*

「車旅日記」2006年初夏 2日目(岐阜-近江八幡)その2-津駅、伊勢奥津駅、名張駅、伊賀上野駅、信楽駅、紫香楽宮跡駅、ホテルはちまん【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/21 旅話, 旅話 2006年

車旅日記2006年7月16日・・・津駅、伊勢奥津駅、名張駅、伊賀上野駅、信楽駅、紫香楽宮跡駅、ホテルはちまん

14:51 津駅(岐阜駅より150㎞)
変わっていない。
すぐ脇に大きなホテルがあって。

JRと近鉄は、ここでは同じ駅舎を使用している。
Tシャツを汚してしまったが、「駅そば」の腰のない伊勢うどんはなかなか美味かった。

現在は最高潮に暑く、強い日差しに誘われて人々が街に出てきた。

かつての安濃津城を見に行こうか。
以前に津駅前を通ったのは4、5年前のことになるだろう。
あの時も繁華街を探したはずだ。

県庁を持つこの港町の実力は、ここからじゃ窺い知れない。

2014年3月8日撮影

16:26 伊勢奥津駅(岐阜駅より202㎞)
津の港に流れ込む川は清流だった。
市内の川辺で遊ぶ子供を見かけたよ。

城跡は見つけられず、テレビ塔だけが目立った。
繁華街らしきものはあったけど、街の中心をどこと見ればいいのか分からなかった。

今この駅に到着したワンマンカーは途中で何度か出会ったものか。
電化複線化された近鉄大阪線に比べて、1両のディーゼル車を走らせる名松線。

シンパシーを感じるのは名松線。
松阪を出ると、町を通っていくわけでもなく、延々と雲出川に沿う。

途中駅にも駅員の姿はないのだろう。
美杉の中心地では滑稽ともとれる風景を見た。
それまでほとんど人の姿を見ることなく進んできたところ、立派なプールに大勢の人々が繰り出していたんだ。

まるで村人すべてが動員されたかのような盛況ぶりだった。
アホらしいと思う元気な子供たちは川で裸になっている。

素朴な川辺のカントリーロードだった。

美杉の杉で建てられたと思われる新しい駅舎は集会所も兼ねているが、人の気配はない。

2018年12月23日撮影

名松線は材木列車なのだろう。
そして線名から推測すると、この先の名張と松阪をつなぐ計画だったのだろう。

涼しい風が吹いて、気づいていなかった蝉の声を聞いている。

また一雨くるかもしれない。

17:31 名張駅(岐阜駅より231㎞)
御杖峠では奈良の地を一瞬踏み、険しい山並を名張まで。

鈴鹿山脈を覆っていた雨雲が寄こした雨は、街はたいして濡らさないが、峠では難渋した。

そして雨が上がり峠に日が差した時、正式に夏を想い、彼女を想った。

遥かなる山並を背後に置き、ニュータウンのような街並に、ニュータウン駅のような近鉄駅がある。

2017年3月18日撮影

山並は暮色を帯び始めた。
名張は乗降客も多く、なかなか素敵な街だと感じている。

18:16 伊賀上野駅(岐阜駅より253㎞)
名張からバイパス快走路に乗って伊賀国へ。

近鉄線が走るごちゃごちゃとした街区を過ぎると忍者王国。

夕暮れ過ぎの伊賀国に人の気配はなく、この駅を通る関西本線の本数はとても少なく、駅を訪れる者もなく、ここじゃ近鉄線が乗り入れている表示もない。

2017年3月20日撮影

タクシー運転手はうつむいて、時に空を見上げる。

蒸し暑い日はもうじき終わり、蒸し暑い夜がやってくる。

鈴鹿山脈に雄大な雲がかかっている。

明日はまた雨か。

18:51 信楽駅(岐阜駅より271㎞)
伊賀越えの道にも、峠を越えると村が現れる。
様々な地に根づいた人々の偉大さを思う。
本来ならあの峠越えは難渋するのだろうが、広域農道が作られ、三重県と滋賀県は難なく握手した。

