「車旅日記」2004年夏【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】2日目(別府-阿蘇-宮崎)走行距離337㎞その2-高森駅、高千穂駅、延岡駅、日向市駅、佐土原駅、アーバンキット宮崎
車旅日記2004年8月12日・・・高森駅、高千穂駅、延岡駅、日向市駅、佐土原駅、アーバンキット宮崎
14:04 高森駅(8月11日の佐賀空港より403㎞)
メルヘンの世界から阿蘇の終着駅に汽車がやってきた。
ワンマンカーで緑色のボディ。
立野と高森を結ぶ南阿蘇鉄道。
その終着駅にいる。
駅舎もメルヘン的な姿をしている。
駅のレストランでカレーライスを食べる。
ありふれた味だったけど、オレにはあれでいい。
美味かったよ。
325号国道は、大橋を渡るところから始まる。
57号国道を走っていてその橋が見えた時、瞬時にあの橋を渡りたいと思った。
そして幸運にも、オレが選んでいたルート上にその橋は架かっていた。
橋の上からは滝が見えた。
人跡未踏と思しき高所から水は落ちていた。
阿蘇の沿道はなかなかに賑やかだ。
店も鄙びた造りではなく、リゾートの雰囲気を漂わせるものが何軒も見られ、山頂へと車列が続く。
南外輪山を抜ければ高千穂。
峠を控えたこの町はとても静かだ。
蝉の声が心地よく、レストランで流れていた「風になりたい」が、この町によく合っていた。
レストランの娘さんの笑顔はとても素敵だったよ。
15:14 高千穂駅(8月11日の佐賀空港より444㎞)
高森峠を越える。
再会の時と同じで、阿蘇とのお別れも坂の上だった。
ヒグラシの声が耳に留まり、宮崎県へ。
神々の里、高千穂。
高千穂峡の全貌は分からなかったけど、涼やかな場所だった。
たくさんの人々がそこを訪ねていたよ。
橋のある風景はおそらく鳴子峡と同じ仕掛けだろう。
峡谷には橋が似合う。
ここは渓谷鉄道の終着駅。
駐車場から階段を下りた場所にひっそりと駅舎があった。
三角屋根の小さな駅舎で、駐車場に隣接する土産物屋の方が大きな顔をしていて、屋上にはビヤガーデンができている。
母屋をとられたようなものだが、この土産物屋も含めて駅だと言えないこともない。
何を期待してここまで来たのか、ここでこうしているオレにもよく分かっていないが、満足しているよ。
ここにいる特別感よりも、普通の感覚でこの場所にいる自分を感じている。
たぶん、初めから決まっていたのだろう。
この町に寄ることは、初めからオレの人生に組み込まれていたのだろう。
そうに違いない。
そして、海外にもそんな街がいくつかあれば素敵だけれど。
感動するのは、今日も空がきれいなこと。
ここから目指すのは日向灘。
16:37 延岡駅(8月11日の佐賀空港より496㎞)
線路が敷かれている場所まで下りるのに相当な距離を走った。
渓谷を見下ろす国道は、天翔大橋、青雲橋と渡っていく。
鉄道は、トンネルを抜けた後は渓谷に沿って走る。
話に聞いていた高千穂渓谷の絶景を眺めるには、どうやら鉄道の車窓の方が向いているらしい。
オレがイメージする南国とは宮崎を指していた。
その中核都市ともいえる延岡に着いた。
人通りがないわけじゃないが、静かな夕暮れを迎えている。
視覚障害者用の警告音が響き、通りを挟んだ空地では祭のための櫓が組まれようとしている。
駅で、この旅で初めてとも思える九州訛を聞き、待合室では高校野球を映している。
高千穂鉄道の駅舎は健気にもJRとは別で、片隅にひっそりと存在していた。
そして今日もそろそろ日が暮れていく。
西日にあたるのは好きだ。
何よりも夕暮れ時が好きだ。
宮崎市内まで100㎞弱。
日向、佐土原と止まっていくつもりだ。
その前にこの街を一周してみよう。
17:46 日向市駅(8月11日の佐賀空港より519㎞)
日に向かう町。
南国の待合室は開放的で、駅員も見送り客も乗客も、すべからく日差しを浴びている。
日向街道は延岡大橋を渡るとにわかに混み始めたが、有料道路と合流して2車線になるとスムースに流れ始めた。
沿道の椰子の木。
真っ黒に日焼けした男たち。
これが南国。
二枚目の野球部員が生真面目な表情で自転車を漕いでいる。
彼が見ていたのは目の前の風景ではなく、来年の夏だったのかもしれない。
駅前にはホテルが一軒。
また一日が終わる。
その繰り返しを穏やかな気持ちで肯定している。
じきに消えようとする最後の西日。
やけに強烈だ。
19:15 佐土原駅(8月11日の佐賀空港より572㎞)
日向大橋が宮崎市内の入口。
でも宮崎は遠い。
日向の山々は日没まで太陽を隠さず、道は思うように流れず、宮崎入り前に日は暮れた。
この町の少年たちが県大会を勝ち上がって甲子園出場を果たし、一回戦を勝ち抜いている。
合併間近とのことだが、沿道には多くの明かりがこぼれている。
てっきり過疎の町かと思っていた。
改札口では3人の少女がしゃがみこんでいる。
彼女たちはこの日の終わりをどう思っているのだろう。
駅から10号国道に差し掛かる角に、何やら洒落た店が建設中だった。
2013年8月11日撮影
22:45 アーバンキット宮崎 591㎞
正確には日向住吉あたりが市内の玄関口だった。
そこから街道には光があふれ、中央分離帯に椰子の木々が並ぶようになると中心街だ。
さすがに県庁を持つ街。
ちょっと歩いたくらいじゃとても回りきれない。
大きな街には川の流れがあるように、この街には大淀川がその川幅を誇っている。
その大淀川を渡す橘橋。
あまりにも長大で途中で引き返すことになったが、川面に映る宮崎の街は素敵だった。
