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「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】4日目(大曲-阿仁合-弘前-三厩-青森)その1-大曲グランドホテル、角館駅、羽後中里駅、阿仁合駅、鷹ノ巣駅、大館駅、碇ヶ関駅、大鰐温泉駅、黒石駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2006年

車旅日記2006年5月5日
2006・5・5 7:00 大曲グランドホテル610号室
山々は見えるが平らな街だ。
家並が連なり、自動車ディーラーの看板が散見できる。

今日から東京に帰る人々が多いらしいが、オレはさらに遠くの街を目指す。
それにしても美味いみそ汁だった。

ここは花火の街。
15,000発が打ち上がる今年の夏は8月20日だそうだ。

近くの三本杉神社に寄る。
三本杉と亡霊塔、とある。

江戸時代の参勤交代の際、大曲を通る津軽藩一行が神宮寺の渡し場で、増水のため、人夫にかかる費用の増額を渡し守に要求されたとのこと。

そのことを江戸城内で津軽候から聞かされた秋田藩主が、満座で恥をかかされたと憤り、船頭3人を獄門にかけて帰国する津軽候にあてつけて見せたところ、以後津軽候渡河の際に船頭の亡霊が現れて祟りをなしたという。

村人は亡霊塔を建て、三本の杉を植えて霊を慰めた。
事実なのだろう。

8:31 角館駅(857㎞)
角館街道を北へ。

車の流れが止まると6年前の渋滞を思い出す。
あれはこの町で起きた。
桜を見に人々が繰り出し、滞ったんだ。

堤の桜は見事だった。
山には靄がかかり、小さな雨が降っている。

秋田新幹線が止まるこの駅では、そこそこの賑わいを朝早くから見せている。
田沢湖線に内陸線に秋田新幹線。
交通の要衝地に、角館を観光地ならしめた武家屋敷がある。

駅舎も武家屋敷を模している。

2011年8月16日撮影

9:06 羽後中里駅(882㎞)
かつて僚友と待ち合わせた八津駅。
田沢湖に一番近い駅として約束の地となった。

駅には変化はなかったが、周辺が随分と変わっていた。
あの頃は何もなかったんだ。
「かたくり群生の郷」として、角館でも宣伝していた。

秋田縦貫鉄道は鄙びた村を通っていく。
男が何かを火にくべて、その白煙が靄のように曇り空に同化する。

少し雨が激しくなってきた。
こんな日に聴く矢沢永吉は心に響く。

桧木内川は原始の姿で、流れは激しく、尽きることなく湧いてくるかのような印象を与える。

村から村へ。
鮮魚を乗せた車がここで仕事を終えた姿を見た。

深い山の中にいる。

10:08 阿仁合駅(923㎞)
雪の残るマタギ街道105号国道を北へ。
阿仁合川に沿う。
途中に笑内(おかしない)というユーモラスな地名を見る。

アイヌの香りが濃厚な町に着いて、角館を出て以来、秋田内陸縦貫線の沿線に初めて駅舎を見る。
ロッジ風の古い駅舎。
ここがこの鉄道の中心地。
内陸線がつながる以前、ここが終着駅で、鷹ノ巣阿仁合間は阿仁合線との名称だった。

マタギの道は峠を越え、強風に苛まれ、雪原を残す。
どうやら今日は雨。
売店のオバチャンが、「せっかく桜が咲き始めたばかりなのに」と笑顔でこぼす。
「駅そば」もあり、温まりたかったが、どうも腹の調子が優れず断念した。

