*

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その2-山田上口、宮川、川添、伊勢柏崎、尾鷲、新鹿、熊野市、紀伊勝浦(参宮線、紀勢本線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/29 旅話 * 結婚後2014年

鉄旅日記2014年3月8日その2
14:56 山田上口(やまだかみぐち)駅(参宮線 三重県)
松阪から、2駅目の多気で参宮線に入る鳥羽行きに乗車。
笑門のしめ飾りが打ちつけられた古い駅だった。

向かいに工場の煙突が見えるが、ここはすでに神域。
普通の家の玄関にも神が降りている。

ここから多気方面に折り返す。

15:06 宮川(みやかわ)駅(参宮線 三重県)
数分の停車。

大河宮川を渡る。
宮川駅周辺には旅館も見られる。
伊勢の神域は広く、侵しがたい空気が流れている。

ここを訪れる人々は、何事かがあることを知って訪れ、何事かを確かに感じてここを離れる。
そこで感じたものとは、実は神が宿したものなどではなく、例えば人の優しさだったりするが、すべてを神の領域内での出来事と胸に収めて、思い思いに帰っていく。

15:47 川添(かわぞえ)駅(紀勢本線 三重県)
多気で新宮方面へ向かう紀勢本線に乗り換え。
数分の停車。

これといって特筆すべきもののない退屈な里の景色を眺め、時に眠りに落ちる。
朝も早かったし自然な生理現象だが、ここ2、3日は忙しかった。

運転席後ろのスペースでは歌を口ずさんでいた少女がいた。
オレの後から下り、大急ぎで駅を写して駆け足で戻るオレとすれ違う際に「あれ?戻ってきた」と言葉を投げてきた。
自身の行為は自分でも滑稽に思うところがあるから、恥じ入るような気持ちになったよ。

コンビニはじめ現代的なものが見当たらない風景に違和感はないが、時の流れは都会より間違いなくゆるやかだろう。

列車は動き出し、紀勢自動車道の高架が見えて、やがて6年前に降りた三瀬谷に止まる。
あの時は気づかなかったけど、ダムの村だった。
自動車道を走る車は疎らだった。

16:15 伊勢柏崎(いせかしわざき)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。
さっきの三瀬谷で見たような景色に包まれた。
空気は清涼だった。

簡易駅舎が迎える駅で4名が降り、かつて鳥羽から新宮へと向かった旅を思い出していた。

見渡す限り杉だらけだが、アレルギー症状は見られない。
たまに花粉症に苛まれるが、やっぱりオレの症状の原因は杉じゃなかったか。

17:13 尾鷲(おわせ)駅(紀勢本線 三重県)
夕暮れの似合う街に中部電力の塔が屹立している。
街のボーリング場は解体されていた。
湾は凪いで空は青みを増した。

尾鷲は、かつて伊勢湾台風に苛まれた街だったか。
小ぶりな商店街と雑居ビルに埋め込まれたスナック街。
遠来の客を迎えるホテルは一軒だけ発見できた。

喫煙場所に辿り着き、ビールとともに点けた一服は体中を駆け巡った。
さっきも言ったが、ここ3日ほどあまり眠っていなかった事実と向き合い、西日に照らされた駅へと戻る坂道で、この街に対して心残りがあることを確認した。

尾鷲との出会いは僅か10分だったが、そんな感じで暮れた。
南紀にはもはや冷たい風は吹いていなかった。

17:52 新鹿(あたしか)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。

入江のひとつひとつに停車していく。
紀勢本線はとてもステキな路線だ。

山に囲まれたこの入江には海水浴場、キャンプ場があり、高台には江戸時代の狼煙場跡があるという。
砂浜は白かった。


18:24 熊野市(くまのし)駅(紀勢本線 三重県)
街の入口で電波塔が迎え、通りは明かりに満ちている。
世界遺産熊野古道と高速開通に湧いた印を、駅や井戸河畔のライトアップで示しているように感じる。
雄大な熊野海岸は駅から近かった。

南総の町並に似た海辺の道。
同じ黒潮の通り道。
文化的には似たものがあるのかもしれない。
たいして馴染みがあるわけじゃないが、懐かしい。

18歳の頃に新宿で出会ったKは和歌山に戻っているのだろうか。
実家がキャンプ場を経営しているとのことだった。
オレには優しかったが、酔って街を歩いている時には危ないヤツだったと後で聞いた。
オレが感じる懐かしさには例えば彼のような男も含まれる。

列車が熊野を出てからしばらく経つ。
あたりはすっかり闇だ。
夜に和歌山に向かうとはそういうことで、どのルートから入っても和歌山の夜は確か明かりに乏しい。



20:52 紀伊勝浦
19:30過ぎの町で降りて、港へと続く商店街を歩く。
人通りは絶えて、僅かに開いていた中華料理屋に入る。
和歌山といえば、こってりとした和歌山ラーメンだが、ここ南紀でさっぱりとした中華そばに出会うとは思っていなかった。
汁まで飲み干す美味さだった。

