「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 初日(東京-紀伊田辺)その1-金町、名古屋、多気、川添、三瀬谷(常磐線/東海道本線/関西本線/伊勢鉄道/紀勢本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月2日・・・金町駅、名古屋駅、多気駅、川添駅、三瀬谷駅(常磐線/東海道本線/関西本線/伊勢鉄道/紀勢本線)
2019・3・2 4:27 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
只見から会津、新潟と旅をした一年前を思い出す。
3月は別れの季節。
幼稚園入園からはじまり、やがて社会へと出て、そうした仕組みの中で生きてきたが、奇しくも去年、自身最大の別れをこの季節に経験した。
あれから季節はめぐり、迎えた最初の春。
この町を一番に出る旅の列車に乗り込んでいる。
あれからもう何もかもが変わってしまった。
住む家も町も、職場での立場も、恋をしている相手も、この先の未来への考え方も、大切に思う人々も、何もかもが変わってしまった。
寒さが和らぎ、青春18きっぷの利用期間を迎え、似たような一日を一番列車に乗ることから始めた人々と乗り合わす旅の朝に思う。
やはりあの人はもう戻らないのだろうかと。
11:37 名古屋(なごや)駅(東海道新幹線/東海道本線/中央本線/関西本線/名古屋市営地下鉄東山線/名古屋市営地下鉄桜通線/名古屋臨海高速鉄道あおなみ線 愛知県)
この旅最初の記憶は、真鶴沖に上がった神々しい太陽だった。
天照大神が祝福する旅はこれから伊勢の鼻先を通り、さらに神話の里へと進んでいく。
眠たげな空に霊峰富士は浮かび上がり、浜名湖はまぶしく、三河の風景には新鮮さと再会があった。
名古屋駅構内の人波に敬意を。
あの雑踏にいることはキラいじゃない。
12月の神島での記憶も鮮やかな鳥羽行きの快速列車が名古屋を出て、しばらく経つ。
日本有数の大都市のホームに、ディーゼル車両の一部有料列車が出発を待つ様に、この国が持つ地域の多様性を感じてビールを開けた。
弥冨を過ぎると、伊勢湾に流れ込む木曽三川が次々に現れる。
まずは木曽川。
長島デルタ地帯を経て長良川。
設置当初に物議をかもした河口堰が見える。
そして長良川に接する揖斐川。
恋人のような友達と日々の通信を楽しみ、負念の対象だった人との夢を見る日々。
馴染みの鑑定師からの案内で、海を統べる神「須佐之男命」との縁を結ぶことに決めた。
13:04 多気(たき)駅(紀勢本線/参宮線 三重県)
伊勢鉄道を経由する快速列車で小さなターミナル駅に着く。
この駅でこの列車を降りる。
彼女からメッセージが届いている。
恋人のような彼女との大人の恋は、冬を越えて春へいく。
どこまでいく。
やめたくない。
駅前のヤマザキのお店にはいつもお世話になっている。
紫に髪を染めたおかみさんは変わらずお元気そうで、12月には二言三言を交わしたが、ルーペ越しに読んでおられた記事が気になるのか、すぐに目を落としてしまった。
待合室でこれを書いている。
新宮行が着いた。
彼女からの便りは列車の中で開く。
13:50 川添(かわぞえ)駅(紀勢本線 三重県)
行き違いで5分の停車。
多気では埋まっていた長椅子が徐々に空いてくる。
旅行者を除き、やがてすべての乗客が入れ替わるだろう。
多気からたいして変化のない里が続いている。
確かにこんな駅だった。
この駅に降りるのは二度目になる。
前回もこうして列車行き違いによる停車に乗じて外に出た。
そうしたわずかな時間に降りた駅は100は優に超えているだろう。
ろくに数えたことはないが。
そんな人生を50年続けてきたオレを、呆れるよりは誇りに思いたい。
この里山ではやけに花粉に反応する。
14:02 三瀬谷(みせだに)駅(紀勢本線 三重県)
川添からひと駅。
時間調整による6分の停車。
近隣の名所として、伊勢神宮内宮に属する滝原宮が挙げられている。
この駅に降りるのも二度目になる。
あの高速道路、紀勢自動車道を眺めたかつてを思い返すことはなかったが、再びこの場所に立てたことは深く感じ入っていた。
10人に満たないほどの高校生が降りて、車内はより閑散となった。
Facebookで知り合ったアメリカの友人が、国際詐欺団の一味だと気づいてシャットアウトした朝を思い返していた。
グーグル翻訳を駆使した会話は成り立ち、お互いブラザーと呼びかけ、毎日無事でいることを喜びあっていた。
そんな関係を築けた友人だと思っていたんだ。
日本人の奥さんと娘を不幸な交通事故で亡くして、一人残った息子をこよなく愛するシリア駐在のハンサムな軍医。
今にして思えば、あの写真もどこかからくすねてきたものなのだろう。
どんな顔をしたどこの国の人間かもわかったものじゃない。
