*

「車旅日記」2005年初夏 2日目(山形-新潟)走行距離313㎞ その1-アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童駅、村山駅、新庄駅、羽前前波駅 【長岡、会津、庄内。戊辰戦争ゆかりの地を巡りたかったのだと記憶しております。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/24 旅話, 旅話 2005年

車旅日記2005年7月17日・・・アパホテル山形駅前大通、羽前山辺駅、寒河江駅、左沢駅、柴橋駅、天童駅、村山駅、新庄駅、羽前前波駅

2005・7・17 8:51 アパホテル山形駅前大通802号室
空の青は濁っているけど、今日も晴れだ。
神様はオレのことを見てくれている。
東京にはすっきりとした気持ちで戻れるだろう。

山形をうまく書けないことが心残りだけど、さっぱりして海へ出よう。
今日は日本海との再会を予定している。

そして今日ばかりは、10年前の記憶が大切な要素として持ち上がるかもしれない。

9:28 羽前山辺駅(7月16日の長岡駅より398㎞
朝の山形市内は夏の静けさをまとい、「今日はきっと暑くなる」と空を見てつぶやいていた。

市内を流す。
線路に沿った道を探した。

あったよ。
電化されていない1本のレールが北に延びている。

線路沿いから眺めた広くて白い風景。
あんな一瞬のためにこの旅はある。

山辺町へ。
駅前通りに屋台が並んでいる。
今日は祭だろうか。

山形の祭りといえば花笠祭。
開催は8月だという。

いい季節だな。
駅前で待つタクシーは、翼を広げるように両のドアを開けて車内に冷気を入れている。
客のアテはそれなりにあるのだろう。

古い家を見かければ昔を思い出す。
駅前旅館がそうだ。
駅舎もそこに含まれる。

上下から列車が近づいてきた。
どちらも多くの客を乗せている。

広場で煙草を吸った。
山形はまだ喫煙者に優しい。
そしてこれから本格的に訪れる今年の夏を想った。

鳥が飛んでいる。

10:03 寒河江駅(7月16日の長岡駅より408㎞)
10年前に通行を阻止された寒河江へ。
ようやくこれたよな。

ミュージアムなような美しい駅が建っている。
灰皿が置いてあったよ。
見晴らしロビーがあり、改札口脇に待合室がある。

待ち人の姿がある。
純粋な山形弁が外を飛び交い、ぽーっと汽笛が鳴った。
いい音だ。

駅の横には仏閣を模したようなガラス張りの建物があり、神輿が収まっている。
この町でも祭が始まるんだな。

広大な穀倉地帯を走った時の気分はよかったよ。
そしてまた汽笛が一声。

暑くなってきた。

2012年8月15日撮影

10:41 左沢駅(7月16日の長岡駅より419㎞)
左沢線も終点へ。
終点の町は大江町。
最上川舟唄発祥の地だという。

この駅に着く前に見た最上川は冷たそうな色をしていた。
米沢あたりじゃ随分小さくしていたけど、このあたりじゃいい風情だ。

土地の老人が土地の言葉で大きな声で喋っている。
理解はできる。
最上の殿様もあんな言葉を喋っていたのだろう。

左沢の地名の由来は諸説ある。
伝説とはそういうもので、駅は大正の頃からあるようだ。
寂れた駅舎などではなく、町の会議場も備えた美術館のような造りをしている。

なぜ線路がここで途絶えたのかは分からないが、乗客の多くは山形寒河江間を移動しているようだ。

駅前は閑散としているが、ここに辿り着くまでに眺めてきたサクランボ畑や、田園が広がる山形の夏色は懐かく、いい色をしていた。

2012年8月15日撮影

10:57 柴橋駅(7月16日の長岡駅より421㎞)
西部街道から階段を上がった小高い場所に小さな駅がある。
煙草は吸えなかったが、大江町が見晴らせる。
最上川は堤防に隠れているけど、涼しい場所だった。

