*

「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】初日(東京-十日町)-上野、高崎、大前、渋川、沼田、水上、越後湯沢、六日町、越後川口、十日町(高崎線/吾妻線/上越線/飯山線)

公開日: : 最終更新日:2025/06/17 旅話, 旅話 2009年

2009・7・18 8:42 上野(うえの)駅(東北新幹線/秋田新幹線/山形新幹線/上越新幹線/長野新幹線/東北本線/高崎線/常磐線/東京メトロ線 東京都)
旅が始まっている。
まずは高崎まで。
今のところ雨の気配はない。

司馬遼太郎さんの「夏草の賦」の続きが読みたくて、先週実家に帰った時のような気楽さで電車に乗った。

木曜日には新橋のママに逢いに行き、居合わせたHさんと店を出てからさらに数軒飲み歩き、最後に入った中国人が経営する店では不当に金をとられたと憤慨して店を出たけど、思い違いだったことに後で気づいた。
悪いことをしたと思っている。
あんなに飲むもんじゃないよ。

昨夜はママの店からだと同じく常連のSさんから電話があった。
同い年の好漢Aも大阪から上京していたようだ。
あの店では連夜笑いが絶えない。
彼女には今回の旅を知らせていない。
次には土産を持って逢いに行く。

荒川を渡った。

膨大な食料を買い込んだ若者が座っている。
彼の行き先が気になる。
しかし上州に向かう車内はとても静かで落ち着く。
ここ最近を振り返る空間として悪くない。

がさがさした生活から一旦離れる。

10:46 高崎(たかさき)駅(上越新幹線/長野新幹線/信越本線/高崎線/上越線/両毛線/八高線/吾妻線/上信電鉄 群馬県)
駅で煙草を吸うのは久し振りだ。
東京じゃもう吸えないから。
駅そばも美味かったな。

大前行に乗っているが、どれだけの者が終着駅まで行くのだろう。

風景にはまだ旅情は見られず、山の拵えをした者が目立つ。

12:38 大前(おおまえ)駅(吾妻線 群馬県)
吾妻線の旅情は素晴らしい。
海音寺潮五郎さんが小説で描いた「執念谷」に雲が湧いている。

軽井沢や草津など近隣の観光地には、沿線の中之条、長野原草津口、万座・鹿沢口を経由して車で向かうことになる。
開業以来そうして多くの者たちを降ろしてきた駅にはただならぬ風格が漂い、沿線一帯の価値を高めることに一役買っている。

契約している会員制リゾートクラブが所有しているマンションが嬬恋にあって、関東のベースキャンプにしていた頃がある。
冬にはスキー板を車に取っ付けて何度も通った。
冬には賑わう「執念谷」一帯もこの季節には人影も疎らで、どうしても廃れた印象を持って帰ることになる。

終着駅大前に駅舎はなく、駅前を彩る商店もなく、温泉施設ひとつが川辺で営業している。
集落はある。

14:40 渋川(しぶかわ)駅(上越線/吾妻線 群馬県)
日が射すとにわかに蒸し暑くなる。

吾妻渓谷に沿った旅は終わった。

雀の姿を目で追ったのはいつ以来か。
沿線の緑が鮮やかだった。
本物の緑色を忘れてたよ。

サティがある地点まで街を歩いて駅に戻る。
そこに歓楽街はなく、渋川駅は改良工事中だった。
かつての姿を思い出せない。

あれは榛名湖から下ってきた9月の朝だった。
ここからさらに下ると利根川に出る。
そこで見た水墨画的な雨上がりの風景が忘れられない。
今回はさらに上流に行く。

金町から随分遠いが、そんな気がしないのはここがまだ関東だからか。

海の日を含めたこの3連休。
上州から海は遠い。

年輩の登山者ばかりを見かける。
あの年代になると山を慕うようになるのだろうか。

15:55 沼田(ぬまた)駅(上越線 群馬県)
遠い昔、オレのご先祖様が歴史の中に参加する頃、ここ沼田、「執念谷」、上田は真田氏に治められたひとつの国だった。

そこに降りてみたかった。
史実を知ってからすぐにその希望は芽生えた。

古くから市制が敷かれた街に着いて、地元民の多くが降りた。
駅前は何事もない。
城址公園は駅からそう遠くない。
あの小高い場所がそうだ。
街の機能は当時から変わらずそっちにあるのだろう。

