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「車旅日記」2005年冬【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】2日目(都城-鹿児島-川内-人吉)走行距離284㎞ その1-都城駅、西都城駅、財部駅、霧島神宮駅、国分駅、錦江駅、鹿児島駅

公開日: : 車旅話 *結婚前2005年

車旅日記2005年2月12日
2005・2・12 8:30 都城駅(2月11日の熊本空港より271㎞)
何層にも連なる雲間から光が漏れる。
薄曇りの肌寒い朝。

都城駅周辺の朝の風景は昨夜感じた印象と大差ない。
南国のありふれた地方都市。
ステーションホテルとα1というホテルが町一番の高さを競っている。

背の高い構造物があるのはいいことだと思う。
特に地元の若者にとってはいいことなのだと思う。
何もないよりは夢が広がるじゃないか。

日豊本線、吉都線とも本数は少ない。
宮崎鹿児島中央間を往復する列車が多いようで、特急「きりしま」もこの区間を快走する。

都城駅には焼鳥屋とうどん屋が入っている。
焼鳥屋の方は昨夜は繁盛していた。

当たり前だが、列車が去ると駅前は寂しくなる。

2013年8月12日撮影

9:02 西都城駅
都城にさよならを言ってからしばらく走ると、10号国道に駅周辺よりも大きな街が現れ、やがて国道に沿ってアーケードが続き、百貨店も見える。

アーケード街は朝の時間帯ということもありシャッターは下りているが、中心はこっちなのだと訴える堂々たる街が形成されていた。
地元の小さなFM局もこっちの街角にある。

そう言えば都城で時刻表を眺めたら、ここ西都城行が何本かあった。
高架駅になっていて、駅としての格も都城より上のようだが、広い改札口に人の姿はなく、まるで引っ越しが終わった後のようにガランとしている。

駅弁を売る店もまだ開いていない。
駅前には焚火をするタクシー運転手の姿がある。

見渡したところホテルはないが、大きな商店街が隠されていることを思わせる。
道は広く、市役所も近くにある。

天気のせいだが、視界が大きく開けた駅前通り周辺は果てしなく寒々としているように見える。

かつてはこの駅から志布志につながる線路が敷かれていたという。

2013年8月12日撮影

9:31 財部駅(2月11日の熊本空港より284㎞)
寒木の並木を抜け、門司港を出た日豊本線は最後の地、鹿児島に入った。
その線路に沿ったか細い県道を往く。
10号国道は鉄道とは交わらず、別ルートからさっさと国分方面へと向かっている。

赤い屋根を乗せた古ぼけた駅舎の前にタクシーが1台止まっている。
朝もまだ早い。
客の見込みはあるのだろうか。

駅前を取り巻くのは旅館と南日本新聞の販売所。
線路のムコウの小高い場所にある学校から連れ立って走る少年たちの声が聞こえてくる。

険しい峠を越えることもなく、川を渡るでもない。
とても穏やかな国境越えだった。

今日は寒いよ。
南国育ちの薩摩人には尚更だろう。
原付バイクを転がす女性は身を縮めながら都城方面に向かい、地面には霜柱が立った痕が残っている。

見かけた子供たちは素朴で、老人たちには質朴さを感じる。

あたりに大きな集落はなく、オレが眺めている地図に描かれたこの地域は、ちょっとした山岳地帯のように彩りに欠けていた。

10:07 霧島神宮駅(2月11日の熊本空港より306㎞)
都城隼人線を快走。
あたりには茶畑が散在し、南国の峰々が冬枯れている。
南国に育つ木々が冬色をしているのを見て、何だか感動した。

建物に囲まれた東京にいたんじゃ分からないけど、本来冬景色とはああいうものだ。
オレが暮らしていた場所でも昔は見たよ。

こんな寒い日に母親と玉川学園前から歩いて帰ったんだ。
甘栗を買って帰ったんだ。
その日の寒さと母親のあたたかさを思い出した。

低い峰々は全山冬色に覆われ、その中を鉄道と車道が健気に約束の地に向かって延びている。

鹿児島の中心地に向かう道は他にいくつもあるが、桜島回りの鉄路は消え、残ったのはこの単線の線路のみ。
そして霧島神宮へ。

霧島山、高千穂峰、霧島神宮といった観光場所は地図で見る限り駅からは少し離れている。
昨日通った小林えびの一帯を含めた広大な山塊が神域だという。

今いるここも神色をしている。
朱色の駅の入口には渋木の鳥居が立ち、左右には提灯が下がっている。

霧島神宮あたりから湧きだした霧島川は聖水を感じさせながら駅前を流れ、橋の欄干には天狗の顔をした猿田彦命の置物が、この地にも訪れるであろう魔神に対して睨みを利かせている。

