*

「空旅日記」1997年弥生【若き日に高知に出張に行った記録が残っておりました。】-羽田空港内カフェテリア、市電グランド通り駅前オリエントホテル

公開日: : 最終更新日:2025/05/12 旅話, 旅話 1997年

空旅日記1997年3月11日

1997・3・11 羽田空港内カフェテリア
17:00を待っている。

空港入りしたのは今から1時間ほど前。
オレと同じような風体の男たちはすでにビールのジョッキを傾けている。
オレはアイスコーヒー。

彼等は現地に着けば今日の仕事は終わりなのだろう。
旅慣れた男たちの余裕がそこにある。

オレはそうはいかない。
現地で待ち合わせているお得意はもうホテルに入っただろうか。

こんな場所にいるといろいろなことを考える。
いずれにしろ、これから2時間後に四国にいることが気持ちを落ち着かせない。

人は信じられぬほどの安易さで移動していくもの。
そして今日オレもその仲間に入った。

空港に来るのは久しぶりだ。
仕事中だが、この心のゆとりは何だろう。
オレが作り上げた仕事の中に、思いがけず入っていたこうした事態を喜んでいる。

恋する人よ、もうすぐオレは上空。
高知に到着して君を想うことを楽しみにしている。

1997・3・11 市電グランド通り駅前オリエントホテル605号室
高知の夜。
人とのふれあいは楽しめなかったけど、この夜を楽しむことはできた。

同年齢のお得意は話の分かる人だった。
仕事の本番は明日。

進行具合によって彼がどのように豹変するか見当もつかないが、今心配することじゃない。
明日のことは明日考えればいい。

彼はきっと安心して眠りにつくだろう。
従ってオレもまた。
今夜はそれでいいじゃないか。

適当なBGMをラジオ局に委ねている。
オレの部屋であればストーンズをかけている。

こうして部屋に入れば、ここがどこであろうがどうでもよくなる。
ただオレは高知にいる。
それだけは事実だ。
そして今夜はその事実を大切にすべき夜だ。

今夜、お得意と酒を飲むのも大切な仕事だった。
そうして2軒飲み歩いた。
それが彼にとってもオレにとっても仕事だった。

仕事にもいろいろある。
今夜はその魅力に魅入られて眠りたい。
幸い清潔なベッドが用意されている。

恋する人よ、明日への恐怖心なんてないさ。
まずそのことを喜んでくれないか。

そしてオレが作った仕事で今高知にいることをたたえてくれないか。
そうしてくれれば楽になれる。

心の奥底の話をしている。
他のヤツには何を言われようと構わない。
君がどう思うかだけが気がかり。

おやすみ。
明日の夕方には東京に帰る。

君に贈るべき素敵な土産が目についたらアタッシュケースに入れて帰る。
問題はそいつをいつ君に渡すかだ。

でもそれも今心配することじゃない。

1997・3・12 東京町田
たまには空にも昇ってみるものだ。

羽田で残照に魅入られ、雲の上の太陽の輝きに驚嘆し、明るさを少し残した高知の街には海から入った。
素晴らしい四国上陸風景だった。

ホテルまで乗ったタクシー運転手と仲良くやりたかったけど、向こうにはそのつもりはなかった。
それが残念で少し気分を害したけど、だからといって高知を恨むつもりはない。

それからお得意と飲みに出かけた。
仕事の話が中心で、二人で同世代の人間がノシていけるようになったことを喜んだ。

高知で関わった女性はみんな素晴らしかった。
2軒目で入った閑散とした店で働く女性はチャーミングだったし、今日入った高知駅の土産物屋のオバチャンもいい味を出していた。
あの時の軽妙なやりとりは忘れがたい。

高知には正味13時間しかいなかったから、街に対してとやかく言えないけど、聞かれれば「いい街だった」と伝えるだろう。

こんな旅を用意してくれたお得意には感謝している。
彼は無事に広島に着いただろうか。
そんな心配ができる間柄になれたと思っている。

恋する人よ、仕事にもこうした要素があっていい。
そしてそうした機会をつかんでほんの少しランクを上げたオレを喜んでほしい。

うん、少し大きくなれた気がするよ。
もう飛行機の乗り方を心配する必要もなくなったしね。

関連記事

「鉄旅日記」2020年如月 最終日(釜石-東京)その2‐小山田、土沢、花巻、石鳥谷(釜石線/東北本線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月24日・・・小山田駅、土沢駅、花巻駅、石鳥谷駅(釜石線/東北本線) 7:40

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月12日・・・深川駅、増毛駅、留萌駅、北一已駅、深川駅、旭川駅、美瑛駅、千代ヶ丘

記事を読む

「車旅日記」2004年夏 最終日(長崎-福岡空港)走行距離291㎞その2-厳木駅、西唐津駅、唐津駅、筑前前原駅、葛飾金町【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

車旅日記2004年8月15日・・・厳木駅、西唐津駅、唐津駅、筑前前原駅、葛飾金町 2004・8・1

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 2日目(天王寺-奈良)その2-なんば、上本町、鶴橋、桃谷、寺田町、天王寺、恵美須町、新今宮、奈良(南海電鉄南海線/関西本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月11日・・・なんば駅、上本町駅、鶴橋駅、桃谷駅、寺田町駅、天王寺駅、恵美須町駅

記事を読む

「車旅日記」2000年春 2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月4日 2000・5・4 8:09 7号国道-豊栄(道の駅) 路上で夜を明かす

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 最終日(宮古-東京)その3‐白石、郡山、黒磯、宇都宮(東北本線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月23日・・・白石駅、郡山駅、黒磯駅、宇都宮駅(東北本線) 15:49 白石(

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 最終日(水沢-東京)その1-水沢、花巻、遠野、陸中大橋、小佐野、釜石、恋し浜、盛(東北本線、釜石線、三陸鉄道南リアス線) 【東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月6日その1・・・水沢駅、花巻駅、遠野駅、陸中大橋駅、小佐野駅、釜石駅、恋し浜駅

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月 4日目(大曲-青森)その1-大曲グランドホテル、角館駅、羽後中里駅、阿仁合駅、鷹ノ巣駅、大館駅、碇ヶ関駅、大鰐温泉駅、黒石駅 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】

車旅日記2006年5月5日・・・大曲グランドホテル、角館駅、羽後中里駅、阿仁合駅、鷹ノ巣駅、大館駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 4日目(富良野-大館)その1-富良野、滝川、岩見沢、白石、新札幌、北広島、恵庭、千歳、新千歳空港(根室本線/函館本線/千歳線/石勝線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月13日・・・富良野駅、滝川駅、岩見沢駅、白石駅、新札幌駅、北広島駅、恵庭駅、千

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 2日目(新南陽-鹿児島中央)その1-新南陽、新山口、阿知須、宇部新川、小野田港、下関、八幡、陣原(山陽本線/宇部線/小野田線/鹿児島本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月13日その1・・・新南陽駅、新山口駅、阿知須駅、宇部新川駅、小野田港駅、下関駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