*

「車旅日記」1996年秋【夏をあきらめきれず、秋。再び夏のルートへと向かったのでございます。】最終日(鳴子温泉‐米沢‐東京) 鳴子サンハイツ、鳴子温泉駅、芦沢駅、赤湯駅、米沢郊外、磐梯、猪苗代湖、新白河駅、氏家、春日部、三軒茶屋、東京町田

公開日: : 最終更新日:2025/05/12 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年11月3日

1996・11・3 9:09 鳴子サンハイツ
拝啓
その後、元気ですか?
東京の天気はどうだった?
テニスはできたのですか?
オレの道中は昨日までずっと雨だったよ。
そういうわけで、月はどこにも昇らなかった
だけど東北の広大な田園地帯に細雨が降る風景というのは悪くない。
なんか豊かだなって、茫々としていたよ。
これから東京へ向かう。
土産を買ったよ。
それにしても、このハガキは貴女のもとにいつ着くんだ?
敬具
11・3早朝、宮城鳴子 上天気

いい朝だ。
ここから見える東北の山河はまだ色づいていない。

そう言えば、それほど寒くない。
こっちにはもう冬が来ているものだとばかり思っていた。

今朝の朝食はまた貧しい。
2本の牛乳パックとチョコレートだけだ。
そして東京へ向かう。

今、彼女にあてたハガキを書き上げた。
テレビをつけず、どこかの川か滝の音が聞こえる中で書いた。

宿にいる時もツアーの途中。
なるべく世間のくだらない動向には耳でさえ関わりたくない。

そんな中でもオレが興味を持つことがひとつある。
それが彼女のこと。

「オレと一緒に来ないか?」。
そんな言葉が走ってきたルートに落ちている。

オレの気持ちを伝える言葉。
それはいくらでも生産できるんだ。
これからも数か所で落としていくだろう。

そして今夜はきっと月が昇る。

「あれは女なのか?」。
数日前、そう彼女に尋ねた。

月が女性であるならば、今のオレにはすなわち彼女だな。

再会を楽しみにしている。

10:04 鳴子温泉駅
彼女への手紙をポストに投じた。

そして駅にいる。
3度目ともなると、もう馴染みだな。
ここで何をしてきたっていうわけじゃないけれど。

まだどっちに行こうか決めかねている。
東京に進路をとるにはもったいない空だよ。

11:23 芦沢駅
ススキの穂が揺れる。
この寂しい駅を通る列車は東北を縦断している。

ここを通る列車が青森まで行くとはとても思えない。
それほどひっそりとしている。

待合室には誰もいない。
駅長の姿も見えない。
駅前にはクリーニング屋があるだけで、そこさえ閉まっている。

この駅に列車が止まるのはいつだろう?

鳴子から47号国道、紅葉のルートを通ってきた。
そのルートは13号国道に入った今も続いている。

渓谷、鉄橋、ススキの群生、小川のせせらぎ、リヤカーを押す青年、彼に寄り添い歩く恋人。

すぐには思いつかないけど、心の底でオレが接したかったものすべてが通り道にあったような気がしたよ。
車の中に流れるブルースもよかった。

今、特急列車が通り過ぎた。
山形行の特急。

神寂びたこの駅には20分後に同じく山形行の列車が止まる。

13:18 赤湯駅
きれいな町だ。
そしてきれいな駅だ。

駅では山形弁に混じって、オレが暮らしているあたりで話されている言葉も聞こえる。

ここには山形新幹線が止まるのか。
ドーム型の駅にはライトアップのための設備が施されている。
そう言えば、少年の頃に両親に連れられて入った赤色の湯は、この町の湯だったのだろうか。

