「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】2日目(諏訪-飯田-飛騨古川-能登島)上諏訪、辰野駅、駒ヶ根駅、飯田駅、道の駅賤母、ドライブイン飛騨花工場、道の駅飛騨古川、能登島
車旅日記2000年7月21日
2000・7・21 7:55 上諏訪某リゾートクラブ
朝湯につかりさっぱりする。
諏訪湖が美しい。
部屋に戻り野菜ジュースとバナナの朝食。
なぜか焦りに似たものがぶり返してきている。
心は安寧とは言えない。
何に不安を覚えているのか。
この先に支障がなければいいが。
考えられるのは音のないところにいることと、やっぱりひとりでいること。
ただしひとりでいることの方が要素的には少ない。
強がりじゃない。
本当のことだ。
また汗まみれの車中に戻れば、すべてが元通りになるだろう。
どうでもいいが、この野菜ジュースはすごくまずかったよ。
9:22 辰野駅 256㎞
諏訪湖は霞がかり、幻想のように、浮かぶように存在していた。
様々な仲間たちと立ち寄った湖畔のあの場所を、もう迷うことはない。
そこから湖岸道路を約半周。
辰野へ抜ける険しい峠の名を見て狂喜した。
標高955m。
そこは有賀峠。
ルーツを思わないわけにはいかない。
とうとうたどり着いた。
そんな大袈裟な感情まで湧いた。
会社のみんなは出勤日。
何だかおかしな気分だ。
この先のルートはまだ定まっていない。
10:46 駒ヶ根駅 288㎞
南信へ。
どうも調子が優れないと思っていたら、どうやら腹を空かしていたようだ。
飯を腹に入れたらいくらか気分が違う。
今日は金曜日。
普段の日だが、休日の町を走っているような気になる。
あまり人を見かけることもなく、のんびりした印象を受けるからだろう。
駅のスタンド定食屋には、東京ではあまり見かけない風体の男たちばかりが入ってくる。
こういうロードを往く甲斐ならいくらもあるものだ。
諏訪では、車中にビリー・ジョエルが歌う「蛍の光」が流れた時に心がしびれた。
優しいメロディが流れると、冷たい水を飲んだ時のような爽やかな気分になる。
天竜川沿いのカントリーロードは、そこにいるだけで楽しめる。
11:55 飯田駅 325㎞
過疎の街とは聞いていた。
そんな街の出身者もかつての知り合いの中にはいた。
測り知れない思い出が時空を越えて蘇る。
赤い屋根の駅はとてもきれいで、澄んだ印象を持つ街。
道幅も広く走りやすい。
南信の街は、描いていたイメージと大差ない。
これから木曽山脈越え。
どうでもいいことだが、地方都市の自販機はコカ・コーラ勢にその多くを占拠されている。
13:31 19号国道‐賤母(道の駅) 374㎞
飯田から南進行動を続け256号国道。
清内路峠までは快調。
峠道は難航を極めた。
木曽の山深さに敬意を。
宿場風の建屋を持つここは、国道を挟んで木曽川と向き合う。
車から降りると蝉の声が暑さを誘い、子供の時分にかいだカブトムシの匂いがした。
理由もなくうれしい気持ちでいる。
土産はここで済ませた。
15:37 41号国道‐ドライブイン飛騨花工場 443㎞
木曽川を越えると岐阜県。
しばらくひどい道を走らされたが、このルートに出ると気分も変わった。
飛騨川は郷愁を連れて、飛騨山脈は濃厚に夏をまとう。
暑くて涼しげなルートで、四方の眺めはとても素晴らしい。
ツクツクホーシは休みなく鳴き、青い空と山々。
懐かしい日本の夏。
子供の時分。
悩みの少なかった時代を思い出す。
長かった夏休みを思い出す。
この国が誇るべき夏の一場面がここにある。
少し疲れているようだ。
高山までもまだそこそこ距離がある。
日本海へは100㎞以上。
思ったより長い一日を生きることになりそうだ。
17:07 41号国道‐飛騨古川(道の駅) 492㎞
高山の街並と賑わいはさすがだった。
できればのんびりしたかった。
今回は仕方ない。
十分満喫している。
気温はまだまだ30度。
今年の夏は暑そうだ。
急げば日本海の夕日が見られるかもしれない。
元気だよオレは。
ただ暑いだけさ。
購入した地ビールを飲む時が楽しみだ。
ここはアメリカ映画に出てくるフリーウェイのドライブインに似ている。
西部劇の登場人物のような男がひょいと現れてもおかしくない。
道はどこまでも続いている。
素晴らしい夏の夕暮れ。
23:00 能登島某リゾートクラブ 667㎞
どれくらいテラスにいたのだろう。
今は雲に隠れてしまったけれど、最初に見上げた時に見えた星の数は怖いほどった。
そう感じたのは2度目になる。
最初は初めて旅に出た最上川の畔。
あれから5年。
いろいろな経験をしたよ。
こんな素敵な場所にいると誰かを想いたいが、そんな女性がいないことが残念だ。
これで分かった。
彼女はもうオレの中から出ていったのだと。
