*

「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】最終日(岡山-東京)-岡山、長船、明石、米原、大垣、沼津、平塚、北千住、東京葛飾(山陽本線/赤穂線/東海道本線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/11 旅話, 旅話 2007年

鉄旅日記2007年5月6日・・・岡山駅、長船駅、明石駅、米原駅、大垣駅、沼津駅、平塚駅、北千住駅(山陽本線/赤穂線/東海道本線)
2007・5・6 8:51 岡山駅(山陽新幹線/山陽本線/伯備線/津山線/吉備線/呉線/宇野線/本四備讃線 岡山県)
予報通りの雨。

路面電車は桃太郎通りから出る。

郵便局前で降りて、後楽園へ。

烏城の黒々とした姿が美しい。

城下電停まで下りてきて、たまたま一緒になった紳士の所作に男を見る。

「瀬戸の花嫁」や「桃太郎」の発車メロディが聞こえてくる。
8:54発長船行に乗る。

9:32 長船駅(赤穂線 岡山県)
備前長船。
刀剣の町。

あたりは住宅街。

かつて車で沿線を走ったことがある。
その際に降りてみたいと思わせた駅があった。

海沿いの港町だった。
どうやら日生駅らしい。

10:05 西片上駅を過ぎて
海が見えてくる前に山が迫り、急激に旅情を帯びてきた。

やがて備前片上。

日生からは小豆島フェリーが出るようだ。

12:22 明石駅を過ぎて
平和な時代に建ったお城と明石焼きの街。
そして須磨の浦。

明石海峡大橋は幻想的に消えて、もちろん淡路島は見えない。

じきに神戸。
六甲の山々にも靄がかかる。

13:32 京都駅を過ぎて
駅をじっと見ていたら、無意識のうちに、かつての恋人を思い出すというよりもむしろ、すぐ目の前にいるかのように彼女の顔が浮かんだ。

雨は止まない。

14:03 近江八幡駅を過ぎて
それにしてもあの日も雨だった。

14:41 米原駅(東海道新幹線/東海道本線/北陸本線/近江鉄道本線 滋賀県)
かつてのままだ。
大鉄道駅なのに、いつ来ても寂しい駅だ。

長い跨線橋を渡って駅舎を見に行く。
自慢にもならないが、このまま在来線を乗り継いで東京に帰る者など、オレ以外にないだろう。
従って東京は遠い。

宮脇俊三さんの著作にも登場する「駅そば」を食べる。

15:22 大垣駅(東海本線/美濃赤坂支線/樽見鉄道/近鉄養老線 岐阜県)
豊橋行の特別快速は混んでいる。
米原からの列車もそうだった。
そういえば3日前の朝もそうだった。

