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「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】2日目(新山口-長門本山-日田-大分)その2-香春、田川伊田、田川後藤寺、日田、豊後森、豊後中村、野矢、由布院、大分(日田彦山線/久大本線)

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2009年

鉄旅日記2009年9月19日
2009・9・19 12:49 香春(かわら)駅(日田彦山線 福岡県)
広い駅構内にはかつての遺構と栄光が残る。

地肌を剥き出しにした香春岳一の岳。
二の岳、三の岳はこんもりとした姿をそのまま残している。

まだ蝉の声が残る静かな村。
炭鉱全盛当時を想像することはできない。

炭坑節に歌われ、万葉集にも詠われ、神がいる山としておとぎ話にも登場する香春岳。

古の人々が信仰した聖なる山は、近代文明の発展に身を削って貢献し、そして時代は過ぎた。
もう元には戻れない。
神もそして人も。
哲学するにはいい場所だ。

香春岳は鬼ヶ城という城跡でもあり、豊臣秀吉の九州征伐の件にも登場する。
当時の薩軍は、ほぼ九州一円をその勢力下に置いていたことが分かる。
そして今も日本セメントが巨大な腕で掴みかかっている。

鎮西八郎為朝の屋敷跡も残っているらしい。
あの豪傑はまず手始めに、このあたりの荒っぽい連中を制圧したのだろう。

香春岳

13:48 田川伊田(たがわいた)駅(日田彦山線/平成筑豊鉄道伊田線/平成筑豊鉄道田川線 福岡県)
九州らしい、ごつごつとした景色になってきた。

筑豊炭田の中心地、田川。
ここも構内は広く、かつて線路が敷かれていた一帯に雑草がはびこっている。

平成筑豊鉄道とは、ここを経由して直方と行橋をつないでいる。

伊田商店街を歩く。
飲食店やスナックは路地に集まっていた。

盛は過ぎても祭がある。
風治八幡宮の川渡り祭。
田川で信仰を集め、大切にされていることを食堂で知った。

もはやボタ山も炭住跡もない筑豊。
数年前の旅でその事実は知っていたけれど。

このホームからの眺めがいい。
今日も暑くて、でも強い風に冷まされて、四国の山並に似た筑豊の山々を眺めている。

14:40 田川後藤寺(たがわごとうじ)駅(日田彦山線/後藤寺線/平成筑豊鉄道糸田線 福岡県)
5年前の夏だったよ。
便所を借りにこの駅に寄ったのは。

あの日に見た観光案内板は色褪せて真っ青になっていた。
伊田で触れた現在の筑豊の情報は、あの案内板に書かれていた内容が下地になっている。

銀天街を歩く。
伊田商店街によく似ていた。
スナックや酒場は発見できなかったが、子供が元気だ。

かつて筑豊には迷路のように多くの線路が敷かれていたが、その多くが剥がされた現在も、後藤寺は今も交通の要衝の地位を失っていない。

17:01 日田(ひた)駅(久大本線/日田彦山線 大分県)
彦山から眠ってしまった。
分岐駅の夜明は眠りの中で過ぎて、いつの間にか日田に着いていた。

5年前と同じように日田駅は西日を浴びて輝いていた。
日の当たる待合所で、みんな真っ黒な顔をして列車を待っている。

駅周辺を散策。
案外商圏は狭いものだと思いながら駅に戻り案内板を見ると、三隈川の畔に温泉街がある。
本物の日田がそこにあり、日田天領水の出所もそのあたりなのだろう。

車寅次郎も日田を訪れている。
祭の最中だった。
きれいな町だよ。

これから5年前と同じように大分に向かう。
強い風はまだ心地いいと言える。

18:21 豊後森(ぶんごもり)駅(久大本線 大分県)
断崖があり、豪快な滝が落ち、三隈川を縫うように進んでいる。
絶景の連続だった。

玖珠郡森町。
「童話の里」を謳う駅前に桃太郎がいる。

豊後牛の産地。
印象的な峰々。
伐株山の山頂が削れているのはグライダーの発着場だという。

行儀の悪い高校生連中をはじめ、大勢が降りたこの駅で32分の停車。

駅前通りを左に折れて、下り坂を信号がある交差点まで歩く。
そこまで商店街が続いている。
廃屋も見られたが、品のいい飲食店もある。
街灯の色もいい。
駅のイルミネーションもきれいだったな。

民話の里で迎える日暮れ。
このあたりには本物の闇が訪れる。

転車台跡が駅の片隅で壮絶な姿で残っていた。

豊後森駅周辺風景

18:55 豊後中村(ぶんごなかむら)駅(久大本線 大分県)
九重町中村。
ここで6分の停車。
九重連山の登山口で、日本一の大吊橋がここから11㎞の場所にあるらしい。

駅前ではスナックが一軒明かりを灯していた。

5年前にもここに寄っている。
確かオレはここで、子供が遊ぶ光景を眺めていた。

19:06 野矢(のや)駅(久大本線 大分県)
闇の中で4分の停車。
海抜534米の標柱がホームにある。

停車時間が明けて、走り出す。
そして闇。

19:39 由布院(ゆふいん)駅(久大本線 大分県)
右手に夜景が見えた。
灯の数は多くない。
だからこそきれいに見えたんだ。

到着した駅が由布院だった。

何ら仕切りのない、大きな窓を開け放ったような開放的な改札口で、かわいらしい声をした女性駅員がオレを待っていた。

最後に残った楽園のような町。
あたたかい灯が続く坂道に土産物屋、飲食店が並び、人々が穏やかな表情で歩いている。

温泉街がどこにあるのか知らないが、歓楽街は駅周辺にあった。
駅の灯も素敵だった。

猫と遊んでいた二人の少女はどこからきたのだろう。
大分まであと1時間。

23:21 東横イン大分駅前1207号
九州は美人が多い。

大分駅は改良工事中だった。
市内の混雑を考えて高架化を進めているとのこと。

構わない。
ただオレが知っている駅舎のままでいてほしかった。
でもどうにか間に合った。
懐かしい姿をこうして目にできている。

大分駅は3度目になる。
そうか、あれから5年も経つのか。

府内と呼ぶ中心街。
この街は大友宗麟が九州制圧に動いた頃が全盛だったのだろう。
当時は府中といっていた。
その名残りだろう。

城跡が街の中心とは言えないが、繁華街「府内五番街」はその近くにある。
えらく長いアーケード街があった。
店の多くは閉じていたが、駅まで続いている。

県庁も市庁も立派だが、大分は駅がシンボルの役目を果たしている。
オレはそう感じたよ。

昨日の新山口でもそうだったが、物価が安くて量が多い。
覗いたメニューに団子汁があったから入った店だが、団子汁まで行き着くことなく腹は膨れた。

関サバをはじめ、本物を食べて、美味い酒を飲んだ。
こうして酒を飲んでいる場所が、大分なのだと実感できる瞬間というのがある。
そこに感動が訪れる。

大分(おおいた)駅(日豊本線/久大本線/豊肥本線 大分県)にて

大分城

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