「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】最終日(安達-大洗-潮来-東京葛飾)-あだち、二本松駅、磐城石川駅、はなわ、常陸太田駅、大洗駅、潮来駅、十二橋駅、佐原駅、東京葛飾
鉄旅日記2006年5月7日
2006・5・7 6:13 4号国道‐道の駅あだち
最後の朝は本格的な雨。
少しは眠ったようだ。
今日はのんびりいくよ。
あぁすっかり朝だな。
3両編成の列車が郡山方面に向かうのを見たよ。
朝飯も食えるし、おにぎりも温められるここはとても便利だ。
おにぎりを温めると美味い。
そんなことも知らずにオレは生きてきたのか。
6:42 二本松駅(1,951㎞)
お城を模した駅舎が建ち、広場は工事中。
二本松の街の名の由来はいくつかあるという。
駅は昭和20年開業とのこと。
幕末、二本松は会津の前衛基地として激戦があり、少年隊の悲劇が後世に伝わり、2人の勇士の戦死地の碑が残るという。
そして城は落ちた。
時代の変わり目に小さな城下町で起きた、語り継がれるべき悲惨な歴史。
街は整然としていた。
駅前ホテルに昔ながらのレストラン。
ファミリーレストランが登場するまでのレストランはああしたものだった。
かつての原町田駅前にもコックドールというレストランがあって、子供の頃にはわくわくしたものだ。
霞ヶ城公園の緑が美しい。
8:01 磐城石川駅(2,008㎞)
日を浴びた田が美しい。
石川街道を南下。
この駅には一度寄ったことがある。
友人から恋人を紹介され、新設された福島空港を見物。
友人はオレを新白河駅まで送ってくれたけど、彼の恋人とはここで別れた。
この駐車場だったよ。
10年以上前のことになる。
彼等はその後結婚して、つい最近可愛らしい女の子の親になった。
元気にしているだろうか。
美しい町だ。
古い鉄筋の駅舎には威厳がある。
朝早くからタクシーは駅前を占めている。
この町の若者たちの話し声には濃厚な磐城訛がある。
ここはまだ福島県。
ずいぶん東京に近づいたから、まるで関東に入ったかのような気分でいたけど、まだ旅情あふれる場所にいる。
東京に帰ったら友人に手紙を書こう。
とても清々しい気分でいる。
ここから帰り道は思い出に満ちている。
「水晶輝く出で湯の郷」にて。

2009年7月20日撮影
10:45 118号国道‐道の駅はなわ(2,035㎞)
昨日青森を出てから800㎞。
まだ東北にいるよ。
4日前と同じようなペースできて、ここで眠った。
今日の方が眠りは深く、よくは覚えていないが、何やら楽し気な夢を見たような。
ここは天領の郷。
腹に飯を入れる。
久慈川が流れているが、過去にどこかで会ったような。
11:56 常陸太田駅(2,087㎞)
この旅で寄る最後の終着駅から出る列車は、水戸までの直通をほとんど持たない。
美しい顔立ちをした女の子がオレの方を向いて微笑んだ駅。
白壁に黒い瓦を乗せた重厚な駅舎。
佐竹氏が関ヶ原合戦の後に秋田へ移るまでの城下町。
長い坂を下りて関東平野に出て、遠くからはテレビ塔が見えて、街が近いことを知った。
ホテルが立ち並ぶあたりに駅があるのかと思ったが、そうではなく、駅前に目立つものはない。
今いる場所は去年廃線となった日立電鉄の旧駅舎前。
ホームには朽ち果てた赤い客車が止まったままで、すべてが荒廃に任せている。

2009年10月10日撮影
この駅を出て通りを渡った先にもまだ線路は敷かれたまま。
この先、待合所が不埒な連中に荒らされないか心配だ。
建物はバス会社の営業所として使用されているようで、微かな人の匂い。
雨はたまに落ちてくる。
13:04 大洗駅(2,120㎞)
まだ3度目だが、水戸はすでに馴染みの街。
349号国道で水戸入りの際にテレビ塔がいくつか見えた。
仙台じゃライトアップしているが、青森も水戸も特徴的な姿だけに惜しい。
51号国道には思い出がある。
海の見えない海道だけど、唯一大洗では見ることができる。
まるで水道橋が続く様を見るような鹿島臨海鉄道も内陸を走るため、車窓に海はない。
大洗駅は立派な駅で、品数の少ないコンビニがある。
駅前には寿司屋とパチンコ屋の廃墟。
2018年4月30日撮影
賑やかなところではないと思っていたけど、大洗という地名は名士といっていい。
夏を待っているのだろう。
この旅の最後に見る海は、荒波打ち寄せる大洗海岸あたり。
掉尾として相応しい。
14:21 潮来駅(2,171㎞)
大洗海岸は素晴らしかった。
人々は遠い波打ち際まで繰り出し、波と戯れる。
今はまたこうして雨が落ちてきたけど、あれは光のような記憶。
51号国道を進み、鹿島スタジアムの偉容を横目に北浦を渡る。
鉄道橋も古びて味があったけど、51号国道に架かる橋もまたいい。
水郷を誇る雰囲気のいい町に着いた。
川辺には由緒を持つであろう旅館が並ぶ。
美味い川魚料理を振る舞うのだろう。
改札口に駅員の姿はなく、ホームに上がる。
右手には川辺の旅館群、左にはテレビ塔。
雨が少し激しくなってきた。
観光案内所は北海道で見かけた番屋のようだ。
あるいはかつての駅舎だったのかもしれない。
橋幸夫が歌った「潮来の伊太郎」は、この町生まれの旅がらす。
駅にはその手の案内はなく、絵葉書を土産に購入した。
彼女に渡すつもりでいる。
14:44 十二橋駅(2,178㎞)
西利根を渡ると千葉県。
かつて鹿島線で通りかかった際に、まるで水の中に佇立しているような印象を受けた無人駅へ。
利用客はいるのだろうかと心配になるような駅で、ホームからは水田が広がり、まさに水の中に佇立している。
雨の田野を走り、鹿島線の高架はまるで地平線の境のように見えて、車を走らせるという行為にひたすらに満足していた。
十二橋巡りというのが名所らしい。
あやめも楽しめるとのこと。
ひっそりとした水郷での思い出。
15:25 佐原駅(2,190㎞)
利根川越えに少し手間取り、旧市街の狭さに往生した。
この旅最後の水郷巡り。
雰囲気のいい街に着いた。
古い町並が残り、観光名所を持つ。
駅舎は最近ペンキを塗り替えたのだろう。
重厚で真っ青な日本家屋風の駅に、場違いとも思える派手な女性が閑散とした待合室にちょこんと座る。
何やらめでたそうな光景をちらっと眼にした。
何の催しだか知らないが、めでたいのならいい。
これが最後になるのか。
青森からは960㎞。
22:21 東京葛飾金町(2,265㎞)
利根川に沿って進んだ。
次の橋まで10㎞ほどある。
それまでほぼ信号はない。
カーナビを信じすぎて、さらに最後まで道筋を示さない道路標示に迷い、手賀沼に出たかったが、6号国道水戸街道は遠ざかり、つまらない町並に紛れ込み、気分をいくらか荒らしてしまった。
金町に着いたのは18:00頃。
旅の終わりはいつもあっけない。
そして明日から再開する人生という旅はつらく長い。
そんな人生に耐えていくために、こんな旅をする。
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