*

「車旅日記」2004年夏 2日目(別府-宮崎)走行距離337㎞その2-高森駅、高千穂駅、延岡駅、日向市駅、佐土原駅、アーバンキット宮崎 【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/24 旅話, 旅話 2004年

車旅日記2004年8月12日・・・高森駅、高千穂駅、延岡駅、日向市駅、佐土原駅、アーバンキット宮崎

14:04 高森駅(8月11日の佐賀空港より403㎞)
メルヘンの世界から阿蘇の終着駅に汽車がやってきた。

ワンマンカーで緑色のボディ。

立野と高森を結ぶ南阿蘇鉄道。
その終着駅にいる。

駅舎もメルヘン的な姿をしている。

駅のレストランでカレーライスを食べる。

ありふれた味だったけど、オレにはあれでいい。
美味かったよ。

325号国道は、大橋を渡るところから始まる。
57号国道を走っていてその橋が見えた時、瞬時にあの橋を渡りたいと思った。

そして幸運にも、オレが選んでいたルート上にその橋は架かっていた。

橋の上からは滝が見えた。
人跡未踏と思しき高所から水は落ちていた。

阿蘇の沿道はなかなかに賑やかだ。

店も鄙びた造りではなく、リゾートの雰囲気を漂わせるものが何軒も見られ、山頂へと車列が続く。

南外輪山を抜ければ高千穂。
峠を控えたこの町はとても静かだ。

蝉の声が心地よく、レストランで流れていた「風になりたい」が、この町によく合っていた。

レストランの娘さんの笑顔はとても素敵だったよ。

15:14 高千穂駅(8月11日の佐賀空港より444㎞)
高森峠を越える。

再会の時と同じで、阿蘇とのお別れも坂の上だった。

ヒグラシの声が耳に留まり、宮崎県へ。

神々の里、高千穂。
高千穂峡の全貌は分からなかったけど、涼やかな場所だった。
たくさんの人々がそこを訪ねていたよ。

橋のある風景はおそらく鳴子峡と同じ仕掛けだろう。
峡谷には橋が似合う。

ここは渓谷鉄道の終着駅。
駐車場から階段を下りた場所にひっそりと駅舎があった。

三角屋根の小さな駅舎で、駐車場に隣接する土産物屋の方が大きな顔をしていて、屋上にはビヤガーデンができている。
母屋をとられたようなものだが、この土産物屋も含めて駅だと言えないこともない。

何を期待してここまで来たのか、ここでこうしているオレにもよく分かっていないが、満足しているよ。

ここにいる特別感よりも、普通の感覚でこの場所にいる自分を感じている。

たぶん、初めから決まっていたのだろう。

この町に寄ることは、初めからオレの人生に組み込まれていたのだろう。
そうに違いない。
そして、海外にもそんな街がいくつかあれば素敵だけれど。

感動するのは、今日も空がきれいなこと。

ここから目指すのは日向灘。

16:37 延岡駅(8月11日の佐賀空港より496㎞)
線路が敷かれている場所まで下りるのに相当な距離を走った。

渓谷を見下ろす国道は、天翔大橋、青雲橋と渡っていく。

鉄道は、トンネルを抜けた後は渓谷に沿って走る。

話に聞いていた高千穂渓谷の絶景を眺めるには、どうやら鉄道の車窓の方が向いているらしい。

オレがイメージする南国とは宮崎を指していた。

その中核都市ともいえる延岡に着いた。

人通りがないわけじゃないが、静かな夕暮れを迎えている。

視覚障害者用の警告音が響き、通りを挟んだ空地では祭のための櫓が組まれようとしている。

駅で、この旅で初めてとも思える九州訛を聞き、待合室では高校野球を映している。

高千穂鉄道の駅舎は健気にもJRとは別で、片隅にひっそりと存在していた。

そして今日もそろそろ日が暮れていく。

西日にあたるのは好きだ。
何よりも夕暮れ時が好きだ。

宮崎市内まで100㎞弱。
日向、佐土原と止まっていくつもりだ。

その前にこの街を一周してみよう。

17:46 日向市駅(8月11日の佐賀空港より519㎞)
日に向かう町。

南国の待合室は開放的で、駅員も見送り客も乗客も、すべからく日差しを浴びている。

日向街道は延岡大橋を渡るとにわかに混み始めたが、有料道路と合流して2車線になるとスムースに流れ始めた。

沿道の椰子の木。
真っ黒に日焼けした男たち。
これが南国。

二枚目の野球部員が生真面目な表情で自転車を漕いでいる。

彼が見ていたのは目の前の風景ではなく、来年の夏だったのかもしれない。

駅前にはホテルが一軒。

また一日が終わる。
その繰り返しを穏やかな気持ちで肯定している。

じきに消えようとする最後の西日。
やけに強烈だ。

19:15 佐土原駅(8月11日の佐賀空港より572㎞)
日向大橋が宮崎市内の入口。

でも宮崎は遠い。

日向の山々は日没まで太陽を隠さず、道は思うように流れず、宮崎入り前に日は暮れた。

この町の少年たちが県大会を勝ち上がって甲子園出場を果たし、一回戦を勝ち抜いている。

合併間近とのことだが、沿道には多くの明かりがこぼれている。
てっきり過疎の町かと思っていた。

改札口では3人の少女がしゃがみこんでいる。
彼女たちはこの日の終わりをどう思っているのだろう。

駅から10号国道に差し掛かる角に、何やら洒落た店が建設中だった。

2013年8月11日撮影

22:45 アーバンキット宮崎 591㎞
正確には日向住吉あたりが市内の玄関口だった。
そこから街道には光があふれ、中央分離帯に椰子の木々が並ぶようになると中心街だ。

