*

「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきっていた若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉-東京)2日目~最終日-いわき久ノ浜パーキング、亘理、名取、松山町、鳴子サンハイツ、町田

公開日: : 最終更新日:2023/04/29 旅話, 旅話 1997年

車旅日記1997年7月20日
7:03 6号国道‐いわき久ノ浜パーキング
太陽光線で目が覚める。
とてもいい朝だ。

最初の朝を迎えて思うことは、ことの良し悪しは置いておいて、なるべく寛大でいること。

どこへ行っても問題は多い。
例えばすぐ手前にはゴミが不法に投棄されている。

どこから来たヤツがそうしたのか知らないが、この世界にはそうした手合いがいる。

だけどそんなことまで心配する気持ちをこの2日間は持ちたくない。

それが束の間に東京を脱出した理由だから。

9:40 6号国道‐亘理
先を急いだわけじゃないが、先を急ぐように宮城入りした。

原ノ町、相馬といった福島の町は国道に対して控え目に存在して、オレの進入をやんわりと拒んでいるかのようだった。

エンジンを止めると、蝉をはじめ夏の虫の声が聞こえる。
他には桃を売る農作業者が流すラジオの音。

右手には広大な田園地帯が広がっている。
すべてが緑色で構成された目に優しい風景だ。

ここに来るまでに海が見たかった。
でもまだ満足に拝めていない。

ストーンズが「Street Fighting Man」の演奏を始めた。
6号が4号に吸収される前にルートを変更した方がよさそうだ。

11:10 宮城県道10号-名取
目的が定かじゃない。

海を求めてうろついたが、どこもそこにいたいと思わせる場所じゃなかった。

ここには地元民が冷たいものを求めて集まっている。

気温はかなり上がったのだろう。
日差しは強く、右半身を容赦なく焼いている。

今のオレには少し涼しい場所と、涼しい音楽が必要だ。

13:20 松山町
だいぶ疲れたよ。

このまま鳴子へ向かう。
景色もよくていいところだけど、欲しいと思っているものを常備している環境じゃないことだけは確かだ。

たった今のオレが欲しいもの。

たいしたものじゃない。
ほんの少しのものなのだけれど。

21:54 鳴子サンハイツ
初めから分かっていたよ。
ナイター中継の終わりがこの夜の終わりだと。

路上に出ればすべてOKというわけじゃないってことだ。
ナイターを見ていて何となくそれが分かって、それで少しだけ笑ったよ。

いいじゃないか。
早く寝れば。

それで疲れが少しでも抜けるのであれば、それでいいじゃないか。

思うところが一定しないから落ち着かないけど、あまりくよくよしないことだ。

昨日路上で眠る時。
そして道々。
いろんな想像が頭を掠めた。

すべて取るに足らない想像だけど、その中で彼女は神聖な存在として距離を置き、オレの生臭い想像に登場することはなかった。
それが彼女への愛の証。

明日、彼女にあてて手紙を書く。
そして駅前のポストに投げ入れたら東京に帰る。

結果として、残された旅の目的がそれだけであったとしても、それで十分だよ。

1997・7・21 朝、鳴子
暑中お見舞い申し上げます。
元気ですか?
オレはあれからずっと疲れていたよ。
それで今はまた北の方にいる。
今までは車で出かければ、それまでのことはある程度清算できたけど、今回は少し違うな。
ゆっくり眠って、緑色の景色を見ているけど、あまり調子はよくないんだ。
そういうわけで計画とは違うけど、これから急いで東京に帰ろうと思う。
まあ、こういうこともあるだろう。
君はもう夏の計画を立てたのかな?
素敵な夏になるといいな。
また、いずれ

