*

「鉄旅日記」2009年晩夏【近くまでぶらっと】金町、新松戸、西国分寺、立川、青梅、奥多摩、御岳、武蔵五日市、拝島、高麗川、川越、武蔵浦和、南浦和(常磐線、武蔵野線、青梅線、五日市線、八高線、川越線、埼京線)

公開日: : 最終更新日:2023/07/21 旅話, 旅話 2009年

鉄旅日記2009年9月5日・・・金町駅、新松戸駅、西国分寺駅、立川駅、青梅駅、奥多摩駅、御岳駅、武蔵五日市駅、拝島駅、高麗川駅、川越駅、武蔵浦和駅、南浦和駅(常磐線、武蔵野線、青梅線、五日市線、八高線、川越線、埼京線)
2009・9・5 8:53 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
気持ちいいなぁ。

ケータイの予報は雨混じりだったが、何度目かの目覚めの時、空には雲ひとつなく、理想的な秋晴れだった。
蝉はまだ鳴いているが、風にはもはや夏を感じない。

「風立ちぬ」。
今朝の朝刊別刷でその文字に接した。松田聖子さんの流行歌が蘇る。
今は秋。

今週のオレはクソみたいだった。
もっと潔く生きたいと思う。

9:11 新松戸(しんまつど)駅(常磐線/武蔵野線 千葉県)
東京に向かう人々が向かいのホームに列をなしている。
向かう先は東京じゃなく、あるいは浦安か。
幕張もあるか。

仲間は今朝そっちにいるようで、それから相模原に戻ってサッカーの練習をする。
行こうと思いはしたけど、昨日のオレにその決断は下せなかった。

どうしようもなく参ってたんだ。

そしてここにいる。
仲間たちと合流することを見合わせて、こうしていることに罪悪感があるけど、ひとりで家にいたくなかった。

10:25 西国分寺(にしこくぶんじ)駅(中央本線/武蔵野線 東京都)
埼玉東京の県境がトンネルで繋がれていたことに新鮮な驚きを持つ。
関東平野にもトンネルがあったのか。

国分寺に馴染みはなく、駅を出た時の気分は新鮮だった。

これからさらに未知と言っていい地域を往く。

空から雲は消え、今日は少しばかり暑くなりそうだが、風が心地いい。

西国分寺の駅前はごく簡素で、繁華街は見当たらず、すぐに駅に引き返した。

10:44 立川(たちかわ)駅(中央本線/青梅線/南武線/多摩都市モノレール 東京都)
国立を過ぎて立川。
この駅に降りたのは大学時代の友人Tの結婚式以来になる。
あの頃はAもKも輪の中にいた。
みんなどうしているのか。

Kは親父さんの会社を継いで末は社長になると言っていたけど、表情は苦渋に満ち、不安以外の何物も持っていなくて、みんなで励ましたんだった。

下手な冗談ばかり言う陽気で繊細な男だった。
海外に行く機会もあるというから手広くやっている会社なのだろう。

あの頃はまだ20代。
今頃は立派になっているかもしれないな。

そこへ行くと相変わらずオレは気楽なもんだ。
いろいろあるけど、人から見ればそういう存在だ。
否定はしない。

今着ている「RealBvoice」というブランドを教えてくれたSさんが立川に暮らしていたのは、もう20年前になるのか。
高校時代サッカーで選抜チームのメンバーになった身体能力抜群の人だった。

2度ほど泊まりに行ったな。
家に他人を上げるのを好まない人だったけど、オレは許された存在だった。
彼は地元の福井からたまに便りをくれる。

あれから立川には新たに多摩都市モノレールが開通している。
町田で暮らしていたオレにとって近いようで、なかなか縁遠いところだと思っていたけど、よくよく思い出せばこうして縁のひとつやふたつどこにでも持っているのかもしれない。

街には下りず先にいく。

12:19 青梅(おうめ)駅(青梅線 東京都)
懐かしげな街に着いた。

昭和の街を謳う青梅。

街には天才赤塚不二夫の逸話に触れたポスターや古い映画の看板が目立つ。
青梅街道をここではシネマ通りと称している。

青梅マラソンのコースはどのあたりか。
暑くなってきて、レトロな街の優しげな風情に打たれ、かつての夏を想う。
現代的な街に安らぎがない理由がここにきて分かった。

社会人になってからフラれた彼女はひとつ手前の東青梅に住んでいた。
よく通ったよ。
列車から眺めた駅前風景は記憶と違わず、たちどころに懐かしさが込み上げる。
彼女は母親になり、今は立川で暮らしている。

