「空旅日記」1997年弥生【若き日に高知に出張に行った記録が残っておりました。】-羽田空港内カフェテリア、市電グランド通り駅前オリエントホテル
空旅日記1997年3月11日
1997・3・11 羽田空港内カフェテリア
17:00を待っている。
空港入りしたのは今から1時間ほど前。
オレと同じような風体の男たちはすでにビールのジョッキを傾けている。
オレはアイスコーヒー。
彼等は現地に着けば今日の仕事は終わりなのだろう。
旅慣れた男たちの余裕がそこにある。
オレはそうはいかない。
現地で待ち合わせているお得意はもうホテルに入っただろうか。
こんな場所にいるといろいろなことを考える。
いずれにしろ、これから2時間後に四国にいることが気持ちを落ち着かせない。
人は信じられぬほどの安易さで移動していくもの。
そして今日オレもその仲間に入った。
空港に来るのは久しぶりだ。
仕事中だが、この心のゆとりは何だろう。
オレが作り上げた仕事の中に、思いがけず入っていたこうした事態を喜んでいる。
恋する人よ、もうすぐオレは上空。
高知に到着して君を想うことを楽しみにしている。
1997・3・11 市電グランド通り駅前オリエントホテル605号室
高知の夜。
人とのふれあいは楽しめなかったけど、この夜を楽しむことはできた。
同年齢のお得意は話の分かる人だった。
仕事の本番は明日。
進行具合によって彼がどのように豹変するか見当もつかないが、今心配することじゃない。
明日のことは明日考えればいい。
彼はきっと安心して眠りにつくだろう。
従ってオレもまた。
今夜はそれでいいじゃないか。
適当なBGMをラジオ局に委ねている。
オレの部屋であればストーンズをかけている。
こうして部屋に入れば、ここがどこであろうがどうでもよくなる。
ただオレは高知にいる。
それだけは事実だ。
そして今夜はその事実を大切にすべき夜だ。
今夜、お得意と酒を飲むのも大切な仕事だった。
そうして2軒飲み歩いた。
それが彼にとってもオレにとっても仕事だった。
仕事にもいろいろある。
今夜はその魅力に魅入られて眠りたい。
幸い清潔なベッドが用意されている。
恋する人よ、明日への恐怖心なんてないさ。
まずそのことを喜んでくれないか。
そしてオレが作った仕事で今高知にいることをたたえてくれないか。
そうしてくれれば楽になれる。
心の奥底の話をしている。
他のヤツには何を言われようと構わない。
君がどう思うかだけが気がかり。
おやすみ。
明日の夕方には東京に帰る。
君に贈るべき素敵な土産が目についたらアタッシュケースに入れて帰る。
問題はそいつをいつ君に渡すかだ。
でもそれも今心配することじゃない。
1997・3・12 東京町田
たまには空にも昇ってみるものだ。
羽田で残照に魅入られ、雲の上の太陽の輝きに驚嘆し、明るさを少し残した高知の街には海から入った。
素晴らしい四国上陸風景だった。
ホテルまで乗ったタクシー運転手と仲良くやりたかったけど、向こうにはそのつもりはなかった。
それが残念で少し気分を害したけど、だからといって高知を恨むつもりはない。
それからお得意と飲みに出かけた。
仕事の話が中心で、二人で同世代の人間がノシていけるようになったことを喜んだ。
高知で関わった女性はみんな素晴らしかった。
2軒目で入った閑散とした店で働く女性はチャーミングだったし、今日入った高知駅の土産物屋のオバチャンもいい味を出していた。
あの時の軽妙なやりとりは忘れがたい。
高知には正味13時間しかいなかったから、街に対してとやかく言えないけど、聞かれれば「いい街だった」と伝えるだろう。
こんな旅を用意してくれたお得意には感謝している。
彼は無事に広島に着いただろうか。
そんな心配ができる間柄になれたと思っている。
恋する人よ、仕事にもこうした要素があっていい。
そしてそうした機会をつかんでほんの少しランクを上げたオレを喜んでほしい。
うん、少し大きくなれた気がするよ。
もう飛行機の乗り方を心配する必要もなくなったしね。
関連記事
-
「鉄旅日記」2019年年始【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】最終日(一ノ関-東京)その1-一ノ関、陸中門崎、千厩、猊鼻渓、気仙沼(大船渡線)
鉄旅日記2019年1月6日・・・一ノ関駅、陸中門崎駅、千厩駅、猊鼻渓駅、気仙沼駅(大船渡線) 201
-
「車旅日記」2004年夏【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】4日目(鹿児島-田原坂-長崎)走行距離384㎞その2-田原坂古戦場跡、大牟田駅、肥前山口駅、長崎ニューポート
車旅日記2004年8月14日・・・田原坂古戦場跡、大牟田駅、肥前山口駅、長崎ニューポート 2004
-
「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】2日目(紋別-釧路)走行距離367㎞その2-止別駅、緑駅、裏摩周、摩周駅、塘路駅、釧路湿原駅、細岡駅、釧路パシフィックホテル
車旅日記2004年5月2日・・・止別駅、緑駅、裏摩周、摩周駅、塘路駅、釧路湿原駅、細岡駅、釧路パシフ
-
「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】最終日(高松-東京)その1 ‐高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フェリー/直島宮浦→宇野フェリー)
鉄旅日記2020年9月22日・・・高松港3番乗場、直島宮浦海の駅、宇野港、宇野駅(高松→直島宮浦フ
-
「鉄旅日記」2008年初秋【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】最終日(福井-東京)-福井駅前、武生新、武生、大府、武豊、知多武豊、刈谷、安城、蒲郡、東京葛飾(福井鉄道福武線/北陸本線/東海道本線/武豊線)
鉄旅日記2008年9月15日・・・福井駅前駅、武生新駅、武生駅、大府駅、武豊駅、知多武豊駅、刈谷駅、
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】最終日(JR難波-東京)その1-JR難波、八尾、奈良、笠置、伊賀上野、上野市、伊賀神戸、伊勢中川、近鉄長島、長島(関西本線/伊賀鉄道/近鉄大阪線/近鉄名古屋線)
鉄旅日記2017年3月20日・・・JR難波駅、八尾駅、奈良駅、笠置駅、伊賀上野駅、上野市駅、伊賀神戸
-
「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】初日(東京-高松)その5 ‐岡山、児島、高松(本四備讃線/予讃本線)/児島の民話
鉄旅日記2020年9月19日・・・岡山駅、児島駅、高松駅(本四備讃線/予讃本線)/児島の民話
-
「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】最終日(善通寺-東京)-善通寺、多度津、丸亀、坂出、岡山、京都、野洲、東京葛飾(土讃本線/予讃本線/本四備讃線/山陽本線/東海道本線)
鉄旅日記2008年5月6日・・・善通寺駅、多度津駅、丸亀駅、坂出駅、岡山駅、京都駅、野洲駅(土讃本線
-
「鉄旅日記」2017年冬【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】初日(東京-下今市-会津高原尾瀬口-会津若松)その2-会津荒海、会津田島、会津下郷、塔のへつり、湯野上温泉、西若松(会津鉄道)
鉄旅日記2017年12月2日・・・会津荒海駅、会津田島駅、会津下郷駅、塔のへつり駅、湯野上温泉駅、西
-
「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】初日(東京-桑名-阿下喜-西藤原-四日市-内部-西日野-津)その3-河曲、富田浜、河原田、津(関西本線/伊勢鉄道)
鉄旅日記2018年12月22日・・・河曲駅、富田浜駅、河原田駅、津駅(関西本線/伊勢鉄道) 18:1