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「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】3日目(仙台-山形-大曲)その1-ホテルイーストワン仙台、陸前落合駅、愛子駅、作並駅、山寺駅、高瀬駅、蔵王駅、北大石田駅、舟形駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2006年

車旅日記2006年5月4日
2006・5・4 7:26 ホテルイーストワン仙台402号室
いい朝が訪れている。

道幅の広い路面に街の大きさを感じ、空を見上げた。

「青葉城恋歌」に歌われた杜の都仙台。
青葉通り、香る葉みどり。
今はその季節。

その後に続く詩は、確かこうだった。

思い出は帰らず。

8:37 陸前落合駅(569㎞)
新緑の青葉通りから仙台城址をかすめ、4号県庁前通り。
広瀬川は2度越えた。

パーキングの管理をしていた優しい顔をしたオバチャンから、テレビ塔のことや仙台の素晴らしさについて聞いていた。

野球やサッカーには触れなかったが、プロのホームチームを持つ東北の雄都仙台。
その存在感は伊達政宗が街を拓いた頃から変わっていないのだろう。
清々しい都会だった。

新しい駅舎を持つ駅に寄った。
仙山線は電化されている。
山形まで通じている列車は1時間に1本しかないが、仙台へはほぼ1時間に3、4本出ている。

ここは仙台の郊外。
山が迫りつつあるけど、まだ都会の香りがどことなく残っている。

駅から48号バイパスに延びる大通りは、想像上での都大路のようで、あの道をオレはまた往く。

8:54 愛子駅(571㎞)
線路に沿ってひと駅。
この駅に寄った理由は、つまり駅名だ。

昨夜仙台駅で、各方面への発車時刻が表示された電光掲示板で見つけた存在だった。
初めて目にする駅名で、道理も何もなく惹かれて、寄ろうと決めた。

「あやし」と読む。
子をあやすところからきているらしい。
昔々の文献に由来する。

なかなか愛し気な小さな駅舎が建っている。
昭和2年に開業した仙山線は、当初仙台愛子間の往復だったようで、今も愛子を終点とする列車が何本かある。

駅前にめぼしい商店はない。
角の店と駅前のマンション1階の雑居店。

それでもまだ仙台の余韻は消えていない。

9:23 作並駅(586㎞)
都会の匂いは完全に消えて、幽谷を辿っている。

この駅に止まる列車は1時間に1本。
開業は昭和6年。
当時は愛子までが仙台圏だったわけだ。

清流広瀬川に沿って。
仙山線は電化されたまま作並から山中に姿を消す。
線路に沿う道はない。

かつて線路を敷いていった男たちが踏み入って以来、そこは1時間に1本通る列車以外、人跡まれな国境地帯のまま21世紀を迎えている。

この駅に着く数㎞手前に聳え立っていた鎌倉山の偉容に目を見張り、遥か下を流れる広瀬川に架かる鉄道橋の武骨さに感動する。
自然も人間も逞しい。

作並温泉の始まりは奈良時代の傑僧、行基の発見によるという。

温泉客を運んできた大型バスが数台止まり、駅前の枝垂桜はまだ散っていない。

2011年11月6日撮影

10:38 山寺駅(628㎞)
作並温泉の桜並木を過ぎると関山トンネル。
広瀬川はトンネルの手前で姿を消し、宮城県と山形県が山深い闇の中で交わる。

仙台は様々な市町村をかき集めて政令指定都市となった。
関山トンネルが抜ける県境まで、ずっと仙台市だったよ。

山形県に入った。
オレには馴染みの土地で、国境にかかる全山すべてが雪をかぶっている。
薄く靄が張ったような青空に浮かんで見えるその様は、中空に白い帯を引いたかのようだ。

サクランボ畑を抜けて、山寺へ。
最近になって知った場所だが、一大観光地となっている。

東京ナンバーの車が常に前にいる。
そして渋滞が始まった。

駅は想像していたとおりの風格を持ち、賑わいに圧倒された。
見上げた岩山に立石寺が突き出している。
自然と人間の崇高な仕業が調和した様はとても見事だ。

ここじゃまだ桜も満開。

2019年11月4日撮影

10:54 高瀬駅(632㎞)
山寺の賑わいを離れてひと駅。

あれは別の世界の話で、そんなことにはまるで興味はないといった風情の山里で、桜の花びらが一葉、車の中に舞い込んだ。
そよ風が奏でる音が気持ちを落ち着かせる。

山形仙台間は列車じゃ約1時間の距離らしい。

味もそっけもない新装の駅舎と広場に強い風が吹いて、桜が盛大に散った。
見渡せば周囲の人家も何だか新しい。

ここから北上を開始する。
仙山線沿線はとても楽しかったよ。

11:43 蔵王駅(651㎞)
山形市内に入ると気怠い気分になった。
道を間違えたことから、ある計画が頭に浮かび実行に移ったが、米沢方面に渋滞が発生していた。

計画とは米沢に出て、米坂線に沿って日本海に出て、そこから北上して余目まで。
余目から陸羽西線に沿って新庄まで。
つまり去年の7月に走ることを断念した区間に惹かれたわけだが、冷静に考えて再び断念した。

当初の計画通り奥羽本線に沿って北上して、まずは新庄まで。

天気もいい。
これでまたしばらくお別れになることだし、山形の山河を愛でよう。
楽しくて切ない気持ちでいる。

蔵王駅に寄った。
石造りの立派な駅。
宮脇俊三さんの本で読んだが、元々の駅名は蔵王じゃなかったはずだ。
蔵王はそこに見えてはいるが。

阿蘇もそうだったが、駅舎はその名に位負けはしていない。

12:56 北大石田駅(705㎞)
快走するという快感を忘れていた。
蔵王から13号バイパスはまるでハイウェイのように流れた。

気温は22度。
暖かくて最高といえる。

快走が滞る地点で休もうと決めて、尾花沢市内。
この駅をかつて眺めた記憶があるが、背後の山々に雪が乗っていた記憶はない。
もしくは消えたか。
見事な景観をしっかり記憶に残そうと車を止めた。

駅舎はない。
長いホームが段丘上に続いていて、その端まで歩いて気持ちのいい風にあたり、記憶に刻むべき景色を眺め続けた。

豊かな人里のたたずまいも含めて、しっかりと目に焼きつけた。
この国はやはり素晴らしい。

涼し気な墓地に桜が満開だ。
足に感じていた疲れが引いていく。

旅はどこを目指そうと正解だ。
今ここにいられることを素直に喜んでいる。

奥羽山脈、、、あの山を越えて、オレは仙台からやってきたのだと実感している。

13:28 舟形駅(714㎞)
最上川との再会。
思えば、オレの最初の旅は最上川を見に行くことだった。
雄大な流れに変化はなく、桜の木の下で人々が喜色を顕わにしている。

この国はいい。
どこに行っても桜がある。
駅前にも一本植わっていて、きれいな花を咲かせている。

東北へ6日間も何しに行ったの?と聞かれるようなことでもあれば、、、そうだな。
桜を見にいったのよ。
そう答えてやろう。

診療所と合わさったようなきれいな駅に人影はなく、観光物産センターに置かれた品数は少なかった。
駅前は静まりかえり、開いている店はトンカツを売る店が一軒のみ。

風だけが町の音を作っている。

この駅には止まらない山形新幹線「つばめ」が上下線とも通過していく。
上りは東京への長い旅。
下りは次の新庄で終わる旅。

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