何がそうさせるのか。
別に構わないが。

16:53 豊橋駅を過ぎて
着々と東京への道をたどっている。

一昨日や昨日のように、商店もない集落で2時間近くも待つこともない。

東海道本線の接続はいい。
浜松行に乗っているが、次は沼津行だとありがたい。

17:15 新居町駅を過ぎて
浜名湖競艇帰りの男たちが乗り込んできた。
誰もがうらぶれて見えて、誰もが似たような姿をしていて、誰もが俗物のギャンブラーに見える。

弁天島からは地域の特定はできないが、東南アジアの民が。
顔は日本人に似ているが言葉はさっぱりだ。

そして彼等の言葉はあまり耳に心地いいとは言えない。

17:30 浜松駅を過ぎて
富士行とは中途半端だ。
乗車率はいい。

長い静岡県。
乗客の動向を見守る。

18:09 金谷駅を過ぎて
浜松からの乗客は掛川までに半分は降りた。
そしてまた新たな面々。

茶畑の緑が鮮やかだ。

大井川渡河。

18:38 安倍川渡河
夜景になっていてもおかしくない時間だが、静岡は完全な夜景に染まっていない。

19:15 富士川渡河
そして富士駅着。
次の行動を考えている。

19:34 富士駅を過ぎて
見合いの日取りが決まったとの親父からの報せに返信する。

それにしても今日は少し寒い。

20:10 沼津駅(東海道本線/御殿場線 静岡県)
今夜の酒とメシの第一候補が2月にも寄ったホームのおでん屋だった。

さすがに酒を出す店。
「駅そば」は富士駅でも閉まっていたが、最高の締めになった。

オバチャンは相変わらず元気だったし、馴染み客からはお裾分けもいただいた。

長いホームの一番端まで煙草を吸いに歩いていく連中。
オレも含めて今じゃ日陰者になりつつある境遇の皮肉を笑う。

20:41 熱海駅を過ぎて
この街の夜景がこの旅に感じる最後の旅情になるだろう。
それなりにまともな時間に東京に着きそうだ。

酒を片手に、「無限カノン3部作」は最終章を迎える。

外見はそうじゃないが、向かいに座る男はなかなかの紳士だ。

21:27 平塚駅(東海道本線 神奈川県)
東海道本線として東京に帰り着くためには15両が必要らしい。
増結が行われる。

事情を知らずに席を求めてきた者が、熱海から乗ってきた者たちが占める車両を前にして力を落とし、去っていく。

22:03 横浜駅を過ぎて
この旅の友だった「無限カノン3部作」が今しがたすべての物語を終えた。

作者の談話にあった三島由紀夫の「豊饒の海4部作」を読む必要が生じた。

向かいの紳士と東京まで一緒になるとは思っていなかった。
すでに多摩川を渡る地点まで来ようとしている。

22:37 秋葉原駅を過ぎて
東海道の旅はすでに終わっている。
しかし旅が続いている以上、終わってはいない。

終わり終わりとうるさいが、東京タワーが見えて、「よかった」と心から思っている。

23:02 北千住駅(常磐線/東メト千代田線/東武伊勢崎線/つくばエキスプレス 東京都)
半袖姿の者がいる。
オレの他にもいたか。

ホームを歩いていくと、ほぼ一定間隔でしゃがみこんでいる者がいる。
まるで電柱脇のゴミだ。

この街で彼女が暮らす。
もう家には帰っているだろう。

彼女におやすみを。
オレも無事に帰る。

24:46 東京葛飾金町
23:15金町駅着。
最終日はずっと電車の中。
岡山、神戸、大阪、京都、名古屋、浜松、静岡、横浜。
大都市をたどる旅は楽しかった。

三河湾に蒲郡競艇場。
そして静岡の物静かなギャンブラーたち。
初老の男ばかりで、オレが心配する筋じゃないが、競艇、競輪といった競技に賭ける血は、オレの同世代に受け継がれているのだろうか。

出会いの多い旅だった。
中国地方の人情を忘れない。
司馬遼太郎の著作に見た「中国者の律儀」は、まだ生きている。

備後落合や塩町で感じたことだが、町を出た者の行方は追わないが、残った者たちが末代まで残していくものに興味がある。

彼女への想いをつづってきた旅でもあった。
彼女への想いは、愛であり、確実性を持たない賭けでもある。

「無限カノン3部作」のカヲルは頻繁に愛をささやいていた。
そして信用は離れた。

でも美しい物語だった。

関連記事

「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】4日目(徳島-善通寺)その2-海部、桑野、阿南、穴吹、佃、琴平、善通寺(牟岐線/徳島本線/土讃本線)

鉄旅日記2008年5月5日・・・海部駅、桑野駅、阿南駅、穴吹駅、佃駅、琴平駅、善通寺駅(牟岐線/徳島

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】2日目(新山口-大分)その1-新山口、宇部、居能、雀田、長門本山、小野田、厚狭、新下関、下関、門司、小倉(山陽本線/宇部線/小野田線/長門本山支線/山陽本線/鹿児島本線)

鉄旅日記2009年9月19日・・・新山口駅、宇部駅、居能駅、雀田駅、長門本山駅、小野田駅、厚狭駅、新

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 最終日(釜石-東京)その2‐小山田、土沢、花巻、石鳥谷(釜石線/東北本線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月24日・・・小山田駅、土沢駅、花巻駅、石鳥谷駅(釜石線/東北本線) 7:40

記事を読む

「車旅日記」2004年夏【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】最終日(長崎-島原-唐津-福岡空港)走行距離291㎞その1-長崎ニューポート、島原駅、沖田畷古戦場(龍造寺隆信戦死の地)、大村駅、千綿駅、高橋駅

車旅日記2004年8月15日・・・長崎ニューポート、島原駅、沖田畷古戦場(龍造寺隆信戦死の地)、大村

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その4‐雫石、田沢湖、神代、角館(田沢湖線) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】

鉄旅日記2021年4月17日・・・雫石駅、田沢湖駅、神代駅、角館駅(田沢湖線) 14:50

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その2‐浜坂、東浜、福部、鳥取(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月24日・・・浜坂駅、東浜駅、福部駅、鳥取駅(山陰本線) 8:55&nb

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その3‐余目、三瀬、羽前水沢、間島(陸羽西線/羽越本線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2020年1月13日・・・余目駅、三瀬駅、羽前水沢駅、間島駅(陸羽西線/羽越本線) 14:

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その5‐並河、園部、胡麻、下山、福知山(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・並河駅、園部駅、胡麻駅、下山駅、福知山駅(山陰本線) 16

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その1‐金町、上野、古川、陸前谷地(常磐線/東北新幹線/陸羽東線) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】

鉄旅日記2021年4月17日・・・金町駅、上野駅、古川駅、陸前谷地駅(常磐線/東北新幹線/陸羽東線

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 3日目(萩-三次)その3‐黒松、仁万、出雲市、荘原(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月25日・・・黒松駅、仁万駅、出雲市駅、荘原駅(山陰本線) 12:06&

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その1 ‐金町、東京、くりこま高原(常磐線/東北新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・金町駅、東京駅、くりこま高原駅(常

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その5 ‐仙台、鹿島、原ノ町、浪江、常陸多賀(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・仙台駅、鹿島駅、原ノ町駅、浪江駅

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その4 ‐山寺(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・山寺駅(仙山線)/立石寺山門売店

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その3 ‐米沢、赤湯、中川、山形、北山形(奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・米沢駅、赤湯駅、中川駅、山形駅、

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その2 ‐峠(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・峠駅(奥羽本線)/力餅商店/峠の

→もっと見る

    PAGE TOP ↑