*

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】その2-川原湯温泉、岩島、群馬藤岡、高麗川、拝島、昭島、中神、武蔵溝ノ口、武蔵中原、鹿島田、尻手(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)

公開日: : 最終更新日:2024/06/04 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年4月1日その2・・・川原湯温泉駅、岩島駅、群馬藤岡駅、高麗川駅、拝島駅、昭島駅、中神駅、武蔵溝ノ口駅、武蔵中原駅、鹿島田駅、尻手駅(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)

14:07 川原湯温泉(かわらゆおんせん)駅(吾妻線 群馬県)
巨大な鉄塔が2本突忽と聳える。

それがこの一帯をダム底に沈める悪魔の装置。

数年前にここを訪ねた時からそこにあった。

一旦中断した工事は民主党政権の正体を露わにする形で復活した。
住民の移動が終了したのだろうか。

旅行者の他に人気はなく、温泉の方向を示す朽ちた表示板だけが目を引いた。

14:19 岩島(いわしま)駅(吾妻線 群馬県)
東京じゃ桜の開花くらいでしか春を目視できないが、雪の消えつつあるここ「執念谷」ではその美しい姿を発見できる。

日差しに満ちてあたたかく、草木が風にそよいでいる。

こういった一帯を沈めてしまおうと言い出したのは誰なんだ。

吾妻川と145号国道。
駅を出て体を伸ばしながら見ていたものはそれだけだけど。

16:37 群馬藤岡(ぐんまふじおか)駅(八高線 群馬県)
高崎駅で八高線に乗り換え。

西日の入る待合室にいる。

外にいてもいいが、空っ風が冷たくて。

これが上州。
雪をかぶった赤城山が見える。
あそこからの風だ。
浴びることができてオレはうれしいよ。

鬼瓦を冠した威厳のある駅舎が美しくもあり、上州武士の武骨さも感じさせる。

くすの木病院とビジネスホテルの他に何もない駅前だが、県道まで歩くと町の歴史が見えた気がしたよ。

かつて車で碓氷峠を越えなきゃならなかった者たちにとって、藤岡という地名はは馴染み深いものだった。

18:25 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
26分待ちで駅前で一杯。

寒いから熱燗で。
お通しの煮込みになす、マカロニサラダ。

味のあるおばちゃんに客の男たち。
オレの他に3人いたよ。
早い時間なのにたいしたもんだ。

「乗り遅れたらまた戻ってくればいいよ。」そう言ってオレを送り出してくれた。

東京との県境だが、夕暮れの光景といい、立派な旅先での風景だ。

東飯能から西武線に乗ればオレの家も近いが、まだ4時間帰るつもりはない。

高麗川は3年振りくらいになるのか。
こうして思い出の町になってうれしい。

秩父山脈の稜線がぼんやり見える。
心に沁みる夜景だ。

19:01 拝島(はいじま)駅(八高線/青梅線/五日市線/西武拝島線 東京都)
またひとつ記憶を塗り替える。

夜の拝島に前回と変わったところを発見するのは困難な作業だったが、駅構内にはいくつもの店が入り、行き交う人の数も多い。

東京西部の大ターミナル駅なんだ。
これくらいたくさんの人がいないとさ。
だから、ああ良かったなって思ったよ。

この感覚がオレの平和観にもっとも近い。

19:13 昭島(あきしま)駅(青梅線 東京都)
南北口とも似たような明かりを放つ街。
ヨーカ堂のネオンは他じゃちょっと見かけない高級感を醸している。

青梅まで好きな女性を送り迎えしていた時代がある。

そんな頃があったから、この街で下りたかったんだ。

旅人として生きているオレの必然がそこにある。

19:24 中神(なかがみ)駅(青梅線 東京都)
東京にもあったんだよ。
そんなフレーズが頭に浮かぶ。

実際こんな駅を持っている市町村は東京にもいくらもあるが、このあたりの空気が吸いたくなったのだろう。
だから降りてみた。

町田で暮らしていた時代もオレの中では歴史になった。

都会を離れると魚民グループ、ヤマザキショップの進出が目につく。
駅を下りて、狭い道が延びていく口では寒風の中を人々が家路を急ぎ、広いロータリーの方では若い男女がためらいがちに唇を合わせていた。

20:14 武蔵溝ノ口(むさしみぞのくち)駅(南武線/東急田園都市線 神奈川県)
立川で南武線に乗り換え。

友人が暮らすような街に旅で訪れた。

東急2線と交わるこの街の賑わいは想像を絶し、この街に縁のなかった人生を不思議に思った。

子供の頃には溝ノ口のオバサンなる人物の名をよく耳にしていたけれど。

丸井が建つ現在のような姿はしていなかっただろうが、10分で事を済ますには大き過ぎる街だった。

20:27 武蔵中原(むさしなかはら)駅(南武線 神奈川県)
沿線に競馬場や競輪場を持つ南武線。
ギャンブル好きの知人は賭博電車と呼んでいた。

川崎へ。

高層団地が建ち並ぶこれといった特徴の見当たらない駅前風景だった。

オレが生まれたのは川崎市。
それを強く思ったことはないし、この旅程を選んだ理由としても挙げられない。

多摩川に沿ったいくつかの町に降りたかっただけなんだ。

20:42 鹿島田(かしまだ)駅(南武線 神奈川県)
踏切のある町と駅。

古街道を思わせる道のカーブを曲がり踏切を渡ると「かしまだ」と書かれた電飾看板を潜る。
夜の明かりはあれくらいがちょうどいい。

ふと郷愁に誘われた。

このあたりは工場の匂いがする町だと思っていたんだ。

20:54 尻手(しって)駅(南武線/南武線浜川崎支線 神奈川県)
ガード下の道は何度も通っている。
この時間じゃコンビニしか開いていない両側のアーケードの線路沿いに僅かに連なる赤提灯。