紅葉のルートは正解だった。
とても気分良かったよ。

14:18 121号国道‐米沢郊外
喜多方の北28㎞の地点。
まだ紅葉ルートは続いている。

車を降りて煙草に火をつけ、この山峡に囲まれた世界でしばし茫然としていた。

この道はよく整備されていて、とても走りやすい。
アラニス・モリセットの悲しい歌声が峠によく響く。

穏やかな午後。
今はそんな時間。

15:20 121号国道‐喜多方ラーメン本舗
友は在宅していなかった。
ラーメン屋は混んでいる。

仕方がない。
朝のチョコレートの残りで食いつなぐことにした。
あれからアイスボックスで冷やしたから、少しはマシな味になっている。

紅葉のルートは終わった。
でもここからの風景もなかなかのものだ。

田野で老夫婦が炭を焼いている。
その脇には小さな祠がある。

忘れていた日本の小景。
東北の山河は秋色。

天気もいい。
それほど空腹は気にならない。

さあ、混雑した121号国道に戻ろう。

15:57 猪苗代塩川線-磐梯
日を浴びて赤く光るススキが美しい。
だけど今は渋滞中。
ここらは福島のメッカか。

ようやく腹に物を入れた。
喜多方のじゃないけど、チャーシュー麵とても美味かったよ。

あと1時間で日が暮れる。
青空の中で赤く染まった山々がとても美しい。

16:43 115号国道‐猪苗代湖
湖畔の道は渋滞している。
次の信号を左に曲がればそこに出る。

そこは49号国道。
ここから見える湖は白く霞んでいる。

空は青く、雲は紅く染まっている。
背後の山々、あれは何という色だろう。

日は今、新潟方面に沈もうとしている。
このツアー最後の寄港地は幻想的な色に包まれている。

そしてもうじき夜が来る。
次に湖が見える時、何色をしているのだろう。

19:14 新白河駅
あといくつの町に寄れるだろう。
そんなことを考えた。

ここは以前、東京に帰るオレを友が送ってくれた場所。
その友とは今回連絡がつかず、郡山はすぐに通過してしまった。

でも友よ。
またいつか会えるだろう。

今回はひとりきりのツアーを完成させたかった。
その反面、ひとりを寂しく思うことがあった。
それが友への思いなのだろう。

電話には今夜も父親が出た。
OK、これから帰るよ。
うん、気をつけて帰るよ。

20:53 4号国道‐氏家
宇都宮を前にして断続的な渋滞が続いている。
この前もそうだったな。
思い出したよ。

地方都市の中にも東京化している町がある。
そう感じたよ。

23:05 4号国道‐春日部くるまやラーメン
かなりハードなルートだった。
4号国道は順調にオレを家に運ぶかわりに休息を許さない。

白河から200分で、ようやく腰を伸ばすことができた。
そしてここがおそらく最後の町になる。

長かったのか、そうでなかったのかよく分からないが、これから家に帰る。

思いは達したのかどうかも分からないが、これからまっすぐ家に帰るよ。

24:37 246号国道‐三軒茶屋
さっき大声で「バカヤロー」と怒鳴った。

夜を選んで帰ってきたのに今夜の東京も相変わらず狂っている。
この都会はどうしようもないくらい動脈硬化が進行している。

この連中は一体どこから湧いてきたのか。
いずれにしろ、このイカレタ都会は何とかした方がいい。
なかなか怒りが収まらない。

結局いろんな町を通ってきて分かったことは、本質的にはこの東京が一番貧しいってことだ。

26:27 東京町田
無事に帰ってこれた。

今すべてを終えて、それでいいじゃないかと思っている。
昨日までの雨も、月が昇らなかったことも、最後の東京大渋滞も。

ツアーの始まりでは怯えていた。
だけど楽しめた。

そしてツアーが終わってもまた何かが始まっていく。
始めなければならないものが何なのかは分かっている。

それを思い、また怯えている。

でもやがてそっちにも旅立つのだろう。
そう、3日前のように。

関連記事

「車旅日記」2006年皐月 2日目(黒磯-仙台)その2-末続駅、双葉駅、原ノ町駅、相馬駅、亘理駅、岩沼駅、名取駅、ホテルイーストワン仙台 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】

車旅日記2006年5月3日・・・末続駅、双葉駅、原ノ町駅、相馬駅、亘理駅、岩沼駅、名取駅、ホテルイー

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 初日(東京-盛岡)その2-郡山、福島、曽根田、仙台、一ノ関(東北本線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月21日・・・郡山駅、福島駅、曽根田駅、仙台駅、一ノ関駅(東北本線) 11:0