古川から何の記録も残せなかったこともまた残念だけど、41号国道は記憶に残る素晴らしいルートだった。
いつの頃からか横を流れるのは神通川に変わり、富山県に入るまで郷愁に満ちたカントリーロードだった。
暗くなった時には富山入りしていたけれど、街は賑やかで車通りも激しい。
でも氷見から七尾にかけては10台くらいしか見ていない。
どこかに境界線があるのだろう。
地域性といってもいいし、文化といってもいい。
車をこすった記憶は今も忌々しい。
3台連なったあの富山ナンバーを思い出すと歯ぎしりしたくなる。
でももう恨むのはよそう。
それが賢いとかではなく、この旅をいい思い出にするために。
あれがなければよかったけど、あったところでこんな気分でいる。
最高だ。
とにかく最高だ。
こんなだだっ広い海が見える部屋にいることもそうだけど、今日のすべての記憶も。
そして少し大きなことを考えたくなったオレのことも。
関連記事
-
「鉄旅日記」2011年秋【再びみちのくひとり旅】最終日(長井-東京)-長井、荒砥、赤湯、羽前千歳、作並、東照宮、槻木、角田、福島、飯坂温泉、本宮、宇都宮、雀宮(山形鉄道/仙山線/阿武隈急行/福島交通飯坂線/東北本線)
鉄旅日記2011年11月6日・・・長井駅、荒砥駅、赤湯駅、羽前千歳駅、作並駅、東照宮駅、槻木駅、角田
-
「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)その2‐角館、大曲、峰吉川、新庄(田沢湖線/奥羽本線)
鉄旅日記2023年1月13日・・・角館駅、大曲駅、峰吉川駅、新庄駅(田沢湖線/奥羽本線) 10:00
-
「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】初日(東京-高山)その1‐金町、東京、高尾、藤野(常磐線/中央本線)
鉄旅日記2020年3月20日・・・金町駅、東京駅、高尾駅、藤野駅(常磐線/中央本線) 2020・3・
-
「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】4日目(鹿角花輪-花巻)-鹿角花輪、荒屋新町、盛岡、北上、和賀仙人、横手、大曲、角館、田沢湖、雫石、小岩井、花巻空港、新花巻、花巻(花輪線/東北本線/北上線/田沢湖線/釜石線)
鉄旅日記2011年8月16日・・・鹿角花輪駅、荒屋新町駅、盛岡駅、北上駅、和賀仙人駅、横手駅、大曲駅
-
「車旅日記」2005年初夏【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】最終日(新潟-五泉-弥彦-柏崎-長岡)走行距離246㎞ その2-青海川駅、安田駅、北条駅、長鳥駅、来迎寺駅、長岡駅、東京葛飾金町
車旅日記2005年7月18日 15:24 青海川駅(7月16日の長岡駅より893㎞) 日本一、海
-
「車旅日記」1996年1月【旅を友として生きていくことにした27歳。年頭の誓いでございます。】-町田、伊勢原駅、山北駅、沼津駅、富士駅、道の駅富士川、吉原駅、田子の浦
車旅日記1996年1月1日 1996・1・1 20:43 東京町田 始動だ。 久し振りに動かし
-
「鉄旅日記」2007年新春【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】初日(東京-高岡)-東京、岐阜、美濃太田、下呂、高山、角川、猪谷、富山、高岡(東海道新幹線/高山本線/北陸本線)
鉄旅日記2007年1月6日・・・東京駅、岐阜駅、美濃太田駅、下呂駅、高山駅、角川駅、猪谷駅、富山駅、
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.2【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】その1-天王台、植田、泉、いわき、富岡(常磐線)
鉄旅日記2019年3月10日・・・天王台駅、植田駅、泉駅、いわき駅、富岡駅(常磐線) 2019・3・
-
「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】最終日(小諸-軽井沢-高崎-水戸-東京)その2-高崎、新前橋、前橋、中央前橋、小山、水戸、東京葛飾金町(信越本線/両毛線/水戸線/常磐線)
鉄旅日記2005年11月7日 2005・11・7 東京葛飾金町 高崎行の列車が出る。 18号国
-
「鉄旅日記」2019年霜月【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】初日(東京-五所川原)その4‐青森、新青森、津軽新城、鶴ヶ坂、浪岡(奥羽本線)
鉄旅日記2019年11月2日・・・青森駅、新青森駅、津軽新城駅、鶴ヶ坂駅、浪岡駅(奥羽本線) 19: