*

「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきった若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉)初日-町田、用賀、築地、北松戸、荒川沖駅、美野里パーキング、常陸多賀駅、いわき久ノ浜パーキング

公開日: : 最終更新日:2025/05/12 旅話, 旅話 1997年

車旅日記1997年7月19日

1997・7・19 19:42 東京町田
さしたる感慨も浮かばない。
それでもオレは北へ行く。

体の疲れは少しとれたような気がする。
梅雨明けした東京を、夜を選んで脱出するのは賢明だろう。

とても涼しい風が吹いている。

21:21 246号国道‐用賀
東京を脱出するには、一度東京に吸収される必要がある。
その最中で、一番の困難を強いられている。

表示では渋谷まで30分。

渋谷には昨夜肌を接した女性が働いている。
悪魔の巣窟のような都会にも安らぎはあった。

ただし、それを得るには決して少なくない額の金が必要だが。
憂歌団が、甲斐バンドが歌う。

「できればおまえといつだって。
一緒に暮らしていたいけど。
すべての男がおまえにゃ親戚みたいなものだから。」

ストーンズは時に調子よく、時にイマイチ。
道路状況もまた同じで、オレの事情もまた変わらない。

22:15 東京築地
銀座で涼しい風が吹いたけど、それも束の間のことで、ねっとりとした暑い夜が訪れている。

道々建設省の一味が作業車を止めて、交通状況に混乱を招こうとしている。

土曜夜の東京。
人の数はそれほどでもないが、日常より怪しげな空気が漂っている。

六本木では人が放つ異臭が鼻を突き、銀座では人通りの絶えた街路で、鏡を前に踊る少年を見かけた。

これから始まる夜に、人それぞれが匂いを発しながら歩いている。
そしてこのオレだ。

普段通い慣れているこの街に人々は関心を示さず、ただ車だけが行き過ぎる。
ここ10日ほど、この街で辛酸を舐めた。

そしてこれから北へ向かう。
オレがそこへ行く事情の中にも、最近のそうした記憶が関係している。

本当にそう思うんだ。

23:14 6号国道‐北松戸
金町に暮らす友のところへは寄らずに県境を越えた。

ブルースボーイがブルースを唸っている。

とてもいい音楽だ。

1997・7・20 0:13 荒川沖駅
東京脱出は比較的穏やかに成功して、少し北の町に到着している。

制服を着た女子高生の姿などがまだ見受けられ、郊外とはいえここもまだ眠っていない。
リュックを背負ってこれから旅立つ男もいる。

ほぼ満月に近かった月はやや霞んできた。
これまでのような気負いはないが、路上に戻った感触だけは蘇っている。

オレにはこういう生活の仕方もあった。
本当に久しぶりの路上だ。

1:00 6号国道‐美野里パーキング
月明りだけじゃ頼りなくて室内灯をつけて書いている。

タフな6号国道にも、オレみたいなヤツをひと時でも救う施設がある。

肩、腰。
体のすべてが疲労を訴えている。

だけどまだここじゃない。
もっと先へいかないとダメだ。

幸い夜が涼しい。
都会とは違う匂いもある。

まさに旅の夜を生きている。

2:03 常陸多賀駅
若者たちがなすこともなく駅周辺をうろついている。

暗いからよくは分からないが、もう右手すぐには太平洋が広がっているはずだ。

とにかく夜が調子いい。
時折あまり覚えていたくない昨日の記憶が脳裏を横切るが、根はそれほど深くない。

問題があるとしたら、この先何を考えていくべきなのかがはっきりしていないことだ。

たんに走ることだけが目的なら、今夜はその絶好の機会。

つまりこの時間にこんな場所に到達している理由は、そんなところにある。

4:00 6号国道‐いわき久ノ浜パーキング
鶏が騒ぎ始め、朝の早い連中が仕事を始め、急ぐ連中がアクセルを全開に踏み始める。

オレの夜はここでおしまい。
都合のいいところに最適のエリアがあってよかった。

シェラフを持ってきてよかった。
こっちの朝は涼しいよ。

関連記事

「車旅日記」2004年春 3日目(釧路-旭川)走行距離533㎞-釧路パシフィックホテル、阿寒丹頂の里、阿寒湖、足寄駅、池田駅、十勝清水駅、樹海ロード日高、夕張駅、熊追橋付近、藤田観光ワシントンホテル旭川 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月3日・・・釧路パシフィックホテル、阿寒丹頂の里、阿寒湖、足寄駅、池田駅、十勝清

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 2日目(高松)その2 ‐祖谷口駅、小歩危駅、大歩危駅、剣山リフト乗場、恋人峠、穴吹駅、黒田屋高松西インター店 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

車旅日記2020年9月20日・・・祖谷口駅、小歩危駅、大歩危駅、剣山リフト乗場、恋人峠、穴吹駅、黒

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その3 ‐槻木、角田、あぶくま、丸森、梁川(阿武隈急行)「鉄旅日記」2021年秋 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月9日・・・槻木駅、角田駅、あぶくま駅、丸森駅、梁川駅(阿武隈急行)

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その1 ‐金町、神田、吉祥寺、国立(常磐線/中央本線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】

鉄旅日記2021年4月24日・・・金町駅、神田駅、吉祥寺駅、国立駅(常磐線/中央本線) 20

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 初日(東京-多治見)その1-金町、三島、修善寺、蒲原、島田(常磐線/東海道本線/伊豆箱根鉄道駿豆線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月23日・・・金町駅、三島駅、修善寺駅、蒲原駅、島田駅(常磐線/東海道本線/伊豆

記事を読む

「車旅日記」2004年秋 最終日(城崎-京都)走行距離256㎞-レイセニット城崎、城崎駅、豊岡駅、久美浜駅、宮津駅、西舞鶴駅、東舞鶴駅、福知山駅、京都駅 【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】

車旅日記2004年11月21日・・・レイセニット城崎、城崎駅、豊岡駅、久美浜駅、宮津駅、西舞鶴駅、東

記事を読む

「車旅日記」2000年春 3日目(象潟‐秋田‐盛岡‐鳴子温泉)象潟海岸、秋田駅、角館花葉館、田沢湖駅、紫波SA、前沢SA、古川駅 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月5日 8:54 象潟海岸 636㎞ 朝、人気のない海もいい。 車を降りるつ

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春 最終日(JR難波-東京)その2-大曽根、勝川、春日井、中津川、上松、原野、広丘、みどり湖、相模湖、豊田(中央本線/篠ノ井線)【近鉄に乗る日々】

鉄旅日記2017年3月20日・・・大曽根駅、勝川駅、春日井駅、中津川駅、上松駅、原野駅、広丘駅、みど

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その2‐静岡、浜松、豊橋、名古屋、大垣(東海道本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・静岡駅、浜松駅、豊橋駅、名古屋駅、大垣駅(東海道本線) 8

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その3‐仙台、国見、愛子、山形(仙山線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月4日・・・仙台駅、国見駅、愛子駅、山形駅(仙山線) 14:39 仙台(せん

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その2 ‐国定(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・国定駅(両毛線)/国定忠治墓(養寿寺

「鉄旅日記」2022年皐月 最終日(磐梯熱海-東京)その1 ‐磐梯熱海、新白河、小山(磐越西線/東北本線)【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月8日・・・磐梯熱海駅、新白河駅、小山駅(磐越西

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

→もっと見る

    PAGE TOP ↑