「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】初日(東京-米子)-静岡、豊橋、本竜野、播磨新宮、佐用、東津山、米子(東海道本線/姫新線/因美線/山陰本線)
鉄旅日記2007年5月3日・・・静岡駅、豊橋駅、本竜野駅、播磨新宮駅、佐用駅、東津山駅、米子駅(東海道本線/姫新線/因美線/山陰本線)
2007・5・3 1:54 静岡駅(東海道新幹線/東海道本線 静岡県)
東京駅を最後に出る夜汽車に乗る。
「ムーンライトながら」。
品川、横浜、大船、小田原、熱海、三島、富士、そして静岡。
長い静岡県内ではこの夜行列車は終電車にあたる。
熱海や三島で乗ってきて途中で降りていく者たちがいる。
ここで20分の停車。
ビール1本じゃ眠れない。
よく眠れるはずもない。
西へ向かう夜行列車は満杯。
今夜は月がきれいだ。
ずっと目で追っていたよ。
東京駅を出た直後に、だから彼女にも伝えたんだ。
「月がきれいです」。
4:35 豊橋駅(東海道新幹線/東海道本線/飯田線/名鉄本線 愛知県)
浜松で25分の停車。
ここ豊橋では40分の停車。
夜は案外早く明けていくものだ。
改札を出て朝食を仕入れる。
街は朝を迎える準備を整いきれていない。
東の空が明るくなってきた。
7:29 米原駅手前
豊橋からはほぼ各駅停車となり、三河と尾張の客を集めていく。
東京からの満員状態にうんざりしている人々は、名古屋で混雑の緩和がなされると思っていたが、案に相違して状態は変わらない。
東海道は長い。
三河湾、蒲郡競艇場、名古屋、一宮、木曽川、揖斐川、長良川、岐阜、そして夜行列車の終点大垣。
乗り換え客の凄まじさは東京の朝を思わせる。
その集団はそのまま加古川行に吸い込まれたようにも思ったが、そうでもないらしい。
一体どこへ向かったのだろう。
答えは出ていない。
伊吹山地に漂う朝靄、太平記の里、近江長岡、大垣の元駅員宿舎のような廃墟。
そんな風景を目に焼きつけながら西に向かっている。
9:51 西明石を過ぎて
須磨の海は遥かなり。
山陽道にもこうした素晴らしい車窓風景があったとは。
海に浮かぶ巨大な釣り堀では多くの釣り師が連休と青空を楽しんでいる。
やがて明石海峡大橋が見えてくる。
何年ぶりになるのか。
狭い海峡の先に浮かぶ淡路島は霞んでいた。
11:34 本竜野駅(姫新線 兵庫県)
姫路では名物の「駅そば」を食べる。
和風のつゆに中華麺が。
確かにここでしか味わえないだろう。
姫路城は案外遠くに見えた。
姫路での記憶も、明石で思い出していた記憶と同じ日のもの。
車寅次郎が、太地喜和子さん演じる播磨芸者の「ぼたん」と恋をした播州龍野。
駅から少し離れた揖保川沿いに城跡があり、古い家並が密集した町で、高台にある市庁舎があたりを睥睨している。
「男はつらいよ」の時代の匂いは嗅いだ。
夏とかき氷が似合いそうな民話とソーメンの町だった。
12:38 播磨新宮駅(姫新線 兵庫県)
女子高生たちが行ってしまって、重いディーゼル音が響き渡った。
新宮八幡神社は新宮藩陣屋跡でもあり、杉の大木が変わりゆく世界から風景を守っている。
神前ではこの町の発展と、かすかに彼女とのことを願った。
あの吊橋はおそらくこの町の名物なのだろう。
城跡へと続く立派な橋を渡った先には結婚式場があった。
葛飾を出てから半日。
姫路を離れた姫新線はかつての国境をいくつか越えた。
播磨の国は低い山に囲まれている。
このまま作州津山まで大きな街を通ることはない。
13:43 佐用駅(姫新線/智頭急行 兵庫県)
「あさぎりと星の都」佐用は、智頭急行との接続駅。
佐用川沿いの小さな町だった。
おそらく智頭急行の開通によって新しくなったのだろう。
無機的なコンクリートの駅舎が町の中心にある。
どんな歴史があったのか知らないが、今は鉄道の町に見える。
一番元気そうに見えたのはスポーツ用品店だった。