ここ青梅では人の存在感が圧倒的で、みんな昭和の香りをまとっている。
オレはそもそもそういう人間だが、目の前で体育の授業を受けている小学生とて例外じゃない。

夏と秋の虫が同時に鳴いた。

駅の発着音は「秘密のあっこちゃん」だった。

13:44 奥多摩(おくたま)駅(青梅線 東京都)
来てよかったと心から思う。

熊避け鈴を売っている駅前から氷川渓谷に架かる橋を渡り青梅街道を次の橋まで歩く。

ご婦人が渓谷を眺め、オレは東京の涯の空を眺め立ち止まる。

何か爽やかなものに心を満たされ、店のおかみさんが美味しいですよと薦めてくれた東京の酒を、彼女にと買った。

彼女の喜ぶ顔が見たい。
オレの想いはいつか彼女に伝わるだろうか。
最近はまたあやふやな関係になりつつある。
だからオマエはダメなんだよ。

昔家族で奥多摩湖に行ったよな。
この駅に寄ったかどうかは記憶にない。
地図を見るとちょっと離れている。
御嶽の宿に泊まったことは覚えている。

14:40 御嶽(みたけ)駅(青梅線 東京都)
駅前の記憶はなかったが、さっきの家族旅行ではここからバスで移動したのだろう。

今日この地に集まった人々の装いは一様で、目的地まで歩くことを楽しみにしている。
トウモロコシをかじる者。
オレのようにビールを飲む者。
日常の続きをしてる者はいない。

山の神を感じる土地だ。
僅かな時間だがその支配下に入って、きっとオレもこんなところから出てきたんじゃないかと思う。

生まれた土地は川崎の外れだけど、そういうことではなく、もっと根源的な話だ。

16:06 武蔵五日市(むさしいつかいち)駅(五日市線 東京都)
東京の涯にある終着駅は高架駅だった。

高校時代に剣道部の催しで毎夏川遊びに降りていたのはたぶんこの駅だったのだろう。
秋川で遊んできた若い連中が大勢乗り込んでくる。

線路をくぐって川辺に下りていく道に既視感がない。
変わったのか、あれは実は別の場所だったのか判断がつかない。

まあいいや。
そもそもそれを確認しにきたわけじゃない。
懐かしい気分に浸りたかったわけでもない。

周辺は緑に覆われているものだと思っていたが、意外にも拓けていて視界は広かった。
駅前に商店は見られない。

16:48 拝島(はいじま)駅(青梅線/五日市線/八高線/西武拝島線 東京都)
米軍キャンプの臭いを嗅いだような気がしたかつての拝島。
駅は変わっていた。
まるで戦後の混乱期を形に残したような一帯だと思っていたけど、きれいになっていたよ。

30年近く前、親父に連れられて所沢に西武ライオンズを見に行った時にもここを通っている。

オレは、後に2000本安打を達成した山崎裕之選手のファンだった。
彼がロッテにいた頃からだから結構長い。
巨人との日本シリーズで定岡投手から売ったホームランを今も鮮明に覚えている。
今でも野球は好きでよく見るけど、彼ほどの思い入れを持って応援する選手はいない。

当時、まさしく昭和真っ盛りの拝島駅は古くて暗く、大きかった。
僅かな待ち時間に親父がオレンジジュースとトマトジュースを買ってきてくれてどっちか選べと言う。
小学生がトマトジュースなんか飲むかよ。

懐かしくてあったかい記憶だ。

駅前通りは変わっていない。
狭い通りに商店が並び、路地を入ると昭和からの飲食店舗がさも当然といった風情で存在している。
パチンコ屋で働く少女たちが屋上駐車場を掃く背後に開発された住宅街が見えた。

3本のJRローカル線に西武拝島線が通る大鉄道駅だが都心は遠い。
多摩地域を地元に持つオレには、この東京のバックストリートは永遠に懐かしい。

17:35 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
小学生の頃に兄貴と長野の田舎から帰った懐かしの八高線はここで川越線と分かれる。

15分ほどの停車で町に下りたら、僅かな飲食店の他に見るものはない。
ひとつ手前の東飯能と比較すると、かなり寂しく感じる。
人の往来は少なくない。

赤い屋根の小さな日本家屋的駅舎。
ターミナル駅だけあって改札を入ると大鉄道駅の風格が備わっている。

18:30 川越(かわごえ)駅(川越線/東武東上線 埼玉県)
例えば、同じ県内の大宮のように大きな街だと感じた。

途中まで歩いてやめてしまったが、あのクレアモールを抜けたところに西武線の終点本川越駅があり、そこから大正浪漫ロードが、観光地として有名な「時の鐘」まで延びている。
行きたかったけどそこは遠く、線路を挟んで反対側には何があるかとうろうろしているうちに暗くなってきた。
じきに日が暮れる。

