「鉄旅日記」2018年卯月 その3-佐和、友部、下館、騰波ノ江、下妻、石下(常磐線/水戸線/関東鉄道常総線) 【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月25日・・・佐和駅、友部駅、下館駅、騰波ノ江駅、下妻駅、石下駅(常磐線/水戸線/関東鉄道常総線)
17:55 佐和(さわ)駅(常磐線 茨城県)
愛しきものの一年後の姿。
その姿を連想させる幼子を連れた父親の横にいた。
男の子はとてもかわいくて微笑ましい光景だったけど、胸がかきむしられるようだった。
誰に罪のある話じゃないけれど。
割烹旅館が駅右手に聳え立ち、雀荘も経営する食べ物屋が建てたビルが正面にある。
灰色の空の下で孤独を感じるオレには、駅前風景はそんな風にしか見えなかった。
駅は日本家屋風の年代物だった。
いつまでもそんな駅舎文化を残してほしいと思う。
彼女にメッセージを送った。
今は水戸駅で24分の停車中。
今日購入した酒は7本目になる。
18:58 友部(ともべ)駅(常磐線/水戸線 茨城県)
9年前に工事中だったターミナル駅に再び降りた。
ビジネスホテルの姿もあるが、奥行きは狭く、味のある飲食店がちらほらと灯をともす町。
かつての宿場の色を濃厚に残す町。
水戸からは3駅の距離だが、水戸を感じない。
ここから線路は野州方面に分かれ、よりローカル色を増していく。
姿は見えないが、すぐ脇のボックス席から聞こえる若い女性の会話からは、微笑ましいほどの常陸訛りが聞こえてくる。
酒は8本目を数える。
20:01 下館(しもだて)駅(水戸線/真岡鐡道/関東鉄道常総線 茨城県)
JR側に降りて坂を上がってみた。
味のある坂道だが、夜に溶けている。
駅前にはチェーン居酒屋が3軒ほど。
じいさんが太った孫を連れてぶらぶら歩いている。
そう言えば、昨日の再会当初はどこか他人のように感じたものだ。
跨線橋を渡り関東鉄道口へ。
ビジネスホテルを発見して、この町に泊まる近い未来を想像してみる。
友部でも試みた。
そう言えば、茨城県にだけは泊まった記憶がない。
関東鉄道駅舎内にあったカレー屋は出ていってしまって、テナント募集の貼り紙。
駅員は穏やかな笑みでオレを迎え入れ、純度100%の常陸人の中にひとり。
20:26 騰波ノ江(とばのえ)駅(関東鉄道常総線 茨城県)
構内踏切に下りて行き先を写す。
誰ひとりいない20:30の町に下館行が着いた。
ひとりの男が降りて、残った乗客は一名。
ここには優しい風が吹いている。
深田恭子さんに一発で持っていかれた「下妻物語」の舞台にもなった駅だという。
夕日が差す駅。
ヒグラシの声が聞こえている。
土屋アンナさん演じる「イチゴ」は、深田恭子さん演じる「モモコ」を励まし、翌日の「けじめ」に向かうことを隠さずバイクで去っていく。
美しい場面だった。
あの駅だという。
Suicaのタッチパネルが置かれた現在。
目の前を通る県道を大型トラックが疾走していく。
やってきた1両の車両には東南アジアの青年がただひとり乗っていて、オレには分からない方法で電話で喋っていた。
彼は次の大宝で降りて、オレひとり。
21:25 下妻(しもつま)駅(関東鉄道常総線 茨城県)
古い商店街が続く上町通りを歩く。
カラオケ屋を除いてすべて閉まっている。
市役所は反対側だと事前に知ってはいたが、行く術を知らずなだらかな坂道を上っていく。
そこはかつて車で通った道だった。
常陽銀行に突き当たる角を覚えていたよ。
そこを左に折れて500メートルほどのところにガソリンスタンドが光っている。
その向かいにセブンイレブンがあった。
9本目のビールと夕食を仕入れて駅へ。
この町は明らかに東京文化圏に組み込まれることに抗っている。
ビールを売っている場所を見つけた今、その事実はとても好ましい。
おそらく住人はあの映画に感謝し、あの映画で描かれた町をほどよく忘れている。
どこに行きたかったわけじゃないが、深田恭子さんが圧倒的なまでに愛らしかったのと、映画の出来栄えに誘われて、映画を観てから3度目の下妻行。
反対側への跨線橋に上ったら、そっちにも行きたくなったよ。
21:46 石下(いしげ)駅(関東鉄道常総線 茨城県)
この町にもうすぐ泉谷しげるさんがやってくる。
会場は豊田城とある。
平将門の根拠地だ。
ここが最寄りだったか。
探していたんだ。
鬼怒川や小貝川が氾濫を繰り返すあたりは現在の街道からは外れている。
歴史は時に現在では及びもつかない場所で進行する。