行きたかったが、駅でビールを飲む方を選んだ。
これはこれでいい。

上り方面に人が集まってきた。
旅行者のようで、一様に大きな荷物を抱えている。

真田氏所縁の街だけど、天狗の面がかかったここ沼田にたぶんオレのルーツはない。

17:30 水上(みなかみ)駅(上越線 群馬県)
新潟との国境の町、関東最北端の上州水上。
新幹線はすぐ側を走っている。
17号国道はすでに鉄路から離れ、猿が京を抜けて三国越えで国境を越える。

気のいいおかみさんがいる「チャコ」という店でイワナの唐揚げをつまみに一杯やった。
聞けば彼女は山形出身だという。
人生いろいろだ。
いくつかサービスもしてもらって楽しい時を過ごした。
彼女はこれからも水上を訪れる旅行者を自然な笑みで迎えることだろう。
町にとってステキな未来だ。

店を出て利根川遊歩道を歩き、激流に驚き、紫陽花の写真を撮る。
家並みは古く、温泉街のど真ん中には巨大ホテルの廃墟が居座り、町を憂える。

蜩の声を聞いた。彼等は夏の終わりに出現すると勝手に思いこんでいたけど、そうじゃない。
早朝や夕方、涼しくなってきた頃にその涼やかな声を聞かせてくれる。

東京じゃ、めっきり聞くこともなくなった。



18:38 越後湯沢(えちごゆざわ)駅(上越新幹線/上越線/北越急行 新潟県)
水上を離れると湯檜曽の手前から地下に潜り、土合を過ぎて大清水トンネルへ。

理由は知らないが、あのトンネルを好きな男と13歳の時に出会い、たった一年だったけど仲良くした。
そんなことを思い出しながら長いトンネルを抜けると結露で外がよく見えなかった。

スキーシーズンを過ぎた湯沢は新鮮だ。

在来線ホームは閑散として、ほくほく線特急に乗り換える客もまばらだった。
人影のない連絡通路で弁当を売るおばさんには哀愁が漂い、思わず立ち寄って「かに寿司」を買う。

外を眺めると山々に靄が立ちこめている。

一雨上がった湯沢の夕暮れに夏を感じることは難しい。

19:09 六日町(むいかまち)駅(上越線/北越急行 新潟県)
ほくほく線との分岐駅で数分の停車。

南魚沼市を謳う中心駅は夜の灯に浮かび上がり、アーケード街のシャッターは下りている。

北国のきれいな町並みを一望して列車に戻る。

谷間に敷かれた鉄路を取り巻く緑は濃く、暮れゆく山々の陰影もまた濃く、荘厳な風景に打たれていた。

「男はつらいよ」第25作。
朝丘ルリ子さん演じるどさ回りの歌手松岡リリーは、「執念谷」のバス停で車寅次郎と再会し、映画は終わる。

その後彼女は水上でのステージをこなし、清水トンネル潜ってここ六日町のステージに立つと寅次郎に伝えている。

二人が揃って銀幕に現れるのは48作目まで待たなきゃならないが、彼等はどこかでばったり会っていたかもしれない。
「寅さん、また会おうね。」
「ああ、日本のどこかでな。」

