「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】2日目(三ノ宮-琴電琴平)-三ノ宮、元町、和田岬、兵庫、須磨、西明石、加古川、網干、上郡、和気、高松、志度、琴電屋島、瓦町、一宮、琴平(山陽本線、和田岬支線、瀬戸大橋線、予讃本線、高徳本線、琴平電鉄志度線、琴平電鉄琴平線)
鉄旅日記2009年5月2日・・・三ノ宮駅、元町駅、和田岬駅、兵庫駅、須磨駅、西明石駅、加古川駅、網干駅、上郡駅、和気駅、高松駅、志度駅、琴電屋島駅、瓦町駅、一宮駅、琴平駅(山陽本線、和田岬支線、瀬戸大橋線、予讃本線、高徳本線、琴平電鉄志度線、琴平電鉄琴平線)
三ノ宮にて
2009・5・2 8:08 元町(もとまち)駅(東海道本線 兵庫県)
三ノ宮から一駅。
阪急三宮駅を覗いてからガードに沿って歩いてきた。
六甲の大文字を目にして、風格ある大都会に馴染む。
街にはゴミが散乱し、昨夜の狂態を偲ばせる。
神戸タワーが見えた。
「そして神戸」か。
巨大な建物と阪神高速が視界から海を遮る。
どうもここの住人は信号待ちをできない人種らしい。
メリケンパークとか、ひとりのオレには無縁だ。
8:30 和田岬(わだみさき)駅(山陽本線和田岬支線 兵庫県)
無人の工場地帯だった。
地下鉄も通じているが、今日は土曜日。
4両編成が運んだ人数はおそろしく僅かだった。
遠く南北朝騒乱の頃、その日に死を迎える楠木正成は、小高い場所からここ和田岬に上陸する足利軍団の様子を眺め、心穏やかに覚悟を固めていたと知った。
8:47 兵庫(ひょうご)駅(山陽本線/山陽本線和田岬支線 兵庫県)
県の名を冠した駅は石造りの回廊を持つ重厚な駅だった。
和田岬線のホームは山陽本線とは別にあり、違う改札を通る必要がある。
ここは神戸の都会らしさがほんのりと残り、また六甲が尽きるあたり。
駅を降りると六甲側に落ち着いた雰囲気の地方都市があった。
海側は元町の事情と変わらない。
駅前には高層マンションの進出が目立つ。
野洲、守山、草津、尼崎。沿線ではそんな風景が記憶を独占した。
9:17 須磨(すま)駅(山陽本線 兵庫県)
須磨の浦に上陸。
駅が海水浴場に面している。
4名の少女が波打ち際で笑い合い、多くの釣り師が出ている。
振り返れば様子のいい山が見え、街を横切ると山陽電車が走っている。
そこから坂道になり清楚な住宅地が続いている。
夏の日の映画のワンシーンになりそうな素敵な町並みだった。
すでに西へ向かう列車の中。
関西は美人率が高い。
淡路海峡大橋、そして舞子に着いた。
かつて淡路からここに渡った橋は頭上にある。
山陽須磨(さんようすま)駅(山陽電鉄本線 兵庫県)にて
9:47 西明石(にしあかし)駅(山陽新幹線/山陽本線 兵庫県)
駅があるだけで街はなかった。
この駅には新幹線が停車する。
その駅舎の中にだけ街があった。
その街を出ると国道に前進を制限された。
街並にはすでに大都会神戸の面影はなく、山陽路の香りが濃い。
10:16 加古川(かこがわ)駅(山陽本線/加古川線 兵庫県)
新快速網干行きの遅れによって約10分の停車。
思いがけず途中下車の機会が訪れたわけだ。
ヤマトヤシキという百貨店が聳える駅前広場に2号線へと続くアーケード街。
明石によく似た街だ。
センバツだったか、特別枠でこの街の野球小僧たちが近くて遠い念願の甲子園の土を踏んでいる。
加古川、市川を渡ると姫路。
世界遺産姫路城と大きな街が見える。
大半の客が改札へと階段を下りた。
姫路駅名物「えきそば」が懐かしいが、あまり覚えていない。
確かラーメンの麺があたたかいそばつゆに入っている、言ってみればやろうと思えば誰でもできるが、そんな奇特なことは誰もやらない味を売っている。
安いんだ。それに悪くない。
10:51 網干(あぼし)駅(山陽本線 兵庫県)
長い貨物列車を見ると、東海道本線原駅でのかつての恋人の驚いた顔を思い出す。
山陽路の小さな田舎町に着いた。
駅前に商店はない。
また長い貨物列車がやってきた。
あれに飛び乗って知らない街に向かう冒険者たちを昔はよくテレビで見たものだ。
だけど、えらいスピードで通過していく。
あれじゃトム・クルーズだって飛び移れない。
11:44 上郡(かみごおり)駅(山陽本線/智頭急行 兵庫県)
播州の山間の町にいる。
ここから鳥取に向かう特急列車の線路が離れていく。
三原行きの到着を待つ側でディーゼル音を響かせている。
町には菓子屋の他に目立つものはなく、飲み屋もない。
つまりオレはここでは暮らせない。
千種川の鮎を使った銘菓がある。
山陽本線が旅情を帯びてきている。
満員の車内には薄着の外国人の姿もある。
線路は播州の山深いところに差し掛かり、いくつかの鉄路が本線から離れていき、山に吸い込まれるようにすぐに姿を消していく。
12:28 和気(わけ)駅(山陽本線 岡山県)
播磨から備前へ。
和気清麻呂所縁の地には懐かしくて、どことなくいい香りが漂う。
