*

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】5日目(松浦-若松)その2-宇美、西戸崎、香椎、福間、赤間、折尾、若松(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線)

公開日: : 最終更新日:2023/07/05 旅話, 旅話 2009年

鉄旅日記2009年9月22日・・・宇美駅、西戸崎駅、香椎駅、福間駅、赤間駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線)
15:27 宇美(うみ)駅(香椎線 福岡県)
鹿児島本線で香椎へ。
そして香椎線に乗り換えて終着駅へ。

宇美八幡宮が近くにある。
駅舎は、有名な神社を持つ町だけが許される朱色をしている。

宮脇俊三さんの本で、かつて吉塚駅から分岐する勝田線という炭鉱線が走っていて、宇美にも駅を持ち、香椎線の宇美駅とは離れた場所にあったと知り、さらに崩れかけたボタ山があったと記してあったことから、廃線跡を探し歩いたけど、見当たらない。

廃線になったのはもう20年も前。
やっぱりないか。
筑豊にすらボタ山は残っていない。

そうこうしているうちに時間がきた。
折り返しの列車に乗る。

沿線から博多の匂いは消えて、平凡な車窓風景を眺めている。

16:47 西戸崎(さいとざき)駅(香椎線 福岡県)
海の中道を往く香椎線のもう一方の終着駅。
こじんまりとした素敵な終着駅だ。

海の中道は、志賀島橋で「委奴国王印」が発見された志賀島とつながっている。
元寇の際には、博多から海の中道が戦場となり、志賀島には蒙古塚がある。

折り返しの列車に乗って、次の海ノ中道駅に着くと、そこは海浜公園になっていて大勢が乗り込んできた。

博多湾から玄界灘に目を移し、砂丘を眺める。
あたりの景観はまるで違うが、オホーツクのサロマ湖を思い出していた。

海の中道にて。

17:33 香椎(かしい)駅(鹿児島本線/香椎線 福岡県)
降り止まない雨をはじめ、なかなか気分の乗らない一日だったが、西戸崎あたりから持ち直す。

ターミナル駅の香椎で降りる。
松本清張さんの「点と線」の殺人現場として登場する町だ。
その現場は西鉄貝塚線を越えた、さらに先の海辺になる。

線路沿いのうらびれたあたりが、当時の雰囲気を残しているだろうか。
スナックが何軒か入っている古錆びた雑居ビルのあたり。

もう少し歩くと町を流れる小さな川に行き当たる。
そこで引き返した。

17:54 福間(ふくま)駅(鹿児島本線 福岡県)
再び鹿児島本線に乗り、以前から気になっていた福間駅に降りる。

気になっていた理由は、ホームに立つ「宮地嶽神社参拝」と書かれた駅灯。
なぜかオレはあの駅灯に九州を感じていた。

「駅そば」があり、駅前は車通りも多く賑わっている。
車窓から玄界灘は見えないが、漁港や海水浴場を持つらしい。

慌ただしく次の列車で町を離れる。

18:33 赤間(あかま)駅(鹿児島本線 福岡県)
ここは宗像市という。
駅前を流れる釣川まで歩く。

これといって特徴のない駅前ロータリーには居酒屋が1軒。
北口にはステーション・ホテルが見える。
駅には大勢の人がいて、人が集まる場所に相応しい明るさを持っていた。

この駅にも「駅そば」があり、思わず寄る。
笑顔のかわいいおばちゃん。

かしわ入りそば350円。
とても美味しかった。

19:23 折尾(おりお)駅(鹿児島本線/筑豊本線 福岡県)
折尾的なものを欲していた。
降りてみてよく分かった。

鉄道と共に生きている町だ。
鹿児島本線から直接筑豊本線に乗り入れる列車専用の駅舎を別に持つ、明治大正ロマンを連想させる歴史的な駅舎。
交差する複雑な駅構内。
「かしわめし」を売る駅弁売りが現れるのは、どのホームなのか。

町に出るとスナックの看板が目につく。
堀川運河に沿って古くさい酒場が軒を連ねている。

小便臭い路地やガード下。
昔はどこもこんなだった。
大人の男が強い存在であった時代は、どこもあんな臭いがした。

折尾はまだそんな町なのだろう。
炭鉱全盛時の筑豊の匂いまで嗅いだ気がしたよ。

ここ40年、50年くらいのすべての空気をまとった歴史的な交差点だった。

22:58 ルートイン北九州若松701号
筑豊炭田の終着駅若松。

駅前はひっそりとしていた。
少なくとも折尾の活気は持たなかった。

駅前に海鮮居酒屋があった。
町を歩いてめぼしい店を見つけることができなかったら、あそこに行こうか。

歩き出す。
若戸大橋を見に行く。

洞海湾に架かるこの橋は、巨大大橋のはしりだと、後で入った「陣太鼓」のご主人から聞くことになる。
少なくとも30年前には、あの橋はすでにあったという。

戸畑の明かりを見ていた。
橋にかけたい願いがあった。

居酒屋、スナックビル、のれん街。
若松を知った気にはなれた。
タクシーが止まっているあたりにきれいな灯が見えた。
覗いてみると、駅の案内板にその存在が記されていた「陣太鼓」というおでん酒場だった。
筑豊言葉が飛び交う店で、佐賀の夜で経験したのと同じく、旅の最中にこんな場所にいたいと心から思える場所だった。

