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「鉄旅日記」2014年冬【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】初日(東京-鬼怒川温泉)-下今市、新藤原、川治湯元、川治温泉、湯西川温泉、龍王峡、鬼怒川公園、新高徳、鬼怒川温泉(東武鬼怒川線/野岩鉄道)

公開日: : 最終更新日:2024/05/29 旅話, 旅話 2014年

鉄旅日記2014年12月6日・・・下今市駅、新藤原駅、川治湯元駅、川治温泉駅、湯西川温泉駅、龍王峡駅、鬼怒川公園駅、新高徳駅、鬼怒川温泉駅(東武鬼怒川線/野岩鉄道)

2014・12・6 11:09 下今市(しもいまいち)駅(東武日光線/東武鬼怒川線 栃木県)
男体山に雪が見える。

冬の冷気は、大声を張り上げている弁当売りの爺さんの背を丸めさせる。
日光行きとの切り離しに要する10分弱の間でどれだけ売れただろうか。
懐しい鉄道風景だった。

改札を抜けて煙草を一服。
この駅に寄ったのは14年前の5月の夕暮れ。
大雨の最中だった。
鬼怒川に差し掛かる頃には日も暮れ始め、やがてすべての山岳風景は闇に隠れ、これから往く線路に沿って会津へと向かったんだ。

あらためて降りてみたら随分と寂しい駅前だった。
そして14年前の記憶とも違った。

仲間のひとりから連絡が入った。仕事の段取りがうまくいかなかったのだろうか。
今日は鬼怒川温泉で宴会だ。

あたりはすっかり冬枯れ。
列車は重たそうな音をたてながら上りにかかり、川を渡る際には絶景が現れる。

12:20 新藤原(しんふじわら)駅(東武鬼怒川線/野岩鉄道 栃木県)
平将門を討ちとった藤原秀郷の名にちなんだ東武鬼怒川線終着駅。
ここから先は野岩鉄道になる。

仕事のトラブル話が勃発。
参った参った。
何もない駅で電話をしているうちに待ち時間は潰れたけど、ホントに参ったな。

陽気な団体客が乗ってきた。
温泉に向かうというのは、そういうことなんだろう。

川治湯元(かわじゆもと)駅(野岩鉄道 栃木県)にて

川治湯元~川治温泉(徒歩)

13:17 川治温泉(かわじおんせん)駅(野岩鉄道 栃木県)
川治湯元駅から道祖神が散見される会津西街道の下り道を往く。

温泉街を抜けてこの駅までの徒歩行。
冷え込んだ山里の待合室にはストーブが置かれているが今日の出番はなし。
しかしポケットに入れていた手は凍え、食事にもありつけない。

温泉街に人気はなく、青かった空は冬を表す鈍色に変わり、通る車は疎らだった。
だが温泉街に廃墟は見られず、町を守り抜いている最北の野州人に敬意を払い、在りし日の会津藩大名行列を想う。

13:48 湯西川温泉(ゆにしがわおんせん)駅(野岩鉄道 栃木県)
川治湯元のひとつ先の駅へ。
今回購入したフリー切符の乗り降り自由な区間はここまで。

平家の隠れ里の入口に敷かれた駅は地下駅。
光のトンネルを上がって地上に出ると初雪だ。
会津へと伸びる野岩鉄道の鉄橋が幻想的に見えてしばし茫々とした。

社員旅行でここに来たのが4年前。
その年からオレの暮らしはひとりじゃなくなった。

駅には確かに見覚えがあった。
この駅ではとても大勢の客が降りていった。



14:50 龍王峡(りゅうおうきょう)駅(野岩鉄道 栃木県)
鬼怒川温泉方面に3駅戻る。

随分腹を空かして昼メシとして購入した味噌団子はなかなかイケる。
ここは観光地だ。
寒さに震えながらも人はいて、遥か下を流れる鬼怒川龍王峡を眺めようと、手すりを挟んで首を伸ばしている。
鬱蒼とした冬の木立に隠れるように木道が見えた。

15:16 鬼怒川公園(きぬがわこうえん)駅(東武鬼怒川線 栃木県)
川治温泉から先の区間で降っていた雪が消えたのは龍王峡の手前。
まるで土地や季節が変わったかのように空は青くなった。

閑散とした駅前には大きな風呂屋とそば屋が一軒。
その先に温泉街が見える。

川辺に整然とホテルが並び錆色の廃墟も目につく。
14年前に風呂に入るために寄ったホテルはどこだろう。
会津西街道を右に折れてすぐのそこそこ大きなホテルだった。

鬼怒川温泉に着いて客が乗ってくる。
車窓から見た温泉街はその姿をより巨大なものに見せる。

15:48 新高徳(しんたかとく)駅(東武鬼怒川線 栃木県)
さらに2駅下今市方面に戻る。

特急停車駅だが、駅前からはどこへも行けない。
ビールも売っていない。
鬼怒川からは離れ、温泉街の明かりもここには届かない。

次の下り列車で鬼怒川温泉に戻れば今日の旅はおしまい。
そこで仲間を待つ。

16:29 鬼怒川温泉(きぬがわおんせん)駅(東武鬼怒川線 栃木県)
夕暮れ迫る温泉街。
外に出るとあまりの冷気に体が震える。

片隅に設けられた足湯には惹かれたけど、あれは独りで入るもんじゃない。
ぶらぶらと商店街に足を向ける。
温泉饅頭を売る店、潰れてしまったソープランド。

通りはすぐに尽きて、ホテルが連なる大通りにぶつかる。
もう歩くのは止めて東武鉄道屈指の大鉄道駅の待合室に居座り、草野球仲間の到着を待っている。
この時期にこの町にきて宴会をやるのは今年で3度目になる。

思えばいい仲間と出会えたものだ。
今年は優勝も経験した。
栄光の時だった。
それも3度目のことだった。

仕事で迷惑をかけたSさんが無事に改札口に現れるかどうか気にかかる。
選挙が始まり忙しくなった12月。
長かったひとり暮らしも解消して素晴らしい友を得てもなお、こうしてここに一人で座っている年の瀬の一日に、オレが好んだ人生が見える。

いいことも悪いこともあった今年だけど、また明日からの日々が待っている。
何の根拠もないけれど、オレはその日々が幸せに包まれたものになることを信じているよ。

そろそろ仲間が着く頃だ。電車から降りたら、きっと寒さに音を上げることだろう。
オレもこのあたたかい部屋を出て、改札口に迎えにいく。

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