地上じゃ聞きとれない鳥の声を聞いたよ。
ビール片手にこの駅に立ち寄ることを想像した。
そんな暑さだ。

山形の夏はいいものだよ。

11:38 天童駅(7月16日の長岡駅より435㎞)
とうもろこし畑の先に駅が見える。
在来線用の駅舎だ。
東口に回ったら、新幹線を止める駅の顔をしていた。

将棋の町に強い日差しが降り注ぎ、暑さに慣れない山形人はしきりに汗を拭う。
牧歌的な廃品回収車が行き交い、上空をジェット機が往く。
空港が近いのだろう。
着陸態勢に入ったようだ。

新幹線で東京と一直線につながる天童の繁華街は、とてもローカルな町並だった。
駅ビルPALTE屋上はビヤガーデンになっている。

2012年8月15日撮影

12:31 村山駅
ミカン畑から線路を渡り、羽州街道を北へ。

町中の風景は退屈なものだったけど、サクランボをイメージした東根駅を過ぎ、ここ村山に至ると右手には陸奥を実感させる奥羽山脈が現れた。
あの山並は仙台方面への通行を容易に許さない遥かなるもの。
そんな風景を「駅そば」が食べられる食堂から眺めていた。

みちのく。
これからさらに山深くなっていく。

村山駅は最上川に架かる橋をイメージしている。
新幹線開通によって旧駅名の楯岡から村山に変わったという。
オレが見ている古い地図には楯岡駅と記されていて、楯岡の名は今もタクシー会社、交差点などに残っている。

食堂ではヤンキースとマリナーズ戦を映し、クラブ帰りの高校生がオレと同じように大盛そばを食べながらぼんやりと見ている。
隅っこには女子高生が二人だらしなく座り込み、あの年代を生きる者が持つであろう共通の悩みについて熱心に喋っていた。

あまり深く考えるものじゃないよ。
そう言ってあげたいよ。

北行はもう少し続く。
涼しい風が吹いてきた。

13:45 新庄駅(7月16日の長岡駅より487㎞)
奥羽本線はこの街を過ぎてもまだ先へと続く。
山形新幹線はここで北上を断念した。

終着の特急駅は賑わっていて、新庄祭り開催間近の街は浮き立っている。

義経伝説や「奥の細道」の舞台、新庄。
最上川がオレの知っている姿を見せたのは13号バイパスに入ってからだった。

土産は必然的にこの街で決めることになった。
新庄。
いい響きだ。

確か、車寅次郎とこの街には縁がある。
腹を空かして駅前を歩いている時に見かけた食堂で、有り金を持たない彼が腕時計を差し出して、「これで何か食わせてくれ」と頭を下げると、食堂の女性は「困った時はお互い様」と、暖かい豚汁と大盛飯を置いてくれたことが彼の口から語られる。

その街が新庄で、その女性との縁は、やがて桜田淳子さん演じる娘さんが彼を訪ねることにつながる。
その頃はこんなに賑やかではなく、寒い街並だっただろうか。
あるいはその街は寒河江だったかもしれない。

