「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その5‐小国、坂町、新津(米坂線/羽越本線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】
鉄旅日記2020年4月4日・・・小国駅、坂町駅、新津駅(米坂線/羽越本線)
17:50 小国(おぐに)駅(米坂線 山形県)
今泉で赤湯から延びてきた鉄路が接近してきて、やがて長井へと離れていく山形鉄道の行く手に釘付けになった。
奥に覗く雪をいただいた山並が、そこへと連なる風景を太刀持ちのように従えている。
里山を往く米坂線。
今泉を過ぎると蛇行する清流が寄り添い始めた。
手ノ子を過ぎて人家は途切れ、秘境を往くが如く峠道に入る。
豪壮な旧家が集落の端にある。
長い峠道を過ぎて羽前沼沢に着く。
少年がひとり降りていった。
犬を散歩させる半袖姿の太った男が村を歩いていた。
そしてまた人煙まれな峠道。
この国の陰陽を分ける山並の険しさを想う。
そしてこの谷間は奇跡とも言えるように太古に生まれ、交通路となった。
伊佐領集落はおよそ100軒ほどか。
深遠かつ崇高な思いで紡がれてきた歴史を想う。
17:33小国駅着。
行き違い19分の停車。



町を歩く。
山間に生まれたオアシスのような町には夜の明かりが灯り、スーパーには一番搾りの黒生が置いてある。
駅ではツキノワグマの剥製が出迎え、ビジネスホテルもある。



この町に泊まりたい。
そう思う町だった。
クアーズテック小国事業所。
進行方向右手に見える大きな工場が小国を守るように入口を固めていた。
20:02 坂町(さかまち)駅(羽越本線/米坂線)
小国を過ぎると羽越国境に至る。
国境線。
過ぎてきた峠道など比較にならない険しさだ。
横川から荒川へ。
細流が大河となる成長物語を見る。
約10分後に到着した越後金丸駅には立派な駅舎があるが、集落は見られない。
大河は滝の恵みも受け、途中にいくつかのダムが設けられ、海を目指す。
越後片貝駅もログハウス風の立派な駅舎が立つ。
集落と呼ぶには心許ない。
やがて谷は開けてくる。
陰陽の界を越えたのだ。
小国はこの道を往った者たちにとって、峠前の歓楽町だったのだろう。
越後下関を過ぎると米沢の風景を見るような里山。
終点の坂町も近い。
何か雄大な物語を見てきたような米坂線沿線。
坂町の駅前通りを写したのは18:32。

列車の到着を待つための時間つぶしに駅前通りを歩き、一杯のつもりが3杯になった坂町の夜。
それだけ気持ちよく飲めたんだ。
当然だが、乗るつもりでいた列車はとうに町を出ている。
ご縁と、町の明かりを保つ努力を欠かさない「居酒屋とーく」のご主人に最大の敬意を捧げます。
串揚げ盛りも刺身盛りもたいへん美味しゅうございました。
そして再び坂町駅。


20:57 新津(にいつ)駅(羽越本線/信越本線/磐越西線 新潟県)にて


21:30 ビジネスホテル新光
店を出ると、気にはならない程度の雨が降っていた。
2週間前の高山でも、坂町でも美味しい酒を飲んだ。
そうなれば、計画に支障が出ようがすべては丸く収まる。
本当は白新線経由でいくつかの駅に途中下車するつもりでいたが、坂町で暖簾を守る若者にほだされて、夜は坂町にあてた。
恋人が自身の素敵な写真を送ってきた。
道々献身的な彼女を想っていた。
今夜オレがどうしていたか。
町の名前を挙げてもきっと分からないだろう。
とりあえず久々にコロナとは無縁の夜を過ごしている。
それに今日はよく飲んだ。
新津は雨だった。
ここのおかみさんが「キャンセル続きで・・・」とこぼす。
大変だろう。
オレも会社も大変さ。
4月4日、この素晴らしき新潟の夜。
こんな状況下で旅に出たなどとはとても発信できないが、いつかどういう形にしろ恩は返す。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2018年弥生-小手指、西所沢、西武遊園地、小川、東村山、西武園、西武遊園地、萩山、小平(池袋線/狭山線/山口線/多摩湖線/国分寺線/拝島線/西武園線/新宿線)【西武線を楽しむ日。いくつかのターミナル駅に降りてみたかったのでございます。】
鉄旅日記2018年3月17日・・・小手指駅、西所沢駅、西武遊園地駅、小川駅、東村山駅、西武園駅、西武
-
-
「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、北海道途中下車旅】3日目(室蘭-岩見沢)-室蘭、苫小牧、鵡川、静内、様似、追分、夕張、新夕張、清水沢(室蘭支線、室蘭本線、日高本線、石勝線、夕張支線)
鉄旅日記2012年8月13日・・・室蘭駅、苫小牧駅、鵡川駅、静内駅、様似駅、追分駅、夕張駅、新夕張駅
-
-
「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その1-赤羽、岡本、烏山、大金、宝積寺、氏家、石橋、自治医大、小金井、小山(東北本線、烏山線)
鉄旅日記2013年3月31日その1・・・赤羽駅、岡本駅、烏山駅、大金駅、宝積寺駅、氏家駅、石橋駅、自
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その3‐米原、京都、梅小路京都西、丹波口、花園(東海道本線/山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月23日・・・米原駅、京都駅、梅小路京都西駅、丹波口駅、花園駅(東海道本線/山
-
-
「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その1-東京、大垣、米原、長浜、敦賀、鯖江、西鯖江、大聖寺、加賀温泉(東海道本線/北陸本線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】
鉄旅日記2008年9月13日・・・東京駅、大垣駅、米原駅、長浜駅、敦賀駅、鯖江駅、西鯖江駅、大聖寺駅
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 最終日(三沢-東京)その3 ‐鹿島、原ノ町、いわき、常陸多賀、勝田(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月10日・・・鹿島駅、原ノ町駅、いわき駅、常陸多賀駅、勝田駅(常磐線)
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その5 ‐逗子、北鎌倉、平塚、国府津(横須賀線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月5日・・・逗子駅、北鎌倉駅、平塚駅、国府津駅(横須賀線/東海道本線)
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】最終日(JR難波-東京)その1-JR難波、八尾、奈良、笠置、伊賀上野、上野市、伊賀神戸、伊勢中川、近鉄長島、長島(関西本線/伊賀鉄道/近鉄大阪線/近鉄名古屋線)
鉄旅日記2017年3月20日・・・JR難波駅、八尾駅、奈良駅、笠置駅、伊賀上野駅、上野市駅、伊賀神戸
-
-
「車旅日記」2005年冬 最終日(人吉-熊本空港)走行距離240㎞ その1-人吉駅、一勝地駅、球泉洞駅、佐敷駅、上田浦駅、千丁駅、有佐駅、道の駅不知火 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】
車旅日記2005年2月13日・・・人吉駅、一勝地駅、球泉洞駅、佐敷駅、上田浦駅、千丁駅、有佐駅、道の
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その5 ‐川崎新町、八丁畷、矢向、平間(浜川崎支線/南武線)/ガス橋 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、相模線、鶴見線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月6日・・・川崎新町駅、八丁畷駅、矢向駅、平間駅(浜川崎支線/南武線)/ガス橋
