*

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】3日目 いよいよ金沢へ‐その1(R1→湖岸道路)伏見、山科西野、大津駅、瀬田駅、守山、彦根

公開日: : 最終更新日:2025/05/14 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年5月5日

1996・5・5 11:36 1号国道‐伏見
黄金週間の混雑は古都の上空を曇り空に変える。
2日前と変わらない状況だ。

ただオレは違う。
何より友人の家で疲れを癒したんだ。

2日前は擦り切れていた。
危ないところだったよ。

今、鳥羽大橋を渡った。
これから古都に入る。

心は穏やかだよ。
今のところ盛り上がりを感じずにいるけれど、きっと大丈夫だよ。
そのうち元に戻るさ。

12:40 1号国道‐山科西野
なあ兄貴、天気なんていい加減なもんだな。
今日も天はオレの味方だよ。
したがって調子も悪くない。

古都の対応はよかった。
京都駅に立ち寄ろうと思ったのはいつの頃だったか。
とにかく適当な駐車場を見つけて立ち寄った。

最初にしたことは両親に電話を入れることだった。
母親が電話に出る。
心配そうでもあったけど、うれしそうだった。

家には兄貴が奥さんと二人の姪を連れて遊びにきている。
受話器から上の姪の元気な声が聞こえてくる。

義理の姉は、オレに挨拶させようと努力したけどうまくはいかなかった。
「別にいいよ」と言って電話を切った。

そして21:00の再会を約束した恋する女性の存在が大きくなってきた。
彼女は6人の女友達と能登半島を回っている。

地下食料品売り場を物色する。
そして京都では別の名で呼ばれる柏餅を売る店の前で足が止まった。

オレの注文に小気味よく応えてくれた店の女性はとても美しく、笑顔は素敵だった。
そして土地の言葉を聞かせてくれたんだ。

「おおきに」。

この街を気に入ったよ。

13:12 大津駅
去年、友や家族と連絡をとった場所。
あの時、近江大橋から大津市内に至る道はずっと渋滞していた。

擦り切れそうなオレの目に見えていたのは、果てしない夜の湖と湖畔に広がる夜景だった。

友と家族に電話を入れなければならないと思っていたけど、道に迷ってしまったんだ。
頼りにしていた広域道路地図は何の役にも立たない。
焦り、目をぎらつかせながら大津駅に至る表示を探した。

でも迷った街が大津でよかった。
街は清潔で、通りには恋人を連れていきたくなるような店がいくつか好まし気な灯をつけていた。

次第に坂を上がり、やがて丘の上にボーっと浮かぶように存在している大津駅を見つけた。
車から降りて電話ボックスまで走り、必要な連絡を済ませた。
そこにいたのはわずか数分だったが、あの旅でクライマックスを探すとしたら候補に挙げたくなる光景だった。

オレはここに戻ってきた。
「子供の日」の今日、この湖畔の首都はとても静かだ。

前回、この街に気品を感じた。
今回はこの街に故郷に似た感覚を持った。

駅の駐車場に車を入れて、駅の中を歩いてみた。
そしてここに集まる人の数が少ない理由が何となく分かったような気がした。

20分で駐車場を出た。
管理係のオッサンが「アイツは何をしに来たんだ?」という顔で、去っていくオレを目で追っていた。

オレは旅人。
用なんかない。
でもいつか恋人を連れて旅行者として訪れるだろう。

友よ、ここは素晴らしいところだ。
君がその気になれば、君の住む町から2時間で到着できるんだ。
早急に奥さんをここに連れてくるべきだ。

かといって今回のオレも、残念ながらここでのんびりするわけにはいかない。

ここに寄る理由はなかった。
だけど立ち寄った。

わかるだろう。
この街が好きなんだ。

13:48 瀬田駅
感じていた印象とは少し違うな。
ここにはロマンを求めていたんだ。

だけどこの際どうでもいい。
今ここにいる事実を大切にしたいと思うよ。

さっき神輿が通った。
ここじゃ今日は祭なんだ。

1号国道の騒音を抜きにすれば静かでいいところだよ。
できれば彼女のために瀬田の橋に関係のある土産を用意したかったんだ。
そいつが二人をつなげる橋になってくれないかと思って。

