「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】2日目(新山口-長門本山-日田-大分)その1-新山口、宇部、居能、雀田、長門本山、小野田、厚狭、新下関、下関、門司、小倉(山陽本線/宇部線/小野田線/長門本山支線/山陽本線/鹿児島本線)
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最終更新日:2020/09/12
旅話 2009年
鉄旅日記2009年9月19日
2009・9・19 5:30 新山口(しんやまぐち)駅(山陽新幹線/山陽本線/山口線/宇部線 山口県)
夜明け前。
西国の朝の訪れは遅い。
昨日の東京と同じような色の空に明星が浮かぶ。
跨線橋を渡る風が心地いい。
町で見かけたのは二人。
ささやかな繁華街の灯はすべて消えていた。
4日後の日暮れ時にこの町に戻ってくる。
その時間帯ならまだ明るいだろう。
この町の明るい印象も携えて東京に帰りたいと思っている。
今日も長い一日になる。
これから大分まで16時間の旅。
2015年8月13日撮影
6:12 宇部(うべ)駅(宇部線/小野田線 山口県)
何年も前、宇部で出会った女性が運転する車からこの駅を眺めたことがある。
その後その女性に振られた2月、乗り換えで一度ホームには降りている。
寒い日だった。
朝の早い少年少女たちが物音をたてている。
日は昇り、気持ちのいい朝だ。
駅員の姿はなく、「駅そば」もまだ営業前。
駅前の「せんてつ」という雑居ビルの2階にはレストランがあるようだ。
町の人々が週末に家族連れで集まるような場所だったらいいと思う。
子供たちには、そんな場所と記憶が必要だ。
少し歩くとすぐに埃っぽいダンプ道路に出る。
ここ宇部に大切な友人が暮らし、大切な記憶がある。
宇部駅に着くまでの区間で厚東川と再会して、しばらく寄り添った。
そしてじきに渡る。
あの風景がオレは好きだった。
6:36 居能(いのう)駅(宇部線/小野田線 山口県)
かつては鉄道員がいたであろう立派な駅舎が通りに面している。
見渡したところ商店はない。
次が宇部新川。
厚東川に架かる鉄橋から宇部興産の煙突が見えた。
操業は続き、煙突から煙が上がる。
厚東川には橋が何本も架かり、一番奥の高速道路と見紛うようなのが宇部興産専用橋。
ここで小野田線に乗り換える。
6:55 雀田(すずめだ)駅(小野田線/長門本山支線 山口県)
乗換駅でしばらく停車。
海沿いに工場の煙突が見える。
小野田セメントは、今じゃセメントを造っていないと聞いた。
かつての炭鉱町を走る宇部線、小野田線。
乗客は少ないが、廃止の動きはなさそうだ。
ここの駅前にも商店は見られない。
7:26 長門本山(ながともとやま)駅(小野田線長門本山支線 山口県)
海に付きあたる場所に駅舎を持たない終着駅があった。
宮脇俊三さんがここを訪ねた頃の姿じゃない。
列車を降りると海が見えた。
きららビーチへ。
おそらく、かつて宇部に暮らす友人が連れてきてくれた浜だろう。
遠くに関門橋の煌めきが見えた。
背後に目を移すと小高い山。
あれは竜王山公園。
あそこにも上がって眺めたものだ。
友人と、そして宇部で出会った女性と。
この終着駅を降りても何もないことは知っていた。
でも、そこが思い出につながる場所だとは知らなかった。
この駅は朝と夕に一日5往復の運行がある。
かつて何があった場所なのか、駅周辺にそれを教えるものはない。
秋の虫の声が耳に心地いい。
きららビーチにて
8:35 小野田(おのだ)駅(山陽本線/小野田線 山口県)
森と湖のまち小野田。
駅前は簡素なものだが、小野田銘菓を売る土産物屋に、イカした街灯を配した商店街があった。
僅かだが飲食店もある。
長門本山から雀田に戻り、小野田港、南小野田と続き、乗客はなかなか多かった。
そして小野田に着き、小野田線完乗。
「駅そば」が営業していて、細麺のうどんで朝食。
いい味だった。
涼しい風が吹いている。
小野田とはこれでまたしばらく。
衰退はしているのかもしれないが、人口は未だに多い。
いい風情だったと振り返りながら、下関行に乗る。
9:06 厚狭(あさ)駅(山陽新幹線/山陽本線/美祢線 山口県)
ホテルと旅館がそれぞれ1軒ずつ。
それと2、3の食堂。
駅前商店街の顔触れはそれだけだ。
この駅に新幹線が止まり、日本海に向けて美祢線が分かれる。
厚狭は鉄道の町なのだろう。
さらに次の下関行に乗る。
途中に湖を見た。
平凡な風景の中にも見どころはあるものだ。
埴生に着いて、新聞紙を握りしめた男が降りていく。
駅前には山陽オートレース場がある。
海が見えた。
風が強いのは台風の影響か。
小月着。
広大な原っぱが風に揺れている。
2015年8月15日撮影
9:47 新下関(しんしものせき)駅(山陽新幹線/山陽本線 山口県)
ひとつ手前の長府は毛利支藩の城下町。
乃木希典大将が生まれ、今は下関競艇場がある。
「駅そば」もあって、随分賑やかな印象を受けた。
そして新下関。
原っぱの中にできた新幹線駅。
元々はそんなところだろう。
天気のよくない日に通った時にはうら寂しい印象だった。
改札を出ると様子のいい山が目に入る。
地図がなかったから山の名は分からない。
そしてチャペル。
駅の中に町がある。
新白河駅を思い出した。
新下関駅前風景
10:15 下関(しものせき)駅(山陽本線/山陰本線 山口県)
懐かしい。
変わったようにも変わっていないようにも見える。
あれから駅舎は放火によって失われ、街のシンボルがなくなってしまったとのだと嘆く市民の声を記事で読んだ。
三角屋根の駅舎の復興はならないが、駅は元気だ。
街にも活気がある。
この街で海峡花火大会は見た夏から何年が経過したのか。
宇部で出会った女性は、その年のクリスマス・イブに苦手な寿司を食べに同僚とここ下関に向かった。
彼女は次の旅行の計画にこの街を入れようとしている。
いよいよ九州へ。
10:53 門司(もじ)駅(鹿児島本線/山陽本線 福岡県)
古い町並を歩く。
関門海峡ではかつてを懐かしむ。
古くは壇ノ浦合戦、そして近代では大陸との交易路として栄えた悠久の海峡。
ちっぽけなものだが、オレもここでの過去を持つ。
子フグのから揚げでビールを飲みたいよ。
門司港レトロ地区はそもそも素晴らしいが、九州と本州の分岐駅のここにも、海峡独特の空気が流れている。
門司港駅から続く大鉄道基地はこのまま小倉へと続いている。
門司の町並
関門海峡にて
11:22 小倉(こくら)駅(山陽新幹線/鹿児島本線/日豊本線/日田彦山線/北九州モノレール 福岡県)
日本有数の大都会小倉。
3度目になる。
この街にもいい思い出がある。
あの時は言ってみれば傷心だった。
いろいろあって、まだこうして旅をしてるよ。
そしてまたこの街にきた。
モノレールが真っすぐに街を突っ切り、振り返って見上げればステーション・ホテル。
玄界灘はすぐそこにある。
今日もどこかで彼女に伝えよう。
今、こんな街にいますと。
いよいよ田川へ。
遥かな昔といえば言いすぎだが、隆盛を誇った筑豊炭田地帯へ。
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