たぬきの置物の町、陶都信楽へ。
結構な山奥にあり、まさに山里。

ところどころに置物が見られる。
これがこの町の誇りで、ここは信楽高原鉄道の終着駅。
「関西の駅100選」に選ばれた駅では実直そうな駅長が机に向かっている。

駅前には巨大なたぬき。
ここのたぬきは皆同じ顔をしている。

観光小都市の日はじきに暮れ、空は厚い雲に覆われているが、まだ明るさを残している。

古代、この近くに都があったという。

19:07 紫香楽宮跡駅(277㎞)
古宮の跡にぽつんと無人の駅。

遥か昔の繁栄の跡。
その名を冠した駅に飾りは無用らしい。

こんな場所に都を置いた理由は何だったのか。
ある勢力から逃れるためだったのだろうか。
あるいは山岳でも信仰していたのだろうか。

毎年夏になるとこうした場所に出くわす。

去年は鹿児島開聞岳の麓でこうした駅に立ち寄った。

ここで油蝉とヒグラシの声を聞いている。

22:54 ホテルはちまん607号室(岐阜駅より317㎞)
水口、貴生川。
数年前に味わった1号国道の大渋滞を思い出し、水口という旧城下町を想った。

夜が迫っていて気が急いたわけじゃないが、あの時間帯は集中力が増す。
暗い近江路を飛ばし、途中で大がかりな夕立に遭い、名神自動車道を抜け、8号国道を抜け、やがて近江八幡。

もう道も乾く。
琵琶湖との再会は明日。
かつて対岸の志賀町をベースキャンプにしていた頃が懐かしい。

明日は琵琶湖で何を思うのか。
少しでも新しくなっているのなら、新しいことを思うだろう。

そうじゃなきゃ、古い友達を呼ぶさ。
呼ばれることを待っているヤツがいる。
オレの記憶の底に張りついている思い出たちよ。

かつて国際プロレスがやってきて、大木金太郎×上田馬之助の王座戦が組まれた街。
駅周辺は大型集合店に占められている。

ホテルに近い洒落た酒場に入った。
適当に気取っていられる店で、店員の関西弁が耳に心地よかった。

そして彼女にメールを送り、これから本格的にやてくる夏が素晴らしいものであるようにと祈った。

関連記事

「鉄旅日記」2020年晩秋 2日目(砺波-武生)その4‐七尾、金丸、宝達、宇野気、本津幡(七尾線) 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月22日・・・七尾駅、金丸駅、宝達駅、宇野気駅、本津幡駅(七尾線) 1

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走 初日(東京-津)その2-西藤原、あすなろう四日市、内部、日永、西日野、泊、南四日市(三岐鉄道三岐線/四日市あすなろう鉄道内部線/四日市あすなろう鉄道八王子線) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月22日・・・西藤原駅、あすなろう四日市駅、内部駅、日永駅、西日野駅、泊駅、南

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その1‐新津、馬下、津川、喜多方(磐越西線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月5日・・・新津駅、馬下駅、津川駅、喜多方駅(磐越西線) 2020・4・5 5

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏 3日目(南宮崎-隼人)その1-南宮崎、伊比井、北郷、飫肥、日向大束、志布志、油津、日南、木花、田吉、宮崎空港(日南線、宮崎空港線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】

鉄旅日記2013年8月12日その1・・・南宮崎駅、伊比井駅、北郷駅、飫肥駅、日向大束駅、志布志駅、油

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春 最終日(和歌山-東京)その2-海老江、野田、吹田、摂津富田、向日町、西大路・・・(東西線、大阪環状線、東海道本線) 【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】

鉄旅日記2013年4月7日その2・・・海老江駅、野田駅、吹田駅、摂津富田駅、向日町駅、西大路駅(東西

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その1-弘前、蟹田、津軽二股、奥津軽いまべつ、木古内、札苅、桔梗、新函館北斗、大中山(奥羽本線/津軽線/北海道新幹線/道南いさりび鉄道/函館本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月11日・・・弘前駅、蟹田駅、津軽二股駅、奥津軽いまべつ駅、木古内駅、札苅駅、桔

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その1-一ノ関、陸中門崎、千厩、猊鼻渓、気仙沼(大船渡線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月6日・・・一ノ関駅、陸中門崎駅、千厩駅、猊鼻渓駅、気仙沼駅(大船渡線) 20

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春 その1-新宿、塩崎、韮崎、日野春、富士見、青柳、奈良井、木曽福島、須原、中津川(中央本線) 【青春18きっぷで、名古屋往復】

鉄旅日記2012年3月25日その1・・・新宿駅、塩崎駅、韮崎駅、日野春駅、富士見駅、青柳駅、奈良井駅

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 初日(東京-出雲)-静岡、豊橋、京都、亀岡、福知山、上夜久野、豊岡、浜坂、鳥取、青谷、倉吉、米子、出雲市(東海道本線/山陰本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月2日・・・静岡駅、豊橋駅、京都駅、亀岡駅、福知山駅、上夜久野駅、豊岡駅、浜坂駅

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】初日(東京-秋田)-保谷、高崎、長岡、新津、新発田、村上、鼠ヶ関、酒田、上浜、秋田(西武池袋線/高崎線/上越線/信越本線/羽越本線)

鉄旅日記2011年8月13日・・・保谷駅、高崎駅、長岡駅、新津駅、新発田駅、村上駅、鼠ヶ関駅、酒田駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

→もっと見る

    PAGE TOP ↑