*

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その2-山田上口、宮川、川添、伊勢柏崎、尾鷲、新鹿、熊野市、紀伊勝浦(参宮線、紀勢本線)

公開日: : 最終更新日:2018/12/31 旅話 * 結婚後2014年

冒険家志望のあなたへ【1話】

 

鉄旅日記2014年3月8日その2
14:56 山田上口(やまだかみぐち)駅(参宮線 三重県)
松阪から、2駅目の多気で参宮線に入る鳥羽行きに乗車。
笑門のしめ飾りが打ちつけられた古い駅だった。向かいに工場の煙突が見えるが、ここはすでに神域。普通の家の玄関にも神が降りている。
ここから多気方面に折り返す。

15:06 宮川(みやかわ)駅(参宮線 三重県)
数分の停車。
大河宮川を渡る。宮川駅周辺には旅館も見られる。伊勢の神域は広く、侵しがたい空気が流れている。
ここを訪れる人々は、何事かがあることを知って訪れ、何事かを確かに感じてここを離れる。そこで感じたものとは、実は神が宿したものなどではなく、例えば人の優しさだったりするが、すべてを神の領域内での出来事と胸に収めて、思い思いに帰っていく。

15:47 川添(かわぞえ)駅(紀勢本線 三重県)
多気で新宮方面へ向かう紀勢本線に乗り換え。数分の停車。
これといって特筆すべきもののない退屈な里の景色を眺め、時に眠りに落ちる。朝も早かったし自然な生理現象だが、ここ2、3日は忙しかった。運転席後ろのスペースでは歌を口ずさんでいた少女がいた。オレの後から下り、大急ぎで駅を写して駆け足で戻るオレとすれ違う際に「あれ?戻ってきた」と言葉を投げてきた。自身の行為は自分でも滑稽に思うところがあるから、恥じ入るような気持ちになった。コンビニはじめ現代的なものが見当たらない風景に違和感はないが、時の流れは都会より間違いなくゆるやかだろう。
列車は動き出し、紀勢自動車道の高架が見えて、やがて6年前に降りた三瀬谷に止まる。あの時は気づかなかったけど、ダムの村だった。自動車道を走る車は疎らだった。

16:15 伊勢柏崎(いせかしわざき)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。
さっきの三瀬谷で見たような景色に包まれた。空気は清涼だった。
簡易駅舎が迎える駅で4名が降り、かつて鳥羽から新宮へと向かった旅を思い出していた。
見渡す限り杉だらけだが、アレルギー症状は見られない。たまに花粉症に苛まれるが、やっぱりオレのは杉じゃなかったか。

17:13 尾鷲(おわせ)駅(紀勢本線 三重県)
夕暮れの似合う街に中部電力の塔が屹立している。街のボーリング場は解体されていた。湾は凪いで空は青みを増した。
尾鷲は、かつて伊勢湾台風に苛まれた街だったか。小ぶりな商店街と雑居ビルに埋め込まれたスナック街。遠来の客を迎えるホテルは一軒だけ発見できた。喫煙場所に辿り着き、ビールとともに点けた一服は体中を駆け巡った。さっきも言ったが、ここ3日ほどあまり眠っていなかった事実と向き合い、西日に照らされた駅へと戻る坂道で、この街に対して心残りがあることを確認した。
尾鷲との出会いは僅か10分だったが、そんな感じで暮れた。南紀にはもはや冷たい風は吹いていなかった。

17:52 新鹿(あたしか)駅(紀勢本線 三重県)
数分の停車。
入江のひとつひとつに停車していく。紀勢本線はとてもステキな路線だ。山に囲まれたこの入江には海水浴場、キャンプ場があり、高台には江戸時代の狼煙場跡があるという。砂浜は白かった。

18:24 熊野市(くまのし)駅(紀勢本線 三重県)
街の入口で電波塔が迎え、通りは明かりに満ちている。世界遺産熊野古道と高速開通に湧いた印を、駅や井戸河畔のライトアップで示しているように感じる。雄大な熊野海岸は駅から近かった。
南総の町並に似た海辺の道。同じ黒潮の通り道だ。文化的には似たものがあるのかもしれない。たいして馴染みがあるわけじゃないが、懐かしい。
18歳の頃に新宿で出会ったKは和歌山に戻っているのだろうか。実家がキャンプ場を経営しているとのことだった。オレには優しかったが、酔って街を歩いている時にはアブナイヤツだったと後で聞いた。オレが感じる懐かしさには例えば彼のような男も含まれる。
列車が熊野を出てからしばらく経つ。あたりはすっかり闇だ。夜に和歌山に向かうとはそういうことで、どのルートから入っても和歌山の夜は確か明かりに乏しい。