また今度、次は西武線に乗ってこよう。

武蔵浦和(むさしうらわ)駅(埼京線/武蔵野線 埼玉県)にて

19:49 南浦和(みなみうらわ)駅(京浜東北線/武蔵野線 埼玉県)
埼京線に乗って武蔵浦和で降りて、ここまで歩く。

浦和を知らないオレに、浦和の実力を示すものは道中になく、やたらに長い道程だった。

武蔵浦和も南浦和もターミナル駅だけあって大きく、両駅とも接続する武蔵野線ホームは交差し、乗り替えに時間を要する。

街がこじんまりしているところも似ている。
南浦和の好ましげな街灯は商店街の入口から50メートルほどで不意に途切れ、丸広の灯は街に着いた時から消えていた。

すでに帰り道。
目の前に内田有紀さん似の美人がすらっと立っている。

夏に戻ったような素晴らしい休日。
真夏の選挙で夏休みのなかったオレに、褒美のようなきれいな月が出てるじゃないか。

関連記事

「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線)

鉄旅日記2006年11月4日/11月5日 2006・11・5 東京葛飾金町 清々しい浜名湖畔から

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、富山・岐阜途中下車旅】最終日(富山-東京)その1-富山、水橋、速星、千里、越中八尾、笹津、猪谷、飛騨古川、高山、久々野、下呂、白川口、上麻生、下麻生(北陸本線、高山本線)

鉄旅日記2012年8月26日その1・・・富山駅、水橋駅、速星駅、千里駅、越中八尾駅、笹津駅、猪谷駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】初日(東京-和歌山)その1-浜松、豊橋、大垣、京都、六地蔵、城陽、京終、帯解、天理、桜井(東海道本線/奈良線/桜井線)

鉄旅日記2008年7月19日・・・浜松駅、豊橋駅、大垣駅、京都駅、六地蔵駅、城陽駅、京終駅、帯解駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】初日(東京-酒田)その1‐金町、北千住、上野、高崎(常磐線/高崎線)

鉄旅日記2019年12月7日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、高崎駅(常磐線/高崎線) 2019・12

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その2-新潟、白山、内野、巻、吉田、燕(越後線/弥彦線)

鉄旅日記2018年3月4日・・・新潟駅、白山駅、内野駅、巻駅、吉田駅、燕駅(越後線/弥彦線) 11:

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】最終日(紀伊田辺-東京)その2-吉野口、高田、畝傍、桜井、柳本(和歌山線/桜井線)

鉄旅日記2019年3月3日・・・吉野口駅、高田駅、畝傍駅、桜井駅、柳本駅(和歌山線/桜井線) 10:

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】最終日(新庄-東京)その2-女川、渡波、松島海岸、本塩釜、仙台、駒ヶ嶺、原ノ町、桃内、いわき、石岡(石巻線/仙石線/常磐線)

鉄旅日記2009年10月11日・・・女川駅、渡波駅、松島海岸駅、本塩釜駅、仙台駅、駒ヶ嶺駅、原ノ町駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】最終日(安中-東京)その3-海尻城址、海尻、八千穂、信濃川上、佐久海ノ口、甲斐小泉、小淵沢(小海線)

鉄旅日記2019年2月10日・・・海尻駅、八千穂駅、信濃川上駅、佐久海ノ口駅、甲斐小泉駅、小淵沢駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【ふらっと両毛 東武フリーパスで、両毛ローカル旅】-館林、佐野、葛生、西小泉、赤城、太田、伊勢崎、新伊勢崎、足利、足利市(東武佐野線/東武小泉線/東武桐生線/東武伊勢崎線)

鉄旅日記2014年4月6日・・・館林駅、佐野駅、葛生駅、西小泉駅、赤城駅、太田駅、伊勢崎駅、新伊勢崎

記事を読む

「車旅日記」1997年夏【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】2日目(新潟-象潟-田沢湖付近)-道の駅豊栄、道の駅加治川、道の駅朝日、道の駅鳥海、蚶満寺、道の駅西目、八津駅

車旅日記1997年8月14日 1997・8・14 4:35 7号国道‐豊栄(道の駅) 出発。

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その3‐仙台、北山、葛岡、山形(仙山線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・仙台駅、北山駅、葛岡駅、山形駅(仙山線

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その1‐松戸、土浦、友部(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・松戸駅、土浦駅、友部駅(常磐線) 20

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

→もっと見る

    PAGE TOP ↑