*

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その3(R20)諏訪湖、韮崎、道の駅甲斐大和

公開日: : 最終更新日:2024/05/07 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年5月6日
16:28 諏訪湖
松本市内を通過して塩尻峠を下りていく。

塩尻峠は信濃制圧戦に出た武田信玄率いる甲州勢が、山上に陣を張った信濃守護の小笠原長時軍を破るべく駆け上がった古戦場。

諏訪の盆地に下りていく道に差しかかり、眼下に諏訪湖を望む地点では目を見張る。

そこでは、かつて歓声を聞いた。
そして誘われるようにここに立ち寄った。

ここには以前、仲間と楽しく過ごすオレがいた。
家に帰ればその頃の写真が少なからず残っている。

そして今回はひとりで来た。
思えばずっと追憶のルートをたどってきた。

初めてここに寄ったのは7年前。
横には去年の夏に心を痛めて訪ねてきた友人、後部座席には二人の素敵な女性を乗せていた。

八方尾根にスキーに行った帰りだった。
二人の女性は交互にオレの横で写真に収まった。

ひとりの女性の横には控え目に少し照れたように立った。
彼女には大学卒業後に一度会って食事をしたが、その後の消息を知らない。

彼女は当時付き合っていた恋人との関係に心を痛めていて、オレに電話してきたことがある。
そして受話器のムコウで泣き出した。

そんなこともあって卒業後に会ったわけだけど、その時にはもう恋人と別れる決心を固めていて、強さのようなものを感じさせた。

数年前、彼女が暮らしていた部屋に電話を入れたら、もうそこにはいなかった。

もう一度会ってみたいけど、もう会えないだろう。
だけど彼女を思い出すようなことがあれば、その魅力的な姿を余さず覚えていることだろう。

もうひとりの年下の女性とは大胆に体を寄せて写っている。
彼女とはその後に何度か二人きりで会う機会を持ち、オレは彼女を好きになり、思いを打ち明けた。
その関係は進展することなく、おそらく彼女とももう会えないだろう。

3年前には今も続けている仲間たちとの旅行でここに立ち寄った。

当時、ブラザーと呼ぶ男と同じ女性を好きになった。
互いに意識はしたけど、友情が変わることはなく、3人で楽しくやっていたけど、やがてその優しげな三角関係にも終わりがくる。

聞くところによれば、ここで過ごした秋を過ぎて、その年のクリスマスに、ヤツは思いを打ち明けたらしい。
彼女は応じて、その事実をオレが知ったのはそれから1年後だった。

そんな過去の記憶が三度オレを湖畔に立たせた。
湖畔をとり巻く道は混雑して、かつてそこにいたいかなる時よりも多くの人々がいた。

そしてオレは初めてその場所でひとりだった。
家族に電話を入れたよ。
これから帰るって。

でも家には誰もいなかった。
だから「帰る」のはしばらくお預けだ。

恋する女よ、君より早く北陸路は抜けたけど、オレはまだこんなところにいる。
帰り着くまでは旅の途中だけど、心は帰り支度を始めている。
ただ、このまま国道を行くことに変わりはない。

君はじきに東京に着くんだろう。
素敵な旅だったことと思う。

次に会う時にはいろんな話をしよう。
今はそれだけが楽しみなんだ。

信濃路、春の訪れの中で。
いくつかの思いが去って、そこに残っていたのは旅人であるオレと、恋する女性への思いだけだった。

17:46 20号国道‐韮崎
富士山が見える。
とてもステキだ。

横には山裾を縫うように中央本線が走っている。
その線がそのまま都会の喧騒まで続いていることを知っているけど、ここでは素晴らしい旅情を身に着けている。

駅に向かう心細い道の途中で、老農夫が孫を連れて炭を焼いている。
その道をたどろうと思いはしたが、彼等の生活空間に踏み入ることをなぜか躊躇した。

そこに立ち入っていれば、あるいは故郷に似たような安らぎを得たかもしれない。
今も微かにあの風景が目に浮かぶ。

この道を以前通った時は雪に埋もれていた。

あの日はひどかった。
富士見パノラマスキー場に日帰りスキーに行き、あまりの大雪に早々に帰らざるを得ず、国道に出たら中央自動車道通行止めの表示。
そこから朝まで延々とこの道を往った。