さすがに県庁を持つ街。
ちょっと歩いたくらいじゃとても回りきれない。

大きな街には川の流れがあるように、この街には大淀川がその川幅を誇っている。

その大淀川を渡す橘橋。
あまりにも長大で途中で引き返すことになったが、川面に映る宮崎の街は素敵だった。

このマンションの1階に飲み屋がある。
そこの女将に駐車場の利用について尋ねたことから、今夜の食事の場所が決まった。

700円で生ビールに枝豆、そして刺身。
安いし美味い。
仰天するような心地でしばらく過ごして、店を出てから宮崎駅に向かった。

15年くらい前のオレみたいな男が、女性を集めて騒ぎ、その傍らで右腕に入れ墨を入れた男がオレを睨む。

宮崎駅は現代的な構造物だった。
線路が高架化する際に生まれ変わったのだろう。

あれは何という工法だろう。
骨組みが剥き出しで、造形美学の粋を集めたような代物だが、オレの記憶には残るだろうか。
日本家屋や寺社仏閣を模したような、昔ながらの駅舎を愛している。

駅前広場は広く、噴水と椰子の木が南国情緒を高めている。

九州の街は、市町村合併によって覇権を競っている。

ここ宮崎も、その闘いに参加したようだ。
そんな内容の行政府が掲げた看板を見かけたし、高速道路の建設を求めるものもあった。

でも宮崎にその態度はそぐわない。
オレはそう思うんだ。

宮崎と言えば、ジャイアンツが春季キャンプを張り、
新婚カップルがハネムーンで向かう場所。

オレも相当古いな。

2013年8月12日撮影

関連記事

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その1-近鉄奈良、新田辺、三山木、JR三山木、狛田、下狛、新祝園、祝園、学園前、学研奈良登美ヶ丘(奈良線/京都線/けいはんな線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄奈良駅、新田辺駅、三山木駅、JR三山木駅、狛田駅、下狛駅、新祝

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.1 初日(東京‐諏訪)葛飾金町、調布駅、高尾駅、桂川ドライブイン、甲府芸術の森公園、道の駅信州蔦木宿、上諏訪 【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】

車旅日記2000年7月20日 2000・7・20 8:10 東京葛飾金町 天気は良好。 やけに雲が

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その4‐米沢、福島、上野(奥羽本線/東北新幹線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月4日・・・米沢駅、福島駅、上野駅(奥羽本線/東北新幹線) 17:38 米沢

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その3-神島にて・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月23日・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 14

記事を読む

鉄旅日記」2012年初冬 最終日(長野-東京)その2-小諸、岩村田、佐久平、中込、臼田、小海、野辺山、清里、大月(小海線、中央本線) 【週末パスで、甲信越途中下車旅】

鉄旅日記2012年12月9日その2・・・小諸駅、岩村田駅、佐久平駅、中込駅、臼田駅、小海駅、野辺山駅

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏 (姫路-十三)その1-山陽姫路、山陽網干、飾磨、大塩、高砂、山陽垂水、垂水、滝の茶屋、山陽塩屋、塩屋、山陽須磨(山陽電車本線/山陽電車網干線) 【私鉄王国で過ごす夏】

鉄旅日記2017年8月13日・・・山陽姫路駅、山陽網干駅、飾磨駅、大塩駅、高砂駅、山陽垂水駅、垂水駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋 最終日(武生-東京)その2‐敦賀、北鉄金沢、内灘、金沢、野々市(北陸本線/北陸鉄道浅野川線) 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月23日・・・敦賀駅、北鉄金沢駅、内灘駅、金沢駅、野々市駅(北陸本線/北陸鉄

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 最終日(多治見-東京)その1-多治見、瑞浪、明智、岩村、極楽、恵那(中央本線/明知鉄道) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月24日・・・多治見駅、瑞浪駅、明智駅、岩村駅、極楽駅、恵那駅(中央本線/明知鉄

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 最終日(若松-東京)若松、折尾、黒崎、黒崎駅前、戸畑、小串、長門市、益田、津和野、山口、新山口(筑豊本線/鹿児島本線/山陰本線/山口線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月23日・・・若松駅、折尾駅、黒崎駅、黒崎駅前駅、戸畑駅、小串駅、長門市駅、益田

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走 最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その1-神島山海荘あじさい、神島漁港、菅島漁港、鳥羽城址(城山公園)、旧鳥羽小学校(鳥羽市営定期船) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月24日・・・神島山海荘あじさい、神島漁港、菅島漁港、鳥羽城址(城山公園)、旧

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

→もっと見る

    PAGE TOP ↑