神域が持つ涼しげな気配が漂い、目には見えない偉大な神々に対して敬虔な気分でいる。

この地は温泉郷でもある。
駅を出て左側に足湯場があり、オレが到着した頃から老人が温まっていて、そこに母娘が加わった。

今日は寒いよね。
でもオレはいいよ。
神の山も次でいい。

今のオレは町に用がある。

10:45 国分駅(2月11日の熊本空港より319㎞)
霧島峠で山頂を雲に覆われた桜島と再会。
そして国分の町を見下ろす。
錦江湾に面して整った町が見えた。

峠を下りて町の一部になると、ごく一般的な地方都市にいることが分かった。
坂の上から見たら、夢の国もきっと同じように見えるのだろう。
そして夢の国に下りたら、やっぱり国分の町と同じような印象を持つのだろう。

駅前通りは60号県道を過ぎると歩行者天国になっている。
それとも今日は祭りでもあるのだろうか。

駅には結構な人がいる。
横に長い鉄筋の駅舎で、上部が青く縁どられ、懐かしさを抱かせ、人の香りもする。

国分は桜島を望む比較的大きな町だ。
宮崎から日豊本線と分かれた日南線は志布志が終点だが、かつては志布志から大隅線が延びていて、鹿屋を通り、桜島を横目に見て、ここ国分で日豊本線と接続していた。

朴訥そうな隼人の老人が脇でゴルフ・スイングをしている。
改札口を行き来する若者に隼人の面影は見られない。

11:58 錦江駅(2月11日の熊本空港より336㎞)
国分から隼人へ。
正面に鹿児島神宮を見ると左に折れる。

夏に寄ったラーメン屋はすぐに分かったよ。
万作ラーメン。
美味いラーメンをたらふく食わせてくれる店で、働く人々は愛らしい。
勘定を受け取った婆さんも素敵な笑顔の持主だった。

隼人駅には未練があったが寄らず、隼人塚を横目に鉄路を渡り10号国道へ。
海に接したあたりで門司から430㎞という表示を見た。

錦江湾はやはり素晴らしい。
霧島峠からは霞んで見えた桜島がはっきり見える。
山頂には雲がかかっていたから今夜は雨か。

士族の町、加治木を過ぎると錦江駅は跨線橋脇に目立たぬように存在していた。

古くからの街道の匂いはその一帯にはなく、住宅街の中に駅舎を持たない駅は脇に売店を従え、単線の線路を鹿児島市内へと渡している。

この駅周辺に鹿児島を感じることはできない。
すぐ近くにある桜島も錦江湾も、ここからは線路に沿って建つ団地に遮られて見えない。

かつての歴史は風の中。
郊外の通勤駅前を穏やかな笑顔をたたえた家族が穏やかな日差しを浴びて歩いている。

12:59 鹿児島駅(2月11日の熊本空港より358㎞)
桜島にかかっていた雲が払われた。
これで明日の天気は分からなくなった。

桜島を正面に見たくて10号国道でポイントを探った。
まずは別府川の流れ込み。
錦江湾は圧縮され、桜島に向けて注がれているように見える。

姶良バイパスを過ぎると快走路。
去年の夏と同じ感動を味わう。
この風景を知った人生を素晴らしいと思う。

竜ヶ水を次のポイントに選んでいたけど、車を止めることができない。
そして鹿児島駅へ。

中心駅は鹿児島中央駅だが、オレはこっちの雰囲気が好きだ。
駅に港。
近代鹿児島の重厚な歴史がこの周辺には詰まっている。

煤けたような駅舎のムコウにホームが見えて、雨除けの上屋は古びている。
脇には港に面して広大な貨物基地が広がり、中島美嘉さんによく似た女子高生が駅の階段を上がっていく。
中島美嘉さんは鹿児島の出身だという。

13時の時報だろうか。
妙な鐘の音が聞こえた。

ここが市電の始発駅で、古く大きな傘の下、客車が折り重なって止まっている。
路面電車が走る方向に目をやると山形屋百貨店が見えて、そこから繁華街が始まっている様子が分かる。
夏に友と飲んだ天文館は市電に乗って5分とある。

市電乗場の屋根に鳩が多くとまり、桜島は正面に見えて、その桜島に渡るフェリー乗場があり、ザビエル上陸地や薩英戦争の砲台跡もすぐ傍にあるという。

近代はここから始まり、その時代の空気がまだ周辺には残っている。

そしてまたひとり中島美嘉さん似の少女が街を往く。


2013年8月13日撮影

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