*

「鉄旅日記」2006年如月 その2-勿来、いわき(常磐線) 【房総半島から1週間。常磐線に乗って、下っていったのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/22 旅話, 旅話 2006年

鉄旅日記2006年2月11日・・・勿来駅、いわき駅(常磐線)

2006・2・11 いわき東急イン618号室
次の勿来で降りる。
福島県に入った。
灯につられたが、古関の町の灯はわずかだった。

駅前に酒を飲ませる店がいくつか。
男はすでにマイクを握っている。
「勿来の関」の石碑と、関所のオブジェ。

脇には八幡太郎義家の歌碑。
奥羽じゃ源氏は敵でもあるが、この町じゃ英雄らしい。
銅像も立っている。

駅舎は旅情に満ちている。
関所を象った門の上に「勿来駅」と大書された木札。

跨線橋では月を見る。

「古関の町の月明かりか。」
詩は作れないが、そうつぶやき、いわき行に乗った。

駅にいた外国人は、どういった経緯で奥州の古関の町にいたのか。

いわきにいる。
いわきの方言が聞こえてくる。
茨城訛は日立で聞いた。

かつて路面電車が走っていたことを想像させる街路にバスの停留所があり、6号国道を越えると右手にテレビ塔が見える。
繁華街は整っている。
品のいい店もたくさんある。

2020年4月4日撮影

選んだのは駅正面の2階にある居酒屋。
酒にはそこそこの値がついていたが、食べ物は安い。
これが地方都市の実力。
ひとりにしちゃ贅沢な寄せ鍋と串物を注文して、ビール2杯に熱燗2合。

新幹線からは見放されたが、いわき市は福島、郡山を抑えて、県内では一番の人口を誇っている。
繁華街はその2都市と比較すると小ぶりだが、常磐の首都を思わせる風格があり、水戸とその覇を競っている。

いわきは30万人以上の人口を有し、国内では47番目の人口を持つ。
人通りは多いと言えないが、歴史のあるスナック街を通ると、今時分の艶やかさを想像できる。
たいした街だよ。

明日は友と待ち合わせる。
再会方法はまだ不明。
適当な時間帯に郡山に行く列車があることを知ったから。

飲み屋から出たら小雨に濡れた。
でも古関に上がっていた月は朧ながら姿を隠してはいなかった。

カウンターだけの飲み屋があって、常磐炭鉱華やかなりし頃に、シャベルを担いで山に向かっていたような男たちが並んで酒を飲み、可愛らしい婦警さんが挨拶をくれる街。
あの時オレは上ばかり見て歩いていた。

この部屋からは駅のホームが見える。
煙草は吸えないが、願ったりの部屋だ。

ロビーに下りたら外国人の一行が下りてきて、ひとり残った女性と目が合い笑顔を交わす。
彼女は今もPC画面の前にいるだろう。

いわき駅はほんの10年くらい前までは平駅と言ったはずなんだ。
子供の頃に特急列車の終着駅として記憶した駅が、かつて友と通りかかった際にそこにあった駅が、消えてなくなるわけがない。
街も駅も変わる。

操車場が見えるこの部屋は本当に素晴らしい。

2006・2・12 8:30 いわき東急イン618号室
浜通りに高い山はない。
少なくともここからじゃ見えない。
だから雪も見ない。

穏やかな日差しの中で眠り、夜明けの空は美しかった。
久し振りに美味い朝飯をたらふく食べる。

これから大切な友と会う。

遠くの町へ出かける理由なら、こうしていつの時も見つかるものだ。

21:10 東京葛飾金町
大切な友人との再会の日だった。
場所は、かつて10年以上も前に彼の運転する車で通り過ぎた平駅。
現在のいわき駅。

その前にいわき駅周辺を歩く。
競輪場までは行けなかったけど、満足できる時間だった。
あんなに歩いたのは、京都、大阪、神戸、名古屋、象潟、札幌、松山・・・。

筑波山を望み、大甕駅では日立電鉄の廃線跡を見て、水戸の「駅そば」では、おかみさんに向けて「死にたい」と延々と身の上話を聞かせる青年の横で、そばをすすった。
彼の他にも様々なおかしなヤツが生きていることをその道中で知った。

