*

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その2-山田上口、宮川、川添、伊勢柏崎、尾鷲、新鹿、熊野市、紀伊勝浦(参宮線、紀勢本線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/31 旅話, 旅話 2014年

鉄旅日記2014年3月8日その2・・・山田上口駅、宮川駅、川添駅、伊勢柏崎駅、尾鷲駅、新鹿駅、熊野市駅、紀伊勝浦駅(参宮線、紀勢本線)

14:56 山田上口(やまだかみぐち)駅(参宮線 三重県)
松阪から、2駅目の多気で参宮線に入る鳥羽行きに乗車。
笑門のしめ飾りが打ちつけられた古い駅だった。

向かいに工場の煙突が見えるが、ここはすでに神域。
普通の家の玄関にも神が降りている。

ここから多気方面に折り返す。

15:06 宮川(みやかわ)駅(参宮線 三重県)
数分の停車。

大河宮川を渡る。
宮川駅周辺には旅館も見られる。
伊勢の神域は広く、侵しがたい空気が流れている。

ここを訪れる人々は、何事かがあることを知って訪れ、何事かを確かに感じてここを離れる。
そこで感じたものとは、実は神が宿したものなどではなく、例えば人の優しさだったりするが、すべてを神の領域内での出来事と胸に収めて、思い思いに帰っていく。

15:47 川添(かわぞえ)駅(紀勢本線 三重県)
多気で新宮方面へ向かう紀勢本線に乗り換え。
数分の停車。

これといって特筆すべきもののない退屈な里の景色を眺め、時に眠りに落ちる。
朝も早かったし自然な生理現象だが、ここ2、3日は忙しかった。

運転席後ろのスペースでは歌を口ずさんでいた少女がいた。
オレの後から下り、大急ぎで駅を写して駆け足で戻るオレとすれ違う際に「あれ?戻ってきた」と言葉を投げてきた。
自身の行為は自分でも滑稽に思うところがあるから、恥じ入るような気持ちになったよ。

コンビニはじめ現代的なものが見当たらない風景に違和感はないが、時の流れは都会より間違いなくゆるやかだろう。

列車は動き出し、紀勢自動車道の高架が見えて、やがて6年前に降りた三瀬谷に止まる。
あの時は気づかなかったけど、ダムの村だった。
自動車道を走る車は疎らだった。

16:15 伊勢柏崎(いせかしわざき)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。
さっきの三瀬谷で見たような景色に包まれた。
空気は清涼だった。

簡易駅舎が迎える駅で4名が降り、かつて鳥羽から新宮へと向かった旅を思い出していた。

見渡す限り杉だらけだが、アレルギー症状は見られない。
たまに花粉症に苛まれるが、やっぱりオレの症状の原因は杉じゃなかったか。

17:13 尾鷲(おわせ)駅(紀勢本線 三重県)
夕暮れの似合う街に中部電力の塔が屹立している。
街のボーリング場は解体されていた。
湾は凪いで空は青みを増した。

尾鷲は、かつて伊勢湾台風に苛まれた街だったか。
小ぶりな商店街と雑居ビルに埋め込まれたスナック街。
遠来の客を迎えるホテルは一軒だけ発見できた。

喫煙場所に辿り着き、ビールとともに点けた一服は体中を駆け巡った。
さっきも言ったが、ここ3日ほどあまり眠っていなかった事実と向き合い、西日に照らされた駅へと戻る坂道で、この街に対して心残りがあることを確認した。

尾鷲との出会いは僅か10分だったが、そんな感じで暮れた。
南紀にはもはや冷たい風は吹いていなかった。

17:52 新鹿(あたしか)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。

入江のひとつひとつに停車していく。
紀勢本線はとてもステキな路線だ。

山に囲まれたこの入江には海水浴場、キャンプ場があり、高台には江戸時代の狼煙場跡があるという。
砂浜は白かった。


18:24 熊野市(くまのし)駅(紀勢本線 三重県)
街の入口で電波塔が迎え、通りは明かりに満ちている。
世界遺産熊野古道と高速開通に湧いた印を、駅や井戸河畔のライトアップで示しているように感じる。
雄大な熊野海岸は駅から近かった。

南総の町並に似た海辺の道。
同じ黒潮の通り道。
文化的には似たものがあるのかもしれない。
たいして馴染みがあるわけじゃないが、懐かしい。

18歳の頃に新宿で出会ったKは和歌山に戻っているのだろうか。
実家がキャンプ場を経営しているとのことだった。
オレには優しかったが、酔って街を歩いている時には危ないヤツだったと後で聞いた。
オレが感じる懐かしさには例えば彼のような男も含まれる。

列車が熊野を出てからしばらく経つ。
あたりはすっかり闇だ。
夜に和歌山に向かうとはそういうことで、どのルートから入っても和歌山の夜は確か明かりに乏しい。



20:52 紀伊勝浦
19:30過ぎの町で降りて、港へと続く商店街を歩く。
人通りは絶えて、僅かに開いていた中華料理屋に入る。
和歌山といえば、こってりとした和歌山ラーメンだが、ここ南紀でさっぱりとした中華そばに出会うとは思っていなかった。
汁まで飲み干す美味さだった。

