「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】2日目(津山-鳥取)その2-金川、弓削、亀甲、美作滝尾、三浦、美作加茂、知和、智頭、用瀬、津ノ井、大岩、岩美、鳥取(津山線、因美線、山陰本線)
鉄旅日記2014年8月14日その2・・・金川駅、弓削駅、亀甲駅、美作滝尾駅、三浦駅、美作加茂駅、知和駅、智頭駅、用瀬駅、津ノ井駅、大岩駅、岩美駅、鳥取駅(津山線、因美線、山陰本線)
12:14 金川(かながわ)駅(津山線 岡山県)
岡山で津山線に乗り換える。
ここで9分間の停車。
この駅は無人駅じゃない。
ローカル線の駅では今じゃ珍しい。
駅前は広々としたロータリーになっていて、他に記憶できるものはない。
旭川に沿って蛇行する区間がどうやらここで終わるらしい。
既視感の正体はおそらく高山本線での車窓風景だ。
土地柄も気候帯も違えども、日本列島では似たような風景に時々出くわす。
岡山県内の山深いところを通って再び津山へと向かっている。
12:49 弓削(ゆげ)駅(津山線 岡山県)
数分の停車。
「川柳とエンゼルの町」。
エンゼルとは何だ。
駅にはやたらと河童がいるけれど、エンゼルとは何だろう。
和気、吉備真備、そして弓削。
岡山には百人一首の頃の人名にまつわる駅がある。
和気は清麻呂、ここ弓削は悪名高き道鏡の故郷に当たるのだろう。
桃太郎をはじめ昔話の宝庫だが、史上に岡山の名を見る機会は少ない。
この弓削駅も文化遺産的駅舎の他に見るべきものは少ない。
13:44 亀甲(かめのこう)駅(津山線 岡山県)
行き倒れの旅人を葬ると、弘法大師像を乗せた亀の甲羅状の岩が忽然とせり上がってきたという超常現象が起こったと信じられ、その岩が現存している美咲町。
武士という超現実的な武装集団が登場する前の時代には、そんな伝説が各地に残っている。
中国鉄道といった開業当初から、町名として存在しない亀甲が駅名として使用されている。
駅に食堂があったことに気づかずに通りに出て少し歩きビールを買って駅に戻った。
腹がまた暴れ出しそうだったから役場横の清潔な便所を借りる。
まとわりつくような暑さは増し、空には夏の雨雲が広がる。
雷神を連れてきそうなアイグレーの不穏な雲。
駅は食堂の他にも図書館も兼ね、実物や石像や駅舎、待合室のテーブルまでも亀づくし。
縁起のいい町の気怠い夏の日。
風はなく汗が引く気配もない。
美作滝尾(みまさかたきお)駅(因美線 岡山県)にて
津山駅で因美線に乗り換える。
15:27 三浦(みうら)駅(因美線 岡山県)
因美線内でひとりの赤ん坊をめぐる人情を見た。
席を譲った娘さんが愛らしかった。
車寅次郎が「男はつらいよ」第48作目で現れた美作滝尾駅で降りる。
列車が去った伝説駅の改札のムコウは若草色をしていた。
加茂川に沿って歩くこと約25分。
蛇やバッタの死骸を跨ぎ夏のひと降りに濡れ、ここ三浦駅まで。
民家の隙間に駅へと下る道がある。
まさに地元と生きる駅だ。
蚊に食われ、蝉の声を聞く。
これでどこからか高校野球のラジオ放送でも洩れ聞こえてくれば必要としていたすべてが揃う。
美作加茂(みまさかかも)駅(因美線 岡山県)にて
16:39 知和(ちわ)駅(因美線 岡山県)
歴史的建造物でもある秘境駅にいる。
美作加茂駅から徒歩約40分。
我ながら健脚ぶりに驚いている。
津山から智頭へは登りの行程になる。
この道を最初は車で、次には列車で、今度は歩きかと思いながら登っていった。
農機具の唸りが響き渡る。
通りすがりのお宅では3世代が玄関先でバーベキューをしていた。
人の気配はあたりに濃厚だが、秘境駅と称されるように民家はあまり見かけない。
閉鎖された駅事務所には黒電話と色鮮やかな花が花瓶に活けられている。
駅舎内には芳香剤が置かれ、掃除が行き届いている。
こんな場所にいるということは、言ってみれば夢が叶ったようなものだ。
褒めようとは思わないが、よく歩いてきたとは思う。
汗に濡れている。
次の列車が来るまでまだ時間がある。
もう一服したら、無事でいるとメールを入れよう。
ホームに戻ると線路を渡った先に木造の橋が架かっていることに気づき、思わず線路内に立ち入った。
そうしなければ、あの橋には近寄ることはできない。
智頭(ちず)駅(因美線/智頭急行 鳥取県)にて
この駅で鳥取行きに乗り継ぐ。
18:27 用瀬(もちがせ)駅(因美線 鳥取県)
数分の停車。
「流しびなの里」を謳っている。
出征兵士を見送る在りし日の写真などが飾られた古い駅だった。
両親に抱えられるように乗り込んできた浴衣姿の幼い姉妹がとてもかわいらしい。
今夜の鳥取は夏祭りか。
県境にかけて登ってきた分だけ今度は下りに入り、鳥取県に入っている。
19:02 津ノ井(つのい)駅(因美線 鳥取県)
数分の停車。
鳥取に飲みに出るのであろう、野球つながりの壮漢たちが郡家から乗り込んできた。
その内のひとりが車内で知人を見かけ声をかける。
当時から目立つ者と、当時から目立たなかったであろう者との再会の儀は、言葉少なに終わった。
次が終点鳥取。
線路は高架になっていく。
その手前の駅は、知和駅ほど古くはないが懐しいたたずまいで、夕暮れの灯は好もしい色をしていた。
大岩(おおいわ)駅(山陰本線 鳥取県)にて
鳥取駅で山陰本線上り列車に乗り換えて2つ目の駅で降りる。
20:52 岩美(いわみ)駅(山陰本線 鳥取県)
秘境駅のような大岩駅から開業100年を過ぎた由緒ある岩美駅まで歩く。
手にしていた地図から道は変わり、案に相違して大岩駅入口は9号国道に面してはおらず、仮に逆の行程を選んでいたとしたら、この暗さの中で辿り着くことに焦燥を感じたことだろう。