車の流れはひっきりなしで新装された南武線の駅の中で古い姿を留めている川崎下町。

川崎は工都としての道を選んでいる。

さあ帰ろう。
そう言えば、ここ尻手の脇を今年に入って2度も車で往復したよ。

関連記事

「鉄旅日記」2013年春【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】最終日(和歌山-東京)その2-海老江、野田、吹田、摂津富田、向日町、西大路・・・(東西線、大阪環状線、東海道本線)

鉄旅日記2013年4月7日その2・・・海老江駅、野田駅、吹田駅、摂津富田駅、向日町駅、西大路駅(東西

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏 2日目(和歌山-松阪)その1-和歌山市、和歌山、海南、西御坊、御坊、紀伊田辺、白浜(紀勢本線/紀州鉄道) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】

鉄旅日記2008年7月20日・・・和歌山市駅、和歌山駅、海南駅、西御坊駅、御坊駅、紀伊田辺駅、白浜駅

記事を読む

「鉄旅日記」2014年冬 最終日(鬼怒川温泉-東京)-小佐越、大桑、大谷向、下今市、西新井、大師前(東武鬼怒川線/東武大師線) 【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】

鉄旅日記2014年12月7日・・・小佐越駅、大桑駅、大谷向駅、下今市駅、西新井駅、大師前駅(東武鬼怒

記事を読む

「鉄旅日記」2011年秋【再びみちのくひとり旅】最終日(長井-東京)-長井、荒砥、赤湯、羽前千歳、作並、東照宮、槻木、角田、福島、飯坂温泉、本宮、宇都宮、雀宮(山形鉄道/仙山線/阿武隈急行/福島交通飯坂線/東北本線)

鉄旅日記2011年11月6日・・・長井駅、荒砥駅、赤湯駅、羽前千歳駅、作並駅、東照宮駅、槻木駅、角田

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その1 ‐金町、高浜、友部、水戸、いわき(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月9日・・・金町駅、高浜駅、友部駅、水戸駅、いわき駅(常磐線) 202

記事を読む

「車旅日記」2005年冬 2日目(都城-人吉)走行距離284㎞ その1-都城駅、西都城駅、財部駅、霧島神宮駅、国分駅、錦江駅、鹿児島駅 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】

車旅日記2005年2月12日・・・都城駅、西都城駅、財部駅、霧島神宮駅、国分駅、錦江駅、鹿児島駅

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生【秩父へ。西武線とのお別れでございます。】-練馬区役所、芦ヶ久保、西武秩父、御花畑、秩父、入間市(西武秩父線/秩父鉄道/西武池袋線)

鉄旅日記2018年3月24日・・・芦ヶ久保駅、西武秩父駅、御花畑駅、秩父駅、入間市駅(西武秩父線/秩

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.2 4日目(宇部-東京町田)佐波川SA、宮島SA、久地PA、帝釈峡PA、美作追分PA、社PA、桂川PA、多賀SA、東郷PA、三方原PA、牧之原SA、駒門PA 【友を訪ねて備後福山へ。長門宇部へ。2000㎞に及ぶ長大な旅路でございました。】

車旅日記2000年8月15日~16日・・・佐波川SA、宮島SA、久地PA、帝釈峡PA、美作追分PA、

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 最終日(三次-東京)その2‐万能倉、神辺、井原、吉備真備(福塩線/井原鉄道)【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月26日・・・万能倉駅、神辺駅、井原駅、吉備真備駅(福塩線/井原鉄道)

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋 初日(東京-砺波)その2 ‐電鉄魚津、西魚津、新魚津、魚津、高岡(富山地方鉄道本線/あいの風とやま鉄道)/魚津城跡 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月21日・・・電鉄魚津駅、西魚津駅、新魚津駅、魚津駅、高岡駅(富山地方鉄道本

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その3 ‐瀬見温泉(陸羽東線)/湯前神社/山神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月6日・・・瀬見温泉(陸羽東線)/湯前神社/山

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その2 ‐川渡温泉、鳴子御殿湯、鳴子温泉(陸羽東線)/東鳴子温泉神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・川渡温泉駅、鳴子御殿湯駅、鳴子温泉

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その1 ‐古川、岩出山、有備館(陸羽東線)/岩出山城址(城山公園) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・古川駅、岩出山駅、有備館駅(陸羽東

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その3 ‐千徳、宮古、盛岡、古川(山田線/東北新幹線)/蛇の目寿司 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・千徳駅、宮古駅、盛岡駅、古川駅(山

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その2 ‐水沢江刺、盛岡、上米内(東北新幹線/山田線)【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・水沢江刺駅、盛岡駅、上米内駅(東北

→もっと見る

    PAGE TOP ↑