*

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その5‐備後落合、備後庄原、三次(芸備線)

公開日: : 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年7月25日・・・備後落合駅、備後庄原駅、三次駅(芸備線)

17:10  備後落合(びんごおちあい)駅(芸備線/木次線 広島県)

木次線のスイッチバッグは出雲坂根から上がっていく。進行方向を逆向きに出発して、スノーシェドをくぐると折り返し地点になる。

再び逆方向に走り出すと右手下に出雲坂根駅が見える。遥か天空にはまるで天国へとつながっていそうな赤い橋が見える。

この先はどこへ行き着くのだろう。沿線から集落は消えて、鬱蒼とした緑とトンネルを抜けていく。

とうとう朱色の橋を見下ろす場所まできた。これほどまでに上がらなければならない事情があったのか。中国山地の険しさを思う。

標高718米の表示を見て、やがて駅に着く。天空にも村はある。冬はスキー場になるらしい。乗客がひとり増えた。

備後落合へと下っていく。2つ目の駅には集落があった。

下っていく。速度を上げて下っていく。なぜだか会社で転職を促すべき者の顔が浮かぶ。

天に近づいて、天も覚悟を決めたのか。落合に向けて下っていく。閉めきられた車内にもヒグラシの声が聞こえてくる。

芸備線との接続は急で、いつの間にか落合集落へと下りていた。12年前と変わらぬ姿だが、駅舎内はずいぶんと賑やかになっていた。

どんな経緯であるにしても、この駅が廃駅になどならぬことを願う。

集落は守られていた。でもいつ切り離されてもおかしくない事情も抱えているだろう。

今月の豪雨により芸備線が水に浸かったとの一報でちょっとした混乱をきたしたが、計画通り三次に向かっている。

18:02  備後庄原(びんごしょうばら)駅(芸備線 広島県)

備後落合を出た芸備線は、より一層の秘境地帯を往き、速度を落とした運行が続き、集落も消えて視界は緑に染まる。

比婆山という次の駅に何事かを感じて後ろ姿を写す。

イザナギとイザナミの夫婦神が造った日本列島。イザナミの御陵が比婆山にある。

今じゃ限界集落ともいうべき村に敷かれている鉄路の価値を見直す機会を望んでいる。

次の備後西城は村だった。眠りに落ちる。

3分の停車がある備後庄原駅は改装中で、駅前広場への立ち入りも禁止されていた。

12年前、この町に暮らす少年に塩町駅で世話になった。以来気にかけていた駅だった。

これも縁だ。ちらと覗いた駅前に浮き立つようなものはなかった。

あの少年も立派な大人になっているだろう。

18:35  三次(みよし)駅(芸備線/福塩線 広島県)

三次へと向かう。

田園は美しく、だが朽ち果てて、雑草の繁るに任せた2番線を見たのは山之内駅。

やがて備後庄原からこの町の高校に通っていた少年との出会いがあった塩町駅。

変わってなかったよ。機会があればまた降りたい。

今、福塩線は今月の大雨被害で三次~府中間が不通になっている。

三次駅に着いて代行バスの発着場を聞くと、保線員の方から丁寧な案内をいただいた。これで明日の朝に戸惑うこともない。

霧の町、三次。19:00過ぎの空はまだ夕暮れを保っている。

駅前の賑やかそうな店に入った。ここは広島だから、オレにしては珍しく牡蠣料理を頼みながら、時に漏れ聞こえるヒグラシの声に耳を傾けている。

19:30になるが、空にはまだ残照がある。これが西国。この国の多様性を愛している。願わくば、太陽に近い西の国には、西国らしさを望む。

Mさん、貴女がいないと寂しいよ。

関連記事

「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】2日目(和歌山-松阪)その1-和歌山市、和歌山、海南、西御坊、御坊、紀伊田辺、白浜(紀勢本線/紀州鉄道)

鉄旅日記2008年7月20日・・・和歌山市駅、和歌山駅、海南駅、西御坊駅、御坊駅、紀伊田辺駅、白浜駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】最終日(酒田-東京)その1‐酒田、象潟、砂越(羽越本線)

