「鉄旅日記」2014年冬 初日(東京-鬼怒川温泉)-下今市、新藤原、川治湯元、川治温泉、湯西川温泉、龍王峡、鬼怒川公園、新高徳、鬼怒川温泉(東武鬼怒川線/野岩鉄道) 【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】
鉄旅日記2014年12月6日・・・下今市駅、新藤原駅、川治湯元駅、川治温泉駅、湯西川温泉駅、龍王峡駅、鬼怒川公園駅、新高徳駅、鬼怒川温泉駅(東武鬼怒川線/野岩鉄道)
2014・12・6 11:09 下今市(しもいまいち)駅(東武日光線/東武鬼怒川線 栃木県)
男体山に雪が見える。
冬の冷気は、大声を張り上げている弁当売りの爺さんの背を丸めさせる。
日光行きとの切り離しに要する10分弱の間でどれだけ売れただろうか。
懐しい鉄道風景だった。
改札を抜けて煙草を一服。
この駅に寄ったのは14年前の5月の夕暮れ。
大雨の最中だった。
鬼怒川に差し掛かる頃には日も暮れ始め、やがてすべての山岳風景は闇に隠れ、これから往く線路に沿って会津へと向かったんだ。
あらためて降りてみたら随分と寂しい駅前だった。
そして14年前の記憶とも違った。
仲間のひとりから連絡が入った。仕事の段取りがうまくいかなかったのだろうか。
今日は鬼怒川温泉で宴会だ。
あたりはすっかり冬枯れ。
列車は重たそうな音をたてながら上りにかかり、川を渡る際には絶景が現れる。
12:20 新藤原(しんふじわら)駅(東武鬼怒川線/野岩鉄道 栃木県)
平将門を討ちとった藤原秀郷の名にちなんだ東武鬼怒川線終着駅。
ここから先は野岩鉄道になる。
仕事のトラブル話が勃発。
参った参った。
何もない駅で電話をしているうちに待ち時間は潰れたけど、ホントに参ったな。
陽気な団体客が乗ってきた。
温泉に向かうというのは、そういうことなんだろう。
川治湯元(かわじゆもと)駅(野岩鉄道 栃木県)にて
川治湯元~川治温泉(徒歩)
13:17 川治温泉(かわじおんせん)駅(野岩鉄道 栃木県)
川治湯元駅から道祖神が散見される会津西街道の下り道を往く。
温泉街を抜けてこの駅までの徒歩行。
冷え込んだ山里の待合室にはストーブが置かれているが今日の出番はなし。
しかしポケットに入れていた手は凍え、食事にもありつけない。
温泉街に人気はなく、青かった空は冬を表す鈍色に変わり、通る車は疎らだった。
だが温泉街に廃墟は見られず、町を守り抜いている最北の野州人に敬意を払い、在りし日の会津藩大名行列を想う。
13:48 湯西川温泉(ゆにしがわおんせん)駅(野岩鉄道 栃木県)
川治湯元のひとつ先の駅へ。
今回購入したフリー切符の乗り降り自由な区間はここまで。
平家の隠れ里の入口に敷かれた駅は地下駅。
光のトンネルを上がって地上に出ると初雪だ。
会津へと伸びる野岩鉄道の鉄橋が幻想的に見えてしばし茫々とした。
社員旅行でここに来たのが4年前。
その年からオレの暮らしはひとりじゃなくなった。
駅には確かに見覚えがあった。
この駅ではとても大勢の客が降りていった。
14:50 龍王峡(りゅうおうきょう)駅(野岩鉄道 栃木県)
鬼怒川温泉方面に3駅戻る。
随分腹を空かして昼メシとして購入した味噌団子はなかなかイケる。
ここは観光地だ。
寒さに震えながらも人はいて、遥か下を流れる鬼怒川龍王峡を眺めようと、手すりを挟んで首を伸ばしている。
鬱蒼とした冬の木立に隠れるように木道が見えた。
15:16 鬼怒川公園(きぬがわこうえん)駅(東武鬼怒川線 栃木県)
川治温泉から先の区間で降っていた雪が消えたのは龍王峡の手前。
まるで土地や季節が変わったかのように空は青くなった。
閑散とした駅前には大きな風呂屋とそば屋が一軒。
その先に温泉街が見える。
川辺に整然とホテルが並び錆色の廃墟も目につく。
14年前に風呂に入るために寄ったホテルはどこだろう。
会津西街道を右に折れてすぐのそこそこ大きなホテルだった。
鬼怒川温泉に着いて客が乗ってくる。
車窓から見た温泉街はその姿をより巨大なものに見せる。
15:48 新高徳(しんたかとく)駅(東武鬼怒川線 栃木県)
さらに2駅下今市方面に戻る。
特急停車駅だが、駅前からはどこへも行けない。
ビールも売っていない。
鬼怒川からは離れ、温泉街の明かりもここには届かない。
次の下り列車で鬼怒川温泉に戻れば今日の旅はおしまい。
そこで仲間を待つ。
16:29 鬼怒川温泉(きぬがわおんせん)駅(東武鬼怒川線 栃木県)
夕暮れ迫る温泉街。
外に出るとあまりの冷気に体が震える。
片隅に設けられた足湯には惹かれたけど、あれは独りで入るもんじゃない。
ぶらぶらと商店街に足を向ける。
温泉饅頭を売る店、潰れてしまったソープランド。
通りはすぐに尽きて、ホテルが連なる大通りにぶつかる。
もう歩くのは止めて東武鉄道屈指の大鉄道駅の待合室に居座り、草野球仲間の到着を待っている。
この時期にこの町にきて宴会をやるのは今年で3度目になる。
思えばいい仲間と出会えたものだ。
今年は優勝も経験した。
