*

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】最終日(直江津-六日町-大前-東京)その2-八色、浦佐、五日町、水上、後閑、上牧、八木原(上越線)

公開日: : 最終更新日:2023/06/13 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年2月11日・・・八色駅、浦佐駅、五日町駅、水上駅、後閑駅、上牧駅、八木原駅(上越線)
9:47 八色(やいろ)駅(上越線 新潟県)にて

10:33 浦佐(うらさ)駅(上越新幹線/上越線 新潟県)
八色駅で降りて、ひと駅の徒歩行。
歩道まできちんと除雪をしてくれている行政に敬意を。

雪国での仕事を都会では正確に想像することはできない。
敬意を。

雪壁の中を歩くのは心が弾んだ。
右手を伸ばして雪をつかみ、放り投げ、蹴りあげる。
なんて楽しいのだろう。

雪国じゃ時に大人も子どもに戻れる。

魚沼川は清く、「まっしろだ」とつぶやき、小田和正さんの楽曲を一小節口ずさむ。

新幹線駅は遠くから分かる。

浦佐駅は近く感じた。

木のテーブルセットに腰かけてビールと唐揚げ棒。
寒くはないんだ。

旅のない人生をもはや想像できない。

11:02 五日町(いつかまち)駅(上越線 新潟県)
清楚な菓子屋があった。
時代がかったご同業の印刷屋は歴史的社屋を朽ちるに任せて撤退していた。

商店街を一周。
雪国の「暮らしの道」に美を感じてスマホを向ける。

大きな工場を背にした堅固な造りの広い待ち合いで、買い置きのビールを飲んでいる。

寒くはないんだ。
本当だよ。

次の水上行が空いているなら、またワンカップ大関を開けるさ。
混んでいたとしても湯沢までだろう。

悲しみ。
憤り。
仕事はさっぱりで、負の感情のみが48年目の人生最後の時を埋めている。

思えばこうなるのは必然だった。
これからは、本当にオレが望む人生を歩もうと思う。

心配だけどきっと大丈夫さ。
遠くから見守る。

13:03 水上(みなかみ)駅(上越線 群馬県)
水上は風の通り道。
外が吹雪いた一瞬に土産物屋のおかみさんが笑う。

水上で真田幸村もないだろうが、六連銭の家紋が入ったおもちゃの木刀を買う。

オレの場合は自分で買ったよ。
修学旅行で行った日光で。
そのうちどっかにいっちゃったけど。

国境の積雪は驚嘆に価する。
清水トンネルを潜った先の関東にも同じ雪景色が広がっていた。

空は晴れたが、国境の山から雪が下りてくる。
土産物屋で思わず振り向かされた突風が時折吹く。

水上駅もまた塗り変わっていた。
以前の記憶は10年前のもの。
10年を短くも感じ、また長くも感じる。

長かったよ。
そうじゃなきゃ泣けてくる。

次の10年はおそらく人生で一番濃い時代になるだろう。

そうじゃなきゃ、やっぱり泣けるよ。

13:54 後閑(ごかん)駅(上越線 群馬県)
水上までは戦国末期に真田家が治めた沼田領だったのか。

「真田の里」を謳う後閑。
でも武田信玄が率いた甲州武田軍団の上州先方衆に、後閑氏の名があることを主張したい。

降りる場所として選んだ理由はいくつかあるが、ひとつにはその歴史的事実を知っていたからだ。
だから「後閑」という名はオレには懐かしい。

まるで春一番のような空っ風が休みなく吹く後閑の午後。
水上の積雪はここにはなく、幟がはためく様と空は春そのものだ。

だけど寒い。
利根川へと下る坂道を途中で諦め、駅へ戻る。

そして次の水上行で、ひと駅戻っている。

14:18 上牧(かみもく)駅(上越線 群馬県)
上州の風は強く、止まない。

川辺では落ち着いていられた。
利根川を写す。
これがしたくてこうしている。

紛れもない。
雑念もない。
逃げた結果でもない。

日本海では見られなかった日差しがあたたかさを運びはするが、風の音の凄まじさに驚き、これはまさに風の音だと心打たれている。

雪をまぶした上牧の町を高台から見下ろす。

駅がそこにある。
美しかった。

やってきた上り列車に乗り込む。
窓から差し込む日があたたかい。

15:23 八木原(やぎはら)駅(上越線/吾妻線 群馬県)
眠ってしまった。
起きたら渋川。

赤城山が裾からくっきりと見える。