今日の風は冷たく、強風は列車の進行を妨げる。
松戸金町間、江戸川を渡る風のおかげでダイヤは乱れた。

おとなしく苛立ち、やがて帰り着く。
髪を切りに行って、「雪の女王」の最終話に感動した。

再会した友人が、オレを大切に思ってくれていることを知ってうれしかった。
固い握手を交わせる友人がいることがうれしかった。

それにしても、オレのすぐ脇でいわき市内の地図を眺めていたオッサンが彼だと気づくのに時間がかかった。
それだけの歳月が二人の間には流れていたことをあらためて知った。

そして3月に父親になる彼を、心から祝福した。

関連記事

「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その2-多気、伊勢神宮外宮、伊勢市、鳥羽、鳥羽マリンターミナル(参宮線/鳥羽市営定期船) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月23日・・・多気駅、伊勢神宮外宮、伊勢市駅、鳥羽駅、鳥羽マリンターミナル(参

記事を読む

「車旅日記」2005年冬 最終日(人吉-熊本空港)走行距離240㎞ その1-人吉駅、一勝地駅、球泉洞駅、佐敷駅、上田浦駅、千丁駅、有佐駅、道の駅不知火 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】

車旅日記2005年2月13日・・・人吉駅、一勝地駅、球泉洞駅、佐敷駅、上田浦駅、千丁駅、有佐駅、道の

記事を読む

2020年水無月【緊急事態宣言から解放された週末。石和温泉につかりにいった記憶をSNS風に綴ります。】-甲府、善光寺、酒折、石和温泉、大月(中央本線/身延)

鉄旅日記2020年6月20日~21日・・・甲府駅、善光寺駅、酒折駅、石和温泉駅、大月駅(中央本線/

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 最終日(石巻-東京)その1-石巻、西塩釜、下馬、塩釜、岩切、利府、伊達、郡山、白河(仙石線、東北本線、利府支線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月21日その1・・・石巻駅、西塩釜駅、下馬駅、塩釜駅、岩切駅、利府駅、伊達駅、郡

記事を読む

「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その3-稚内サンホテル 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月4日・・・稚内サンホテルにて 21:39 稚内サンホテル325号 素敵な部屋

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋 最終日(小諸-東京)その1-小諸、軽井沢、横川(しなの鉄道) 【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】

鉄旅日記2005年11月7日・・・小諸駅、軽井沢駅、横川駅(しなの鉄道) 2005・11・7 東京

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その3-関駅、その後

車旅日記1996年5月3日 16:36 関駅 あれから2時間経ってようやくここに戻ってきた。

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走 最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その1-神島山海荘あじさい、神島漁港、菅島漁港、鳥羽城址(城山公園)、旧鳥羽小学校(鳥羽市営定期船) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月24日・・・神島山海荘あじさい、神島漁港、菅島漁港、鳥羽城址(城山公園)、旧

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 2日目(出雲-柳井)-出雲市、大田市、益田、長門市、仙崎、阿川、小串、幡生、防府、柳井(山陰本線/仙崎支線/山陽本線)【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月3日・・・出雲市駅、大田市駅、益田駅、長門市駅、仙崎駅、阿川駅、小串駅、幡生駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その4‐置賜、高畠、米沢(奥羽本線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・置賜駅、高畠駅、米沢駅(奥羽本線) 15:32 置賜(

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その1 ‐新静岡、静岡、由比、富士、芝川(東海道本線/身延線)/駿府城址 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・新静岡駅、静岡駅、由比駅、富士駅、

→もっと見る

    PAGE TOP ↑