*

「車旅日記」1997年夏 3日目(田沢湖近辺-男鹿半島-鳴子)-和田駅、入道崎、八望台、男鹿駅、道川駅、矢島駅、鳴子サンハイツ【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 1997年

車旅日記1997年8月15日

1997・8・15 9:04 和田駅 855㎞
友と19時間をともに過ごした。

そんなはずじゃなかったけど、彼がビールと焼鳥を携えていたのがいけなかった。

川辺に下りて楽しみ、結局彼のテントにもぐりこんだ。

その友とも別れて秋田へ向かっている。

気分はすっかりひとり旅に戻り、青く澄んだ空を眺めている。

世間の動向とは無関係に生きることは時に必要だ。
ここも騒がしくなってきたが、オレは秋田の人情を気に入っている。

風景はそれ以上だ。

10:04 56号県道パーキング 887㎞
男鹿半島が見える。
海の色はエメラルドグリーンに近い。
絶景だ。

数メートル先にはアイスクリーム売りのオバチャンが座っている。
アイスのコーンに巻紙はなく、オバチャンの手渡し。

うん、それでいい。
ふれあいが感じられていい。

海を眺めた。
階段に腰かけてのんびり眺めた。

やっぱりいいな海は。
あたりにあまり人の気配がないのがいい。

事情が許すなら、こうしていつまでも眺めていたいよ。

これから目の前の半島に向かう。
眠気は去った。

11:40 入道崎 930㎞
美しい海が見える。

ここは男鹿半島の名所。
少しばかり人が多い。
分かっていることではあったけど。

土産の品に迷った。
人に話すのなら、「男鹿半島に行ってきました」的なものが一番通りがいいだろう。
そういう記念碑的な場所でもある。

ただ、本当によかったと思える場所は他にあるのだが。

土産物屋では演歌を流して、この美しい場所を変に野暮ったい雰囲気にさせている。
日本の観光地はどこもそうだ。
オレが求めているものとは明らかに違う。

とは言え、この景色に罪はない。

だから最後にもう一度言っておこう。
ここは本当に素晴らしい。

12:17 八望台 938㎞
土産を選ぶために立ち寄ったけど、ここの眺めも素晴らしい。

上に上がると右も左も海。
たまらない場所だ。

接した秋田人はすべからく好人物だった。
たいていが物売りだったことも影響するだろうが、物売りにもひどいのはいる。
明らかに人の質の問題だ。

気温と一緒で、気分は上がってきている。

必要なものは買い揃えたけど、この半島であと一度くらいは車を降りるかもしれない。

13:30 男鹿駅 979㎞
オレにしてみれば最北の終着駅にやってきた。

気温は上がり、太陽は照りつけ、右腕が悲鳴を上げている。

これから鳴子へ向かう。
その道中も旅の途中。

男鹿半島は3時間もあれば回れてしまえる手軽な観光地だった。
地元の人々はそこにいろいろと持ち寄って海水浴を楽しんでいる。
そうした営みを眺めるのが好きだ。

高所から眺める水平線は遥かだった。
きっとオレはずいぶん遠くを見ていたのだろう。

右腕の悲鳴が大きくなってきた。

この静かな駅も、今は夏の盛り。

15:25 道川駅 1035㎞
疲れて腹を空かして、この小さな駅にたどり着いた。

隣接しているラーメン屋のオッチャンは陽気な関西人だった。
なるほど、関西人はああやって人を笑わせるのか。

車の止め方を注意されたことから店に上がり、たっぷりと腹に飯を入れた。

旅はこれだな。
なるべくならこうした地元の店を利用するべきだ。

1000㎞を走破した。
まだ日本海が見えるところにいる。

鳴子までの道中はまだ長い。
そして11月にも通ったあのタフなルートを選ばざるをえないだろう。

あの日はつらかったけど、今日は楽しみたい。
まだ明るいから平気だろう。

それよりも、この日本海の町並を愛している。

16:26 108号国道 1068㎞
ここは何というところなのか。
車の流れが途切れると風の音しか聞こえない場所。

太陽はまだまぶしく、道の両側の緑もまたまぶしい。
本荘で最後に見た日本海もまぶしかった。

海には静かに波が立ち、まばらになった人影はみんな海に向いていた。

