「鉄旅日記」2005年聖夜【廃線となった鹿島鉄道に乗った記録が残されておりました。】-鹿島神宮、新鉾田、鉾田、石岡(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島鉄道/常磐線)
鉄旅日記2005年12月24日・・・鹿島神宮駅、新鉾田駅、鉾田駅、石岡駅(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島鉄道/常磐線)
記憶には残るだろう。
朝はもたついたが、計画通りに出かけたよ。
クリスマスのない国へ。
鹿島神宮まで途中下車はできない。
2週間前と同じルートを香取までいく。
成田駅では前回同様に随分と待たされた。
今日の風は冷たくて師走を感じる。
関東平野は今日もよく晴れて空が広い。
香取から線路は水郷を越える。
利根川を渡ると十二橋、新利根川を越えると潮来の町。
川辺には歴史を持ちそうな旅館が並んでいる。
2018年9月22日撮影
北浦に架かる長い鉄橋を渡ると鹿島神宮。
2018年9月22日撮影
冬色の大地は暖かそうにも見えたし、冷たそうにも見えた。
きっと冷たいのだろう。
当り前の話だ。
鹿島神宮駅前は閑散としていた。
駅は記憶に残りがたく、高架駅に朱色の線が引かれた様が僅かに神域を思わせる。
2018年4月30日撮影
鹿島臨海鉄道は重々しいディーゼル音を響かせて同じホームから出る。
鹿島サッカースタジアムは通過した。
駅はスタジアムの背後に位置するが、随分と寂しげな駅だった。
3年前のワールドカップの際にはあの場所に世界がやってきたのかと思うと、滑稽とも何とも言えない気持ちになる。
すべて過去の話だと言い聞かすように、ディーゼルカーはススキの原を突き進む。
途中駅に記憶がある。
大洋駅。
大横綱貴乃花が最後の輝きを放った秋場所千秋楽の大一番を、その駅の駐車場に車を止めて、ラジオをつけて聞いたんだ。
その駅を出ていく。
確かにあの場所だった。
何度も振り返りながらやがて目的地の新鉾田駅に到着する。
少し歩けば鹿島鉄道の終着駅、鉾田駅がある。
鉾田の町は想像よりずっと小さかったが、迷ってしまった。
繁華街と思しきあたりにはホテルもあり、廃墟も目立つ。
鉾田駅の前は一度通り過ぎている。
でも気づかなかった。
自転車屋の親切なおじさんに道を聞いて納得した。
駅前にはコンビニがあるものだ。
そのコンビニを覚えている。
戻ったら確かにそこに終着駅があった。
とても古く鄙びた終着駅だった。
木造の駅舎にクリスマスの灯を点す電球がまとわりつき、「駅そば」のおばちゃんは鯛焼きを焼いている。
さっき、清潔な便所を求めてラーメン屋に入って食事を済ませていたのが惜しまれる。
あの古いベンチに座って、缶コーヒーを片手に鯛焼きを頬張り、そばをすすった方がなんぼもよかった。
出発前のディーゼルカーに西日が当たる。
関東は広く、こんなにも鄙びた景色が残っている。
その鉾田は平成の市町村大合併の流れに乗り、まもなく市制が敷かれるという。
鹿島鉄道は閑散とした一帯を過ぎていく。
やがて霞ヶ浦を前面に眺める絶景に出くわす。
そして筑波山が同じ額に収まる。
工業用水の役割を持たされた霞ヶ浦は汚染されてしまったが、この国で2番目の大きさを誇る湖。
古くからの名士に対するリスペクトはある。
その偉大な湖が波をたてている。
強烈な西日とともに、あの光景を忘れてしまいたくない。
終点の石岡という街に着いた。
鹿島鉄道のホームは一番端にある。
電飾で飾られていたのは、そのホームだけ。
街に出る。
駅前から緩やかな上り坂が続き、背後に山並が見える。
佃煮屋があって、酒を飲ませる店をあまり見かけない。
大人しか入れない雑居ビルは駅近くにあったが、やけに寂しい一角だった。
駅に戻ると沿線火災の影響で常磐線は止まっている。
コーヒーショップでココアを注文して再開を待つ。
もうすぐ動くというアナウンスが流れたが、あの混雑には加わりたくない。
やがて改札口が普段のような閑静さを取り戻すと、跨線橋を渡り上りホームに立った。
車内は空いていた。
土浦、取手、柏の街明かりにちょっとした感慨を覚えて江戸川を越える。
ビールと高木屋の草団子を購入して部屋に戻る。