空っ風は変わらず強く、ここではもはや雪は見られない。

角のパン屋を起点に豆腐屋、小学校と坂道を登り、駅から見えた尖った山を目指す。
あれは妙義山なのか?

撮影ポイントは見つからず、上がってきた道を振り返る。
赤城山の彫刻美を思わす姿に見惚れる。
活火山らしい顔をしている。

遠くには雪をかぶった谷川岳が幻のように浮かんでいる。

風の向きが変われば、あれはきっと見えなくなる。

関連記事

「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】2日目(盛岡-宮古)その3-陸中野田、久慈、陸中八木、八戸(三陸鉄道リアス線/八戸線)

鉄旅日記2019年9月22日・・・陸中野田駅、久慈駅、陸中八木駅、八戸駅(三陸鉄道リアス線/八戸線)

記事を読む

「鉄旅日記」2018年卯月【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】その2-阿字ヶ浦、那珂湊、勝田、大津港、日立、常陸多賀(ひたちなか海浜鉄道湊線/常磐線)

鉄旅日記2018年4月25日・・・阿字ヶ浦駅、那珂湊駅、勝田駅、大津港駅、日立駅、常陸多賀駅(ひたち

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その1-津、阿漕、松阪、家城、伊勢奥津(紀勢本線/名松線)

鉄旅日記2018年12月23日・・・津駅、阿漕駅、松阪駅、家城駅、伊勢奥津駅(紀勢本線/名松線) 2

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】最終日(一ノ関-東京)その3-名取、岩沼、福島、郡山、新白河、上野(東北本線)

鉄旅日記2019年1月6日・・・名取駅、岩沼駅、福島駅、郡山駅、新白河駅、上野駅(東北本線) 15:

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】2日目(和歌山-松阪)その2-串本、新宮、尾鷲、紀伊長島、三瀬谷、多気、松阪(紀勢本線)

鉄旅日記2008年7月20日・・・串本駅、新宮駅、尾鷲駅、紀伊長島駅、三瀬谷駅、多気駅、松阪駅(紀勢

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 2020・4・4 5:29 松戸(

記事を読む

「車旅日記」2003年夏【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】2日目(札幌-旭川-網走-北見)走行距離431㎞ -岩見沢駅、砂川駅、旭川駅、白滝PA、遠軽駅、サロマ湖、網走刑務所、網走駅、北見東急イン

鉄旅日記2003年8月14日 2003・8・14 10:23 岩見沢駅(8月13日の函館空港より5

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】2日目(高山-速星)その1‐高山、打保、猪谷、富山、電鉄富山(高山本線)

鉄旅日記2020年3月21日・・・高山駅、打保駅、猪谷駅、富山駅、電鉄富山駅(高山本線) 2020

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その2-新潟、白山、内野、巻、吉田、燕(越後線/弥彦線)

鉄旅日記2018年3月4日・・・新潟駅、白山駅、内野駅、巻駅、吉田駅、燕駅(越後線/弥彦線) 11

記事を読む

「鉄旅日記」2005年初冬【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】その2-外川、犬吠、本銚子、観音、仲ノ町、銚子、千葉(銚子電鉄/総武本線)

鉄旅日記2005年12月10日 終点の外川は、小さな港を持つ村だった。 振り返ると数多の風雪に晒

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その2‐猪谷、高山、久々野、古井、美濃川合(高山本線/太多線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・猪谷駅、高山駅、久々野駅、古井駅、美

→もっと見る

    PAGE TOP ↑