「車旅日記」2006年初夏【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】2日目(岐阜-津-名張-近江八幡)その2-津駅、伊勢奥津駅、名張駅、伊賀上野駅、信楽駅、紫香楽宮跡駅、ホテルはちまん
車旅日記2006年7月16日・・・津駅、伊勢奥津駅、名張駅、伊賀上野駅、信楽駅、紫香楽宮跡駅、ホテルはちまん
14:51 津駅(岐阜駅より150㎞)
変わっていない。
すぐ脇に大きなホテルがあって。
JRと近鉄は、ここでは同じ駅舎を使用している。
Tシャツを汚してしまったが、「駅そば」の腰のない伊勢うどんはなかなか美味かった。
現在は最高潮に暑く、強い日差しに誘われて人々が街に出てきた。
かつての安濃津城を見に行こうか。
以前に津駅前を通ったのは4、5年前のことになるだろう。
あの時も繁華街を探したはずだ。
県庁を持つこの港町の実力は、ここからじゃ窺い知れない。
16:26 伊勢奥津駅(岐阜駅より202㎞)
津の港に流れ込む川は清流だった。
市内の川辺で遊ぶ子供を見かけたよ。
城跡は見つけられず、テレビ塔だけが目立った。
繁華街らしきものはあったけど、街の中心をどこと見ればいいのか分からなかった。
今この駅に到着したワンマンカーは途中で何度か出会ったものか。
電化複線化された近鉄大阪線に比べて、1両のディーゼル車を走らせる名松線。
シンパシーを感じるのは名松線。
松阪を出ると、町を通っていくわけでもなく、延々と雲出川に沿う。
途中駅にも駅員の姿はないのだろう。
美杉の中心地では滑稽ともとれる風景を見た。
それまでほとんど人の姿を見ることなく進んできたところ、立派なプールに大勢の人々が繰り出していたんだ。
まるで村人すべてが動員されたかのような盛況ぶりだった。
アホらしいと思う元気な子供たちは川で裸になっている。
素朴な川辺のカントリーロードだった。
美杉の杉で建てられたと思われる新しい駅舎は集会所も兼ねているが、人の気配はない。
2018年12月23日撮影
名松線は材木列車なのだろう。
そして線名から推測すると、この先の名張と松阪をつなぐ計画だったのだろう。
涼しい風が吹いて、気づいていなかった蝉の声を聞いている。
また一雨くるかもしれない。
17:31 名張駅(岐阜駅より231㎞)
御杖峠では奈良の地を一瞬踏み、険しい山並を名張まで。
鈴鹿山脈を覆っていた雨雲が寄こした雨は、街はたいして濡らさないが、峠では難渋した。
そして雨が上がり峠に日が差した時、正式に夏を想い、彼女を想った。
遥かなる山並を背後に置き、ニュータウンのような街並に、ニュータウン駅のような近鉄駅がある。
山並は暮色を帯び始めた。
名張は乗降客も多く、なかなか素敵な街だと感じている。
18:16 伊賀上野駅(岐阜駅より253㎞)
名張からバイパス快走路に乗って伊賀国へ。
近鉄線が走るごちゃごちゃとした街区を過ぎると忍者王国。
夕暮れ過ぎの伊賀国に人の気配はなく、この駅を通る関西本線の本数はとても少なく、駅を訪れる者もなく、ここじゃ近鉄線が乗り入れている表示もない。
タクシー運転手はうつむいて、時に空を見上げる。
蒸し暑い日はもうじき終わり、蒸し暑い夜がやってくる。
鈴鹿山脈に雄大な雲がかかっている。
明日はまた雨か。
18:51 信楽駅(岐阜駅より271㎞)
伊賀越えの道にも、峠を越えると村が現れる。
様々な地に根づいた人々の偉大さを思う。
本来ならあの峠越えは難渋するのだろうが、広域農道が作られ、三重県と滋賀県は難なく握手した。
たぬきの置物の町、陶都信楽へ。
結構な山奥にあり、まさに山里。
ところどころに置物が見られる。
これがこの町の誇りで、ここは信楽高原鉄道の終着駅。
「関西の駅100選」に選ばれた駅では実直そうな駅長が机に向かっている。
駅前には巨大なたぬき。
ここのたぬきは皆同じ顔をしている。
観光小都市の日はじきに暮れ、空は厚い雲に覆われているが、まだ明るさを残している。
古代、この近くに都があったという。
19:07 紫香楽宮跡駅(277㎞)
古宮の跡にぽつんと無人の駅。
遥か昔の繁栄の跡。
その名を冠した駅に飾りは無用らしい。
こんな場所に都を置いた理由は何だったのか。
ある勢力から逃れるためだったのだろうか。
あるいは山岳でも信仰していたのだろうか。
毎年夏になるとこうした場所に出くわす。
去年は鹿児島開聞岳の麓でこうした駅に立ち寄った。
ここで油蝉とヒグラシの声を聞いている。
22:54 ホテルはちまん607号室(岐阜駅より317㎞)
水口、貴生川。
数年前に味わった1号国道の大渋滞を思い出し、水口という旧城下町を想った。
夜が迫っていて気が急いたわけじゃないが、あの時間帯は集中力が増す。
暗い近江路を飛ばし、途中で大がかりな夕立に遭い、名神自動車道を抜け、8号国道を抜け、やがて近江八幡。
もう道も乾く。
琵琶湖との再会は明日。
かつて対岸の志賀町をベースキャンプにしていた頃が懐かしい。
明日は琵琶湖で何を思うのか。
少しでも新しくなっているのなら、新しいことを思うだろう。
そうじゃなきゃ、古い友達を呼ぶさ。
呼ばれることを待っているヤツがいる。
オレの記憶の底に張りついている思い出たちよ。
かつて国際プロレスがやってきて、大木金太郎×上田馬之助の王座戦が組まれた街。
駅周辺は大型集合店に占められている。
ホテルに近い洒落た酒場に入った。
適当に気取っていられる店で、店員の関西弁が耳に心地よかった。
そして彼女にメールを送り、これから本格的にやてくる夏が素晴らしいものであるようにと祈った。
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