20:52 紀伊勝浦
19:30過ぎの町で降りて、港へと続く商店街を歩く。人通りは絶えて、僅かに開いていた中華料理屋に入る。和歌山といえば、こってりとした和歌山ラーメンだが、ここ南紀でさっぱりとした中華そばに出会うとは思っていなかった。それは汁まで飲み干す美味さだった。
港の灯は壮観だった。高台に聳えるホテルに、その向こうを張る対岸のホテル。波は穏やかで、しばらくぼんやりとしていた。那智勝浦町。何事かを持ち得ている町だった。今は平成の大合併時代だが、意地も通しただろうし、どこかとくっつく必要もなかったのだろう。立派だよ。
この町の素晴らしさを知った喜びとこれから先の人生には相関関係が生じてくるだろう。だがそれにしても随分と多くの街に降りてきたものだ。通り過ぎてきた街の中で、ここで得た感触と同じようなものを掴めそうな街がいくつかある。旅は続いていく。

関連記事

「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】2日目(津山-鳥取)その1-津山、坪井、久世、中国勝山、刑部、新見、総社、備中高松、吉備津(姫新線、伯備線、吉備線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記8月14日その1 2014・8・1

記事を読む

「鉄旅日記」2014年秋【休日おでかけパスで、関東ローカル旅】その1-日進、宮原、加茂宮、北大宮、大宮公園、土呂、東鷲宮、鷲宮、栗橋、古河、新古河、野木、間々田、岩舟(川越線/東北本線/両毛線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年11月3日その1 日進~

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】最終日(魚津-東京)その2-有間川、谷浜、名立、直江津、犀潟、二本木、今井、川中島、姨捨、信濃境、すずらんの里、富士見(北陸本線/信越本線/篠ノ井線/中央本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年3月23日その2 有間川

記事を読む

「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】3日目(鳥取-米子)その2-電鉄出雲市、川跡、旧大社駅、出雲大社前、雲州平田、松江しんじ湖温泉、松江、乃木、東松江、玉造温泉、揖屋、荒島、米子(一畑電車北松江線/一畑電車大社線/山陰本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年8月15日その2 15:

記事を読む

「鉄旅日記」2014年冬【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】最終日(鬼怒川温泉-東京)-小佐越、大桑、大谷向、下今市、西新井、大師前(東武鬼怒川線/東武大師線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年12月7日 鬼怒川温泉駅

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】最終日(紀伊勝浦-東京)その1-紀伊勝浦、太地、湯川、那智、三輪崎、新宮、丹鶴城公園、鵜殿(紀勢本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年3月9日その1 2014

記事を読む

「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】初日(東京-津山)-尾張一宮、播磨高岡、太市、余部、播磨新宮、三日月、西栗栖、美作江見、林野、上月、津山口、津山(東海道本線、山陽本線、姫新線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年8月13日 2014・8

記事を読む

「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】2日目(津山-鳥取)その2-金川、弓削、亀甲、美作滝尾、三浦、美作加茂、知和、智頭、用瀬、津ノ井、大岩、岩美、鳥取(津山線、因美線、山陰本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年8月14日その2 12:

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】最終日(魚津-東京)その1-魚津、生地、黒部、電鉄黒部、泊、親不知、越中宮崎、糸魚川、能生、梶屋敷、浦本(北陸本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年3月23日その1 201

記事を読む

「鉄旅日記」2014年冬【フリー切符で行く、両毛ローカル旅】最終日(桐生-東京)-間藤、足尾、通洞、神戸、水沼、大間々、相老、桐生、西桐生、新里、膳、大胡、江木、中央前橋、治良門橋、三枚橋、太田(わたらせ渓谷鐵道/上毛電鉄/東武伊勢崎線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記2014年12月29日 2014・

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】4日目(西鉄柳川-広島)その1-西鉄柳川、西鉄久留米、西鉄甘木、甘木、基山、けやき台、原田、桂川(西鉄本線、西鉄甘木線、甘木鉄道、鹿児島本線、筑豊本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記201

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その2-隼人、日当山、鶴丸、吉松、真幸、矢岳、大畑、人吉、坂本、玉名、西鉄柳川(肥薩線、鹿児島本線、西鉄本線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記201

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記201

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】2日目(新南陽-鹿児島中央)その3-宇土、松橋、八代、出水、牛ノ浜、草道、鹿児島中央(鹿児島本線/肥薩おれんじ鉄道)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記201

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】2日目(新南陽-鹿児島中央)その2-直方、新飯塚、彦山、豊前桝田、夜明、御井、川尻、住吉、三角(筑豊本線/後藤寺線/日田彦山線/久大本線/鹿児島本線/三角線)

冒険家志望のあなたへ【1話】   鉄旅日記201

→もっと見る

    PAGE TOP ↑