*

「鉄旅日記」2000年晩秋【京都の女性に恋をしていた頃がございました。その京都時代のはじまりでございます。】-京都タワーホテル

公開日: : 最終更新日:2024/04/13 旅話, 旅話 2000年

鉄旅日記2000年11月23日~24日
2000・11・23 0:03 京都タワーホテル924号室
昨日まで。
いや今日ここ京都に来るまでにあった不安は解消し、今は穏やかな気持ちというより、喜びの中で在阪ラジオ局が流す楽曲を聴きながら、この時間にしては酒じゃなく、お茶を飲んでいる。

初めてに等しい京都は、限りなくオレに対して好意的だった。
詳しくは明日金町に帰ってから落ち着いて記すだろう。

たぶん明日になっても今日のことは輝きを失わず、ましてや夢であったなどということもなく、より価値あるものになっているだろう。

頑張っていたオレにとって最高のご褒美。
そう思うようにしている。

最近は拾ってくれる神様によく出会っていた。
彼女もその仲間であってくれるならうれしい。

でも今夜の彼女は紛れもなく女神だったし、天使だった。

時刻不明 東京葛飾金町
不安だった大阪から京都への出張がこのような形をとるとは。

帰りの新幹線の中。
豊橋から東京までの景色一部始終を眺めながら、できることなら定期的にこの景色を眺めることになれればいいと思っていた。

今日は京都の一部分に深く分け入った。

オレをあれだけ疲労させる街も珍しい。
いくつもの名所を渡り歩き、やがて足は棒になった。

鴨川に戻ると、昨夜の記憶が生まれた場所との距離を想った。
八坂の石段下に近づく時は胸が高鳴った。
すれ違う京女たちもオレに好意的な視線を向けてくれているように感じていた。

疲労やら喜びやら舌鼓をうったりしながら、高瀬川を千鳥足で歩く白鳥を見たりしながら、地下鉄で多くの京都人と交わりながら、京都という街がオレの中で特別な居場所を見つけていくのを感じていた。

同時にこの人波じゃ、少なくとも彼女を見つけることはできないことを理解した。

やがて訪れる日を期待しながら土産を買い込み、京都駅新幹線ホームの待合室で帰りの便を待った。

得意先のお連れはうたた寝をしている。
ムリもない。
オレがあれほど参ったわけだから。

初老と言ってもいい彼の歩速の遅さには苛立ちもあったが、感謝の気持ちを忘れてはいけないと意志的でいることを課した。
彼の思い付きがなければ今回の出張はなく、彼が以前接待されたという店にオレを連れていかなければ、今こんな気分でいない。

祇園にあるその店で、オレは運命的な出会いをした。
すべてが偶然とは思えない中で、何が必然だったのかを考えた。
そして彼女を正確に思い出そうとしていた。

髪を短くまとめて、きれいな顔立ちで、きれいな京都弁を話す23歳の女性。
声を聞くことができたらすべてを思い出せるだろう。

仕事はこのままいけばいい。
でも愛はやり直し。

不要に思うものがあるなら、この際捨ててしまおう。

彼女に電話するまで。
思い出したくてもすぐには思い出せない大切な思いは、そのまま大切に封印しておこう。

彼女に電話するまで。
昨夜彼女が話してくれたことは忘れたくても忘れられない。
少なくとも彼女に電話するまでは。

さっきまでこの部屋を這い回っていた虫が、気づくと虫の息になっていた。
彼を手に乗せ、本来彼が住む世界に放ってあげた。

手は洗っていない。
同じ世界に生きた彼に対する敬意がそうさせた。

彼女がオレに示してくれた優しさが作用したのかもしれない。
もしかしたら、明日になればオレはもっと優しくなれるのかもしれないと思ったりもした。

さっきからここに座り続けているが、一向に昨日の細部を記そうとしないのは、今夜で記し尽くしてしまいたくないからなのだろう。

今夜はこれでいい。
でも本当はそうじゃない。

さっき言った。
愛はやり直し。

これまでの人生で最高のクリスマスがやってくるかもしれない。
例えば、すべてがうまくいくのなら。

関連記事

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】4日目(佐賀-松浦)その2-大村、竹松、早岐、佐世保、佐世保中央、中佐世保、左石、佐々、たびら平戸口、松浦(大村線/佐世保線/松浦鉄道)