7・21 東京町田
ひとつの旅が終わった。
旅を楽しむには少しコンディションが悪すぎた。

出かける前と一緒だ。
さしたる感慨も浮かばず、それでも何らかの記録が必要なのだと、こうして座っている。

クリアーになったものはひとつもない。
明日の仕事を迎える状態もいつもと変わらない。

むしろ出かける前に過ごした日々より冴えが悪い。
それでも日常へと戻らなければならない。

ただ失ったものは何もない。

失いそうになったもの。
それはこのオレという生命体だった。

あまりの精神薄弱さに身の危険を感じて、不本意な形でこの旅を打ち切った。

クリアーになったものは本当に何もない。
だから、すべてやり直し。

それでいい。

関連記事

「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】2日目(黒磯-郡山-いわき-仙台)その2-末続駅、双葉駅、原ノ町駅、相馬駅、亘理駅、岩沼駅、名取駅、ホテルイーストワン仙台

車旅日記2006年5月3日 13:26 末続駅(403㎞) 国道から見えたんだ。 こんな素

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その3-燕三条、北三条、三条、長岡、水上、高崎(弥彦線/信越本線/上越線)

鉄旅日記2018年3月4日・・・燕三条駅、北三条駅、三条駅、長岡駅、水上駅、高崎駅(弥彦線/信越本線

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その2-多気、伊勢神宮外宮、伊勢市、鳥羽、鳥羽マリンターミナル(参宮線/鳥羽市営定期船)

鉄旅日記2018年12月23日・・・多気駅、伊勢神宮外宮、伊勢市駅、鳥羽駅、鳥羽マリンターミナル(参

記事を読む

「鉄旅日記」2018年卯月【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】その3-佐和、友部、下館、騰波ノ江、下妻、石下(常磐線/水戸線/関東鉄道常総線)

鉄旅日記2018年4月25日・・・佐和駅、友部駅、下館駅、騰波ノ江駅、下妻駅、石下駅(常磐線/水戸線

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【関東ぶらぶら旅その1-房総鄙の里へ】-東金、大網、大原、上総中野、上総牛久、五井(東金線/外房線/いすみ鐡道/小湊鉄道/内房線)

鉄旅日記2009年10月22日・・・東金駅、大網駅、大原駅、上総中野駅、上総牛久駅、五井駅(東金線/

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春【下北半島から東日本大震災被災地へ】2日目(下北-石巻)その2-金田一温泉、斗米、二戸、好摩、いわて沼宮内、厨川、矢幅、日詰、小牛田、涌谷、石巻(IGRいわて銀河鉄道、東北本線、石巻線)

鉄旅日記2016年3月20日その2・・・金田一温泉駅、斗米駅、二戸駅、好摩駅、いわて沼宮内駅、厨川駅

記事を読む

「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】3日目(田沢湖近辺-男鹿半島-鳴子)-和田駅、入道崎、八望台、男鹿駅、道川駅、矢島駅、鳴子サンハイツ

車旅日記1997年8月15日 1997・8・15 9:04 和田駅 855㎞ 友と19時間をとも

記事を読む

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】初日(東京-米子)-静岡、豊橋、本竜野、播磨新宮、佐用、東津山、米子(東海道本線/姫新線/因美線/山陰本線)

鉄旅日記2007年5月3日・・・静岡駅、豊橋駅、本竜野駅、播磨新宮駅、佐用駅、東津山駅、米子駅(東海

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】初日(東京-五所川原)その3‐小牛田、一ノ関、盛岡、八戸、野辺地(東北本線/IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道)

鉄旅日記2019年11月2日・・・小牛田駅、一ノ関駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅(東北本線/IGRいわ

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】2日目(新南陽-鹿児島中央)その2-直方、新飯塚、彦山、豊前桝田、夜明、御井、川尻、住吉、三角(筑豊本線/後藤寺線/日田彦山線/久大本線/鹿児島本線/三角線)

鉄旅日記2015年8月13日その2・・・直方駅、新飯塚駅、彦山駅、豊前桝田駅、夜明駅、御井駅、川尻駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その2‐猪谷、高山、久々野、古井、美濃川合(高山本線/太多線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・猪谷駅、高山駅、久々野駅、古井駅、美

→もっと見る

    PAGE TOP ↑