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「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、銚子へ、房総へ。】その2-猿田、旭、八日市場、八街、成東、本納、茂原、千倉、佐貫町、姉ヶ崎、市川(総武本線、東金線、内房線、外房線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/29 旅話 2012年

鉄旅日記2012年3月12日その2
11:01 猿田(さるだ)駅(総武本線 千葉県)
お年寄りの話す言葉が聞き取りづらい。
そして概して東京のお年寄りより明らかに老けて見える。

ここから東京は遠い。
文化とは難しい言葉であり、表現だ。

猿田神社へと誘う矢印だけがある駅前だった。

12:07 旭(あさひ)駅(総武本線 千葉県)
ステキな名の町だ。

雨雲もまだ浮かんじゃいるが時折降り注ぐ日差しは春のものだ。
そう、オレは房総に春を探しにきたんだよ。

東日本大震災で被害を受けた海岸はここから遠い。
だだっ広い駅前に出て途方に暮れる予測も立ったが、古い商店が続く一郭を辿るうちに県道に出て、中華料理屋で昼食をとった。

かつての夜、銚子からの帰りに、思わず降りてみたいと惹かれた駅はここだったか、次の八日市場だったか。
答えは間もなく出る。

冷たい風は止まない。

13:00 八日市場(ようかいちば)駅(総武本線 千葉県)
さっきの答えは旭だったよ。
ここじゃない。
昼と夜の風景は当り前だが違うものだ。

八日市場は126号国道に沿った街道筋だった。
並走する県道は本町通りを名乗り、音楽が流れ、和菓子の老舗が並ぶちょっとした商店街になっている。
神社仏閣など市内の案内板もなかなか賑やかなものだった。

海が近いこともあって行きの成田線沿線風景とは違い、まるで気候帯も変わったかのように風が止むと春が訪れる。

14:15 八街(やちまた)駅(総武本線 千葉県)
落花生の街に下りると昔ながらの駅前商店街が迎える。
懐かしいとつぶやき、入口アーケードを潜るとすぐに通りは尽きてしまう。
しまいの角に洒落た美容室があった。

千葉以南地域は底が深い。
未だに千葉をうまく表現する言葉が浮かんでこない。

中央公園でボール遊びに興じる若者たちを見て、他の町との違いを探そうとするのは無駄だ。

品のいい団子屋があったな。
あったかくなってきたよ。

14:45 成東(なるとう)駅(総武本線/東金線 千葉県)
ふた駅戻る。

南の小さなターミナル駅にて。

以前の1月よりは長い時間をここで過ごした。
記憶と違ってきれいな駅舎だった。

また訪れることはあるだろうか。

15:29 本納(ほんのう)駅(内房線 千葉県)
大網で内房線に乗り換え、2駅。

思いがけず予定外の駅に下りた。
日本家屋風の立派な駅舎と鉄道員が出迎えてくれた町に娯楽の種はなく、新聞販売所で働く男、庭の芝を焼く老人、僅かな数の少年たちに向けて言葉を探そうとするが頭が拒む。

この国の地方都市はどうなっていくのだろう。

かつて泊まった白子海岸が近いらしい。

15:54 茂原(もばら)駅(内房線 千葉県)
街に着いた。
銚子以来の街だ。

イオンや百貨店のある街。
歩きがいのある街だけど、特急「くろしお」接続待ちの間に降りる時間しか用意していない。

少し疲れてしまった。

内房線唯一の高架駅で、山之内病院という大きな病院があった。

18:13 千倉(ちくら)駅(外房線 千葉県)
一ノ宮、興津、小湊、鴨川・・・・内房線所縁の地で下りて千倉。

日が暮れた。

朝には真冬で、今も肌寒いが立春の宵だ。
知らぬうちに春になっていたよ。

旅先ではいつもこんな時間帯が印象に残る。
最近じゃ五稜郭、かつては大津港。

テネシーワルツが流れ改装工事中だった千倉駅は、南の町にしてはやけに冷たい駅舎となって完成していた。

海へ出る道は知っていたけど、改札口を出て、いくアテもなければ、いく場所もない町だった。

Wさん。アテはその女性のみ。
お得意様でかつ同年齢ということもあって親しくしていた女性だった。
個人的な電話をもらったこともあった。
元気でいるだろうか。
千倉を知ったのは彼女と出会ったからだ。

3度目の南総行。
テネシーワルツの代わりに、さっき酒を買った店で流しているラジオの音が聞こえてくる。
車もたいして走っちゃいない。

寒くて指が思うように動かないが、でも南総に来ている。
確かに来ている。
列車の近づく音がする。

19:39 佐貫町(さぬきまち)駅(外房線 千葉県)
東京湾は見えない。

町の灯はすっかり消え、列車が近づくと送り迎えの車がやってきて闇の下りた駅前に光も下りる。
これも人の営み。
嫌いじゃない。

すでに一日が終わった静かな駅に下り立つこともまた好きだ。

クリーニング屋の大きな看板が駅前風景のすべてだったよ。

20:21 姉ヶ崎(あねがさき)駅(外房線 千葉県)
また何年か前の9月に戻れたよ。
貴乃花が復活を賭けて千秋楽で武蔵丸との大一番に臨み破れ、K1界にボブ・サップが衝撃的な登場を果たしたあの月、あの日だ。

翌日、車で金町に戻る途中でこの駅に立ち寄った。
あの時は海側に車を止め、今夜は繁華街に下りた。
停車時間が5、6分ある。

おそらく四街道あたりと変わらない造りだろうが、夜は大層なものを隠し、街を大きく見せる。
駅前のパチンコ屋がその役目を負っていた。

君津からはもう東京だったな。
東京方面から総武本線に乗って、千葉駅を過ぎたら本物の千葉が見えてきたけれど、その逆の話をしている。

21:23 市川(いちかわ)駅(総武本線 千葉県)
江戸川を渡れば東京。
金町で暮らしていた頃はこの高架下の河川敷をよく走ったものだ。

市川では友人として付き合っていた男と待ち合わせたことがある。
もう随分会っていない。
もう会うこともないだろう。

今日はいろんな記憶を辿る巡礼みたいな旅になった。
意識していなかったけど、硬かった気持ちがいつしか和んでいる。

多分あの風が止んで海が見え出した頃のことだろう。
それにしても、どれもこれもだいぶ昔の話だ。

市川の灯は眩しかった。
まるでクリスマスみたいで、房総には見られなかった華やかな灯だった。

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