好きだな、こういう町は。
かつて車で通った美濃の垂井宿に似ていて、清流金剛川が流れる町。
正面には和気富士を頂き、麓には南無妙法蓮華経が刻まれた大岩が鎮座している。
こういう町に降りるとこの国の途方もなく長い歴史に思いを馳せたくなる。
かつて片上鉄道という、もうひとつの鉄道が町を横切っていたことを偲ばせる片鉄ロマン街道と書かれたオレンジ色の古い鉄橋が吉井川に架かり、視界から消えていく。
そして、これもかつて京都へと急ぐオレを大渋滞に巻き込んだ備前の山間の町。
吉井川を見るとうれしくなる。
旧家と思われる立派な屋敷が続いたあとに団地群が現れた。
そこに貼られた公明党のポスターの主張に納得した。
とてもまっとうだよ。
14:39 高松(たかまつ)駅(予讃本線/高徳本線/瀬戸大橋線 香川県)
岡山から接続よく瀬戸大橋線へ。
橋上からの景色は圧巻で、すべてを忘れるにはちょうどいい。
都会からやってきた若い娘たちがはしゃいでいた。
去年のオレと同じだ。
来てよかったねと嬉しそうに友達に寄り添う姿に顔が綻ぶ。
その3人のかわいらしい姿はここ高松で降りていった。
うどんで昼食を済ませ、ほんの少しだけ街に出て、あとはこうしてビールと煙草で発車を待っている。
瀬戸内は今年5月も平和に凪いでいる。
志度(しど)駅(高徳本線 香川県)にて
15:40 琴電志度(ことでんしど)駅(琴平電鉄志度線 香川県)
高松市内の外輪に沿って進む高徳本線。
栗林公園はどうも有名らしい。
無人駅ばかりだけど市内の大きさは分かった。
立派な街だよ高松は。
川を渡ると同時に都会の風は消え、屋島の切り立った山容を眺めつつ志度へ。
乗り合わせたかわいらしい少女たちも降りる。
特に何ということもない町だが、市町村合併からさぬき市を名乗り、札所の志渡寺と志渡湾を持っている。
志度商業だったか甲子園の常連校は最近姿を見ない。
屋島が見え、島々が霞んで見え、心地いい風にあたる。
でも海辺を離れると風を感じなくなる。
そういうもんだ。
琴電に乗り込んでいる。
フリー切符があってよかった。
乗客は5名。
海辺に出ると誰もが振り返る。
16:20 琴電屋島(ことでんやしま)駅(琴平電鉄志度線 香川県)
歴史のある駅舎に人の姿はなく、山頂ケーブル駅も営業している気配はなく、扉のガラスが割られている。
遥かな昔、源平合戦で歴史の表舞台に立った旧跡はひっそりと、しかし並外れた存在感を放ちつつ沈黙している。
犬と一緒に軒先で涼む老婦人と挨拶を交わす。
ふと風景に目を移すと間の抜けた富士山みたいな讃岐特有の山が見える。
そんな様子の山がここにはいくつもあるんだ。
確か去年も記している。
讃岐の女性もまた美しい。
16:54 瓦町(かわらまち)駅(琴平電鉄志度線/長尾線/琴平線 香川県)
琴電の総本山は天満屋を従え、立派な駅ビルとして市内に聳えている。
驚いた。
高松の中心がここなのか。
琴電はここから4方向に放たれている。
街を歩くと、北千住に暮らす彼女のようにお店を持っている女性が店の前を掃いていた。
品のいい小さな店だった。
18:47 一宮(いちのみや)駅(琴平電鉄琴平線 香川県)
日が暮れた。
昼間のあたたかさも消えて、冷たい風がほんのり体を冷やす。
讃岐の一宮とはどこを指している。
琴平はまだ先だ。
あれから長尾線を往復して高松築港に出て、またすぐ一宮行に乗った。
長尾じゃ降りている時間はなかったけど、琴平まで行けば琴電完乗だ。
琴電は奮闘している。
車内広告枠はほぼ埋まり、毎月最後の金曜日には志渡、長尾、琴平に向けて高松築港か瓦町を0:00に出る便を運行している。
岡本という駅に着いて、目の前に池だか沼だかが現れた。
讃岐名物ため池か。
長尾には何もなかったが、学生通りみたいな駅があったから、香川大学あたりが近くにあるんだろう。
いびつな台形の形をした屋島はどこからでも長いこと見えていた。
21:49 サンウェルコトヒラ201号
一年ぶりという気がしない。
すべてに見覚えがある。
金倉川の風情、ソープランド、そして夜の静けさ。
あまちゃんラーメンだったか。
あの店も覚えていたよ。
結局夕食はそこで済ませた。
餃子はやってなかったけど、美味しいおでんがあってさ。
まだ二日だけど、今回はラーメンとおでんに縁がある。
北海道じゃジャガイモだった。
金比羅さんにお詣りもせず何しにきたってところだけど、仕方ないさ。
朝になったら6:58阿波池田行に乗らなきゃどうしようもないことになる。
金比羅さんと温泉以外はオレなりに満喫した。
石段だって100段くらいは上がったんだ。
去年のことだけどな。
去年はここで終わった旅が今年はここから始まる。
高知との再会を楽しみにしている。
今夜はほんの少しだけがっかりしている。
こんなに夜の静かな観光地をオレは他に知らない。
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