あたりには何やらたくさん建っている。
ここにも昔は銀山があったそうだ。
熊打ちが今もいるのは、このあたりから分け入ったところなのだろう。

街からは随分と離れた。
内陸の深い山並は人々の勝手な通行を許さない。

東北にはこんな地域がまだいくつかある。

2020年1月13日撮影

11:00 鷹ノ巣駅(956㎞)
雨の阿仁街道を北へ。

森吉、米内沢、そして終点鷹ノ巣。
大曲以来の奥羽本線との再会。

国鉄特有の雪国仕様の駅舎と並び、内陸線の山小屋風の駅舎。

2020年1月13日撮影

内陸線の駅名表示は鷹巣で、「ノ」が抜けている。

2020年1月13日撮影

内陸線が走る様は阿仁合駅でちらっと見かけただけで、マタギ街道は独自の歴史を抱いて、ひたすらに雨に打たれていた。

町の入口でテレビ塔が見えて、駅周辺に商業施設がかたまり、町全体がずいぶんと明るく見える。
こじんまりとしているが、なかなかいい町だ。

秋田出身の人間に、オレのこれまでの道程を話したら驚いてくれるだろう。

11:48 大館駅(977㎞)
羽州街道を東へ。

駅では秋田放送が天気予報を流している。
もう昼だな。

いつもというわけじゃないが、秋田青森ではよく雨に降られる。
今日もそうか。

少しばかり道が滞った。
奥羽本線の線路と米代川を眺めながら茫々としていた。
景色も茫々としていたよ。

かつての同僚がこの街にお嫁に行ったことを覚えている。
うまくいかなくなって東京に戻ったとも聞いた。
この街じゃ寂しかったのかもしれない。

2階建ての立派な駅舎が建ち、雪国の香りが濃厚な駅だが、「駅そば」はなかった。

2012年8月12日撮影

駅前のテレビ塔を目に焼きつけて、もう街を離れる。

12:30 碇ヶ関駅(1,003㎞)
羽州街道を北へ。

陣場を抜け、矢立峠で青森県に入った。
街道沿いに廃墟が並び、鄙びた温泉旅館がひっそりとある。
矢立の赤湯だそうだ。

そして関所の町へ。
温泉もある。

駅舎はずいぶん長いこと生きながらえていると思われる小振りな平屋造り。
ここにも緑色の屋根が乗せてある。
きれいな写真がいくつも飾ってある。

便所をお借りするために女性事務員とちょっとした会話。
折あしく物を頬張るところを話しかけて失礼をおかけした。

黒々と見える奥羽本線の線路に沿って幽谷を往く。

雨は上がらないが、空が明るくなってきた。

12:53 大鰐温泉駅(1,012㎞)
ここから終着駅巡りが始まる。

雨が上がりそうで、不意に暖かくなった。
車で来た者たちはみんな道の駅に行く。
当り前か。
碇ヶ関駅の横にも道の駅があり、鉄道駅がやけに小さく見えた。

JR駅は雪国仕様の重厚な造り。
待ち人はテレビを見ている。

2019年11月3日撮影

弘南鉄道駅はローカルバス会社の事務所のような造りをしている。
ホームを挟んで反対側の入口で、駅員がオレを客かどうか見極めるかのような強い視線を送ってきた。

2019年11月3日撮影

温泉街だし、この町は津軽ではそこそこの格を持っているのだろう。
阿闍羅山(あじゃらやま)は山岳仏教の山で、かつては行者の往来があったという。

子供たちの声が聞こえる。
とても楽しそうだ。

温泉街は古くて風情がある。
町中を流れる平川に鯉幟が数珠つなぎのようにかかっている。
賑やかそうだが、どこか寂しさもまとった津軽の奥座敷だった。

もうじき雨が上がる。

13:36 黒石駅(1,030㎞)
県道を東へ。

人々の声が聞こえる。
津軽の男たちの口は重かった。

黒ずんだ街の商店街の外れ。
黒い駅がスーパーに隠れるように存在していた。

2019年11月3日撮影

駅前では津軽娘らしい顔をした少女が誰かを待っている。
それがオレであってもよかった。
冗談だ。

弘南鉄道の終着駅。
何があるのかと思いながら街に着いたが、黒石は城下町。

これから弘前へ。
いよいよ弘前へ。

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