*

「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】初日(東京-水沢)その2-前谷地、柳津、気仙沼、一ノ関、水沢(石巻線/気仙沼線/大船渡線/東北本線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/27 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月5日その2・・・前谷地駅、柳津駅、気仙沼駅、一ノ関駅、水沢駅(石巻線/気仙沼線/大船渡線/東北本線)

15:55 前谷地(まえやち)駅(石巻線/気仙沼線 宮城県)
すぐに尽きてしまうが、駅前商店街があってケータイを向ける。
ごくこじんまりとしているが、田舎のターミナル駅としての格を、駅も駅前もしっかり持っていた。

宮脇俊三さんの国鉄全線完乗の悲願はここからの気仙沼線乗車によって達成された。
その鉄路はあの震災で寸断されて、もう元の姿に戻ることはないことがJR東日本によって発表されている。

仙北平野を往く。
遠く山頂に光っているのは観音様か。
鉄路は長屋門を備えた豪農通りと平行したりしながら、春間近い冬枯れの田野を見つめ続けている。

16:28 柳津(やないづ)駅(気仙沼線 宮城県)
ここ津山という町で鉄路は尽きて、接続するBRTなる乗り物の到着を寒空の下で待っている。
北上川の雄大な流れが鉄路の置き土産となった。
ここに吹いているのは冬枯れを招いた風だ。

伊達政宗の手によって健気なる最期を遂げた弟、小次郎の墓がこの町にある。
兄の政宗が母親からの愛情を受けることが薄かったために、その悲劇は起きている。

やってきたBRTは一見したところただのバスだ。

18:23 BRT内、南気仙沼周辺
ところどころ専用レーンを走り快調に専用駅を辿ってきたが、気仙沼市内に至り渋滞に巻き込まれている。
そして街の明かりに仰天している。

細かなところはさておき、夜に隠れた気仙沼市内は光に満ちていて、5年前を思わせる闇は少なくとも解消されていた。

志津川、清水浜、歌津と津波に徹底的にさらわれた地域の橋は落ち、有名となった鉄骨剥き出しの防災対策庁舎跡は更地を嵩上げする工事の只中にポツネンと居心地悪く存在し続け、凝視していたら泣けてきた。

あの光景はオレには毒だったよ。

19:05 気仙沼(けせんぬま)駅(大船渡線/気仙沼線 宮城県)
パールシティホテルが聳える駅前に変化はなく、港へと下りていく道には旅館、酒屋など古い店舗が並んでいる。
ここは高台だ。
津波からは無事だったのだろう。

繁華街でもある南気仙沼はさらわれ、街の明かりは戻っていたが、BRT専用レーンは市内にはまだ引かれておらず渋滞に巻き込まれた。
街はまだ混乱している。

今日わずかな区域だが歩くことができて、気仙沼がより身近になった。
まだ20代の頃に両親との思い出も持つ街だが、気仙沼は広い街だ。
正確な土地勘は掴めないまま今回もまた去る。

真夜中に気仙沼から女川まで、45号国道を喘ぐように走ったこともあったな。

BRTはそこそこ気に入っている。明日は盛からここ気仙沼までの区間を乗る計画でいる。

待合室に置かれたテレビに震災復興についての番組が流れている。
駅内のキヨスクにビールを2度買いにいく。
2度目にはレジの女性と軽く笑いあった。

少しだけ、ほんの少しだけ、この土地にいて不謹慎にも思うが、気持よく酔った。

21:11 一ノ関(いちのせき)駅(東北新幹線/東北本線/大船渡線 岩手県)
一ノ関には5年振りになるが、懐かしさを感じることもなく駅前に広がる明かりに納得して改札を出て便所に向かい、すぐに戻った。

5年とはそういう歳月か。
あれから様々なことがあり現在は最大の幸福を味わっているが、オレと一ノ関、はては東北の各街との距離はこれほどまでに近かったのかと、東北の各街が発する愛情はこれほどまでに深かったのかと感動している。

郡山から始まった東北地方との縁。
そうか。
もう25年近くなるのか。

あの頃のオレにとって一番遠い街は郡山で、そんなオレがこうして日本各地に散らばっていくなんて想像もできなかった。
でも郡山から先へ行ってみたいとは、新幹線で郡山駅に降りる度に思っていたような気がするよ。

水沢駅前風景

22:39 きくすい荘5番
水沢に降りている。
以前車窓から眺めて、ここに大きな街があると意識した水沢。
今夜ここに泊まる。

岡山の和気、笠岡。
そんな町がいくつかある。
実際に降りてみたけど、こうして一晩滞在するケースは稀だ。

ここ水沢に馴染みのものはひとつもない。
ただひとつ、政界の重要人物であり続けている小沢一郎代議士のお膝元であることを知るのみ。
でもそんな彼が、今何という名称の政党を率いているのか世間の関心から外れて久しい。

新幹線が止まる街だが、さっき降りた水沢駅ではなく、北上川を越えた先の水沢江刺駅に止まる。
これだけの繁華街がここにある。
だからそっちに目立つものはないだろう。
バスの運行などで接続に対して利便性を図ってはいるだろうが、この街が知名度で劣る原因のひとつと考えられる。