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その1‐鷹ノ巣、二ツ井、鷹巣、阿仁合(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)

鉄旅日記2023年1月13日・・・鷹ノ巣駅、二ツ井駅、鷹巣駅、阿仁合駅(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道)

記事を読む

「鉄旅日記」2013年如月【休日おでかけパスで、上総下総途中下車旅&習志野シンフォニックブラス(NSB)演奏会】その1-我孫子、東我孫子、新木、湖北、布佐、小林、木下、安食、下総松崎、成田空港、酒々井、物井、東千葉、本千葉、西千葉、新検見川、幕張、東船橋、津田沼(成田線、総武本線)

鉄旅日記2013年2月17日その1・・・我孫子駅、東我孫子駅、新木駅、湖北駅、布佐駅、小林駅、木下駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年初夏 【上信越ひとり旅】最終日(長岡-東京)-長岡、東三条、吉田、新潟、新津、会津若松、郡山、磐城石川、磐城塙、玉川村、常陸大宮、金町(信越本線/弥彦線/越後線/磐越西線/水郡線/常磐線)

鉄旅日記2009年7月20日・・・長岡駅、東三条駅、吉田駅、新潟駅、新津駅、会津若松駅、郡山駅、磐城

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走 初日(東京-酒田)その1‐金町、北千住、上野、高崎(常磐線/高崎線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】

鉄旅日記2019年12月7日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、高崎駅(常磐線/高崎線) 2019・1

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その2‐新庄、鳴子温泉、小牛田(陸羽東線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月4日・・・新庄駅、鳴子温泉駅、小牛田駅(陸羽東線) 11:19 新庄(しん

記事を読む

「鉄旅日記」2006年如月 初日-佐倉、成東、大網、上総一ノ宮、上総興津、安房鴨川、館山、安房勝山(常磐線/成田線/総武本線/東金線/外房線/内房線) 【鉄道旅に目覚め、1泊2日で房総半島にまいりました。】

鉄旅日記2006年2月4日・・・佐倉駅、成東駅、大網駅、上総一ノ宮駅、上総興津駅、安房鴨川駅、館山駅

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春 その2-新清水、静岡、草薙、興津、裾野、御殿場、駿河小山、国府津、逗子、横須賀、田浦、新川崎(東海道本線、静岡鉄道、御殿場線、横須賀線) 【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】

鉄旅日記2012年4月8日その2・・・新清水駅、静岡駅、草薙駅、興津駅、裾野駅、御殿場駅、駿河小山駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 最終日(新庄-東京)その1-新庄、最上、鳴子温泉、岩出山、北浦、小牛田、鹿又、石巻(陸羽東線/石巻線) 【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】

鉄旅日記2009年10月11日・・・新庄駅、最上駅、鳴子温泉駅、岩出山駅、北浦駅、小牛田駅、鹿又駅、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年師走 初日(東京-会津宮下)その1 ‐金町、水戸、常陸大子(常磐線/水郡線)【11年ぶりに全線運転再開を果たした只見線に乗りにいきました。】

鉄旅日記2022年12月10日・・・金町駅、水戸駅、常陸大子駅(常磐

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。最終日(銚子犬吠埼-東京)その2 ‐津宮鳥居河岸から香取神宮へ。/香取駅/水郷駅【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月9日【香取神宮にて】・・・香取駅、水郷駅(成

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。最終日(銚子犬吠埼-東京)その1 ‐銚子で過ごした記録でございます。/犬吠埼灯台/銚子駅【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月9日【犬吠埼温泉にて】 水辺の写真ばか

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。初日(東京-銚子犬吠埼)その2 ‐銚子、笠上黒生、外川、犬吠(銚子電鉄)【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月8日・・・銚子駅、笠上黒生駅、外川駅、犬吠駅

「鉄旅日記」2022年神無月 ツレと訪ねた佐原~銚子~香取旅でございます。初日(東京-銚子犬吠埼)その1 ‐成田、佐原(成田線)/佐原の大祭【Facbookへの投稿より振り返ります。】

鉄旅日記2022年10月8日・・・成田駅、佐原駅(成田線)/佐原の大

→もっと見る

    PAGE TOP ↑