*

「鉄旅日記」2000年晩秋【京都の女性に恋をしていた頃がございました。その京都時代のはじまりでございます。】-京都タワーホテル

公開日: : 最終更新日:2025/05/07 旅話, 旅話 2000年

鉄旅日記2000年11月23日~24日

2000・11・23 0:03 京都タワーホテル924号室
昨日まで。
いや今日ここ京都に来るまでにあった不安は解消し、今は穏やかな気持ちというより、喜びの中で在阪ラジオ局が流す楽曲を聴きながら、この時間にしては酒じゃなく、お茶を飲んでいる。

初めてに等しい京都は、限りなくオレに対して好意的だった。
詳しくは明日金町に帰ってから落ち着いて記すだろう。

たぶん明日になっても今日のことは輝きを失わず、ましてや夢であったなどということもなく、より価値あるものになっているだろう。

頑張っていたオレにとって最高のご褒美。
そう思うようにしている。

最近は拾ってくれる神様によく出会っていた。
彼女もその仲間であってくれるならうれしい。

でも今夜の彼女は紛れもなく女神だったし、天使だった。

時刻不明 東京葛飾金町
不安だった大阪から京都への出張がこのような形をとるとは。

帰りの新幹線の中。
豊橋から東京までの景色一部始終を眺めながら、できることなら定期的にこの景色を眺めることになれればいいと思っていた。

今日は京都の一部分に深く分け入った。

オレをあれだけ疲労させる街も珍しい。
いくつもの名所を渡り歩き、やがて足は棒になった。

鴨川に戻ると、昨夜の記憶が生まれた場所との距離を想った。
八坂の石段下に近づく時は胸が高鳴った。
すれ違う京女たちもオレに好意的な視線を向けてくれているように感じていた。

疲労やら喜びやら舌鼓をうったりしながら、高瀬川を千鳥足で歩く白鳥を見たりしながら、地下鉄で多くの京都人と交わりながら、京都という街がオレの中で特別な居場所を見つけていくのを感じていた。

同時にこの人波じゃ、少なくとも彼女を見つけることはできないことを理解した。

やがて訪れる日を期待しながら土産を買い込み、京都駅新幹線ホームの待合室で帰りの便を待った。

得意先のお連れはうたた寝をしている。
ムリもない。
オレがあれほど参ったわけだから。

初老と言ってもいい彼の歩速の遅さには苛立ちもあったが、感謝の気持ちを忘れてはいけないと意志的でいることを課した。
彼の思い付きがなければ今回の出張はなく、彼が以前接待されたという店にオレを連れていかなければ、今こんな気分でいない。

祇園にあるその店で、オレは運命的な出会いをした。
すべてが偶然とは思えない中で、何が必然だったのかを考えた。
そして彼女を正確に思い出そうとしていた。

髪を短くまとめて、きれいな顔立ちで、きれいな京都弁を話す23歳の女性。
声を聞くことができたらすべてを思い出せるだろう。

仕事はこのままいけばいい。
でも愛はやり直し。

不要に思うものがあるなら、この際捨ててしまおう。

彼女に電話するまで。
思い出したくてもすぐには思い出せない大切な思いは、そのまま大切に封印しておこう。

彼女に電話するまで。
昨夜彼女が話してくれたことは忘れたくても忘れられない。
少なくとも彼女に電話するまでは。

さっきまでこの部屋を這い回っていた虫が、気づくと虫の息になっていた。
彼を手に乗せ、本来彼が住む世界に放ってあげた。

手は洗っていない。
同じ世界に生きた彼に対する敬意がそうさせた。

彼女がオレに示してくれた優しさが作用したのかもしれない。
もしかしたら、明日になればオレはもっと優しくなれるのかもしれないと思ったりもした。

さっきからここに座り続けているが、一向に昨日の細部を記そうとしないのは、今夜で記し尽くしてしまいたくないからなのだろう。

今夜はこれでいい。
でも本当はそうじゃない。

さっき言った。
愛はやり直し。

これまでの人生で最高のクリスマスがやってくるかもしれない。
例えば、すべてがうまくいくのなら。

関連記事

「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その1-一ノ関、陸中門崎、千厩、猊鼻渓、気仙沼(大船渡線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月6日・・・一ノ関駅、陸中門崎駅、千厩駅、猊鼻渓駅、気仙沼駅(大船渡線) 20

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 最終日(新庄-東京)その1-新庄、最上、鳴子温泉、岩出山、北浦、小牛田、鹿又、石巻(陸羽東線/石巻線) 【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】

鉄旅日記2009年10月11日・・・新庄駅、最上駅、鳴子温泉駅、岩出山駅、北浦駅、小牛田駅、鹿又駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋 2日目(名古屋-中軽井沢)-名古屋、高蔵寺、多治見、中津川、木曽平沢、塩尻、小淵沢、中込、小諸、中軽井沢(中央本線/小海線/しなの鉄道)【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】

鉄旅日記2005年11月6日・・・名古屋駅、高蔵寺駅、多治見駅、中津川駅、木曽平沢駅、塩尻駅、小淵沢

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【浜名湖周辺で遊ぶ一日】その1-掛川、掛川市役所前、西掛川、天竜二俣、西気賀、寸座、浜名湖佐久米、三ケ日、新所原(天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2015年3月28日その1・・・掛川駅、掛川市役所前駅、西掛川駅、天竜二俣駅、西気賀駅、寸座

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その5‐府中鵜坂、西富山、速星(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月21日・・・府中鵜坂駅、西富山駅、速星駅(高山本線) 17:53 婦中鵜坂(

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】最終日(松本-東京)その3 ‐南小谷、白馬大池、信濃森上、白馬(大糸線)

鉄旅日記2021年4月25日・・・南小谷駅、白馬大池駅、信濃森上駅、白馬駅(大糸線) 11:

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】最終日(観音寺-東京)-観音寺、宇多津、岡山、瀬戸、高槻、山崎、名古屋、豊橋、掛川、熱海、金町(予讃本線/瀬戸大橋線/山陽本線/東海道本線)

鉄旅日記2009年5月6日・・・観音寺駅、宇多津駅、岡山駅、瀬戸駅、高槻駅、山崎駅、名古屋駅、豊橋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その3 ‐千徳、宮古、盛岡、古川(山田線/東北新幹線)/蛇の目寿司 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・千徳駅、宮古駅、盛岡駅、古川駅(山田線/東北新幹線)/蛇の目寿司

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その1 ‐上田、滋野、長野(しなの鉄道/信越本線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月11日・・・上田駅、滋野駅、長野駅(しなの鉄道/信越本線) 2021・

記事を読む

「鉄旅日記」2022年如月 初日(東京-常陸大子)その2 ‐十二橋、潮来(鹿島線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月5日・・・十二橋駅、潮来駅(鹿島線) 8:18  十二橋(じ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 ツレと訪ねた下部温泉~富士宮~田子の浦旅でございます。初日(東京-下部温泉) ‐市川大門、下部温泉(身延線)【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年5月28日・・・市川大門駅、下部温泉駅(身延線)

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その3 ‐駒形、前橋大橋、高崎、本庄(両毛線/高崎線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・駒形駅、前橋大島駅、高崎駅、本庄駅(

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その2 ‐国定(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・国定駅(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その1 ‐磐梯熱海、新白河、小山(磐越西線/東北本線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・磐梯熱海駅、新白河駅、小山駅(磐越西

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

→もっと見る

    PAGE TOP ↑