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「鉄旅日記」2018年春 最終日(飯田-東京)その3-日出塩、贄川、村井、上諏訪、日野春、西国分寺、新松戸(中央本線/武蔵野線) 【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年4月8日・・・日出塩駅、贄川駅、村井駅、上諏訪駅、日野春駅、西国分寺駅、新松戸駅(中央本線/武蔵野線)

15:00 日出塩(ひでしお)駅(中央本線 長野県)
木曽の風は冷たい。
空の青はどこか悲しげ。

駅舎のない駅で降りる。

車寅次郎は、かつてこの駅でSLが牽引する貨物列車の通過で夢から覚めて、目の前に垂れ下がっていた柿をもいでひとくち。
「渋い」と吐き出す。

変わってしまったな。

変わったと言えば「男はつらいよ」で、寅次郎とおいちゃんや裏の印刷工場のタコ社長とのドタバタ劇を見ると、以前はたんに大笑いしていたけど、最近じゃ泣けるようになっちゃって。

ひと駅を歩く。
去年の夏にそうしたかったことに、いくぶん悲しい気持ちで踏み出している。

線路に沿って歩いている。
火の見櫓が迎える道を下り、日出塩公民館を左に曲がり、そして線路に沿って歩いている。

木曽谷は深く覗き込むことすら許さない。

16:02 贄川(にえかわ)駅(中央本線 長野県)
関所があった中山道の宿場町。
おどろおどろしい過去を持ちそうな知名だ。

木曽は江戸時代尾張藩領だったことを知った。
途中、明治天皇御座所跡の前を通る。

気温は3度。
冷たい向かい風が吹く中を情念とともに歩いた。

愛しいものと別れなければならなかった人生。
関連する人々。
仕事。

強い風を受けながら歩き、贄川駅に着くのは一体いつになるのかという不安が、やがて情念を押しつぶす。

こうして歩くことが心の修行であると知った木曽路徒歩行。

ようやくたどり着いた贄川駅の造作は旅情と郷愁にあふれて素晴らしく、目指した場所がここであったことに何かの意味を感じたくなるような場所だった。

文化財ともいえる待合室でただひとり。
たんに駅にいるだけだが、非日常かつ特別な経験をしている満足感にひたる。

上り列車がじきにやってくる。

16:49 村井(むらい)駅(篠ノ井線 長野県)
松本行に乗り、東京に帰るなら塩尻で降りて上りを待つが、2つ先の村井で降りる。

両脇に商店を従えて一直線に延びる駅前通り。
聖高原へと向かう様に美を感じる。

駅前風景の美しさと、初めてその駅に降りた際に感じる期待感はトップレベルといっていい。

普段なら歩くさ。
でも改札を出てすぐ右手に南松本でも見かけた「駅そば」があった。
迷わず入ったよ。

汁まで飲み干す美味さだった。

17:29 上諏訪(かみすわ)駅(中央本線 長野県)
特急列車の連絡待ちで12分の停車。
上諏訪駅も9年振りになる。

あれから何度かこうした待ち時間に降りる機会はあったけど、眠ってしまったり、ダイヤが狂ったりで今日まで待たなければならなかった。

駅前は工事中だった。
開発でもあるのだろうか。
足湯場にもホームにも人の流れは絶え間ない。

10分は矢のように過ぎてウイスキーハイボール片手に列車へ。
暮れゆく信濃路を眺める。

18:21 日野春(ひのはる)駅(中央本線 山梨県)
富士見信濃境間で見られる旧線跡。
立場川橋梁。
味わい深い姿をしている。


特急列車通過待ちで11分停車。


行きと同じく南アルプスと八ヶ岳がきれいに見える風光明媚な駅で、関心のある者は外へ繰り出しシャッターを切る。
JR東日本の粋な計らいと捉えよう。



じきに日が暮れる。

21:11 西国分寺(にしこくぶんじ)駅(中央本線/武蔵野線 東京都)
外に出るのは9年振りになる。

変わってないな。
谷間を往く鉄路に沿うように高い位置に家並みが続いている。

日曜日の夜。
この町に暮らす人々の流れは収束に向かい、駅のホームには列ができている。

少し前までは新秋津で降りて、西武線に乗り換えるのが家路だった。
でももうそんな日は来ない。

秋津は通過駅。
駅前通りには味があったけど、思い入れがあるわけじゃない。

22:16 新松戸(しんまつど)駅(常磐線/武蔵野線 千葉県)
8年前まで何度かここにいたことがある。
久しぶりだが、旧友との再会に似た感情が湧くことはなかった。
ただ懐かしさはある。

その町との再会。
明かりは大きく、武蔵野線高架をはさんで分かれた町はどちらも光に満ちていた。


常磐線にはしばらく世話になる。
金町にいる内は地元として愛していく。

でもまだ、かつて10年暮らした町とはいえ、今から帰る家は地元じゃない。
常磐線ホームには長い列ができている。

いろいろあるのが人生。
忘れていたよ。

起きてしまったことは戻らない。
だからもうそこには戻らない。

新しく始めてみる人生もあるさ。

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