*

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その5‐小国、坂町、新津(米坂線/羽越本線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/05 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年4月4日・・・小国駅、坂町駅、新津駅(米坂線/羽越本線)

17:50 小国(おぐに)駅(米坂線 山形県)
今泉で赤湯から延びてきた鉄路が接近してきて、やがて長井へと離れていく山形鉄道の行く手に釘付けになった。
奥に覗く雪をいただいた山並が、そこへと連なる風景を太刀持ちのように従えている。

里山を往く米坂線。
今泉を過ぎると蛇行する清流が寄り添い始めた。

手ノ子を過ぎて人家は途切れ、秘境を往くが如く峠道に入る。
豪壮な旧家が集落の端にある。

長い峠道を過ぎて羽前沼沢に着く。
少年がひとり降りていった。
犬を散歩させる半袖姿の太った男が村を歩いていた。

そしてまた人煙まれな峠道。
この国の陰陽を分ける山並の険しさを想う。

そしてこの谷間は奇跡とも言えるように太古に生まれ、交通路となった。

伊佐領集落はおよそ100軒ほどか。
深遠かつ崇高な思いで紡がれてきた歴史を想う。

17:33小国駅着。
行き違い19分の停車。


町を歩く。
山間に生まれたオアシスのような町には夜の明かりが灯り、スーパーには一番搾りの黒生が置いてある。
駅ではツキノワグマの剥製が出迎え、ビジネスホテルもある。


この町に泊まりたい。
そう思う町だった。

クアーズテック小国事業所。
進行方向右手に見える大きな工場が小国を守るように入口を固めていた。

20:02 坂町(さかまち)駅(羽越本線/米坂線)
小国を過ぎると羽越国境に至る。

国境線。
過ぎてきた峠道など比較にならない険しさだ。

横川から荒川へ。
細流が大河となる成長物語を見る。

約10分後に到着した越後金丸駅には立派な駅舎があるが、集落は見られない。

大河は滝の恵みも受け、途中にいくつかのダムが設けられ、海を目指す。

越後片貝駅もログハウス風の立派な駅舎が立つ。
集落と呼ぶには心許ない。

やがて谷は開けてくる。
陰陽の界を越えたのだ。

小国はこの道を往った者たちにとって、峠前の歓楽町だったのだろう。

越後下関を過ぎると米沢の風景を見るような里山。
終点の坂町も近い。

何か雄大な物語を見てきたような米坂線沿線。
坂町の駅前通りを写したのは18:32。

列車の到着を待つための時間つぶしに駅前通りを歩き、一杯のつもりが3杯になった坂町の夜。
それだけ気持ちよく飲めたんだ。

当然だが、乗るつもりでいた列車はとうに町を出ている。

ご縁と、町の明かりを保つ努力を欠かさない「居酒屋とーく」のご主人に最大の敬意を捧げます。
串揚げ盛りも刺身盛りもたいへん美味しゅうございました。

そして再び坂町駅。

20:57 新津(にいつ)駅(羽越本線/信越本線/磐越西線 新潟県)にて

21:30 ビジネスホテル新光
店を出ると、気にはならない程度の雨が降っていた。

2週間前の高山でも、坂町でも美味しい酒を飲んだ。
そうなれば、計画に支障が出ようがすべては丸く収まる。

本当は白新線経由でいくつかの駅に途中下車するつもりでいたが、坂町で暖簾を守る若者にほだされて、夜は坂町にあてた。

恋人が自身の素敵な写真を送ってきた。
道々献身的な彼女を想っていた。

今夜オレがどうしていたか。
町の名前を挙げてもきっと分からないだろう。

とりあえず久々にコロナとは無縁の夜を過ごしている。
それに今日はよく飲んだ。

新津は雨だった。
ここのおかみさんが「キャンセル続きで・・・」とこぼす。

大変だろう。
オレも会社も大変さ。

4月4日、この素晴らしき新潟の夜。
こんな状況下で旅に出たなどとはとても発信できないが、いつかどういう形にしろ恩は返す。

関連記事

「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その4-陸奥湊、白銀、鮫、久慈、宮古(八戸線/三陸鉄道リアス線) /蛇の目寿司【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月22日・・・陸奥湊駅、白銀駅、鮫駅、久慈駅、宮古駅(八戸線/三陸鉄道リアス線)

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その3 ‐米沢、赤湯、中川、山形、北山形(奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・米沢駅、赤湯駅、中川駅、山形駅、北山形駅(奥羽本線) 9

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 初日(東京-高松)その5 ‐岡山、児島、高松(本四備讃線/予讃本線)/児島の民話 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月19日・・・岡山駅、児島駅、高松駅(本四備讃線/予讃本線)/児島の民話

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 初日その3(東京-岩倉)-太田川、常滑、中部国際空港、上小田井、西春、岩倉(名鉄常滑線/名鉄空港線/名鉄犬山線) 【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】

鉄旅日記2015年3月7日その3・・・太田川駅、常滑駅、中部国際空港駅、上小田井駅、西春駅、岩倉駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2005年初冬 その1-松戸、我孫子、成田、銚子(常磐線/成田線/銚子電鉄) 【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】

鉄旅日記2005年12月10日・・・松戸駅、我孫子駅、成田駅、銚子駅(常磐線/成田線/銚子電鉄)

記事を読む

「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】最終日 事故から帰京を振り返って。

車旅日記1996年8月15日 1996・8・15 東京 望郷の思いとは別に昨日家に帰り着いた。 後

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その6‐上川口、養父、豊岡、香住(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・上川口駅、養父駅、豊岡駅、香住駅(山陰本線) 18:35&

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その1-保谷、池袋、赤羽、高崎、井野、水上(西武池袋線/埼京線/高崎線/上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

鉄旅日記2018年3月3日・・・保谷駅、池袋駅、赤羽駅、高崎駅、井野駅、水上駅(西武池袋線/埼京線/

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春 最終日(紀伊勝浦-東京)その2-神志山、賀田、九鬼、相賀、紀伊長島、多気、名古屋、豊田町、六合、由比(紀勢本線/東海道本線) 【青春18きっぷで、紀伊半島へ】

鉄旅日記2014年3月9日その2・・・神志山駅、賀田駅、九鬼駅、相賀駅、紀伊長島駅、多気駅、名古屋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋 最終日(武生-東京)その1‐越前武生、武生、三方、美浜(北陸本線/小浜線) 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月23日・・・越前武生駅、武生駅、三方駅、美浜駅(北陸本線/小浜線)

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母

→もっと見る

    PAGE TOP ↑