「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】初日(東京-小出-会津若松)その3-只見、会津川口、会津本郷、南若松、会津若松(只見線/会津鉄道)
鉄旅日記2018年3月3日
14:32 只見(ただみ)駅(只見線 福島県)
集団就職で東京に向かう少年少女を、車寅次郎が涙まじりに見送った駅も今や昔。
当時の姿はなく、高い雪の壁に隠れている。
そんな光景が続き、いつしか眠りに落ち、目を開ければ果てしない雪原がまぶしく、やがて時刻表への掲載が途絶えた田子倉駅を通過する。
風景に変化はない。
果てしない雪の世界。
嘆息を洩らした男性に一声かける。
「ボクもこんな世界に身を置いた経験はありません」と。
只見で強制的に下ろされ、駅舎へと進む。
かつての7月に駅前に車を止めたことがあるが、果たして同じ場所へと誘導されるのかと思いきや、同じ場所だった。
幕末の長岡戦争で前線に立った長岡藩家老、河井継之介が負傷した後に会津に向かった険しい道を、代行バスに揺られている。
15:29 会津川口(あいづかわぐち)駅(只見線 福島県)
只見川が鏡面のように輝いている。
不通となった鉄路に積まれた雪は壁となり、台風被害からの復旧の見通しは後回しにされ、列車が走らなくなってからずいぶん経つ。
その区間、只見会津川口間をバスに揺られてきた。
行き交う車もなく、忘れ去られたような地帯を走ってきた。
言わば手つかずの真冬の世界。
誰もが嘆息を洩らし、緑色の川面にカメラを向ける。
17:23 会津本郷(あいづほんごう)駅(只見線 福島県)
美しい景色だった。
だけど眠りに落ちる。
会津坂下へと至る高所から見る会津盆地は絶景だった。
知ってか知らずか車内の大半が立ち上がり、カメラを向ける。
雪原に磐梯山をはじめ山々が映える。
只見線の旅とはかくも美しいものか。
かつて車寅次郎がいたことがある、ひとつ手前の会津高田駅は、ここ本郷駅と同じ構造に造り変わっていた。
駅前風景はたぶん変わっていない。
その映画を見たのはつい最近のことだ。
駅で降りて列車を見送る。
先に磐梯山がある。
雪原が広がる風景を前にしばし茫々とする。
海を眺めているような、離れがたい場所だった。
18:11 南若松(みなみわかまつ)駅(会津鉄道 福島県)
先客に遠慮して外にいた。
たいして寒くはないんだ。
ビールと唐揚げ棒も手にしていた。
はばかりがある。
コンビニでは老会津婦人が親切にしてくれた。
美しい会津盆地に下ってきて、この町にかつて新政府軍という地獄の軍団がやってきたのかと、周囲に視線を巡らした。
どこで待ち受ければいいのか分からないほど、会津盆地は広かった。
会津本郷駅から徒歩で移動中にスマホが電池切れとなり、会津盆地のマジックアワーと、本郷大橋からの景色を撮り損ねた。
痛恨だが仕方がない。
スマホとのベストなつきあい方を明日模索する。
芦ノ牧温泉方面に4名が乗車して、若松方面への客はオレのみ。
会津はもはや他人じゃない。
20:48 駅前フジグランドホテル819号室
12月と同じホテルにいる。
ここはいい。
近くの温泉施設の無料券をつけてくれるし、美味しい朝食の用意もある。
気に入って今回も選んだ。
でもラーメンはいい。
今日はそんな気分じゃない。
3ヶ月前は磐梯山と一部を除いて雪のなかった会津盆地も、一面の雪景色。
あれからの日々にオレにも大きな変化があった。
世は無常。
SMAPの「夜空のムコウ」がリフレインする中を若松駅に降りた。
少し疲れてしまった。
FacebooKへの投稿はよして、すべてを伝えたい人にメッセンジャーを送る。
もう眠いよ。
明るい時間の日本酒1/2升がきっと効いたんだな。
汽笛が聞こえる。
土合で見かけた父子をここ会津若松で見た。
どんな旅路だったのか。
やがてオレもきっと。
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