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「車旅日記」2000年夏Part.1 初日(東京‐諏訪)葛飾金町、調布駅、高尾駅、桂川ドライブイン、甲府芸術の森公園、道の駅信州蔦木宿、上諏訪 【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 2000年

車旅日記2000年7月20日

2000・7・20 8:10 東京葛飾金町
天気は良好。
やけに雲が多いけど心配なさそうだ。
とても暑いよ。

今は淡々とした気持ちでいるけれど、路上に戻れば旅心をはじめ、日常オレの中に存在しないいくつかが戻ってくるだろう。
それを楽しみにはしている。

明日から沖縄サミット。
明後日からオールスターゲーム。

でもオレにはここに戻ってきてからの仕事の方が大切。
そんな気持ちでいる。

今はそれ以外考えられない。

10:29 調布駅 42㎞
環状7号線の並みいる渋滞名所を順調に通り抜けて20号国道へ。

どこを走っても思い出が落ちているけれど、滅多に考えないことを頭の中に浮かべながら走っていた。

これから気温はぐんぐん上がっていくだろう。
時折吹く涼しい風がうれしい。

こんな日は空を見ているだけで気持ちが休まる。

この場所で空を見上げている理由は、どうでもいい。

夏らしい姿でこれから出かける少女。
車で花を届けに行く女性。

さっき書いた滅多に考えないこととは、そんな風景から着想を得たもの。

でも何を考えていたかはもう忘れた。

12:38 高尾駅 69㎞
20号国道の混雑は日野橋まで。
あのあたりは空気も空の色も昔と変わらない。

言ってみればかつて散歩の途中に寄っていたような場所に、今日は遠方からやってきた。

町田から葛飾に越して1年。
気持ちの上では葛飾はまだオレの家にはなっていない。

八王子を過ぎて、ここ高尾に着くと涼しい風が吹き始めた。

この町に暮らしていた女性に恋をしたことがある。
ひとつ年上でショートカットの爽やかな女性だった。

オレを受け入れてはくれなかったけれど、彼女がエジプトから寄越してくれたエアメールは確か今もすぐに取り出せるはずだ。

ここに着くまでの2時間。
ひとりということを必要以上に意識していた。

14:06 20号国道‐桂川ドライブイン(四方津) 99㎞
高尾からここに至る旅情性には惹かれる。

一日も半分が過ぎて、東京を離れた。

店にいた客は誰もが何らかの方言でしゃべっていた。

車が通らないと蝉の声だけが聞こえる。

注意深く耳を澄ませば鳥の声も聞こえるようだ。

いい夏がきたな。

ここではひとりも悪くないと感じている。

16:13 52号国道‐甲府芸術の森公園 163㎞
勝沼でワインを買い、甲府駅を眺め、車を止める場所が見つからないまま漂い、この場所に着いた。

市民はここで憩いの時を過ごし、オレは便所を借りた。

何やら楽しそうな一団がいて、誘われるように人気のない散策路を歩き、また戻った。

残念だが、甲府市民のようにこうした場所で楽しめる要素を持たない。
連れ合いもいない。

ここから諏訪は遠くない。
早くて19:00。
遅くとも20:00には着くだろう。

上諏訪に着いたら、外に飲みに出てみようか。

17:17 20号国道‐信州蔦木宿(道の駅) 198㎞
展開は早く、ルートはすでに信濃路。

やけに多くの車が集い何事かと思ったが、奥に温泉施設がある。

夕暮れ時に入る風呂はいい。

国道側には見るべきものはないが、反対側は緑が濃い。
風呂場ではそれなりに楽しめるだろう。

この分じゃあと1時間もすれば諏訪に着くだろう。
まだ早いとも思うが、体は汗でべたついている。
オレとて早いところ風呂にありつくのも悪くない。

22:10 上諏訪某リゾートクラブ 228㎞
200㎞そこそこの場所が目的地だったのは初めてかもしれない。
そのおかげで上諏訪の街を歩く余裕を持てた。

ひっそりとではあるけれど、高島城は街の片隅で存在感を誇示して、19:00近くになっても数人の客を呼んでいた。
隅ではテントを張った集団が車座になって何やら話し込んでいる。

そこから上諏訪駅へは2つの堀を渡る。

往時を偲ばせる風情。
堀辺の民は、堀に面して勝手口を設けて自在に行き来している。

街は夜になっても明るい色をまとっていたけど、入りたい店がなかなか見つからない。

選んだのは線路沿いの小さな店。
外からカウンターが見えた。
それがないとオレみたいなヤツはちょっと入りづらい。

中では地元民が大きな声で楽しくやっている。
溶け込むのに時間はかからなかった。

女将は明るい人で、おかげで3本のビールと3品。
帰り際、オレに気づかない女将に声をかけてくれた酔客がいた。
街と人の関わり方が想像できる場面だった。

オレも30歳を過ぎて、ようやくひとりで知らない店の暖簾をくぐれるようになったようだ。

こうして夜景が見える部屋にいることが懐かしい。

どこかで騒いできたような7人の若者たちが通り過ぎた。
きっと次の店でも探しにいくのだろう。

諏訪は何度目になるのだろう。
それなりに縁のある街だ。
好きな女性と写った写真も家には残っている。

今夜のことも忘れないだろう。
今見ている夜景は方角的には東京方面。
メインの明かりはおそらく伊那か高遠のものだろう。

眼下に敷かれている線路では定期的に踏切が鳴り、列車がやってくる。
夜行列車は今も走っているのだろう。

高校入学前、仲のよかった中学3年のクラス男子ほぼ全員でこの地に下りて、これまでの人生で一番楽しかった日々が展開された。

あの日オレたちが降り立ったのは、おそらく上諏訪駅だったのだろう。
駅には当時の雰囲気がまだ濃厚に残されていた。
さっきはタクシー運転手に親切にしてもらった。

この街は生涯そうした印象と共にオレの中で生き続けるだろう。
そんな街で夜を越せることがうれしい。

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