鉄旅日記2019年12月8日・・・酒田駅、象潟駅、砂越駅(羽越本線) 2019・12・8 5:34

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春【下北半島から東日本大震災被災地へ】初日(東京-下北)その2-村崎野、六原、盛岡、八戸、野辺地、下北(東北本線、いわて銀河鉄道線、大湊線)

鉄旅日記2016年3月19日その2・・・村崎野駅、六原駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅、下北駅(東北本線

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】初日(東京-防府)その4‐大野浦、大竹、岩国、北河内、錦町(山陽本線/錦川鉄道)

鉄旅日記2020年8月13日・・・大野浦駅、大竹駅、岩国駅、北河内駅、錦町駅(山陽本線/錦川鉄道)

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、新潟・みちのくひとり旅】初日(東京-横手)-郡山、津川、亀田、さつき野、水原、坂町、村上、あつみ温泉、鶴岡、余目、刈和野(東北本線、磐越西線、信越本線、羽越本線、陸羽西線、奥羽本線)

鉄旅日記2012年8月11日・・・郡山駅、津川駅、亀田駅、さつき野駅、水原駅、坂町駅、村上駅、あつみ

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その2(東京-岩倉)-三河高浜、碧南、高浜港、亀崎、半田、知多半田、内海、富貴、河和(名鉄三河線/武豊線/名鉄河和線/名鉄知多新線)

鉄旅日記2015年3月7日その2・・・三河高浜駅、碧南駅、高浜港駅、亀崎駅、半田駅、知多半田駅、内海

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】初日(東京-酒田)その1‐金町、北千住、上野、高崎(常磐線/高崎線)

鉄旅日記2019年12月7日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、高崎駅(常磐線/高崎線) 2019・12

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その5‐飛騨金山、下呂、禅昌寺、飛騨萩原、上呂(高山本線)

鉄旅日記2020年3月20日・・・飛騨金山駅、下呂駅、禅昌寺駅、飛騨萩原駅、上呂駅(高山本線) 16

記事を読む

「車旅日記」2005年春【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】初日(松本-飯山-富山)走行距離317㎞ その2-妙高高原駅、親不知駅、アパホテル富山駅前

車旅日記2005年4月29日・・・妙高高原駅、親不知駅、アパホテル富山駅前 16:44 妙高高原駅

記事を読む

「車旅日記」1996年秋【夏をあきらめきれず、秋。再び夏のルートへと向かったのでございます。】2日目(新潟‐象潟‐鳴子温泉) 道の駅豊栄、道の駅朝日、道の駅温海、象潟駅-茶房くにまつ、蚶満寺、九十九島、矢島、鳴子サンハイツ

車旅日記1996年11月2日 1996・11・2 8:17 7号国道‐豊栄(道の駅) よく眠れた

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】最終日(門司港-東京)その3‐宇部、富海、福川、戸田(山陽本線)

鉄旅日記2020年8月16日・・・宇部駅、富海駅、福川駅、戸田駅(山

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】最終日(門司港-東京)その2‐若松渡場、戸畑渡場、戸畑、下関(若戸渡船/鹿児島本線)

鉄旅日記2020年8月16日・・・若松渡場、戸畑渡場、戸畑駅、下関駅

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】最終日(門司港-東京)その1‐門司港、小森江、折尾、若松(鹿児島本線/筑豊本線)

鉄旅日記2020年8月16日・・・門司港駅、小森江駅、折尾駅、若松駅

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】3日目(肥前鹿島-門司港)その5‐肥前山口、久保田、西唐津、博多、門司港(佐世保線/唐津線/筑肥線/福岡市地下鉄空港線/鹿児島本線)

鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前山口駅、久保田駅、西唐津駅、博

「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】3日目(肥前鹿島-門司港)その4‐南風崎、ハウステンボス、早岐(大村線)/小佐々弾正・甚五郎塚

鉄旅日記2020年8月15日・・・南風崎駅、ハウステンボス駅、早岐駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