*

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、相模・駿河・甲斐途中下車旅】その1-新子安、石川町、山手、磯子、根岸、大磯、二宮、鴨宮、早川、根府川、伊東、熱海、函南、東田子の浦(京浜東北線、根岸線、東海道本線、伊東線)

公開日: : 最終更新日:2024/06/05 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年3月20日その1・・・新子安駅、石川町駅、山手駅、磯子駅、根岸駅、大磯駅、二宮駅、鴨宮駅、早川駅、根府川駅、伊東駅、熱海駅、函南駅、東田子の浦駅(京浜東北線、根岸線、東海道本線、伊東線)

2012・3・20 5:57 新子安(しんこやす)駅(京浜東北線 神奈川県)
西に向かうことを決めたのはいつだったか。

昨日の天気予報を見た時だっただろうか。

今朝の星空を見た時だったかもしれない。

あるいは池袋ですんなりと山手線に乗れたからだろうか。

どうでもいいな。
つまり今日のオレは富士山を見に行く。

京急線がすぐ脇を走る踏切と廃れた横丁の町、新子安。
高いところからは墓地が見える。
清掃車と工事関係者が朝の町に融合し、京急駅員は大きな欠伸をしていた。

京急新子安(けいきゅうしんこやす)駅(京浜急行線 神奈川県)にて

6:20 石川町(いしかわちょう)駅(根岸線 神奈川県)
元町中華街の外れ。

場末の雰囲気漂う駅前に中華街を示す門が立つ。
うら寂しい。
繁華街は近くない。

ちょっと前に来たよな。
そして美味い中華料理をたらふく食べたんだ。

今までのオレの人生にそんな機会はなく、今そんなふうに変わってきている。
とても幸せなことだ。

6:28 山手(やまて)駅(根岸線 神奈川県)
坂の多い町だ。

本牧を示す表示を見てオレがかつて感じていた横浜が蘇る。

駅を下りると商店街が一直線にたいした賑わいもなく続き、品のよくない男たちが駅への道を辿ってくる。

繁華街はすでに過ぎ去りホームには春の冷たい風が吹いている。
ケータイを持つ手が冷たい。

6:45 根岸(ねぎし)駅(根岸線 神奈川県)
高速の高架と石油タンクを積んだ貨物列車が目に飛び込んでくる。

沿岸工場の煙突から煙が上がり、場末の港に下りていく人の数は多かった。

6:56 磯子(いそご)駅(根岸線 神奈川県)
磯は工業海に変貌し、駅前にはそんな歴史を睥睨するかのような高層団地が建ち並んでいる。

あの風景になってからしばらく経っているようだ。

かつて車で遊んでいた頃の横浜を通ってきた。

今のオレが描く横浜とは違う。
そのズレに戸惑いを覚えていたが、ようやく磯子まで来て納得した。

80年代後半を生きていたオレが、探せばそのあたりにいそうだ。
そんなヤツのことはずっと忘れていたよ。

7:50 大磯(おおいそ)駅(東海道本線 神奈川県)
日本初の海水浴場が開かれた湘南リゾートの空は青く、吹く風は冷たい。

ロングビーチまでは遠く、1号国道から懐かしの湘南国道の方向を見るにとどめ駅へ戻る。

白亜の建物があたりを優しく見せる。

丘から見える海にはいつも心ときめく。

8:09 二宮(にのみや)駅(東海道本線 神奈川県)
栄通りという線路沿いの古い商店街と曽我兄弟の墓がある吾妻山公園、そして二宮海岸。

1号国道は大磯から線路に接近し、海への距離が近くなる。

日常を忘れかけてるところへ得意先からの電話。
旗日8:18。
とても不粋だ。

8:32 鴨宮(かものみや)駅(東海道本線 神奈川県)
車窓から、白くなってもう長いことになる富士山の頂上付近がくっきりと見えだし、駅の高架橋からの眺めもまたいい。

