「鉄旅日記」2015年夏 4日目(西鉄柳川-広島)その2-田川後藤寺、糸田、糒、金田、門司港、厚狭、湯ノ峠、四郎ヶ原、南大嶺、美祢(平成筑豊鉄道糸田線、平成筑豊鉄道伊田線、鹿児島本線、美祢線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月15日その2・・・田川後藤寺駅、糸田駅、糒駅、金田駅、門司港駅、厚狭駅、湯ノ峠駅、四郎ヶ原駅、南大嶺駅、美祢駅(平成筑豊鉄道糸田線、平成筑豊鉄道伊田線、鹿児島本線、美祢線)
11:18 田川後藤寺(たがわごとうじ)駅(日田彦山線/後藤寺線/平成筑豊鉄道糸田線 福岡県)
駅舎の色が爽やかなクリーム色に塗り替わっていた。
こんなリニューアルの仕方もあったかと新鮮な気持ちでしばらく眺めていた。
駅の出入りは多く、後藤寺ホルモンの存在を知ったが、きっと6年前に降りた時にもあったのだろう。
この駅への再訪により糸田線完乗を果たした。
直方からの車窓に目を引くものはなく、風景は平凡なものだった。
ある男が車内で飲んだビールの空き缶を置き去りにしていた。
その缶を拾い、運転手に何かを告げて降りた男がいた。
気の弱そうな、優しそうな男だった。
平成筑豊鉄道のイメージを下げかねない心ない行為への善意ある行動だったのだろう。
直方でフリー切符を購入するつもりでいたら駅では売っていなくて、すぐ脇の商店街に場を占める観光案内所に行かなきゃならず少し焦った。
花屋のお姉さんはその観光案内所を知らず、何の店だが忘れたが、次に声がかかるのはワタシに違いないと待ち構えていた女主人に場所を教えられて、少し駅に戻る形で案内所に立ち寄り購入。
やけにたくさんの沿線案内を配られた。

糸田(いとだ)駅(平成筑豊鉄道糸田線 福岡県)にて

11:52 糒(ほしい)駅(平成筑豊鉄道伊田線 福岡県)
糸田駅は中元寺川に面した狭い場所にある。
川向うに田舎商店らしき建物が見える。
役場もそっちにあるようだ。
伊田線に乗るべく町を歩いて縦断。
簾を垂らした家々に涼しさを覚える。
筑豊人は夏の過ごし方を知っている。
どうやら駅に着いたと安心して伊田方面に延びる線路を眺めて、呟いた。
「あぁいいなぁ」。
人ごとのようだが、オレの郷愁にぴったりハマる風景だったのだろう。
枯れた駅舎に、うまい具合にボクシングジムが併設されていた。
ほんの少しだけ暑さに負けて、ちょうどやってきた直方行に乗ってひとつ先の金田に戻る格好で向かっている。
本当はこのまま金田まで歩くつもりでいた。


12:33 金田(かなだ)駅(平成筑豊鉄道伊田線/平成筑豊鉄道糸田線 福岡県)
平成筑豊鉄道本社が併設された駅。
ここで伊田線と糸田線は分岐する。
駅前の寿司屋に入ってビールとカツ丼のランチ。
ああいう店には善意がある。
ビールにはつまみがついてきた。
カツ丼の味にはお国柄がある。
卵が多目で肉は火を通しすぎだったけど、味付けはよかった。
握りにすればよかったとほんの少しの後悔が生じたのは注文直後で、まだカツ丼を味わう前の事だ。
少し足の悪いおかみさんの笑顔がかわいらしかった。
田川の柄は今も悪いのだろうか。
とっぽい男がひとり乗っていた。
田川伊田に着いて太った男を除く全員が降りた。
上伊田を過ぎると香春岳が見えた。
頭頂部が切除されて真っ平らになった様に驚愕した。
一体誰があんなことを許したのだろうか。
6年前より崩壊変貌は進んでいるように見えた。