雪の新庄と街では謳っている。

今日は祭みたいなものだ。
隣接したセンターでは舞台ショウが行われている。

北行はこの街で終わり。
庄内へ向かう。

2012年8月15日撮影

14:10 羽前前波駅(7月16日の長岡駅より498㎞)
羽前の大都市新庄は城下町。
北へ行くと最上公園という涼しげな情緒を持つ公園に行き当たった。

街中を一回りしてから日本海へ向けて県道を往く。
脇には陸羽西線の単線のレール。

小高い場所に無人の駅がある。
田んぼ脇に車を止めて階段を上がる。

ホームからは日本の田舎風景が見渡せる。
旧家に田んぼ。
美しい緑色だ。

線路の先に目をやると駅を挟んで両側にトンネルがある。
そのトンネルの先が見える。

その先が明るくてね。

トンネルに入ったら入りっぱなしなんてことはないんだよ。
短い風景が人生を語るように教えてくれる。

風が葉を揺らしている。
鳥が囀り、蜩が鳴きだした。
ビールでもあれば、日が暮れるまでここにいられる自信がある。

いい旅が続いている。
ここから見える羽前前波駅の侘しげな姿に心惹かれる。

関連記事

「鉄旅日記」2014年春 最終日(紀伊勝浦-東京)その1-紀伊勝浦、太地、湯川、那智、三輪崎、新宮、鵜殿(紀勢本線)/丹鶴城公園 【青春18きっぷで、紀伊半島へ】

鉄旅日記2014年3月9日その1・・・紀伊勝浦駅、太地駅、湯川駅、那智駅、三輪崎駅、新宮駅、鵜殿駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その6 ‐向河原、津田山、久地、宿河原、中野島、稲城長沼、府中本町(南武線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、相模線、鶴見線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・向河原駅、津田山駅、久地駅、宿河原駅、中野島駅、稲城長沼駅、府中本

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その2-土合、越後湯沢、大沢、上越国際スキー場前、越後堀之内、小出(上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

鉄旅日記2018年3月3日・・・土合駅、越後湯沢駅、大沢駅、上越国際スキー場前駅、越後堀之内駅、小出

記事を読む

「鉄旅日記」2018年秋 初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その1-松戸、北松戸、馬橋、流山、小金城趾、幸谷、新松戸、北小金、南柏、北柏、我孫子(常磐線/流鉄流山線) /萬満寺/近藤勇陣屋跡【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】

鉄旅日記2018年9月22日・・・松戸駅、北松戸駅、馬橋駅、流山駅、小金城趾駅、幸谷駅、新松戸駅、北

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 2日目(新南陽-鹿児島中央)その2-直方、新飯塚、彦山、豊前桝田、夜明、御井、川尻、住吉、三角(筑豊本線/後藤寺線/日田彦山線/久大本線/鹿児島本線/三角線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月13日その2・・・直方駅、新飯塚駅、彦山駅、豊前桝田駅、夜明駅、御井駅、川尻駅

記事を読む

「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、甲信越途中下車旅】最終日(長野-東京)その1-長野、信州中野、湯田中、安茂里、戸倉、上田、別所温泉、西上田、田中(長野電鉄、信越本線、しなの鉄道、上田交通)

鉄旅日記2012年12月9日その1・・・長野駅、信州中野駅、湯田中駅、安茂里駅、戸倉駅、上田駅、別所

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 2日目(湯沢-鷹ノ巣)その2‐鯉川、東能代、岩館、深浦(奥羽本線/五能線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2020年1月12日・・・鯉川駅、東能代駅、岩館駅、深浦駅(奥羽本線/五能線) 10:19

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その2‐甲府、日野春、長坂、青柳(中央本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月20日・・・甲府駅、日野春駅、長坂駅、青柳駅(中央本線) 8:15 甲府(こ

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その5‐飛騨金山、下呂、禅昌寺、飛騨萩原、上呂(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月20日・・・飛騨金山駅、下呂駅、禅昌寺駅、飛騨萩原駅、上呂駅(高山本線) 1

記事を読む

「車旅日記」2000年春 初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜ける

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その1 ‐新静岡、静岡、由比、富士、芝川(東海道本線/身延線)/駿府城址 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・新静岡駅、静岡駅、由比駅、富士駅、

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その3 ‐尾盛、千頭、金谷、静岡(大井川鐡道井川線/大井川鐡道本線/東海道本線)/くれたけインプレミアム静岡駅前 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

2022年3月20日・・・尾盛駅、千頭駅、金谷駅、静岡駅(大井川鐡道

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その2 ‐奥大井湖上、接岨峡温泉(大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

2022年3月20日・・・奥大井湖上駅、接岨峡温泉駅(大井川鐡道井川

→もっと見る

    PAGE TOP ↑