でも駅に土産物屋などなく、いつも路上で見かけるような連中や高校生たちが町の風景を作っていた。

瀬田とは、かつて京都への入口であり、大坂の陣の冒頭で真田幸村は、籠城ではなく大坂城を出て、まず瀬田の橋を落として東海道を進軍してくる東軍を防ぐことを進言した。

瀬田とはオレにとってそんな場所で、東と西をつなぐ交差点だった。
だからそこに浮世離れした風景があるのかと思っていた。
でもそれは幻。

琵琶湖に出るには、この1号国道をどこで曲がれば最適なのか思案を始めた。

14:29 湖岸道路-守山
左に曲がれば1号国道とお別れ。
琵琶湖へ通じる道を走り始め、やがてシャウトする。

琵琶湖は平らに霞み、対岸に比叡の山並が悠然と広がっているんだ。
きっと何度見てもこの風景に感動するだろう。

その道が湖岸道路で尽きることは分かっている。
でもその頃から、この道の行く手は果てしないと思うようになっていた。

この先に何が待ち受けるのか分からず怯えることの多いオレだけど、ここでは違う。
どの道を選んでもいい。
好きなようにしていいんだ。
路上の生活に戻りたがる理由はそこにある。

先日ある友人と話した。
奇しくも彼は琵琶湖近くで暮らす女性との関係を終えていた。

彼はスキー場でその女性と知り合い、都合がつけば東名から名神へとこの地に降り立ち、彼女を訪ねては楽しく時を過ごしていた。

しかし彼女は遠距離恋愛に不安を感じていた。
彼より以前に現れた男もまた埼玉で暮らしていたという。

彼にしてみれば距離なんか関係ない。
会いたくなればすぐに大井松田ICに向かう熱い男だ。
結局彼女は、甘い関西弁で彼との関係を断った。

オレは湖岸道路を走りながら彼女への土産を購入する店を探した。

16:03 湖岸道路-彦根
湖は荒れて、オレは少し疲れた。

ここまでは去年来た道を忠実にたどっている。
あの頃と風景に変化はなく、またここで救われた。

湖が荒れている。
予想もしなかった場所で車は水を浴びている。
たたずむ人はまばらで、オレの気持ちも休まった。

去年休息したビーチは、今日は波の中に消えている。
確かこのあたりだったよ。

恋する女よ、君への土産を見つけたよ。

何を贈れば君が喜ぶのか。
オレには生まれつきそうしたものを選ぶセンスが欠けている。
だからオレと同じように旅の途中と思われる可愛らしい女性が選んだものと同じにしたよ。

彼女はきっと友人に渡すんだろうな。
「琵琶湖」と書かれた唐傘にカワイイ男の子と女の子がぶら下がっている小さな置物。
君も気に入ってくれるとうれしい。

さあ、ここからは北陸路だ。
君がいる場所に向かうんだ。

16:47 湖岸道路-彦根
何気ない食堂でうな丼を食べた。
食堂は波しぶきを浴びながら夜の客を待っていた。

最初にオレを出迎えたのはとても大きな老犬。
オレに一瞥をくれると檻に戻っていった。
とても寂びしそうな目をしていたよ。

店は控え目なご主人と恥ずかしがり屋の娘さんと、「おおきに、寒いね」と言ってくれたオバチャンとで運営されている。
オレは飯を腹に詰め込みながらこれから行くルートを考えていた。

今、長浜に向かうルートは混んでいる。
大阪から北へ向かう街道はオレの予定を聞いてくれない。

彼女との約束の時間まで、あと4時間に迫った。

関連記事

「鉄旅日記」2020年如月 2日目(大船渡-釜石)その4‐宮古、陸中山田、釜石(三陸鉄道リアス線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月23日・・・宮古駅、陸中山田駅、釜石駅(三陸鉄道リアス線) 16:22 宮古

