「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】初日(東京-安中)その3-高麗川、丹荘、児玉、高崎、安中(八高線/信越本線)
鉄旅日記2019年2月9日・・・高麗川駅、丹荘駅、児玉駅、高崎駅、安中駅(八高線/信越本線)
18:07 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
彼女からのメッセージの返信に時を費やす。
あたたかくて素敵な時間だ。
高麗川駅は変わっていなかった。
かつて立ち寄ったマンション1階の赤提灯も変わらずあった。
通りまで歩いて駅に戻る。
全国チェーンの飲み屋の明かりだけがまぶしく、駅を照らす灯は心許ない。
アナウンスで注意を促していたが、この列車は18:12になったら音もなくすーっと動き出した。
19:21 丹荘(たんしょう)駅(八高線 埼玉県)
この駅に降りる人が5名を数えるに及んで、計画通りに降りてみることにした。
人々には皆迎えの車があり、それぞれに去っていくと暗闇が覆い、駅の顔や色さえ定かじゃない。
雪が降った形跡はなく、路面も濡れてはいない。
最強寒波はどうやら関東では本来の実力を発揮できなかったようだ。
かつて1986年までこの駅を起点とする上武鉄道日丹線が運行していたことを知った。
西武化学前駅までの6.1km。
間には3駅を置くのみの小さな鉄路。
つい最近のことじゃないか。
ただ残念なことに、当時のオレは旅にも鉄道にも何の関心もない。
19:50 児玉(こだま)駅(八高線 埼玉県)
上り列車でひと駅戻る。
猫にはあまり好かれたことはないが、この駅に居着いた猫に鳴かれて切なくなっている。
許してほしい。
リュックには何も入っていないんだ。
顔に斑点が浮いていたのが気になるけど毛艶はよく、痩せていないどころか丸々と太っている。
逞しく生きているのだろう。
駅前通りを歩いて行った。
立派な商店街が形成されていたが、この時間まで開いているのは3軒のみで、そこからはいずれも品のいい灯が洩れていた。
酒はないかと歩けども酒屋もコンビニもなく、徒歩5分ほどのところで引き返す。
駅の灯もあたたかげで好ましく、その灯の下で彼女に向けて今日6度目の返信をしていた。
20:49 高崎(たかさき)駅(上越新幹線/北陸新幹線/信越本線/高崎線/上越線/両毛線/吾妻線/上信電鉄 群馬県)
粉雪がちらつく街は冷気に満ちている。
ビールを持つ手が不意に震えはじめ、体の変調に驚いた。
ビールは体を冷やすな。
当たり前だが。
横川行の列車が早めに入線して人心地がついた。
この旅ももうじき終わる。
一ヶ月前に達磨が置かれていたスペースには花壇ができていた。
こんな高崎駅を愛したいと思う。
21:15 安中(あんなか)駅(信越本線 群馬県)にて
22:26 古久家旅館
武田家臣団の中に安中左近影繁の名を見かけて以来、気になっていた町に宿をとった。
この町にあるたったひとつの宿だ。
母方のご先祖様が信州真田氏の家臣だったこともあり、主筋にあたる武田信玄、武田勝頼に入れ込んだ時期がある。
10代の終わり頃だった。
江戸時代に書かれた「甲陽軍鑑」に、安中左近は150騎の侍大将として載っている。
1575年の長篠合戦に従軍して戦死。
その様は長篠合戦図屏風にも描かれている。
大将を討ち取られる悪戦に苛まれた安中勢。
この地に帰り着いた者はほぼいなかったとも伝わる。
ここの投宿者は常連客で占められ、部屋に鍵はかけないという。
今時珍しいコミニュティだ。
賛同して鍵は受け取らなかった。
18号国道安中バイパスが駅前を貫く安中に歓楽街はなく、食事ができる店は2軒にコンビニが1軒。
マクドナルド、すき家があったな。
駅の反対側に段丘状の工場夜景が見える。
朝が来て碓氷川を描写すれば、この町にいた事実のすべてが揃う。
安中はそうした町で、コンビニを過ぎてからはひたすらに暗い道を歩いてきた。
【Facebookへの投稿より】
伊豆急下田→熱海→茅ヶ崎→橋本→八王子→高崎。