このマンションの1階に飲み屋がある。
そこの女将に駐車場の利用について尋ねたことから、今夜の食事の場所が決まった。
700円で生ビールに枝豆、そして刺身。
安いし美味い。
仰天するような心地でしばらく過ごして、店を出てから宮崎駅に向かった。
15年くらい前のオレみたいな男が、女性を集めて騒ぎ、その傍らで右腕に入れ墨を入れた男がオレを睨む。
宮崎駅は現代的な構造物だった。
線路が高架化する際に生まれ変わったのだろう。
あれは何という工法だろう。
骨組みが剥き出しで、造形美学の粋を集めたような代物だが、オレの記憶には残るだろうか。
日本家屋や寺社仏閣を模したような、昔ながらの駅舎を愛している。
駅前広場は広く、噴水と椰子の木が南国情緒を高めている。
九州の街は、市町村合併によって覇権を競っている。
ここ宮崎も、その闘いに参加したようだ。
そんな内容の行政府が掲げた看板を見かけたし、高速道路の建設を求めるものもあった。
でも宮崎にその態度はそぐわない。
オレはそう思うんだ。
宮崎と言えば、ジャイアンツが春季キャンプを張り、
新婚カップルがハネムーンで向かう場所。
オレも相当古いな。
2013年8月12日撮影
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その1‐北上、横手、醍醐、十文字、下湯沢(北上線/奥羽本線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月4日・・・北上駅、横手駅、醍醐駅、十文字駅、下湯沢駅(北上線/奥羽本線)
-
-
「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】2日目(十日町-長岡)-十日町、戸狩野沢温泉、長野、松本、信濃大町、南小谷、直江津、柿崎、長岡(飯山線/篠ノ井線/大糸線/北陸本線/信越本線)
鉄旅日記2009年7月19日・・・十日町駅、戸狩野沢温泉駅、長野駅、松本駅、信濃大町駅、南小谷駅、直
-
-
「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その2-釜石、津軽石、宮古、田野畑、堀内(三陸鉄道リアス線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】
鉄旅日記2019年9月22日・・・釜石駅、津軽石駅、宮古駅、田野畑駅、堀内駅(三陸鉄道リアス線)
-
-
「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線/北越急行ほくほく線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】
鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日町駅(上越線/北越急行ほくほく
-
-
「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】2日目(大垣-姫路)その2-新今宮、天下茶屋、堺東、三国ヶ丘、上野芝、百舌鳥、百舌鳥八幡、金剛、千早口、高野山、極楽橋、新今宮、大阪、姫路(南海本線/南海高野線/阪和線/高野山ケーブル/大阪環状線/山陽本線)
鉄旅日記2017年8月12日・・・新今宮駅、天下茶屋駅、堺東駅、三国ヶ丘駅、上野芝駅、百舌鳥駅、百舌
-
-
「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その4 ‐福島、卸町、東福島、桑折、飯坂温泉(阿武隈急行/東北本線/福島交通飯坂線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】
鉄旅日記2021年10月9日・・・福島駅、卸町駅、東福島駅、桑折駅、飯坂温泉駅(阿武隈急行/東北本
-
-
「鉄旅日記」2018年初秋 初日(東京-桑名)その2-吉原、岳南江尾、本吉原、吉原本町、吉原、富士川、新蒲原、西焼津、新豊橋、三河田原(岳南電車岳南線/東海道本線/豊橋鉄道渥美線)【「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】
鉄旅日記2018年9月15日・・・吉原駅、岳南江尾駅、本吉原駅、吉原本町駅、富士川駅、新蒲原駅、西焼
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その1‐高山、打保、猪谷、富山、電鉄富山(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月21日・・・高山駅、打保駅、猪谷駅、富山駅、電鉄富山駅(高山本線) 2020
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏 初日(東京-和歌山)その1-浜松、豊橋、大垣、京都、六地蔵、城陽、京終、帯解、天理、桜井(東海道本線/奈良線/桜井線) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】
鉄旅日記2008年7月19日・・・浜松駅、豊橋駅、大垣駅、京都駅、六地蔵駅、城陽駅、京終駅、帯解駅、
-
-
「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線)
鉄旅日記2016年8月12日・・・深川駅、増毛駅、留萌駅、北一已駅、深川駅、旭川駅、美瑛駅、千代ヶ丘