港の灯は壮観だった。
高台に聳えるホテルに、その向こうを張る対岸のホテル。
波は穏やかで、しばらくぼんやりとしていた。

那智勝浦町。
何事かを持ち得ている町だった。
今は平成の大合併時代だが、意地も通しただろうし、どこかとくっつく必要もなかったのだろう。
立派だよ。

この町の素晴らしさを知った喜びとこれから先の人生には相関関係が生じてくるだろう。
だがそれにしても随分と多くの街に降りてきたものだ。
通り過ぎてきた街の中で、ここで得た感触と同じようなものを掴めそうな街がいくつかある。
旅は続いていく。

関連記事

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】最終日(魚津-東京)その2-有間川、谷浜、名立、直江津、犀潟、二本木、今井、川中島、姨捨、信濃境、すずらんの里、富士見(北陸本線/信越本線/篠ノ井線/中央本線)

鉄旅日記2014年3月23日その2 有間川(ありまがわ)駅(北陸本線 新潟県)にて

記事を読む

「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】4日目(米子-呉)その2-浜原、粕淵、明塚、石見簗瀬、口羽、宇都井、伊賀和志、三次、矢賀、水尻、かるが浜、呉(三江線/芸備線/呉線)

鉄旅日記2014年8月16日その2 浜原~石見簗瀬間(徒歩) 浜原(はまはら)駅(三江線

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その1-熱田、尾頭橋、八田、四日市、亀山、一身田、津、高茶屋、松阪(東海道本線、関西本線、紀勢本線)

鉄旅日記2014年3月8日その1 2014・3・8 11:16 熱田(あつた)駅(東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】初日(東京-西舞鶴)その1-西岐阜、京都、二条、日吉、胡麻、下山、和知、綾部、高津(東海道本線/山陰本線)

鉄旅日記2014年3月21日その1 2014・3・21 11:54 西岐阜(にしぎふ)駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2014年秋【休日おでかけパスで、関東ローカル旅】その2-富田、佐野、佐野市、大平下、新大平下、栃木、思川、新白岡、白岡、東大宮(両毛線/東北本線)

鉄旅日記2014年11月3日その2 13:26 富田(とみた)駅(両毛線 栃木県) 朽ち

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】最終日(紀伊勝浦-東京)その2-神志山、賀田、九鬼、相賀、紀伊長島、多気、名古屋、豊田町、六合、由比(紀勢本線/東海道本線)

鉄旅日記2014年3月9日その2 11:19 神志山(こうしやま)駅(紀勢本線 三重県)

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【ときわ路パスで、常陸ローカル旅】その1-水海道、三妻、下妻、大田郷、下館、久下田、茂木、真岡、大和、新治、水戸(関東鉄道常総線/真岡鐵道/水戸線)

鉄旅日記2014年4月27日その1 2014・4・27 7:49 水海道(みつかいどう)駅

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【ふらっと両毛 東武フリーパスで、両毛ローカル旅】-館林、佐野、葛生、西小泉、赤城、太田、伊勢崎、新伊勢崎、足利、足利市(東武佐野線/東武小泉線/東武桐生線/東武伊勢崎線)

鉄旅日記2014年4月6日 2014・4・6 11:01 館林(たてばやし)駅(東武伊勢

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】初日(東京-西舞鶴)その2-東雲、宮津、天橋立、豊岡、国府、和田山、梁瀬、福知山、西舞鶴(北近畿タンゴ鉄道宮津線/山陰本線)

鉄旅日記2014年3月21日その2 16:51 東雲(しののめ)駅(北近畿タンゴ鉄道宮津線

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】最終日(魚津-東京)その1-魚津、生地、黒部、電鉄黒部、泊、親不知、越中宮崎、糸魚川、能生、梶屋敷、浦本(北陸本線)

鉄旅日記2014年3月23日その1 2014・3・23 6:02 魚津(うおづ)駅(北陸本

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】最終日(新庄-女川-仙台-東京)その2-女川、渡波、松島海岸、本塩釜、仙台、駒ヶ嶺、原ノ町、桃内、いわき、石岡(石巻線/仙石線/常磐線)

鉄旅日記2009年10月11日 2009・10・11 11:

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】最終日(新庄-女川-仙台-東京)その1-新庄、最上、鳴子温泉、岩出山、北浦、小牛田、鹿又、石巻(陸羽東線/石巻線)

鉄旅日記2009年10月11日 2009・10・11 5:5

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】初日(東京-いわき-米沢-新庄)松戸、取手、友部、上菅谷、常陸太田、高萩、いわき、郡山、福島、米沢、山形、新庄ニューグランドホテル(常磐線/水郡線/水郡線常陸太田支線/磐越東線/東北本線/奥羽本線)

鉄旅日記2009年10月10日 2009・10・10 6:5

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】最終日(若松-下関-益田-新山口-東京)若松、折尾、黒崎、黒崎駅前、戸畑、小串、長門市、益田、津和野、山口、新山口(筑豊本線/鹿児島本線/山陰本線/山口線)

鉄旅日記2009年9月23日 2009・9・23 6:09 

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】5日目(松浦-伊万里-唐津-若松)その2-宇美、西戸崎、香椎、福間、赤間、折尾、ルートイン北九州若松(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線)

鉄旅日記2009年9月22日 15:27 宇美(うみ)駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