「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その6‐上川口、養父、豊岡、香住(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月23日・・・上川口駅、養父駅、豊岡駅、香住駅(山陰本線)
18:35 上川口(かみかわぐち)駅(山陰本線 京都府)
列車行き違い7分の停車。

曇り空に隙間ができて青が覗く。

耳を澄ますわけでもなく、ヒグラシの声が聞こえてくる。
はっと我にかえってあたりを見渡せば、緑濃い古里。


東京で暮らしちゃいるが、オレも元来こっち側の人間だよとささやけば、駅前はもう馴染みの村だ。

送迎車があらかた去って、ひとり残った少女が加わる駅前風景を写す。
19:23 養父(やぶ)駅(山陰本線 兵庫県)
列車行き違い5分の停車。
養父は、山陰本線の中でも町の格を持つ駅だと思っていたよ。
地名に接したことがあるんだ。あるいは昭和に幕を閉じた国際プロレスの王座戦が組まれた町だったのかもしれない。贔屓にしているプロレスリング・ノアに所属するハイフライヤー、YO-HEY選手の故郷でもある。
初めて降りる養父駅前に父兄の迎車はなく、静かにヒグラシの声を聞いていた。



古里が暮れゆく光景に接して、それを美しいと感じる自身と、所詮ははかない2020年の夏の記憶と感じる自身がいる。
今分かったが、それを選ぶのは神じゃない。
20:01 豊岡(とよおか)駅(山陰本線/京都丹後鉄道宮舞・宮豊線 兵庫県)
街は今日7/23を終えている。構わないよ。とっくに日は暮れている。それでいいさ。
豊岡に降りるのは何年振りになるだろう。オレとの関係性からいえば、無沙汰を詫びる間柄じゃない。これまでに何度も足を運んできたんだ。互いの息災を祝うのが最初の礼儀。


それにしても、豪雨にさらされニュース沙汰にもなったあの頃からいく年が過ぎたか。
粗忽にも程があるが、オレはもう何もかもを記憶していない。
駅を眺めても、何だかよそよそしく感じたよ。あるいは夜ここにいるのが初めてだからなのかもしれない。


気の利いた飲み屋でもあればこの街で一杯ひっかけてから香住に向かってもいいと、アーケード街を一度往復した。
でも時間は過ぎた。日本海が見える海辺の町へいく。
福知山から先は有人改札になっている。珍しさの影で、人口減少が続くこの国はどこを目指している?との質問用紙は必要だろう。誰が答えるべきなのかはオレにも分からないが、そんなオレもある氷山の一角では先の質問に答える立場にいる。
かつてはどの駅にも駅員がいたんだ。だから活気もあったのだと言える。

山陰本線は京都から歩を進めるに従って車両が古くなる。かつての江夏豊投手や、晩年に代打に回った若松勉選手のように、千両役者が現れたかのような感慨にふける。
20:58 香住(かすみ)駅(山陰本線 兵庫県)


関連記事
-
-
「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その4 ‐福島、卸町、東福島、桑折、飯坂温泉(阿武隈急行/東北本線/福島交通飯坂線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】
鉄旅日記2021年10月9日・・・福島駅、卸町駅、東福島駅、桑折駅、飯坂温泉駅(阿武隈急行/東北本
-
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】3日目 いよいよ金沢へ‐その2(R8→北陸道)敦賀、尼御前SA、金沢駅
車旅日記1996年5月5日 18:11 8号国道‐敦賀 琵琶湖ともお別れ。 8号国道を飛ばした。
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その3‐仙台、国見、愛子、山形(仙山線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月4日・・・仙台駅、国見駅、愛子駅、山形駅(仙山線) 14:39 仙台(せん
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 3日目(肥前鹿島-門司港)その1‐肥前鹿島、肥前大浦、長里、湯江(長崎本線)/鹿島城跡 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前鹿島駅、肥前大浦駅、長里駅、湯江駅(長崎本線)/鹿島城跡
-
-
2020年盛夏【二人でどこへ行こう。決めたのは甲府でございました。帰りは高尾の名店街で過ごした日帰り旅をSNS風に綴ります。】-高尾、四方津、塩山、甲府、甲斐大和(中央本線)
鉄旅日記2020年8月9日・・・高尾駅、四方津駅、塩山駅、甲府駅、甲斐大和駅(中央本線) 長
-
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)
鉄旅日記2009年5月1日・・・金町駅、東京駅、静岡駅、浜松駅、弁天島駅、大垣駅、美濃赤坂駅、石山寺
-
-
「車旅日記」2005年初夏 2日目(山形-新潟)走行距離313㎞ その1-アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童駅、村山駅、新庄駅、羽前前波駅 【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】
車旅日記2005年7月17日・・・アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童
-
-
「車旅日記」2000年春 3日目(象潟‐秋田‐盛岡‐鳴子温泉)象潟海岸、秋田駅、角館花葉館、田沢湖駅、紫波SA、前沢SA、古川駅 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】
車旅日記2000年5月5日 8:54 象潟海岸 636㎞ 朝、人気のない海もいい。 車を降りるつ
-
-
「車旅日記」2004年夏 2日目(別府-宮崎)走行距離337㎞その1-別府日名子、大分駅、菅尾駅、三重町駅、豊後竹田駅、阿蘇駅 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】
車旅日記2004年8月12日・・・別府日名子、大分駅、菅尾駅、三重町駅、豊後竹田駅、阿蘇駅 200
-
-
「鉄旅日記」2008年皐月 4日目(徳島-善通寺)その1-徳島、中田、旧小松島駅、南小松島、阿南、牟岐、海部、甲浦(牟岐線/安佐海岸鉄道) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】
鉄旅日記2008年5月5日・・・徳島駅、中田駅、旧小松島駅、南小松島駅、阿南駅、牟岐駅、海部駅、甲浦