ひたすら歩いた9号国道は想像通りに暗く、記録すべきものはない。
岩美駅周辺には立派な病院があり、平成天皇皇后が視察に訪れたこともあるという。
終戦の日にも記すべき町の歴史があった。
様々な虫が集合した駅のホームで、思いがけず鉄道史の上で重要な駅にいることに感慨を持った。
22:46 和風ホテル松風荘
鳥取駅前は祭りの最中だった。
フィナーレに流れたのは「ふるさと」で、法被姿の若者たちが行き交っていた。
テキ屋のにいさんから買った焼き鳥は高かったけど、この旅で一番のご馳走だ。
こんなにも多くの人がいて、商圏は狭いながらも一級品の歓楽街を形成する鳥取の街に目を見張った。
粋がる若者たちと紳士的な大人たちの対比も面白かった。
この宿のご亭主と女将さんは、人としての付き合いをする上で最上級の品格を兼ね備えている。
そう言えば、今はもう閉じてしまったけど、かつてお世話になった京都祇園のスナックのマスターも出身地は鳥取と聞いていた。
ローソンの若者もいい仕事をしていたよ。
鳥取代表は八頭高校か。
頑張ってほしい。
でも山陰じゃ「熱闘甲子園」を見ることは叶わなかった。
関連記事
-
「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】初日(東京-桑名-阿下喜-西藤原-四日市-内部-西日野-津)その2-西藤原、あすなろう四日市、内部、日永、西日野、泊、南四日市(三岐鉄道三岐線/四日市あすなろう鉄道内部線/四日市あすなろう鉄道八王子線)
鉄旅日記2018年12月22日・・・西藤原駅、あすなろう四日市駅、内部駅、日永駅、西日野駅、泊駅、南
-
「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】初日(東京-三国峠-新潟)-町田、東福生駅、山田うどん、前橋市田口町、月夜野道路情報ターミナル、奥平温泉遊神館、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄
車旅日記1997年8月13日 1997・8・13 10:30 東京町田 出発が遅れている。 急
-
「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】初日(東京-大船渡)その3‐多賀城、高城町、石巻、鹿又(仙石線/石巻線)
鉄旅日記2020年2月22日・・・多賀城駅、高城町駅、石巻駅、鹿又駅(仙石線/石巻線) 12:44
-
「鉄旅日記」2013年春【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】最終日(和歌山-東京)その2-海老江、野田、吹田、摂津富田、向日町、西大路・・・(東西線、大阪環状線、東海道本線)
鉄旅日記2013年4月7日その2・・・海老江駅、野田駅、吹田駅、摂津富田駅、向日町駅、西大路駅(東西
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.2【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】その1-天王台、植田、泉、いわき、富岡(常磐線)
鉄旅日記2019年3月10日・・・天王台駅、植田駅、泉駅、いわき駅、富岡駅(常磐線) 2019・3・
-
「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その2-天塩中川駅、音威子府駅、美深駅、名寄駅、風連駅、和寒駅、比布駅、神居古潭、旭川空港
車旅日記2004年5月5日・・・天塩中川駅、音威子府駅、美深駅、名寄駅、風連駅、和寒駅、比布駅、神居
-
「鉄旅日記」2018年水無月【地元からひと駅先の松戸からは、新京成線が出ております。】-松戸、八柱、新八柱、くぬぎ山、新鎌ヶ谷、北習志野、京成津田沼、ユーカリが丘、勝田台、東葉勝田台(新京成線/京成本線/山万ユーカリが丘線)
鉄旅日記2018年6月3日・・・松戸駅、八柱駅、新八柱駅、くぬぎ山駅、新鎌ヶ谷駅、北習志野駅、京成津
-
「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その1-稚内サンホテル、稚内公園、ノシャップ岬、サロベツ原生花園、サロベツ河畔、パンケ沼、下沼駅、幌延駅、雄信内駅
車旅日記2004年5月5日・・・稚内サンホテル、稚内公園、ノシャップ岬、サロベツ原生花園、サロベツ河
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その1-近鉄富田、富田、近鉄四日市、湯の山温泉、伊勢若松、平田町、鈴鹿市、鳥羽、賢島(名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)
鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄富田駅、富田駅、近鉄四日市駅、湯の山温泉駅、伊勢若松駅、平田町
-
「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】3日目(姫路-十三)その1-山陽姫路、山陽網干、飾磨、大塩、高砂、山陽垂水、垂水、滝の茶屋、山陽塩屋、塩屋、山陽須磨(山陽電車本線/山陽電車網干線)
鉄旅日記2017年8月13日・・・山陽姫路駅、山陽網干駅、飾磨駅、大塩駅、高砂駅、山陽垂水駅、垂水駅