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「鉄旅日記」2014年春 初日(東京-紀伊勝浦)その2-山田上口、宮川、川添、伊勢柏崎、尾鷲、新鹿、熊野市、紀伊勝浦(参宮線、紀勢本線) 【青春18きっぷで、紀伊半島へ】

公開日: : 最終更新日:2025/06/06 旅話, 旅話 2014年

鉄旅日記2014年3月8日その2・・・山田上口駅、宮川駅、川添駅、伊勢柏崎駅、尾鷲駅、新鹿駅、熊野市駅、紀伊勝浦駅(参宮線、紀勢本線)

14:56 山田上口(やまだかみぐち)駅(参宮線 三重県)
松阪から、2駅目の多気で参宮線に入る鳥羽行きに乗車。
笑門のしめ飾りが打ちつけられた古い駅だった。

向かいに工場の煙突が見えるが、ここはすでに神域。
普通の家の玄関にも神が降りている。

ここから多気方面に折り返す。

15:06 宮川(みやかわ)駅(参宮線 三重県)
数分の停車。

大河宮川を渡る。
宮川駅周辺には旅館も見られる。
伊勢の神域は広く、侵しがたい空気が流れている。

ここを訪れる人々は、何事かがあることを知って訪れ、何事かを確かに感じてここを離れる。
そこで感じたものとは、実は神が宿したものなどではなく、例えば人の優しさだったりするが、すべてを神の領域内での出来事と胸に収めて、思い思いに帰っていく。

15:47 川添(かわぞえ)駅(紀勢本線 三重県)
多気で新宮方面へ向かう紀勢本線に乗り換え。
数分の停車。

これといって特筆すべきもののない退屈な里の景色を眺め、時に眠りに落ちる。
朝も早かったし自然な生理現象だが、ここ2、3日は忙しかった。

運転席後ろのスペースでは歌を口ずさんでいた少女がいた。
オレの後から下り、大急ぎで駅を写して駆け足で戻るオレとすれ違う際に「あれ?戻ってきた」と言葉を投げてきた。
自身の行為は自分でも滑稽に思うところがあるから、恥じ入るような気持ちになったよ。

コンビニはじめ現代的なものが見当たらない風景に違和感はないが、時の流れは都会より間違いなくゆるやかだろう。

列車は動き出し、紀勢自動車道の高架が見えて、やがて6年前に降りた三瀬谷に止まる。
あの時は気づかなかったけど、ダムの村だった。
自動車道を走る車は疎らだった。

16:15 伊勢柏崎(いせかしわざき)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。
さっきの三瀬谷で見たような景色に包まれた。
空気は清涼だった。

簡易駅舎が迎える駅で4名が降り、かつて鳥羽から新宮へと向かった旅を思い出していた。

見渡す限り杉だらけだが、アレルギー症状は見られない。
たまに花粉症に苛まれるが、やっぱりオレの症状の原因は杉じゃなかったか。

17:13 尾鷲(おわせ)駅(紀勢本線 三重県)
夕暮れの似合う街に中部電力の塔が屹立している。
街のボーリング場は解体されていた。
湾は凪いで空は青みを増した。

尾鷲は、かつて伊勢湾台風に苛まれた街だったか。
小ぶりな商店街と雑居ビルに埋め込まれたスナック街。
遠来の客を迎えるホテルは一軒だけ発見できた。

喫煙場所に辿り着き、ビールとともに点けた一服は体中を駆け巡った。
さっきも言ったが、ここ3日ほどあまり眠っていなかった事実と向き合い、西日に照らされた駅へと戻る坂道で、この街に対して心残りがあることを確認した。

尾鷲との出会いは僅か10分だったが、そんな感じで暮れた。
南紀にはもはや冷たい風は吹いていなかった。

17:52 新鹿(あたしか)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。

入江のひとつひとつに停車していく。
紀勢本線はとてもステキな路線だ。

山に囲まれたこの入江には海水浴場、キャンプ場があり、高台には江戸時代の狼煙場跡があるという。
砂浜は白かった。


18:24 熊野市(くまのし)駅(紀勢本線 三重県)
街の入口で電波塔が迎え、通りは明かりに満ちている。
世界遺産熊野古道と高速開通に湧いた印を、駅や井戸河畔のライトアップで示しているように感じる。
雄大な熊野海岸は駅から近かった。

南総の町並に似た海辺の道。
同じ黒潮の通り道。
文化的には似たものがあるのかもしれない。
たいして馴染みがあるわけじゃないが、懐かしい。

18歳の頃に新宿で出会ったKは和歌山に戻っているのだろうか。
実家がキャンプ場を経営しているとのことだった。
オレには優しかったが、酔って街を歩いている時には危ないヤツだったと後で聞いた。
オレが感じる懐かしさには例えば彼のような男も含まれる。

列車が熊野を出てからしばらく経つ。
あたりはすっかり闇だ。
夜に和歌山に向かうとはそういうことで、どのルートから入っても和歌山の夜は確か明かりに乏しい。



20:52 紀伊勝浦
19:30過ぎの町で降りて、港へと続く商店街を歩く。
人通りは絶えて、僅かに開いていた中華料理屋に入る。
和歌山といえば、こってりとした和歌山ラーメンだが、ここ南紀でさっぱりとした中華そばに出会うとは思っていなかった。
汁まで飲み干す美味さだった。

港の灯は壮観だった。
高台に聳えるホテルに、その向こうを張る対岸のホテル。
波は穏やかで、しばらくぼんやりとしていた。

那智勝浦町。
何事かを持ち得ている町だった。
今は平成の大合併時代だが、意地も通しただろうし、どこかとくっつく必要もなかったのだろう。
立派だよ。

この町の素晴らしさを知った喜びとこれから先の人生には相関関係が生じてくるだろう。
だがそれにしても随分と多くの街に降りてきたものだ。
通り過ぎてきた街の中で、ここで得た感触と同じようなものを掴めそうな街がいくつかある。
旅は続いていく。

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