「時代屋」という酒場に、寿司屋が一軒。
ここを出ると、次は尼子一族と英雄山中鹿之助の希望と絶望の地、上月。
16:23 東津山駅(姫新線/因美線 岡山県)
美作の国都、津山。
駅も街も記憶より小さかった。
タクシー運転手の横で、「駅そば」のカレーうどん。
因美線の発車まで待たねばならず、歩き出す。
隣駅の東津山まで。
街中を吉井川が突っ切っている。
廃れたアーケード街に、映画館が入った角の場末を思わせるビル。
学校帰りの高校生の他に街を歩く者を見ない。
津山は城下町。
3年前だったか、4年前だったか。
あの時は城跡には気づかなかった。
街を見下ろす小高い場所で、その美しい姿を見せている。
吉井川へと流れ込む小川に鯉幟が架かる様は壮観だった。
去年の5月、同じような風景を津軽の大鰐温泉で見ている。
駅につながる大通りを挟んでは新旧の大型店がにらみ合っている。
旧勢力は街に溶け込み、新勢力は街に革新を迫っている。
最近じゃそうした対立のない旧国都は存在しないだろう。
ここ東津山駅で因美線、智頭行を待っている。
数時間前に姫新線で通り過ぎた林野。
そこからやってきた話好きのオジサンに話しかけられたが、何を言っているのかほとんど理解できず、適当に相槌を打つよりほかになかった。
無人の待合所に、いい香りとは言いがたい甘い匂いが漂っている。
その匂いを発しているのが、線路を挟んだ所に立つティッシュ工場なのだと気づくのに時間がかかった。
23:14 ホテルα1米子301号
因美線の道は記憶通りだった。
津山を過ぎると右手に印象的な山が見えて、やがて物見峠に向けて坂を上がっていく。
ディーゼル車はその急勾配を苦しげな音を響かせながら上がっていく。
秘境駅として取り上げられた知和駅を確認した。
国境を越えると坂を下る。
下りきったところに智頭がある。
乗換の鳥取行はすぐに出るので改札を出る時間はなかったけど、駅前風景は3年前のままだった。
あの日にあたたかな気持ちに浸った駅灯の灯を見たかったけれど。
鳥取駅周辺はかつて寄ったいかなる時よりも賑わっていた。
記憶の中にある鳥取はもっと廃れていた。
夜の明かりに目をくらませたのかもしれないが、鳥取は大丈夫。
そう感じられたことは喜びだった。
若者たちも爽やか。
土産を鞄に詰めてビールを飲みながら米子行の発車を待った。
白兎の像があったはずだが、それだけが見当たらなかった。
米子までの山陰路からはすでに明かりが消えていた。
向かいに座っていた美しい因州娘は倉吉で降りた。
かつて頻繁に甲子園に姿を見せていた倉吉北高校のある倉吉は気になっていたが、同じく闇に包まれていた。
米子は鉄道の街。
山陰じゃ一番大きな駅になるのだろう。
山陰本線に、陰陽連絡線の伯備線、そして日本最大の漁港でもある境港へ向かう境線と3線が乗り入れている。
国鉄の頃は機関区があったという。
駅前では地元のラッパー共が都会に対して一歩も引かない態度を示している。
通りを歩く人は見かけないが、酒場はいっぱい。
客のいない寿司屋に入る。
好々爺の大将の握る寿司は美味く、彼の耳は遠かったけど話は弾んだ。
素敵な時間だった。
親父からメールが入った。
見合い話が持ち上がり、その女性が会いたいと言ってきたらしい。
島田雅彦さんの「無限カノン3部作」を読みながら、ずっと愛について考えていた。
答えの出ない話だ。
作州娘も因州娘も美しかった。
明日は雲州娘、芸州娘を見る。
だけどオレはずっと彼女を想っていたよ。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】2日目(防府-肥前鹿島)その1‐防府、新山口、宇部、小野田(山陽本線)/防府天満宮
鉄旅日記2020年8月14日・・・防府駅、新山口駅、宇部駅、小野田駅(山陽本線)/防府天満宮
-
-