栄光の時だった。
それも3度目のことだった。
仕事で迷惑をかけたSさんが無事に改札口に現れるかどうか気にかかる。
選挙が始まり忙しくなった12月。
長かったひとり暮らしも解消して素晴らしい友を得てもなお、こうしてここに一人で座っている年の瀬の一日に、オレが好んだ人生が見える。
いいことも悪いこともあった今年だけど、また明日からの日々が待っている。
何の根拠もないけれど、オレはその日々が幸せに包まれたものになることを信じているよ。
そろそろ仲間が着く頃だ。電車から降りたら、きっと寒さに音を上げることだろう。
オレもこのあたたかい部屋を出て、改札口に迎えにいく。
関連記事
-
-
「車旅日記」2005年初夏 最終日(新潟-長岡)走行距離246㎞ その2-青海川駅、安田駅、北条駅、長鳥駅、来迎寺駅、長岡駅、東京葛飾金町 【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】
車旅日記2005年7月18日・・・青海川駅、安田駅、北条駅、長鳥駅、来迎寺駅、長岡駅、東京葛飾金町
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 初日(東京-五所川原)その3‐小牛田、一ノ関、盛岡、八戸、野辺地(東北本線/IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月2日・・・小牛田駅、一ノ関駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅(東北本線/IGRいわ
-
-
「車旅日記」2000年春 3日目(象潟‐秋田‐盛岡‐鳴子温泉)象潟海岸、秋田駅、角館花葉館、田沢湖駅、紫波SA、前沢SA、古川駅 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】
車旅日記2000年5月5日 8:54 象潟海岸 636㎞ 朝、人気のない海もいい。 車を降りるつ
-
-
「車旅日記」2004年秋 2日目(宇野-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅 【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】
車旅日記2004年11月21日・・・宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅
-
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その2(R8→R18→R19)直江津駅、新井、豊野町、長野駅、道の駅信州新町、道の駅大岡村
車旅日記1996年5月6日 6:58 直江津駅 恋する女よ、いつの間にか日本海とさよならしていたよ
-
-
「鉄旅日記」2017年春 最終日(JR難波-東京)その2-大曽根、勝川、春日井、中津川、上松、原野、広丘、みどり湖、相模湖、豊田(中央本線/篠ノ井線)【近鉄に乗る日々】
鉄旅日記2017年3月20日・・・大曽根駅、勝川駅、春日井駅、中津川駅、上松駅、原野駅、広丘駅、みど
-
-
「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その3‐仙台、北山、葛岡、山形(仙山線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】
鉄旅日記2020年4月4日・・・仙台駅、北山駅、葛岡駅、山形駅(仙山線) 12:25 仙台(せんだ
-
-
「車旅日記」2005年春 初日(松本-富山)走行距離317㎞ その1-新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島駅、飯山駅 【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】
車旅日記2005年4月29日・・・新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島
-
-
2018年初秋 最終日(桑名-東京)その1-桑名、養老、大垣、揖斐、垂井、美江寺、本巣、樽見(養老鉄道/東海道本線/樽見鉄道) 【JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月16日・・・桑名駅、養老駅、大垣駅、揖斐駅、垂井駅、美江寺駅、本巣駅、樽見駅(
-
-
「鉄旅日記」2018年如月 初日(東京-直江津)その1-保谷、代々木、都留市、富士山、河口湖(西武池袋線/山手線/中央本線/富士急行) 【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】
鉄旅日記2018年2月10日・・・保谷駅、代々木駅、都留市駅、富士山駅、河口湖駅(西武池袋線/山手線