記事を読む

「鉄旅日記」2022年盛夏 初日(東京-伊那市)その3 ‐龍岡城、小海、青柳、下諏訪(小海線/中央本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月11日・・・龍岡城駅、小海駅、青柳駅、下諏訪駅(小海線/中央本線) 1

記事を読む

「鉄旅日記」2018年春 最終日(飯田-東京)その3-日出塩、贄川、村井、上諏訪、日野春、西国分寺、新松戸(中央本線/武蔵野線) 【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】

鉄旅日記2018年4月8日・・・日出塩駅、贄川駅、村井駅、上諏訪駅、日野春駅、西国分寺駅、新松戸駅(

記事を読む

「車旅日記」2003年晩秋 初日(奈良-高野山-南紀白浜)走行距離204㎞ -橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、龍神、南紀白浜 【紀伊半島に焦がれる日々。南海道を往くのは2度目でございます。】

車旅日記2003年11月22日・・・橿原かっぱ寿司、橋本駅、九度山駅、高野山大伽藍、高野山金剛峰寺、

記事を読む

「鉄旅日記」2011夏【みちのくひとり旅】2日目(秋田-函館)-秋田、男鹿、追分、八郎潟、北金岡、大館、浪岡、新青森、青森、中沢、郷沢、蟹田、三厩、五稜郭、函館(男鹿線/奥羽本線/津軽線/津軽海峡線/江差線)

鉄旅日記2011年8月14日・・・秋田駅、男鹿駅、追分駅、八郎潟駅、北金岡駅、大館駅、浪岡駅、新青森

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その3 ‐十日町、越後川口、渋川、敷島(飯山線/上越線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月11日・・・十日町駅、越後川口駅、渋川駅、敷島駅(飯山線/上越線) 1

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 初日(東京-紀伊田辺)その3-周参見、椿、白浜、紀伊田辺(紀勢本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月2日・・・周参見駅、椿駅、白浜駅、紀伊田辺駅(紀勢本線) 19:12 周参見

記事を読む

「鉄旅日記」2022年盛夏 初日(東京-伊那市)その2 ‐横川、軽井沢、平原、乙女、馬流(信越本線/JRバス関東碓氷線/しなの鉄道/小海線)/秩父事件戦死者の墓【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月11日・・・横川駅、軽井沢駅、平原駅、乙女駅、馬流駅(信越本線/JRバス関東

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 最終日(宮古-東京)その1‐宮古、岩手船越、浪板海岸、吉里吉里(三陸鉄道リアス線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月23日・・・宮古駅、岩手船越駅、浪板海岸駅、吉里吉里駅(三陸鉄道リアス線)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 初日(東京-新南陽)-はりま勝原、阿品、島田、新南陽(山陽本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月12日・・・はりま勝原駅、阿品駅、島田駅、新南陽駅(山陽本線) 2015・8

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年盛夏 2日目(伊那市-高松)その2 ‐木曽福島、上松、大桑、大垣、姫路(中央本線/東海道本線/山陽本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月12日・・・木曽福島駅、上松駅、大桑駅、大垣駅

「鉄旅日記」2022年盛夏 2日目(伊那市-高松)その1 ‐伊那市、辰野、岡谷、塩尻(飯田線/中央本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月12日・・・伊那市駅、辰野駅、岡谷駅、塩尻駅(

「鉄旅日記」2022年盛夏 初日(東京-伊那市)その4 ‐岡谷、北殿、伊那北、伊那市(飯田線)/ホテル青木【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月11日・・・岡谷駅、北殿駅、伊那北駅、伊那市駅

「鉄旅日記」2022年盛夏 初日(東京-伊那市)その3 ‐龍岡城、小海、青柳、下諏訪(小海線/中央本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月11日・・・龍岡城駅、小海駅、青柳駅、下諏訪駅

「鉄旅日記」2022年盛夏 初日(東京-伊那市)その2 ‐横川、軽井沢、平原、乙女、馬流(信越本線/JRバス関東碓氷線/しなの鉄道/小海線)/秩父事件戦死者の墓【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月11日・・・横川駅、軽井沢駅、平原駅、乙女駅、

→もっと見る

    PAGE TOP ↑