味わいのある北口商店街を歩き、海辺で商ってきた人々を思い、房総とはまた違うなと感慨に耽り、海へと続く南口へ。

だだっ広いロータリーを取り巻くものは僅かで、水場で猫が鳴いていた。

8:52 早川(はやかわ)駅(東海道本線 神奈川県)
雀荘が入っている駅前ビルは廃墟になってどれくらい経つのか。

ここを通る度にあの建物と西湘バイパスの高架をずっと目にしてきた。

あの下は太平洋だったよ。

海沿い国道を上下する車の流れは絶えず、そして今日は完全な晴天だ。

早川で下りられてよかったよ。

9:35 根府川(ねぶかわ)駅(東海道本線 神奈川県)
6分の停車。

この駅に再び下り立つことができてうれしい。

いつでも春を思わせるような駅で、人々の声もどこか華やいでいる。
愛すべき相模路に戻ってきた。

ついでに言うが、東海道各駅停車の旅は熱海までつながった。
つまり東京から熱海まで、すべての駅に降りてきたことになる。

10:10 伊東(いとう)駅(伊東線/伊豆急下田線 静岡県)
仲間と何度も走った道。
ハトヤは今も健在だろうか。

あのあたりのビーチにはオレンジビーチという名称がついている。

湯の花通りにキネマ通り。

大きな鞄を持った旅行者が多く行き交う街並みは文字通り春で、こんな町にきたかったのだと、下りてみてよく分かった。

南風の心地いい春の宵に桜花が舞い、妖しげな灯に揺れる街角。
そんな場所にいたことなどないが、どこかの街でそんな宵を迎えたいと、生きてきた。

伊東にはそんなどこかレトロな街角がありそうだ。

伊東にオレの記録が残されていないことが不思議だ。
伊東線の駅はどれも素敵だった。
次の計画を立てよう。

10:52 熱海(あたみ)駅(東海道新幹線/東海道本線/伊東線 静岡県)
思い出の街は春の日差しにあふれている。

朝青龍最後の場所をあの寿司屋で眺め、これから始まる暮らしに思いを馳せた。

熱海はいつも人であふれている。

あったかいという感覚を久し振りに思い出したけど、ビールはまだ喉に冷たかったよ。

この街で撮った写真がケータイの待ち受け画面になっている。
しばらく替えるつもりはない。

11:18 函南(かんなみ)駅(東海道本線 静岡県)
熱海を出てトンネルをいくつも潜ると雲雀さえずるせせらぎの国。

駅前には一軒の商店もない。
車窓から見て知ってはいた。

でも他じゃたいして味わうことのできない濃厚な春がここにある。

12:01 東田子の浦(ひがしたごのうら)駅(東海道本線 静岡県)
広大な富士の裾野が見える東海の名勝。
ここにはいくつも思い出がある。

ここに連れだしてあの海を眺め、振り返って富士を仰いだ。
大切な約束を交わしたこともある。

ここにくる機会はもうないと思っていたけど、これがオレと田子の浦の縁。

初めて来た時には他に何人もいたけど、連中はたいして覚えちゃいないだろう。

あの雄大な太平洋。
多くの海岸線に出てみたが、ここが一番。
本当にそう思うよ。

そしてまたオレはここにひとりでやってきた。
寂しい言葉など必要のない境遇を得て、ひとりで会いにやってきたよ。

関連記事

「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】初日(東京-和歌山)その1-浜松、豊橋、大垣、京都、六地蔵、城陽、京終、帯解、天理、桜井(東海道本線/奈良線/桜井線)

鉄旅日記2008年7月19日・・・浜松駅、豊橋駅、大垣駅、京都駅、六地蔵駅、城陽駅、京終駅、帯解駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】最終日(門司港-東京)その2‐若松渡場、戸畑渡場、戸畑、下関(若戸渡船/鹿児島本線)

鉄旅日記2020年8月16日・・・若松渡場、戸畑渡場、戸畑駅、下関駅(若戸渡船/鹿児島本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】最終日(紀伊田辺-東京)その1-紀伊田辺、箕島、和歌山、伊太祈曽、貴志(紀勢本線/和歌山電鐵貴志川線)

鉄旅日記2019年3月3日・・・紀伊田辺駅、箕島駅、和歌山駅、伊太祈曽駅、貴志駅(紀勢本線/和歌山電

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】最終日(宮古-東京)その2‐陸前赤崎、大船渡、気仙沼、一ノ関(三陸鉄道リアス線/大船渡線)

鉄旅日記2019年9月23日・・・陸前赤崎駅、大船渡駅、気仙沼駅、一ノ関駅(三陸鉄道リアス線/大船渡

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】初日(東京-香住)その1‐東京、国府津、小田原、三島(東海道本線)

鉄旅日記2020年7月23日・・・東京駅、国府津駅、小田原駅、三島駅(東海道本線) 2020

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】2日目(越前大野-福井-米原-名古屋-松本)その1-越前大野、南今庄、敦賀、武並(越美北線/北陸本線/東海道本線/中央本線)

鉄旅日記2018年10月7日・・・越前大野駅、南今庄駅、敦賀駅、武並駅(越美北線/北陸本線/東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】2日目(砺波-武生)その1 ‐砺波、戸出、新高岡、金沢(城端線/北陸新幹線)

鉄旅日記2020年11月22日・・・砺波駅、戸出駅、新高岡駅、金沢駅(城端線/北陸新幹線)

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その2-宇治山田、東青山、青山町、名張、大和八木、大和西大寺、新大宮(山田線/大阪線/橿原線/奈良線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・宇治山田駅、東青山駅、青山町駅、名張駅、大和八木駅、大和西大寺駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】最終日(一ノ関-東京)その3-名取、岩沼、福島、郡山、新白河、上野(東北本線)

鉄旅日記2019年1月6日・・・名取駅、岩沼駅、福島駅、郡山駅、新白河駅、上野駅(東北本線) 15:

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】2日目(高松)その2 ‐祖谷口駅、小歩危駅、大歩危駅、剣山リフト乗場、恋人峠、穴吹駅、黒田屋高松西インター店

車旅日記2020年9月20日・・・祖谷口駅、小歩危駅、大歩危駅、剣山リフト乗場、恋人峠、穴吹駅、黒

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年秋【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】初日(東京-飯坂温泉)その1 ‐金町、高浜、友部、水戸、いわき(常磐線)

鉄旅日記2021年10月9日・・・金町駅、高浜駅、友部駅、水戸駅、い

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】最終日(上田-東京)その3 ‐十日町、越後川口、渋川、敷島(飯山線/上越線)

鉄旅日記2021年7月11日・・・十日町駅、越後川口駅、渋川駅、敷島

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】最終日(上田-東京)その2 ‐北飯山、飯山、蓮、森宮野原(飯山線)

鉄旅日記2021年7月11日・・・北飯山駅、飯山駅、蓮駅、森宮野原駅

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】最終日(上田-東京)その1 ‐上田、滋野、長野(しなの鉄道/信越本線)

鉄旅日記2021年7月11日・・・上田駅、滋野駅、長野駅(しなの鉄道

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その4 ‐長野、御代田、小諸、上田(信越本線/しなの鉄道)

鉄旅日記2021年7月10日・・・長野駅、御代田駅、小諸駅、上田駅(

→もっと見る

    PAGE TOP ↑