最強寒波は関東平野では本来の実力を発揮できずにいたようで、北に向かうにつれて雪の気配は消えていったのでございます。
ただ、現在高崎には粉雪が舞っております。
今夜の宿泊地、上州安中にはもうじき到着いたします。
猫に好かれたことのない人生でしたが、先程ふらっと降りた駅で、温かな感触を得たりもした本日の旅でございました。
関連記事
-
「鉄旅日記」2021年春【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】初日(東京-米内沢)その1‐金町、上野、古川、陸前谷地(常磐線/東北新幹線/陸羽東線)
鉄旅日記2021年4月17日・・・金町駅、上野駅、古川駅、陸前谷地駅(常磐線/東北新幹線/陸羽東線
-
「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その3‐黒松、仁万、出雲市、荘原(山陰本線)
鉄旅日記2020年7月25日・・・黒松駅、仁万駅、出雲市駅、荘原駅(山陰本線) 12:06&
-
「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】初日(東京-大垣)その2-郡上八幡、北濃、美濃白鳥、郡上八幡、関、美濃太田、岐阜(長良川鉄道/高山本線)
鉄旅日記2017年8月11日・・・郡上八幡駅、北濃駅、美濃白鳥駅、関駅、美濃太田駅、岐阜駅(長良川鉄
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)
鉄旅日記2009年5月1日・・・金町駅、東京駅、静岡駅、浜松駅、弁天島駅、大垣駅、美濃赤坂駅、石山寺
-
「鉄旅日記」2018年春【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】最終日(飯田-安曇野-木曽-東京)その2-安曇沓掛、信濃常盤、細野、海ノ口、信濃大町、信濃松川、安曇追分、南松本(大糸線/篠ノ井線)
鉄旅日記2018年4月8日・・・安曇沓掛駅、信濃常盤駅、細野駅、海ノ口駅、信濃大町駅、信濃松川駅、安
-
「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その3-燕三条、北三条、三条、長岡、水上、高崎(弥彦線/信越本線/上越線)
鉄旅日記2018年3月4日・・・燕三条駅、北三条駅、三条駅、長岡駅、水上駅、高崎駅(弥彦線/信越本線
-
「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】2日目(高岡-金沢)-高岡駅前、越ノ潟、高岡、氷見、高岡、城端、金沢(万葉線/氷見線/城端線/北陸本線)
鉄旅日記2007年1月7日・・・高岡駅前駅、越ノ潟駅、高岡駅、氷見駅、高岡駅、城端駅、金沢駅(万葉線
-
「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきった若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉)初日-町田、用賀、築地、北松戸、荒川沖駅、美野里パーキング、常陸多賀駅、いわき久ノ浜パーキング
車旅日記1997年7月19日 1997・7・19 19:42 東京町田 さしたる感慨も浮かばない
-
「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】最終日(紀伊勝浦-東京)その2-神志山、賀田、九鬼、相賀、紀伊長島、多気、名古屋、豊田町、六合、由比(紀勢本線/東海道本線)
鉄旅日記2014年3月9日その2・・・神志山駅、賀田駅、九鬼駅、相賀駅、紀伊長島駅、多気駅、名古屋駅
-
2019年葉月【讃州高松への旅をSNSへの投稿より振り返ります。】最終日-高松築港、茶屋町、迫川、宇野、宇野港、八浜、岡山、大多羅、由比(本四備讃線/宇野線/赤穂線/東海道本線)
鉄旅日記2019年8月13日・・・高松築港駅、茶屋町駅、迫川駅、宇野駅、八浜駅、岡山駅、大多羅駅、由