*

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/05 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常磐線)

7:40 水戸(みと)駅(常磐線/水戸線/水郡線/鹿島臨海鉄道線 茨城県)
水戸の春は美しかった。

車窓から見る偕楽園は雅で、右手に千波湖が現れるに及び列車は庭園に踏み入れる。

桜咲く春。
この国の美しさをあらためて想う。

そしてコロナ報道に毒されて今朝を案じていた身を恥じる。
自然に接する度に、あるいは草木にも及ばない身上ではないかと思う。

もっとも天の下で暮らす身に上も下もない。

7分の停車。

常磐線が全通したこの春。
東北に向かうメインルートもまた日光街道から水戸街道へと変わった。

9:30 いわき駅(常磐線/磐越東線 福島県)
日立に着く頃に太平洋が見えた。
日差しを浴びて美しかった。

不意に昔よく聴いた尾崎豊さんの「ドーナッツ・ショップ」の歌詞が浮かんでくる。

「本当は何もかもが違うんだ」

日立の城下町を沿線に見た。
ふと車窓に目をやると桜木や海が見える。

高萩を過ぎるといつしか眠り、目覚めると勿来を過ぎていた。

いわきに着く手前に桜の公園があった。

鉄道旅に不慣れだったかつての一日に、その日の終着駅と定めたいわき。
そんな街を朝早くに過ぎていく。
当時にも予兆はあったのかもしれないが、当時からは想像を絶する今を生きている。

久々に通る道を前にそんなことを思う。
おそらくこの街でしか思い得ないことを思っている。


いわきとオレの縁が紡いだ5行もあれば足りるような思いだが、時にこうしてオレは人生を愛でる。

10:51 原ノ町(はらのまち)駅(常磐線 福島県)
原ノ町行はなかなかに混んでいる。
地方に下っていく列車にしてはという話だ。

末続あたりから再び三度太平洋が顔を出す。
かつて眺めたであろう海辺には、かつてはなかったであろう防潮堤を見て、やがて鉄路は海辺を離れていく。

常磐線が全通するのは、あの9年前の震災以来。
あの日を境に人生が変わった者もいれば、すべてが変わってしまった因果の果てにあの日を思い起こす者もある。

今年の桜前線の遡上は早く、浜通りの盛りは過ぎている。

富岡を過ぎると浪江までは未だに帰還困難区域。
鉄路はその区域をまたぎ、その区域に位置する夜ノ森駅で降りる者の姿がある。

目の前に座っていたオタク3人組はその次の大野駅で降りた。
帰還困難区域はさらにひとつ先の双葉駅まで続く。

原ノ町での乗り継ぎ時間は4分。

駅前は少し変わっていたようだ。
その記憶は、もう10年以上前のものになる。

10:59 鹿島(かしま)駅(常磐線 福島県)
行き違い4分の停車。

うららかな春の日差しを浴びて、鉄道オタクがホームに出る。
漏れ聞こえる会話には「国鉄」という文言がある。

ある種の異空間がここに生まれ、仙台へと向かう。

金町に住まうオレの、東北への新たなメインルートが生まれた。

南相馬もまたうららかな日差しの下。

関連記事

「鉄旅日記」2009年秋 最終日(新庄-東京)その2-女川、渡波、松島海岸、本塩釜、仙台、駒ヶ嶺、原ノ町、桃内、いわき、石岡(石巻線/仙石線/常磐線) 【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】

鉄旅日記2009年10月11日・・・女川駅、渡波駅、松島海岸駅、本塩釜駅、仙台駅、駒ヶ嶺駅、原ノ町駅

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 最終日(善通寺-東京)-善通寺、多度津、丸亀、坂出、岡山、京都、野洲、東京葛飾(土讃本線/予讃本線/本四備讃線/山陽本線/東海道本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月6日・・・善通寺駅、多度津駅、丸亀駅、坂出駅、岡山駅、京都駅、野洲駅(土讃本線

記事を読む

「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その3-稚内サンホテル 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月4日・・・稚内サンホテルにて 21:39 稚内サンホテル325号 素敵な部屋

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その6‐渚、高山(高山本線)/うま宮 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月20日・・・渚駅、高山駅(高山本線)/うま宮 17:54 渚(なぎさ)駅(高

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 4日目(富良野-大館)その2-南千歳、苫小牧、登別、東室蘭、北舟岡、伊達紋別、長万部、森、新函館北斗、大館(千歳線/室蘭本線/函館本線/北海道新幹線/奥羽本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月13日・・・南千歳駅、苫小牧駅、登別駅、東室蘭駅、北舟岡駅、伊達紋別駅、長万部

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その2 ‐茅ヶ崎、南橋本、上溝、橋本(相模線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・茅ヶ崎駅、南橋本駅、上溝駅、橋本駅(相模線) 11:03&n

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 初日その2(東京-宇治)-香里園、寝屋川市、門真市、守口市、淀屋橋、天満橋、中之島、樟葉(京阪本線/京阪中之島線) 【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】

鉄旅日記2015年3月21日その2・・・香里園駅、寝屋川市駅、門真市駅、守口市駅、淀屋橋駅、天満橋駅

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.2【友を訪ねて備後福山へ。長門宇部へ。2000㎞に及ぶ長大な旅路でございました。】最終日(東京町田-東京葛飾)

車旅日記2000年8月16日 2000・8・16 23:09 東京葛飾金町 旅が終わってほっとして

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太多線/中央本線/東海道本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2017年秋 その3-腰越、江ノ島、湘南江の島、片瀬江ノ島、新宿(江ノ島電鉄/小田急電鉄江ノ島線)/龍ノ口寺 【湘南へ向かう休日。江ノ電に乗りに行ったのでございます。】

鉄旅日記2017年11月12日・・・腰越駅、江ノ島駅、湘南江の島駅、片瀬江ノ島駅、新宿駅(江ノ島電鉄

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その2 ‐国定(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・国定駅(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その1 ‐磐梯熱海、新白河、小山(磐越西線/東北本線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・磐梯熱海駅、新白河駅、小山駅(磐越西

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

→もっと見る

    PAGE TOP ↑