「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】初日(東京-三国峠-新潟)-町田、東福生駅、山田うどん、前橋市田口町、月夜野道路情報ターミナル、奥平温泉遊神館、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄
車旅日記1997年8月13日 1997・8・13 10:30 東京町田 出発が遅れている。 急
-
-
「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】3日目(琴平-高知)-琴平、讃岐財田、阿波池田、大歩危、土佐山田、後免、後免町、安芸、奈半利、高知、桟橋通五丁目(土讃本線、土佐くろしお鉄道阿佐線、土佐電気鉄道桟橋線)
鉄旅日記2009年5月3日・・・琴平駅、讃岐財田駅、阿波池田駅、大歩危駅、土佐山田駅、後免駅、後免町
-
-
「鉄旅日記」2013年春【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】最終日(和歌山-東京)その1-打田、妙寺、高野口、橋本、五条、吉野口、法隆寺、平城山、木津、京田辺、四條畷、住道(和歌山線、関西本線、学研都市線)
鉄旅日記2013年4月7日その1・・・打田駅、妙寺駅、高野口駅、橋本駅、五条駅、吉野口駅、法隆寺駅、
-
-
「鉄旅日記」2008年初秋【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】2日目(羽咋-福井)その1-羽咋、七尾、穴水、和倉温泉、北鉄金沢、内灘、粟ヶ崎、金沢(七尾線/のと鉄道/北陸鉄道浅野川線)
鉄旅日記2008年9月14日・・・羽咋駅、七尾駅、穴水駅、和倉温泉駅、北鉄金沢駅、内灘駅、粟ヶ崎駅、
-
-
「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】3日目(姫路-十三)その3-高速神戸、湊川神社、神戸三宮、甲陽園、夙川、西宮北口、宝塚、箕面、石橋、北千里、十三(阪急電鉄神戸高速線/神戸本線/甲陽線/今津線/宝塚本線/箕面線/千里線)
鉄旅日記2017年8月12日・・・高速神戸駅、神戸三宮駅、甲陽園駅、夙川駅、西宮北口駅、宝塚駅、箕面
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】3日目(肥前鹿島-門司港)その4‐南風崎、ハウステンボス、早岐(大村線)/小佐々弾正・甚五郎塚
鉄旅日記2020年8月15日・・・南風崎駅、ハウステンボス駅、早岐駅(大村線)/小佐々弾正・甚五郎
-
-
「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】最終日(三次-東京)その5‐京福嵐山、阪急嵐山、嵐電嵯峨、トロッコ嵯峨、嵯峨嵐山、京都(京福電鉄嵐山本線/東海道新幹線)
鉄旅日記2020年7月26日・・・京福嵐山駅、阪急嵐山駅、嵐電嵯峨駅、トロッコ嵯峨駅、嵯峨嵐山駅、
-
-
「車旅日記」2006年初夏【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】2日目(岐阜-津-名張-近江八幡)その1-東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅、四日市駅、鈴鹿サーキット稲生駅
車旅日記2006年7月16日・・・東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅
-
-
2020年水無月【緊急事態宣言から解放された週末。石和温泉につかりにいった記憶をSNS風に綴ります。】-甲府、善光寺、酒折、石和温泉、大月(中央本線/身延)
鉄旅日記2020年6月20日~21日・・・甲府駅、善光寺駅、酒折駅、石和温泉駅、大月駅(中央本線/