彼らにとって一体今日はどんな夏の日だっただろう。
オレは少し疲れた。
いや、だいぶ疲れたよ。

このあたりは車社会だから、地元民は飛ばす。
疲れてくるとそんな流れに乗るのが怖くなる。
それでこうして車を止めてここにいる。

でももう戦線に戻らなきゃな。
本当はここでもっとのんびりしていたいが、そうもいかない。

厳密な意味では、思いのままの一日など存在しない。
何がしかのしばりを意識する。

緑が美しい。
この涼しい風に感じるのは秋の気配。

風の音をもう少し聞いていたくて、エンジンをかけるのをためらった。

16:51 矢島駅 1079㎞
風の音がする町に高原鉄道の終着駅があった。

駅に寄るのは今日はここが最後。

よく晴れている。
そして何の問題もない。

彼女を思い出してもどうすることもできないけれど、あの笑顔を思い出したくなった。
今もオレは彼女に恋している。

そう言えば、旅の喜びを最初に知ったのは、福島の山間のこうした人のいない駅に立ち寄ったことがきっかけだった。

この駅では線路脇に花々が並び、和ませてくれる。

今は宿に向かう途中じゃない。
旅の途中なんだ。

17:24 108号国道 1098㎞
のんびりいけばいい。
ベンチがあれば、オレは座るよ。

誰もいないベンチに腰掛けてゆっくり煙草を吸った。
向かいには太陽と雲があった。

まだ空はよく晴れている。
川瀬のせせらぎと蝉の声が聞こえる。

今朝別れた友はもう今夜の落ち着き場所を見つけただろうか。

窓を開けているから虫が入ってくる。
今羽音が聞こえた。

ハエならいい。
ハチなら、悪いけど出ていってくれないか。

20:40 鳴子サンハイツ 1182㎞
涼しい夜だ。
峠越えでは雨に遭った。

友が言っていた。
山の天候は分からない。

今夜は出来合いの物を食べている。
魚肉ソーセージとおにぎり。
味も素っ気もないけど、オレにはこんなものでいい。

さしたる欲求もない。
ビールだけは尽きないように本数を揃えている。
オレの場合こうじゃなきゃダメだ。

くだらないテレビ番組に用はない。
代わりに瀬音と虫の声が聞こえる。
そっちの方がいい。

窓を開けたらその思いが鮮明になった。

旅は当初の目的とは違う形をとったけど、これまでの成り行きには満足している。

ひとりを意識しないと言えばウソになるけど、ひとりでよかったと思えることが何度もある。

アイスクリーム売りのオバチャン。
ラーメン屋のオッチャン。
さっきの風呂場で会ったじいさん。

ひとりじゃなかったら、きっと彼らとのふれあいはなかっただろう。

昨日の友とのこともそうだ。
彼は今頃どうしているだろう。

昨日一緒に川辺でビールを飲んだ時点で、これからどうなるのか何となく分かった。
そして彼のスタイルを味わい、身も心もタフな彼に感心した。

今朝そんな彼を川辺に置いて、オレは自身のスタイルに戻った。

あれから彼は計画通りに山に入ったのだろう。
寝床は決まっただろうか。

心配はしていない。
オレはこうして無事でいる。

まあ、お互い心配されるような柄じゃない。

昨夜が曇りだったのが残念だった。
晴れていれば落ちてきそうな星たちを見れただろう。

その中で、いかに雲が厚くても決して輝きを失わない星がひとつだけあった。
あんな星になりたいと思ったよ。

そして同時に彼女を想った。

数年を経てこの旅を思い出した時、覚えているのはあんな瞬間だけなのかもしれない。

これまで書き連ねてきたことに目を通してきたけど、あまり彼女に触れていない。
今回はごく個人的な旅だったことが分かる。

旅に理由などいらない。
旅に出たければ出ればいい。
だからまた計画するだろう。

ただ、明日の朝彼女に手紙を書く。
今日この時まで、その材料を探し回っていたようなものだ。

強いて旅に出た理由を言うとするなら、それだ。

これ以上ない素敵な理由だと思う。

関連記事

「鉄旅日記」2018年神無月 初日(東京-米原-福井-越前大野)その1-金町、大垣、米原、近江塩津、王子保、湯尾(常磐線/東海道本線/北陸本線) 【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】