関門海峡にて

14:51 門司港(もじこう)駅(鹿児島本線/日豊本線 福岡県)
今日の暑さは凄まじい。
田川で参った九州の日差し。
東京が一番暑いと普段うそぶいているが、この日差しは関東には降りない。
きっとニュースになる暑さだ。
門司港駅改修工事はまだ終わっていなかった。
関門海峡を収めて戻ると発車ぎりぎりだった。
門司港はいつも人が多い。
レトロ人気は健在だし、そもそも海峡には人を引きつける磁力がある。
最後に訪れたのは10年も前の話だが、あれから平成筑豊鉄道による新たな観光鉄道が街中を走っている。
その姿を目にすることはできなかった。
九州とはこれでお別れとなる。
高倉健さんがスクリーンの中で最後にいた場所がここだった。
次に来る時には、門司港駅も元の姿に服しているだろう。
田川線は油須原駅の姿を覚えている。
あとはずっと眠ってしまった。
炭鉱が閉じた筑豊には平凡な風景だけが残った。
行橋からもまた眠り、半睡の中で城野駅の改築工事が終わっていたことだけは確認した。

厚狭(あさ)駅(山陽新幹線/山陽本線/美祢線 山口県)にて

厚狭~湯ノ峠間(徒歩)

16:41 湯ノ峠(ゆのとう)駅(美祢線 山口県)
厚狭に降りるのは2度目になる。
何もないに等しい駅前通りを抜け、厚狭川に沿ってのんびりと歩いていった。
目指すは湯ノ峠駅。
だんだん田舎風景になっていく。
川も面相を変えるし、路傍にはかわいらしいいお地蔵さんが現れてきたりする。
ただ、駅の場所を正確に掴んでおらず、勘も外れ、駅が川向うにあるのを見てとると、一度通り過ぎた橋まで、「ありえねえよ、ありえねえよっ」と毒づきながら猛然と走り戻り、さらに山中を駆け上がり駆け下り、どうにか予定していた乗車に間に合った。
湯ノ峠駅。
かわいらしいい駅舎だった。
山を駆け下りて最初に現れた湯ノ峠温泉岡田旅館は閉鎖していた。

17:01 四郎ヶ原(しろうがはら)駅(美祢線 山口県)
大昔だだっ広い野原に四郎という者が住んでいた。
江戸時代に編纂された書にある実話で、地名の由来になっている。
その地は宿場でもあって、駅から約1.8キロの地点にあたるという。
この川の名はまだ厚狭川だろうか。
こんな場所にいたいがために、オレはわざわざ遠く長州までやってきた。
厚狭に降りるまでの疲れ果てて弱っていた気持ちは消えた。
大木が駅を見下ろしている。
そして蜩の時間がやってきた。


四郎ヶ原~南大嶺間(徒歩)

17:43 南大嶺(みなみおおみね)駅(美祢線 山口県)
ここから今は存在しない大嶺駅に向けて、かつて炭鉱分岐線が伸びていた。
随分前に廃鉱、廃線となり今は目の前の山から石が切りだされている。
蜩の時間はこんな場所にでもいなければ気づかないほど、しみじみとしたものだ。
駅前から酒屋が撤退した集落にもステキな夕暮れは平等にやってくる。


南大嶺~美祢(美祢駅前)間(徒歩)


18:49 美祢(みね)駅(美祢線 山口県)
階段を上がりバイパス道路に出たあたりで老人とすれ違い挨拶を交わした。
背筋がしっかりと伸びて、東京では見かけることのない、枯れた古武士のような趣の持ち主で、長州とは何かと考えさせられた。
宇部で暮らす友人Tさんの父君にどこか似ていた。
その父君は病の末に亡くなり、それに伴い彼の一家は、父君が丹精を込めた庭が自慢だった住み慣れた家を売り、マンションへ越したと聞いた。
厚狭川を何度も渡った末に遠望した美祢の街。
高い煙突が見えて煙が上がっている。
街に着いたと喜んだが、駅前店舗スペースは空っぽだった。
ただしスーパーがあって、ビールを飲むことができた。
賑やかな頃もあったのだろう。
美祢は昔も今も変わらず秋吉台への最寄り駅にあたる。
ただ現在を見る限り、衰退は覆い難く、今後その進行は加速していかざるを得ないのだろう。
そんな街に好んでやってきたわけだが、オレにとっては理想的な夏の夕暮れ時だった。
去年三江線で辿った地域にそんな夢を見ていた。
煤けたような商店でビールを買って蝉の声を聞き、どこからかラジオの高校野球中継が聞こえてくる。
草深い一帯でしばしぼんやりとした時間を過ごす暑い夏の日。
そんな時間をほんのひととき過ごすためにわざわざこうしてやってきた。
高校野球の実況は聞こえてこないが、これならいい。
ここならいい。
今ホームで線路を眺めている。
よく晴れて、夕暮れには少し涼しくなる日本の夏は、東京から1,000キロ旅しなければならないが、まだこうして存在する。