水沢の繁華街の規模は今日3度目の仰天を強いた。
一関、北上、花巻などよりよほど街の規模が大きい。
この街に注目することなく過ぎてきたこれまでの旅人生に嗚呼と目を瞑る。

今回の旅で何を残せるか。まずはひとつの言葉を。
人は逞しい。
津波の跡を見てきた感慨だ。

もうひとつ。
人は老いる。
当り前の話だが、人間(じんかん)に紛れて浮かんだのはそんなワードだった。
三島由紀夫や尾崎豊が解決を目指さずに死を選んだ動機に踏み込もうとしている。

ともあれ水沢をもっと賛美したい。
でも言葉が浮かんでこない。
明日は少し街を歩いてからここを離れよう。
街には雪が残っている。

宿の扉を開けたら小学生の女の子が宿番をしていた。
古い旅館でこれを書いている。

知らない街への憧れがここ水沢で呼び覚まされている。
こんな街がまだ日本に残っているのなら、その時はまたひとりで出かけていくことになるだろう。

関連記事

「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その1-神島山海荘あじさい、神島漁港、菅島漁港、鳥羽城址(城山公園)、旧鳥羽小学校(鳥羽市営定期船)

鉄旅日記2018年12月24日・・・神島山海荘あじさい、神島漁港、菅島漁港、鳥羽城址(城山公園)、旧

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】最終日(安達-大洗-潮来-東京葛飾)-あだち、二本松駅、磐城石川駅、はなわ、常陸太田駅、大洗駅、潮来駅、十二橋駅、佐原駅、東京葛飾

車旅日記2006年5月7日・・・道の駅あだち、二本松駅、磐城石川駅、道の駅はなわ、常陸太田駅、大洗駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】4日目(佐賀-松浦)その2-大村、竹松、早岐、佐世保、佐世保中央、中佐世保、左石、佐々、たびら平戸口、松浦(大村線/佐世保線/松浦鉄道)

鉄旅日記2009年9月21日・・・大村駅、竹松駅、早岐駅、佐世保駅、佐世保中央駅、中佐世保駅、左石駅

記事を読む

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その1-藤田観光ワシントンホテル、愛別駅、上川駅、白滝駅、丸瀬布駅、遠軽市太陽の丘公園 瞰望岩、遠軽駅、オホーツク氷紋の駅

車旅日記2004年5月4日・・・藤田観光ワシントンホテル、愛別駅、上川駅、白滝駅、丸瀬布駅、遠軽市太

記事を読む

「車旅日記」1998年夏【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】2日目(木曽-野麦峠-信州新町-志賀高原湯田中)-道の駅日義 木曾駒高原、木曽福島駅、木曽福島タイムリー、開田村、野麦峠扇屋、奈川渡ダム、道の駅信州新町

車旅日記1998年7月19日 1998・7・19 6:28 19号国道‐日義 木曽駒高原(道の駅)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】初日その1(東京-宇治)-東福寺、祇園四条、伏見稲荷、稲荷、男山山上、八幡市、枚方市、私市、河内森、河内磐船、交野市(京阪本線/男山ケーブル/京阪交野線)

鉄旅日記2015年3月21日その1・・・東福寺駅、祇園四条駅、伏見稲荷駅、稲荷駅、男山山上駅、八幡市

記事を読む

「鉄旅日記」2005年聖夜【廃線となった鹿島鉄道に乗った記録が残されておりました。】-鹿島神宮、新鉾田、鉾田、石岡(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島鉄道/常磐線)

鉄旅日記2005年12月24日・・・鹿島神宮駅、新鉾田駅、鉾田駅、石岡駅(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その3-梓橋、姨捨、北長野、三才、直江津(大糸線/篠ノ井線/しなの鉄道/えちごトキめき鉄道)

鉄旅日記2018年2月10日・・・梓橋駅、姨捨駅、北長野駅、三才駅、直江津駅(大糸線/篠ノ井線/しな

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その2(東京-岩倉)-三河高浜、碧南、高浜港、亀崎、半田、知多半田、内海、富貴、河和(名鉄三河線/武豊線/名鉄河和線/名鉄知多新線)

鉄旅日記2015年3月7日その2・・・三河高浜駅、碧南駅、高浜港駅、亀崎駅、半田駅、知多半田駅、内海

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、甲斐駿河途中下車旅】その2-源道寺、入山瀬、下部温泉、塩之沢、甲斐常葉、市川大門、甲府、新府、穴山、東山梨、東所沢(身延線、中央本線、武蔵野線)

鉄旅日記2013年3月3日その2・・・源道寺駅、入山瀬駅、下部温泉駅、塩之沢駅、甲斐常葉駅、市川大門

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その4 ‐長野、御代田、小諸、上田(信越本線/しなの鉄道)

鉄旅日記2021年7月10日・・・長野駅、御代田駅、小諸駅、上田駅(

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その3 ‐しんざ、十日町、越後鹿渡、津南、戸狩野沢温泉(北越急行ほくほく線/飯山線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・しんざ駅、十日町駅、越後鹿渡駅、津

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野

→もっと見る

    PAGE TOP ↑