鉄旅日記2018年10月6日・・・金町駅、大垣駅、米原駅、近江塩津駅、王子保駅、湯尾駅(常磐線/東海

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋-川口、浦和、深谷、倉賀野、寄居、東飯能、飯能、寒川、茅ヶ崎、辻堂、新橋(京浜東北線/高崎線/八高線/相模線/東海道本線)【関東ぶらぶら旅その2-武蔵から相模へ】

鉄旅日記2009年10月27日・・・川口駅、浦和駅、深谷駅、倉賀野駅、寄居駅、東飯能駅、飯能駅、寒川

記事を読む

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小牛田駅、一ノ関駅(常磐線/東北

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 最終日(紀伊田辺-東京)その2-吉野口、高田、畝傍、桜井、柳本(和歌山線/桜井線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月3日・・・吉野口駅、高田駅、畝傍駅、桜井駅、柳本駅(和歌山線/桜井線) 10

記事を読む

「車旅日記」2004年夏 最終日(長崎-福岡空港)走行距離291㎞その1-長崎ニューポート、島原駅、沖田畷古戦場(龍造寺隆信戦死の地)、大村駅、千綿駅、高橋駅 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

車旅日記2004年8月15日・・・長崎ニューポート、島原駅、沖田畷古戦場(龍造寺隆信戦死の地)、大村

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅(山陰本線) 10:03

記事を読む

「車旅日記」2005年冬 2日目(都城-人吉)走行距離284㎞ その1-都城駅、西都城駅、財部駅、霧島神宮駅、国分駅、錦江駅、鹿児島駅 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】

車旅日記2005年2月12日・・・都城駅、西都城駅、財部駅、霧島神宮駅、国分駅、錦江駅、鹿児島駅

記事を読む

「鉄旅日記」2018年初秋 初日(東京-桑名)その2-吉原、岳南江尾、本吉原、吉原本町、吉原、富士川、新蒲原、西焼津、新豊橋、三河田原(岳南電車岳南線/東海道本線/豊橋鉄道渥美線)【「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】

鉄旅日記2018年9月15日・・・吉原駅、岳南江尾駅、本吉原駅、吉原本町駅、富士川駅、新蒲原駅、西焼

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その1(北陸道→R8)有磯海SA、玉ノ木パーキング、親不知ピアパーク、能生

車旅日記1996年5月6日 3:40 北陸自動車道-有磯海SA 多少はスッキリしたんだ。 あれから

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月 最終日(安中-東京)その2-屋代、坂城、小諸、三岡、中込、羽黒下、松原湖(しなの鉄道/小海線) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】

車旅日記2019年2月10日・・・屋代駅、坂城駅、小諸駅、三岡駅、中込駅、羽黒下駅、松原湖駅(しなの

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「車旅日記」2001年黄金週間 初日その3(東京-京都)-桂川PAから四条烏丸へ。恋焦がれた女性に会いにいく男の話でございます。【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月3日・・・桂川PA 24:58 名神自動

「車旅日記」2001年黄金週間 初日その2(東京-京都)-初狩PA、諏訪湖SA、恵那峡SA、養老SA、多賀SA【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月3日・・・初狩PA、諏訪湖SA、恵那峡SA、養

「車旅日記」2001年黄金週間 初日その1(東京-京都)-金町、高円寺駅、調布駅、日野駅、弁天島温泉天下茶屋 【目指したのは彼女が暮らす京都。この時からしばらく、向かう先は劇的なまでに西になったのでございます。】

車旅日記2001年5月3日・・・金町、高円寺駅、調布駅、日野駅、弁天

「鉄旅日記」2001年初桜【京都の女性に恋をしていた頃がございました。そんなある3月の記憶でございます。】

鉄旅日記2001年3月31日 2001・3・31の記憶(京都編

「鉄旅日記」2001年如月誕生日その2【京都の女性に恋をしていた頃がございました。その日に京都にいたのでございます。】

鉄旅日記2001年2月17日 2001・2・17の記憶(京都編

→もっと見る

    PAGE TOP ↑