関連記事
-
-
「鉄旅日記」2022年師走 最終日(会津宮下-東京)その5 ‐南千住、北綾瀬、綾瀬(常磐線/東京メトロ千代田線)【11年ぶりに全線運転再開を果たした只見線に乗りにいきました。】
鉄旅日記2022年12月11日・・・南千住駅、北綾瀬駅、綾瀬駅(常磐線/東京メトロ千代田線)
-
-
「鉄旅日記」2007年皐月 2日目(米子-福山)-松江、宍道、出雲横田、出雲坂根、備後落合、塩町、府中、福山(山陰本線/木次線/芸備線/福塩線)/福山城 【夜汽車で東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】
鉄旅日記2007年5月4日・・・松江駅、宍道駅、出雲横田駅、出雲坂根駅、備後落合駅、塩町駅、府中駅、
-
-
「車旅日記」2000年夏Part.2 3日目(福山-宇部)尾道西PA、奥屋PA、温品PA、玖珂PA 【友を訪ねて備後福山へ。長門宇部へ。2000㎞に及ぶ長大な旅路でございました。】
車旅日記2000年8月14日 3日目(福山-宇部)尾道西PA、奥屋PA、温品PA、玖珂PA 200
-
-
「鉄旅日記」2018年秋 初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その4-飯岡、東金、大網、蘇我、海浜幕張、船橋法典、市川大野、東松戸(総武本線/東金線/内房線/京葉線/武蔵野線) 【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】
鉄旅日記2018年9月22日・・・飯岡駅、東金駅、大網駅、蘇我駅、海浜幕張駅、船橋法典駅、市川大野駅
-
-
「鉄旅日記」2019年師走 初日(東京-酒田)その1‐金町、北千住、上野、高崎(常磐線/高崎線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】
鉄旅日記2019年12月7日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、高崎駅(常磐線/高崎線) 2019・1
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その5‐肥前山口、久保田、西唐津、博多、門司港(佐世保線/唐津線/筑肥線/福岡市地下鉄空港線/鹿児島本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前山口駅、久保田駅、西唐津駅、博多駅、門司港駅(佐世保線/唐津
-
-
「鉄旅日記」2018年春 最終日(飯田-東京)その1-飯田、伊那大島、伊那松島、辰野、松本、柏矢町、豊科(飯田線/中央本線辰野支線/篠ノ井線/大糸線)【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月8日・・・飯田駅、伊那大島駅、伊那松島駅、辰野駅、松本駅、柏矢町駅、豊科駅(飯
-
-
「鉄旅日記」2013年春 初日(東京-和歌山)その1-米原、弁天町、大正、芦原橋、今宮、杉本町、堺市、東羽衣、鳳(東海道本線、大阪環状線、阪和線、東羽衣支線) 【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】
鉄旅日記2013年4月7日その1・・・米原駅、弁天町駅、大正駅、芦原橋駅、今宮駅、杉本町駅、堺市駅、
-
-
「鉄旅日記」2008年皐月 最終日(善通寺-東京)-善通寺、多度津、丸亀、坂出、岡山、京都、野洲、東京葛飾(土讃本線/予讃本線/本四備讃線/山陽本線/東海道本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】
鉄旅日記2008年5月6日・・・善通寺駅、多度津駅、丸亀駅、坂出駅、岡山駅、京都駅、野洲駅(土讃本線
-
-
「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】初日(東京-十日町)-上野、高崎、大前、渋川、沼田、水上、越後湯沢、六日町、越後川口、十日町(高崎線/吾妻線/上越線/飯山線)
2009・7・18 8:42 上野(うえの)駅(東北新幹線/秋田新幹線/山形新幹線/上越新幹線/長野