大渋滞。
大雪の中、車列は遅々として進まない。

根拠はないが、日付が変わる頃には今よりはマシでいるだろう。
変化なし。
根拠などないが、朝になれば少しは事態は好転しているだろう。
そして変化なし。

事態は最悪の予想を遥かに上回り続け、希望が見えないこととはこんなにもツラいことなのかと、眠気と闘いながらハンドルを離さずにいた。

事態が好転し始めたのは翌日昼近く。
大月を過ぎたあたりだった。

悪夢のような一日だったが、今となれば思い出。
こうして晴れた日に通ると旅情にあふれた道であることが分かる。

ただ難点がひとつだけある。
休憩場所がないことだ。

ボチボチ疲れたよ。

18:58 20号国道‐甲斐大和(道の駅)
多少の滞りはあったけど、スムースと言っていい流れで勝沼まで着いた。

最近親父はワインを好んでいる。
だから彼のために甲州ワインを買って帰りたかった。

見つけたのは家族経営の農園。
奥さんに相談する。
つまり、どれがいいか。

彼女の意見は貴重だった。
手にしたのは白ワイン。
旅の素晴らしさを実感できる時だった。

車線がひとつ減り、前後の車はまばらになってきた。
大型ダンプの後ろについた。

ヤツは明らかに整備不良で、うんざりするほどの黒く濁った排気ガスを吐きかけやがる。
そしてオレの前をどこうとしない。

しかしやがてその機会がやってきた。
トンネルの手前に道の駅があった。

やっぱり今夜も晴れたよ。
まだ月は顔を見せていないけど、そのうちオレに会いに来るだろう。

さて、整備不良のトラックも行っちまったし、あとはオレも帰るだけだよ。

今、両親にも電話を入れたんだ。
「これから帰る」ってさ。

甲斐路、一番星輝く中で。

関連記事

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】2日目(湯沢-鷹ノ巣)その1‐湯沢、四ツ小屋、秋田、森岳(奥羽本線)

駅旅日記2020年1月12日・・・湯沢駅、四ツ小屋駅、秋田駅、森岳駅(奥羽本線) 2020・1・12

記事を読む

「車旅日記」2003年夏【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】初日(函館-上ノ国-札幌)走行距離471㎞ -知内駅、道の駅上ノ国もんじゅ、瀬棚町、道の駅いわない、小樽駅、札幌東急イン

鉄旅日記2003年8月13日・・・知内駅、道の駅上ノ国もんじゅ、瀬棚町、道の駅いわない、小樽駅、札幌

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】初日(東京-大船渡)その3‐多賀城、高城町、石巻、鹿又(仙石線/石巻線)

鉄旅日記2020年2月22日・・・多賀城駅、高城町駅、石巻駅、鹿又駅(仙石線/石巻線) 12:44

記事を読む

「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】最終日(鳴子-米沢-東京)-鳴子サンハイツ、瀬見駅、羽前中山駅、萬世大路記念碑公園、栗子トンネル、松川駅、里白石駅、常陸大子駅、我孫子、東京町田

車旅日記1997年8月16日 1997・8・16 8:18 鳴子サンハイツ 拝啓 残暑お見舞い

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】2日目(防府-肥前鹿島)その2‐厚狭、美祢、長門湯本、長門市(美祢線)

鉄旅日記2020年8月14日・・・厚狭駅、美祢駅、長門湯本駅、長門市駅(美祢線) 7:34&

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その1-近鉄富田、富田、近鉄四日市、湯の山温泉、伊勢若松、平田町、鈴鹿市、鳥羽、賢島(名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄富田駅、富田駅、近鉄四日市駅、湯の山温泉駅、伊勢若松駅、平田町

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】2日目(五所川原-北上)その4‐小柳、筒井、八戸、盛岡、北上(青い森鉄道/東北・北海道新幹線/東北本線)

鉄旅日記2019年11月3日・・・小柳駅、筒井駅、八戸駅、盛岡駅、北上駅(青い森鉄道/東北・北海道新

記事を読む

「車旅日記」1996年秋【夏をあきらめきれず、秋。再び夏のルートへと向かったのでございます。】最終日(鳴子温泉‐米沢‐東京) 鳴子サンハイツ、鳴子温泉駅、芦沢駅、赤湯駅、米沢郊外、磐梯、猪苗代湖、新白河駅、氏家、春日部、三軒茶屋、東京町田

車旅日記1996年11月3日 1996・11・3 9:09 鳴子サンハイツ 拝啓 その後、元気

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】2日目(香住-東萩)その3‐末恒、浦安、米子、揖屋(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月24日・・・末恒駅、浦安駅、米子駅、揖屋駅(山陰本線) 10:39&n

記事を読む

「車旅日記」2005年初夏【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】2日目(山形-左沢-新庄-鶴岡-新潟)走行距離313㎞ その1-アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童駅、村山駅、新庄駅、羽前前波駅

車旅日記2005年7月17日・・・アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その4 ‐長野、御代田、小諸、上田(信越本線/しなの鉄道)

鉄旅日記2021年7月10日・・・長野駅、御代田駅、小諸駅、上田駅(

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その3 ‐しんざ、十日町、越後鹿渡、津南、戸狩野沢温泉(北越急行ほくほく線/飯山線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・しんざ駅、十日町駅、越後鹿渡駅、津

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野

→もっと見る

    PAGE TOP ↑