19:45 越後川口(えちごかわぐち)駅(上越線/飯山線 新潟県)
町は静まり駅員の姿はなく、駅の入口で多くの少年たちがふざけている。

駅前通りの人影は絶え、駅舎を撮ろうとケータイを向けると何も写らず、かろうじて輪郭だけが判別できる。

乗り換え時間は僅かで飯山線ホームに急ぐ。

22:09 ホテルニュー十日町401号
初夏の豪雪地帯に祭りがやってくる。

ある集落からついた火はまるで聖火リレーのように周辺を巡り、ここ十日町で大団円を迎えるという。

支払いの時に口を開いてくれたおかみさんに祭りの関係者かと尋ねられたんだ。
部外者で、でっかい寅さんカバン提げて、よくわからない格好をしているからな。

店を出て、駅に戻って買い物をしてホテルに行く途中でおかみさんと再会する。
カチッと一度拍子木を叩きながら駅前通りを歩いてくるんだ。

「あぁ、おかみさん、お疲れさまです」とすれ違う。

十日町は夏に来ても雪国を感じさせる。
ドンツキに駅を置いて、両側の歩道をアーケードで覆った通りが国道に向かって伸びている。

あぁオレが好きな街はどこもこうだったと、街に降りて思ったよ。
人通りはないが、酒を飲ませる店はいくつも開いている。
オレの想像を上回る街だった。

冬の話を聞きそびれた。
日本有数の豪雪地帯という看板はそのままだろう。

だけど夏は祭りだ。
それがこの国だ。
お盆になれば、また別の祭りがある。
素晴らしい文化だと思う。

飯山線に乗るのは初めてだ。
計画通りの旅もまた楽しい。

関連記事

「鉄旅日記」2005年初冬 その1-松戸、我孫子、成田、銚子(常磐線/成田線/銚子電鉄) 【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】

鉄旅日記2005年12月10日・・・松戸駅、我孫子駅、成田駅、銚子駅(常磐線/成田線/銚子電鉄)

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 3日目(高松)その2 ‐金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅師墓 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

車旅日記2020年9月21日・・・金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 3日目(大分-佐賀)その2-大牟田、銀水、西鉄銀水、瀬高、荒木、久留米、鳥栖、佐賀(鹿児島本線/長崎本線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月20日・・・大牟田駅、銀水駅、西鉄銀水駅、瀬高駅、荒木駅、久留米駅、鳥栖駅、佐

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 初日(東京-五所川原)その3‐小牛田、一ノ関、盛岡、八戸、野辺地(東北本線/IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月2日・・・小牛田駅、一ノ関駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅(東北本線/IGRいわ

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その1‐鷹ノ巣、二ツ井、鷹巣、阿仁合(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)

鉄旅日記2023年1月13日・・・鷹ノ巣駅、二ツ井駅、鷹巣駅、阿仁合駅(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道)

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その2 ‐八景島、金沢八景、杉田、新杉田(金沢シーサイドライン/京浜急行本線) 【根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・八景島駅、金沢八景駅、杉田駅、新杉田駅(金沢シーサイドライン/京浜

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】最終日 北陸より東京へ‐その3(R20)諏訪湖、韮崎、道の駅甲斐大和

車旅日記1996年5月6日 16:28 諏訪湖 松本市内を通過して塩尻峠を下りていく。 塩尻峠は

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】初日(東京-秋田)-保谷、高崎、長岡、新津、新発田、村上、鼠ヶ関、酒田、上浜、秋田(西武池袋線/高崎線/上越線/信越本線/羽越本線)

鉄旅日記2011年8月13日・・・保谷駅、高崎駅、長岡駅、新津駅、新発田駅、村上駅、鼠ヶ関駅、酒田駅

記事を読む

「車旅日記」1996年秋 2日目(新潟‐鳴子温泉) 道の駅豊栄、道の駅朝日、道の駅温海、象潟駅-茶房くにまつ、蚶満寺、九十九島、矢島、鳴子サンハイツ 【夏をあきらめきれず、秋。再び夏のルートへと向かったのでございます。】

車旅日記1996年11月2日 1996・11・2 8:17 7号国道‐豊栄(道の駅) よく眠れたよ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その2 ‐八景島、金沢八景、杉田、新杉田(金沢シーサイドライン/京浜急行本線) 【根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・八景島駅、金沢八景駅、杉田駅、新杉田

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その1 ‐金町、桜木町、関内、新杉田(常磐線/京浜東北・根岸線) 【金沢シーサイドライン、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・金町駅、桜木町駅、関内駅、新杉田駅(

「鉄旅日記」2022年如月 最終日(常陸大子-東京)その3 ‐土浦、荒川沖、藤代、柏(常磐線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月6日・・・土浦駅、荒川沖駅、藤代駅、柏駅(常磐

「鉄旅日記」2022年如月 最終日(常陸大子-東京)その2 ‐水戸、羽黒、稲田、福原、友部(水戸線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月6日・・・水戸駅、羽黒駅、稲田駅、福原駅、友部

「鉄旅日記」2022年如月 最終日(常陸大子-東京)その1 ‐常陸大子、磐城棚倉、東館(水郡線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月6日・・・常陸大子駅、磐城棚倉駅、東館駅(水郡

→もっと見る

    PAGE TOP ↑