若松は30年前が最盛期だった。

筑豊炭田で掘られた黒い宝石が次々に若松に運び込まれ、炭鉱景気に沸いた町を人々が行き交い、キャバレー、クラブが至る所で客を呼び、洞海湾には外国船が列をなして、まさに不夜城のようだった。
その半面、新日鐵をはじめとした対岸の製鉄所が流す煙で町は曇り、異臭が漂い、冷房のない時代だったこともあって夏は苦労した。

そんな話をご主人から伺った。

そして現在、筑豊と北九州工業地帯が斜陽になれば、若松は当然のように影響を被る。
公害はなくなったが、景気は下がりっぱなしだと、ご主人は切なげに笑う。
何がいいのか悪いのかと。

北九州の全盛期の頃を知りたかった。
筑豊にはなく、若松にもない。
小倉にもないだろう。

政令指定都市北九州の人口は今じゃ100万人を切っている。
そんな若松で入った店で流れていた演歌は、「きっとくるくる、男の夜明け・・・」。

「お互い元気でいましょう」と言い合って、ご主人とは別れた。

店の脇に、猫の名がつけられたスナックがあった。
行きに通り過ぎる際に美しいママと目が合った。
気にはなった。

そして帰る際、EGO-WRAPPIN’の楽曲「満ち汐のロマンス」の美しく透き通ったメロディがその店から聞こえてきて、思わず立ち止まった。

東京に帰ったら、思いを伝えられるだろうか。
町にはチャルメラの音が聞こえていた。

若戸大橋のたもとにて。

関連記事

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線)

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

「車旅日記」1998年夏【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】3日目(秋田-北上ー遠野)-道の駅西目、道の駅東由利、ほっとゆだ駅、北上駅、遠野徳田屋旅館

車旅日記1998年8月14日 1998・8・14 7:17 7号国道‐西目(道の駅) 自由な日々

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】初日(東京-盛岡)その2-郡山、福島、曽根田、仙台、一ノ関(東北本線)

鉄旅日記2019年9月21日・・・郡山駅、福島駅、曽根田駅、仙台駅、一ノ関駅(東北本線) 11:08

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線)

鉄旅日記2016年8月12日・・・深川駅、増毛駅、留萌駅、北一已駅、深川駅、旭川駅、美瑛駅、千代ヶ丘

記事を読む

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】初日(東京-旭川-紋別)走行距離339㎞-深川駅、留萌駅、おひら鰊番屋、士別駅、にしおこっぺ花夢、紋別セントラルホテル

車旅日記2004年5月1日 2004・5・1 14:10 深川駅(旭川空港より48km) 広大な

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】初日その2(東京-宇治)-香里園、寝屋川市、門真市、守口市、淀屋橋、天満橋、中之島、樟葉(京阪本線/京阪中之島線)

鉄旅日記2015年3月21日その2・・・香里園駅、寝屋川市駅、門真市駅、守口市駅、淀屋橋駅、天満橋駅

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】その1-上尾、桶川、鴻巣、行田、岡部、神保原、新町、群馬総社、中之条、郷原、長野原草津口、万座・鹿沢口(高崎線、吾妻線)

鉄旅日記2012年4月1日その1・・・上尾駅、桶川駅、鴻巣駅、行田駅、岡部駅、神保原駅、新町駅、群馬

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)その4‐中条、新発田、新津、長岡(羽越本線/信越本線)

鉄旅日記2020年1月13日・・・中条駅、新発田駅、新津駅、長岡駅(羽越本線/信越本線) 17:34

記事を読む

「鉄旅日記」2018年エイプリルフール【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】その2-猪苗代、磐梯町、安子ヶ島、磐梯熱海、郡山(磐越西線)

鉄旅日記2018年4月1日・・・猪苗代駅、磐梯町駅、安子ヶ島駅、磐梯熱海駅、郡山駅(磐越西線) 12

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】最終日(酒田-東京)その1‐酒田、象潟、砂越(羽越本線)

鉄旅日記2019年12月8日・・・酒田駅、象潟駅、砂越駅(羽越本線) 2019・12・8 5:34

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その2‐猪谷、高山、久々野、古井、美濃川合(高山本線/太多線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・猪谷駅、高山駅、久々野駅、古井駅、美

→もっと見る

    PAGE TOP ↑