森駅、野田生駅、山越駅、八雲

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 初日(東京-防府)その5‐北河内、川西、西岩国、櫛ケ浜、防府(錦川鉄道/岩徳線/山陽本線)/錦帯橋 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月13日・・・北河内駅、川西駅、西岩国駅、櫛ケ浜駅、防府駅(錦川鉄道/岩徳線/

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その3 ‐洋光台、港南台、本郷台、大船、湘南江の島、片瀬江ノ島、江ノ島(根岸線/湘南モノレール) 【金沢シーサイドライン、横須賀線、御殿場線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・洋光台駅、港南台駅、本郷台駅、大船駅、湘南江の島駅、片瀬江ノ島駅、

記事を読む

「車旅日記」2005年冬 2日目(都城-人吉)走行距離284㎞ その2-伊集院駅、串木野駅、川内駅、薩摩高城駅、大隅横川駅、吉松駅、人吉駅前ホテル 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】

車旅日記2005年2月12日・・・伊集院駅、串木野駅、川内駅、薩摩高城駅、大隅横川駅、吉松駅、人吉駅

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 2日目(下北-石巻)その1-大湊、野辺地、浅虫温泉、小湊、東青森、上北町、小川原湖、下田、八戸(大湊線、青い森鉄道) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】2日目(下北-石巻)

鉄旅日記2016年3月20日その1・・・大湊駅、野辺地駅、浅虫温泉駅、小湊駅、東青森駅、上北町駅、小

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 2020・4・4 5:29 松戸

記事を読む

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(IGRいわて銀河鉄道/花輪線)

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