「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その2‐甲府、日野春、長坂、青柳(中央本線)
鉄旅日記2020年3月20日・・・甲府駅、日野春駅、長坂駅、青柳駅(中央本線)
8:15 甲府(こうふ)駅(中央本線/身延線 山梨県)
郡内小山田氏は甲斐武田家の最終局面で決定的な離反に走り、武田家は滅び、小山田信茂はじめ主だった者もまた織田軍により逆徒許さずと斬られたが、岩殿山が焼かれたとは史書に見られない。
大月を通るたびにそのような歴史に対する感慨を持つ。
景色を眺めていると不意に鉄道遺跡が現れもする。
初狩~笹子間では旧線跡が並走して、やがて煉瓦造りの橋脚に感嘆する。
道を跨ぐ橋は撤去され廃線跡は隧道に消えた。
列車は笹子峠を上がり、やがて勝沼で甲府盆地を一望する。
勝沼側からも韮崎側からも、甲府盆地は車窓を飾ってくれる。
7分の停車。
ウイスキーハイボールを買い求める。
そして一番線に置かれた幸福の鐘を写す。
甲府を出ると富士山が頭を出した。
暖冬だったこの冬もしっかり雪に覆われている。
背中越しの登山隊が山頂付近の雲の様子を見て、風が強そうだと気持ちを入れ直している。
8:44 日野春(ひのはる)駅(中央本線 山梨県)
新府を過ぎると、後ろ向きに対していた富士山が車窓左手に姿を見せた。
子供の頃に遊んだ「だるまさんが転んだ」を思い出す。
特急通過待ち8分の停車。
甲斐駒ヶ岳をはじめとする南アルプスが一望できる風光明媚な駅。
こうして何度かこの駅での数分を楽しんできた。
今日は駅舎の後ろ姿しか見ないことにして列車に戻ったが、姿に変わりはない。
健在でいることには価値がある。
その後ろ姿にオレの人生を当てはめている。
背中越しの登山隊が向かうのは八ヶ岳か。
彼等が言うように風が強い。
9:28 長坂(ながさか)駅(中央本線 山梨県)
かつて恋人と降りた長坂駅。
圧倒的な南アルプスの偉容だけが駅前の印象として残り、他に思い出せるものはなかった。
風は強く、富士山はやはり左手に見える。
長い坂の途中。
一度姿を見せた八ヶ岳もここからじゃ見えない。
あの日のように南アルプスを写す。
駅に降りた時から気に留めていたが、黒猫が視界にいた。
警戒しつつも、目の前に現れたオレが信頼するに足る生命体であることを願いながら後をついてくる姿はいじましく、また勇気にあふれ、その小さな姿がたまらなく愛しく感じられた。
ウイスキーハイボールとともに買い求めていたアメリカンドッグは黒猫の口に合わず、唐揚げは食べたようだ。
お腹を壊すなと願い、最早オレを必要としなくなった黒猫を写し、離れた。
なにがしかの思い出が残る駅だ。
出会った黒猫と長坂駅。
縁を感じている。
10:05 青柳(あおやぎ)駅(中央本線 長野県)
8分の停車。
名だたる山岳地帯を過ぎて信濃の国へ。
甲信両国の争いは武田信玄により統一され、甲府から諏訪、松本にかけての一帯はオレの中では未だに武田軍の認識を持っている。
武田信玄の晩年、三方ヶ原で徳川軍を一蹴する数日前に現在の身延線、富士川に沿って東海道に現れた武田軍。
上州軍を含めた甲信軍団の威勢は街道を圧し、目をぎらつかせた軍隊はさながら猛獣の群れのようだったと司馬遼太郎氏は小説で描いた。
穏やかな春の日差しの下にある駅前。
あの南アルプスの壁も消えて、うららか。
関連記事
-
「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】初日(東京-桑名-阿下喜-西藤原-四日市-内部-西日野-津)その1-金町、西桑名、楚原、阿下喜、麻生田、丹生川(常磐線/三岐鉄道北勢線/三岐鉄道三岐線)
鉄旅日記2018年12月22日・・・金町駅、西桑名駅、楚原駅、阿下喜駅、麻生田駅、丹生川駅(常磐線/
-
「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】最終日(善通寺-東京)-善通寺、多度津、丸亀、坂出、岡山、京都、野洲、東京葛飾(土讃本線/予讃本線/本四備讃線/山陽本線/東海道本線)
鉄旅日記2008年5月6日・・・善通寺駅、多度津駅、丸亀駅、坂出駅、岡山駅、京都駅、野洲駅(土讃本線
-
「鉄旅日記」2018年卯月【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】その3-佐和、友部、下館、騰波ノ江、下妻、石下(常磐線/水戸線/関東鉄道常総線)
鉄旅日記2018年4月25日・・・佐和駅、友部駅、下館駅、騰波ノ江駅、下妻駅、石下駅(常磐線/水戸線
-
「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】2日目(香住-東萩)その1‐香住、柴山、餘部(山陰本線)
鉄旅日記2020年7月24日・・・香住駅、柴山駅、餘部駅(山陰本線)/余部鉄橋 2020・7
-
「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】2日目(和歌山-松阪)その2-串本、新宮、尾鷲、紀伊長島、三瀬谷、多気、松阪(紀勢本線)
鉄旅日記2008年7月20日・・・串本駅、新宮駅、尾鷲駅、紀伊長島駅、三瀬谷駅、多気駅、松阪駅(紀勢
-
「鉄旅日記」2006年晩夏【ふと誘われるように、上州へ向かう列車に乗ったのでございます。】-伊勢崎、桐生、西桐生、下仁田、上州富岡、高崎(高崎線/両毛線/上信電鉄)
鉄旅日記2006年9月2日・・・伊勢崎駅、桐生駅、西桐生駅、下仁田駅、上州富岡駅、高崎駅(高崎線/両
-
「鉄旅日記」2008年初秋【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】2日目(羽咋-福井)その2-松任、小松、あわら湯のまち、三国港、福大前西福井、田原町、福井(北陸本線/えちぜん鉄道三国芦原線/福井鉄道福武線)
鉄旅日記2008年9月14日・・・松任駅、小松駅、あわら湯のまち駅、三国港駅、福大前西福井駅、田原町
-
「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その2-中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢湾フェリー)
鉄旅日記2018年12月24日・・・中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢
-
2020年盛夏【二人でどこへ行こう。決めたのは甲府でございました。帰りは高尾の名店街で過ごした日帰り旅をSNS風に綴ります。】-高尾、四方津、塩山、甲府、甲斐大和(中央本線)
鉄旅日記2020年8月9日・・・高尾駅、四方津駅、塩山駅、甲府駅、甲斐大和駅(中央本線) 長
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】最終日(観音寺-東京)-観音寺、宇多津、岡山、瀬戸、高槻、山崎、名古屋、豊橋、掛川、熱海、金町(予讃本線/瀬戸大橋線/山陽本線/東海道本線)
鉄旅日記2009年5月6日・・・観音寺駅、宇多津駅、岡山駅、瀬戸駅、高槻駅、山崎駅、名古屋駅、豊橋駅