駅前ではつくばセントラルホテルがただ一軒光を放っていた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2012年夏 初日(東京-富山)-大垣、田村、近江塩津、敦賀、越前花堂、美山、九頭竜湖、越前大野、福井、美川、金沢、津幡(東海道本線、北陸本線、越美北線) 【青春18きっぷで、福井・石川途中下車旅】
鉄旅日記2012年8月25日・・・大垣駅、田村駅、近江塩津駅、敦賀駅、越前花堂駅、美山駅、九頭竜湖駅
-
-
「鉄旅日記」2015年夏 初日(東京-新南陽)-はりま勝原、阿品、島田、新南陽(山陽本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月12日・・・はりま勝原駅、阿品駅、島田駅、新南陽駅(山陽本線) 2015・8
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 最終日(門司港-東京)その1‐門司港、小森江、折尾、若松(鹿児島本線/筑豊本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月16日・・・門司港駅、小森江駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本線/筑豊本線)
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その1 ‐松戸、神立、友部、水戸、いわき(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月8日・・・松戸駅、神立駅、友部駅、水戸駅、いわき駅(常磐線) 2022
-
-
「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その4‐置賜、高畠、米沢(奥羽本線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】
鉄旅日記2020年4月4日・・・置賜駅、高畠駅、米沢駅(奥羽本線) 15:32 置賜(
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 最終日(紀伊田辺-東京)その2-吉野口、高田、畝傍、桜井、柳本(和歌山線/桜井線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月3日・・・吉野口駅、高田駅、畝傍駅、桜井駅、柳本駅(和歌山線/桜井線) 10
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏 2日目(和歌山-松阪)その1-和歌山市、和歌山、海南、西御坊、御坊、紀伊田辺、白浜(紀勢本線/紀州鉄道) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】
鉄旅日記2008年7月20日・・・和歌山市駅、和歌山駅、海南駅、西御坊駅、御坊駅、紀伊田辺駅、白浜駅
-
-
「鉄旅日記」2015年夏 4日目(西鉄柳川-広島)その2-田川後藤寺、糸田、糒、金田、門司港、厚狭、湯ノ峠、四郎ヶ原、南大嶺、美祢(平成筑豊鉄道糸田線、平成筑豊鉄道伊田線、鹿児島本線、美祢線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月15日その2・・・田川後藤寺駅、糸田駅、糒駅、金田駅、門司港駅、厚狭駅、湯ノ峠
-
-
「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その2 ‐北飯山、飯山、蓮、森宮野原(飯山線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】
鉄旅日記2021年7月11日・・・北飯山駅、飯山駅、蓮駅、森宮野原駅(飯山線) 9:16
-
-
「鉄旅日記」2009年晩秋 初日(東京-倉敷)その1-東京、円町、園部、安栖里、山家、市島、柏原、谷川、西脇市、粟生(東海道新幹線/山陰本線/福知山線/加古川線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】
鉄旅日記2009年11月21日・・・東京駅、円町駅、園部駅、安栖里駅、山家駅、市島駅、柏原駅、谷川駅