港の灯は壮観だった。
高台に聳えるホテルに、その向こうを張る対岸のホテル。
波は穏やかで、しばらくぼんやりとしていた。

那智勝浦町。
何事かを持ち得ている町だった。
今は平成の大合併時代だが、意地も通しただろうし、どこかとくっつく必要もなかったのだろう。
立派だよ。

この町の素晴らしさを知った喜びとこれから先の人生には相関関係が生じてくるだろう。
だがそれにしても随分と多くの街に降りてきたものだ。
通り過ぎてきた街の中で、ここで得た感触と同じようなものを掴めそうな街がいくつかある。
旅は続いていく。

関連記事

「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】最終日(水沢-東京)その1-水沢、花巻、遠野、陸中大橋、小佐野、釜石、恋し浜、盛(東北本線、釜石線、三陸鉄道南リアス線)

鉄旅日記2016年3月6日その1・・・水沢駅、花巻駅、遠野駅、陸中大橋駅、小佐野駅、釜石駅、恋し浜駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】初日(東京-湯沢)その4‐ゆだ錦秋湖、ほっとゆだ、横手、湯沢(北上線/奥羽本線)

鉄旅日記2020年1月11日・・・ゆだ錦秋湖駅、ほっとゆだ駅、横手駅、湯沢駅(北上線/奥羽本線) 1

記事を読む

「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅

車旅日記2004年11月21日・・・宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】初日(東京-一ノ関)その1-金町、上野、高崎、六日町、長岡、見附(常磐線/高崎線/上越線/信越本線)

鉄旅日記2019年1月5日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、六日町駅、長岡駅、見附駅(常磐線/高崎線/上

記事を読む

「鉄旅日記」2006年如月【鉄道旅に目覚め、1泊2日で房総半島にまいりました。】初日-佐倉、成東、大網、上総一ノ宮、上総興津、安房鴨川、館山、安房勝山(常磐線/成田線/総武本線/東金線/外房線/内房線)

鉄旅日記2006年2月4日・・・佐倉駅、成東駅、大網駅、上総一ノ宮駅、上総興津駅、安房鴨川駅、館山駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】2日目(高山-速星)その4‐富山大学前、丸ノ内、南富山駅前、南富山、電鉄富山駅前、富山(富山地方鉄道市内線)

鉄旅日記2020年3月21日・・・富山大学前電停、丸ノ内電停、南富山駅前電停、南富山駅、電鉄富山駅前

記事を読む

「鉄旅日記」2011年夏【みちのくひとり旅】最終日(花巻-東京)-花巻、平泉、一ノ関、仙台、白石、福島、郡山、矢吹、黒磯、宝積寺、古河、蓮田、西川口(東北本線)

鉄旅日記2011年8月17日・・・花巻駅、平泉駅、一ノ関駅、仙台駅、白石駅、福島駅、郡山駅、矢吹駅、

記事を読む

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】最終日(郡山‐茂木‐下館‐東京)郡山スターホテル、新白河駅、黒羽くらしの館、茂木駅、下館駅、みつかいどうロードパーク、葛飾金町

車旅日記2000年5月7日 2000・5・7 8:35 郡山スターホテル510号室 最後の朝がやって

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】2日目(名古屋-塩尻-小淵沢-小諸-中軽井沢)-名古屋、高蔵寺、多治見、中津川、木曽平沢、塩尻、小淵沢、中込、小諸、中軽井沢(中央本線/小海線/しなの鉄道)

鉄旅日記2005年11月6日・・・名古屋駅、高蔵寺駅、多治見駅、中津川駅、木曽平沢駅、塩尻駅、小淵沢

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、みちのくひとり旅】最終日(羽後本荘-東京)-羽後本荘、古口、袖崎、天童、漆山、かみのやま温泉、山形、左沢、寒河江、長町、太子堂、南仙台、名取、館腰、船岡(羽越本線、陸羽西線、奥羽本線、左沢線、東北本線)

鉄旅日記2012年8月15日・・・羽後本荘駅、古口駅、袖崎駅、天童駅、漆山駅、かみのやま温泉駅、山形

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】最終日(三次-東京)その1‐三次、上下、府中(福塩線)

鉄旅日記2020年7月26日・・・三次駅、上下駅、府中駅(福塩線)

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その5‐備後落合、備後庄原、三次(芸備線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・備後落合駅、備後庄原駅、三次駅(芸

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その4‐宍道、加茂中、出雲横田、出雲坂根(木次線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・宍道駅、加茂中駅、出雲横田駅、出雲

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その3‐黒松、仁万、出雲市、荘原(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・黒松駅、仁万駅、出雲市駅、荘原駅(

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