鉄旅日記2009年9月21日・・・大村駅、竹松駅、早岐駅、佐世保駅、佐世保中央駅、中佐世保駅、左石駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】最終日(紀伊田辺-東京)その2-吉野口、高田、畝傍、桜井、柳本(和歌山線/桜井線)

鉄旅日記2019年3月3日・・・吉野口駅、高田駅、畝傍駅、桜井駅、柳本駅(和歌山線/桜井線) 10:

記事を読む

「鉄旅日記」2006年新春【雪の降った翌日。近くのローカル線に乗りに出かけました。】-馬橋、流山、幸谷、新松戸、佐貫、竜ケ崎(常磐線/総武流山電鉄/関東鉄道竜ヶ崎線)

鉄旅日記2006年1月22日・・・馬橋駅、流山駅、幸谷駅、新松戸駅、佐貫駅、竜ケ崎駅(常磐線/総武流

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、名古屋往復】その1-新宿、塩崎、韮崎、日野春、富士見、青柳、奈良井、木曽福島、須原、中津川(中央本線)

鉄旅日記2012年3月25日その1・・・新宿駅、塩崎駅、韮崎駅、日野春駅、富士見駅、青柳駅、奈良井駅

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】2日目(米子-福山)-松江、宍道、出雲横田、出雲坂根、備後落合、塩町、府中、福山城、福山(山陰本線/木次線/芸備線/福塩線)

鉄旅日記2007年5月4日・・・松江駅、宍道駅、出雲横田駅、出雲坂根駅、備後落合駅、塩町駅、府中駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、甲信越途中下車旅】最終日(長野-東京)その2-小諸、岩村田、佐久平、中込、臼田、小海、野辺山、清里、大月(小海線、中央本線)

鉄旅日記2012年12月9日その2・・・小諸駅、岩村田駅、佐久平駅、中込駅、臼田駅、小海駅、野辺山駅

記事を読む

「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】初日(東京-岳南江尾-豊橋-三河田原-岡崎-尾張瀬戸-勝川-枇杷島-桑名)その4-新瀬戸、瀬戸市、高蔵寺、新守山、勝川、枇杷島、蟹江、桑名(愛知環状鉄道/中央本線/東海交通事業常北線/東海道本線/関西本線)

鉄旅日記2018年9月15日・・・新瀬戸駅、瀬戸市駅、高蔵寺駅、新守山駅、勝川駅、枇杷島駅、蟹江駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その2-新潟、白山、内野、巻、吉田、燕(越後線/弥彦線)

鉄旅日記2018年3月4日・・・新潟駅、白山駅、内野駅、巻駅、吉田駅、燕駅(越後線/弥彦線) 11:

記事を読む

「鉄旅日記」2005年初冬【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】その1-松戸、我孫子、成田、銚子(常磐線/成田線/銚子電鉄)

鉄旅日記2005年12月10日・・・松戸駅、我孫子駅、成田駅、銚子駅(常磐線/成田線/銚子電鉄) 小

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】最終日(魚津-東京)その2-有間川、谷浜、名立、直江津、犀潟、二本木、今井、川中島、姨捨、信濃境、すずらんの里、富士見(北陸本線/信越本線/篠ノ井線/中央本線)

鉄旅日記2014年3月23日その2・・・有間川駅、谷浜駅、名立駅、直江津駅、犀潟駅、二本木駅、今井駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】最終日(三次-東京)その1‐三次、上下、府中(福塩線)

鉄旅日記2020年7月26日・・・三次駅、上下駅、府中駅(福塩線)

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その5‐備後落合、備後庄原、三次(芸備線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・備後落合駅、備後庄原駅、三次駅(芸

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その4‐宍道、加茂中、出雲横田、出雲坂根(木次線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・宍道駅、加茂中駅、出雲横田駅、出雲

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その3‐黒松、仁万、出雲市、荘原(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・黒松駅、仁万駅、出雲市駅、荘原駅(

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