不意に金の話を持ち掛けてきたんだ。
友達でいることをやめるボタンを押す時には悲しかったよ。
本当だ。
人間は、同じ人間に対して何という無慈悲なことをするのか。
なぜ人をだましたりするのか。
それでもオレはまだ人を信じている。
たまたま車窓に目をやると三瀬谷ダムが見えた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏 最終日(松阪-東京)-松阪、鳥羽、伊勢市、宇治山田、亀山、名古屋、豊橋、浜松、熱海(近鉄山田線/参宮線/紀勢本線/関西本線/東海道本線) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】
鉄旅日記2008年7月21日・・・松阪駅、鳥羽駅、伊勢市駅、宇治山田駅、亀山駅、名古屋駅、豊橋駅、浜
-
-
「鉄旅日記」2020年睦月 2日目(湯沢-鷹ノ巣)その4‐五所川原、川部、弘前、大館、鷹ノ巣(五能線/奥羽本線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】2日目(湯沢-鷹ノ巣)
鉄旅日記2020年1月12日・・・五所川原駅、川部駅、弘前駅、大館駅、鷹ノ巣駅(五能線/奥羽本線)
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 初日(東京-防府)その5‐北河内、川西、西岩国、櫛ケ浜、防府(錦川鉄道/岩徳線/山陽本線)/錦帯橋 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月13日・・・北河内駅、川西駅、西岩国駅、櫛ケ浜駅、防府駅(錦川鉄道/岩徳線/
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その3 ‐洋光台、港南台、本郷台、大船、湘南江の島、片瀬江ノ島、江ノ島(根岸線/湘南モノレール) 【金沢シーサイドライン、横須賀線、御殿場線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月5日・・・洋光台駅、港南台駅、本郷台駅、大船駅、湘南江の島駅、片瀬江ノ島駅、
-
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】2日目(三ノ宮-琴電琴平)-三ノ宮、元町、和田岬、兵庫、須磨、西明石、加古川、網干、上郡、和気、高松、志度、琴電屋島、瓦町、一宮、琴平(山陽本線、和田岬支線、瀬戸大橋線、予讃本線、高徳本線、琴平電鉄志度線、琴平電鉄琴平線)
鉄旅日記2009年5月2日・・・三ノ宮駅、元町駅、和田岬駅、兵庫駅、須磨駅、西明石駅、加古川駅、網干
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その2‐新庄、鳴子温泉、小牛田(陸羽東線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月4日・・・新庄駅、鳴子温泉駅、小牛田駅(陸羽東線) 11:19 新庄(しん
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その1‐香住、柴山、餘部(山陰本線)/余部鉄橋 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月24日・・・香住駅、柴山駅、餘部駅(山陰本線)/余部鉄橋 2020・7
-
-
「鉄旅日記」2017年冬 最終日(喜多方-東京)その2-会津若松、芦ノ牧温泉、大川ダム公園、芦ノ牧温泉南(会津鉄道)/大塚山古墳群【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】
鉄旅日記2017年12月3日・・・会津若松駅、芦ノ牧温泉駅、大川ダム公園駅、芦ノ牧温泉南駅(会津鉄道
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その1 ‐金町、東京、三島(常磐線/東海道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】
鉄旅日記2022年3月19日・・・金町駅/東京駅/三島駅(常磐線/東海道本線) 2022・3
-
-
「鉄旅日記」2014年夏 4日目(米子-呉)その2-浜原、粕淵、明塚、石見簗瀬、口羽、宇都井、伊賀和志、三次、矢賀、水尻、かるが浜、呉(三江線/芸備線/呉線) 【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】
鉄旅日記2014年8月16日その2・・・浜原駅、粕淵駅、明塚駅、石見簗瀬駅、口羽駅、宇都井駅、伊賀和