昼間にメールを寄越した親友には、「嫁さんにメリー・クリスマスと言ってやれよ」と返信して、同じように不意とも思えるメールを送ってくれた新橋のママにも今日のオレを伝えた。
彼女からのメールは、こんなひとりのクリスマス・イブに箔をつけてくれた。
関連記事
-
「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、上越途中下車旅&高田で友人の結婚式に参加】初日(東京-長野)-吹上、北鴻巣、長野、豊野、新井、高田、春日山(高崎線、長野新幹線、信越本線)
鉄旅日記2012年12月8日・・・吹上駅、北鴻巣駅、長野駅、豊野駅、新井駅、高田駅、春日山駅(高崎線
-
「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】その1-扇町、浅野、海芝浦、国道、大川、保土ヶ谷、東戸塚、網代、伊豆多賀、宇佐美、熱海(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線)
鉄旅日記2012年4月8日その1・・・扇町駅、浅野駅、海芝浦駅、国道駅、大川駅、保土ヶ谷駅、東戸塚駅
-
「鉄旅日記」2017年冬【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】初日(東京-下今市-会津高原尾瀬口-会津若松)その1-大泉学園、北千住、東武動物公園、上三依塩原温泉口、中三依温泉、会津高原尾瀬口、七ヶ岳登山口、会津山村道場(西武池袋線/東武伊勢崎線/東武鬼怒川線/野岩鉄道/会津鉄道)
鉄旅日記2017年12月2日・・・大泉学園駅、北千住駅、東武動物公園駅、上三依塩原温泉口駅、中三依温
-
「鉄旅日記」2016年春【下北半島から東日本大震災被災地へ】2日目(下北-石巻)その1-大湊、野辺地、浅虫温泉、小湊、東青森、上北町、小川原湖、下田、八戸(大湊線、青い森鉄道)
鉄旅日記2016年3月20日その1・・・大湊駅、野辺地駅、浅虫温泉駅、小湊駅、東青森駅、上北町駅、小
-
「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】初日(東京-大垣)その2-郡上八幡、北濃、美濃白鳥、郡上八幡、関、美濃太田、岐阜(長良川鉄道/高山本線)
鉄旅日記2017年8月11日・・・郡上八幡駅、北濃駅、美濃白鳥駅、関駅、美濃太田駅、岐阜駅(長良川鉄
-
「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その2-山田上口、宮川、川添、伊勢柏崎、尾鷲、新鹿、熊野市、紀伊勝浦(参宮線、紀勢本線)
鉄旅日記2014年3月8日その2・・・山田上口駅、宮川駅、川添駅、伊勢柏崎駅、尾鷲駅、新鹿駅、熊野市
-
「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その3-燕三条、北三条、三条、長岡、水上、高崎(弥彦線/信越本線/上越線)
鉄旅日記2018年3月4日・・・燕三条駅、北三条駅、三条駅、長岡駅、水上駅、高崎駅(弥彦線/信越本線
-
「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その1(東京-岩倉)-蒲郡、三河鳥羽、吉良吉田、西尾、桜町前、新安城、知立、猿投、赤池、豊田市、新豊田(名鉄蒲郡線/名鉄西尾線/名鉄本線/名鉄三河線/名鉄豊田線)
鉄旅日記2015年3月7日その1・・・蒲郡駅、三河鳥羽駅、吉良吉田駅、西尾駅、桜町前駅、新安城駅、知
-
「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】最終日(郡山‐茂木‐下館‐東京)郡山スターホテル、新白河駅、黒羽くらしの館、茂木駅、下館駅、みつかいどうロードパーク、葛飾金町
車旅日記2000年5月7日 2000・5・7 8:35 郡山スターホテル510号室 最後の朝がやって
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その1(北陸道→R8)有磯海SA、玉ノ木パーキング、親不知ピアパーク、能生
車旅日記1996年5月6日 3:40 北陸自動車道-有磯海SA 多少はスッキリしたんだ。 あれ